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夢小説が、殺しにくる!?  作者: ササユリ ナツナ
第二章 中学生編
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待ち焦がれた今日



「ハイドはやっぱ無駄に年食ってるだけあって、すげー強くてさ。力、技術、戦闘経験、どれをとっても敵わなかったんだ。俺らなんて二人がかりだったのに。俺は意地になって食らいつこうとしてたら、マグがあっさり退くぞって言いだして、ツナを抱えて走り出してさ」


 ユウは言葉を続ける。


 その逃走は、戦いを楽しんでいたハイドにとっては不意打ちだったらしく、少し反応が遅れたところを、マグの虎の子である銀の銃弾が上手く牽制の機能を果たしたらしい。


「オレ一人なら……逃走は無理だった……足止めのユウが居たから……何とかなると思った」


 マグはそう付け足した。


 その逃走劇も、余裕とは程遠いギリギリのもので、ユウとマグはなんとかフリュクティドールの入口まで戻ってこれたらしい。

 雨だったことも幸いして、人通りもなく、特に騒ぎになることもなかった。


 そこでハイドの本気の襲撃を受け、あわや私を奪われるとなった時、街…というか、崖のところに残してきていたアンタローが加勢に来たそうだ。

 『ボクに任せてくださいっ』と言って、アンタローは飛び上がり、ものすごい輝きを発して目くらましをしたそうだ。


「俺は正直、『ふざけんなよ!?』っつったよ。アイツ敵味方関係なく目くらまししやがって……ところが、ハイドが思った以上に苦しんだんだ。やっぱアンタローって腐っても精霊なんだな」


 その隙を見て、ユウはアンタローを抱えて走り出したそうだ。

 逃げる先は決まっていた。

 『悪魔は歓迎されないところに行くことはできない』

 つまり、デューの屋敷だ。


 何とか駆け込んで無理やり扉を閉めたら、デューは驚いたものの、ただならぬ状況を感じ取って、急ぎかくまってくれたそうだ。


 ハイドは用心深く、そして物事を遊びのように計画立てて進めるのが好きだと見抜いたマグは、これでしばらく安全だと結論付けて、デューに事情のすべてを話した。


 何かあれば力になると約束したばかりのデューは、『こんなに早く手を貸せるとは思わなかった』と快く私たちを受け入れて、ユウとマグは住み込みで冒険稼業やデューの手伝いをするということで、ここを生活の拠点としたらしい。


 私はその時のデューの心の中での喜びようが容易に想像できたので、あんまりお世話になって申し訳ないなあって気分にはならなかった。

 そう、我々はWIN-WINの関係なのだ。


 ユウたちが困ったのは私の扱い方で、魔力持ちの上に翼まで生えているとくれば、絶対に医者には見せられない。


 マグの機転でなんとか、シーツをかぶせて翼を隠すことで、私はあの時のまじない屋のおばあさんに訪問診療を受けることになった。

 説明はそのまま、悪魔に眠りの呪いをかけられた、と告げたらしい。

 するとまじない屋のおばあさんは、こう言ったそうだ。


「あらまあ、なんて綺麗な呪いだろうね! ああ、気に障ったなら許しておくれ。でも、まじないと、のろいは、とても似ていてね。職業柄、こうも見事な芸術品に出会ってしまうと、手放しに誉めざるを得ないのよねえ。この子は、その悪魔にとても愛されているのが伝わってくるようだよ。呪いは思いの結晶でもあるからね、ストレートにそれが出るんだ。といっても、悪魔の愛と人間の愛は全然違うから、この子にとっては災難であることは変わりがないねえ、可哀想に…。でも安心おし。美しく整った呪いであればあるほど、結び目をほどくだけで解けていくのよ」


 おばあさんが言うには、私にかけられた呪いは、本当に私の体を傷つけないような配慮に満ち満ちており、飲まず食わずで放っておいても三年程度で解けるものだったそうだ。

 逆に言えば、三年以上続いてしまうと、私の体に変調が出る恐れがある呪いということになるので、三年以内なのは間違いないそうだ。

 すぐに呪いを解くこともできたのだが、おばあさんが下手に手を加えると、完璧に保たれているバランスが崩れて身体に悪影響を及ぼす可能性があるらしく、この子の身体のためを思うなら、三年待つといい、と説得され、今日に至ったそうだ。


 マグはおばあさんにお願いして、私のベッドの周囲を囲むように、悪魔避けのまじないを施してもらった。


「あの、あくのおしろ、みたいな、まほうじんって、せいぎのまほうじん、だったんだね!?」


 私がびっくりして言うと、ちょっとマグのツボを掠めたらしく、しばらく笑っていた。


「いやー、でもここに来てから一週間で、もうマグがヤバいくらい憔悴してって、そういう意味ではすげー焦ったぜ。朝でも夜でもツナの傍から離れねーんだからさ」


「当然だ……いつハイドが来るか……わからないからな」


 ユウの言葉は過去形で、今はどうなっているのかと、私はマグの方を見る。


「ああ、今は大丈夫だ。見かねたデューがマグにこの屋敷で暮らすための条件を付けてきてさ」


 曰く、『マグくん、そんな状態で件の悪魔が来ても、とても追い払える状態じゃないだろうし、君がこのまま衰弱死したら、ナツナくんが目覚めた時に私は申し訳も立たない。そんなに彼女を泣かせたいのかね? そうでなければ、朝起きて夜に寝て三食食べて健やかに生きる、という約束をしたまえ。それが、この屋敷でナツナくんを匿う条件だ。言っておくが、他の宿屋に行こうなどと考えたのなら、それこそ君の思考力が鈍っている証拠だぞ。この屋敷には、こんな翼の生えた彼女を、金目当てに狙う者など一人もいないのだから』


 それでもマグは最初は安眠できずに苦労したそうだ。

 二時間おきに私の様子を見に来たり、それが見つかって結局ユウに怒られてケンカになりかけたり、しかし手探りでなんとか折り合いをつける方法を見つけ、ここまで過ごしてこれたらしい。


「おりあいって?」


「オレもこの部屋で……眠りにつくことにした」


 あ、それでこのベッドの反対側の壁に質素なベッドが置いてあるんですね。


「いやあ、でも滞在費はある程度払ってるとはいえ、拠点があるとこんなに金が溜まるんだな、俺びっくりしたよ。もう今後宿屋とかに金払うのがバカバカしくなってきたかもな」


「鉱山にばかり……潜っていたせいもある……自然に金の稼ぎ方が……効率化された」


「デューとも、ぼうけん、した?」


「ああ、アンタローが対ハイドに使えるってわかったからな、ツナの傍にアンタローを配置しておいて、デューと一緒に冒険に出てみたりしてたんだ。まあ、大抵マグは残ったが」


「そっか……」


「そうそう聞いてくれよツナ、ファイア・ファイア・カラー・マネー、見つけたんだぜイテッ!?」


 マグがユウの腹に肘打ちし、ユウは腹を抑えて「なにすんだよ…!」と苦しんだ。


「自分が参加できなかったところで……楽しかった思い出を語られても……寂しくなるだけだバカ……少しはデリカシーを持て」


 マグが半眼でユウを睨みつける。

 私は慌てて手を振った。


「ううん、そんなこと、ないよ、だって、さんねんって、ながいもんね、いろいろ、あったのは、とうぜんで、わたしだって、はなし、ききた―――っ」


 いきなりボロッと大粒の涙が出た。

 すぐに両腕で顔を覆って隠す。


「き、ききたい、のは、ほんと、だし…っ」


「! ツナ悪い!! そんなつもりじゃなかった!」


「ち、ちが、う…!」


 必死に首を振っていると、頭をポンポン撫でてくる手が置かれた。この手は、マグだ。


「ツナ、無理するな……思ってることはちゃんと言え……絶対に嫌わないから」


「……っ、……っっ。…さ、さんねん、ムダに、なったんだなって、おもって…! おまつり、いきたかった…! いっしょに、おもいで、つくれなかった…っ!」


「ツナ…」


 ユウが、服を握りつぶすようにして、自分の胸を抑えているのが、視界の端に見えた。


「ツナ……大丈夫だ……ここからたくさん……思い出は作れる……オレたちは……もう、一緒に旅をしようって……決めたのだから」


「で、でも、でも、ユウとマグの、あし、も、とめてしまって…」


「それは違うぜツナ、その点にはむしろ感謝してるんだ。一か所に留まるなんてやったことがなかったからさ、逆に新鮮だった。それでわかったんだ、今までのこと。俺たちは、立ち止まったら、過去に追い付かれるような気がして、なんとなく旅を続けていただけなんだって」


「……っく、……っ、ほんと? よかったことだった…?」


「ああ。そもそも悪いのはハイドだからな、ツナが気に病むのはなんか…悔しいな、負けた気になる! ツナ、アイツなんかに負けるな! 安心しろ、ツナが今日悲しかった分の100倍くらい笑える旅にしてやっからさ!」


 ……そこで、勝ち負けを出されると。

 負けず嫌いの私は、なんだか心が燃え上がってしまう。

 そうだ、なんとか、頑張って切り替えよう…あの崖での出来事に比べれば、こんな事何ともないはずだ。


 よし、…よし、よくよく考えてみれば、これは少年漫画の王道展開だよ!

 天下一貧弱武闘大会のある、願いが叶う玉77個集める少年漫画だって、いきなり主人公が成長とかしてたじゃない!

 そうだよ、これは私の好きな展開のはずだよ!!

 大丈夫、大丈夫、これは悲しむことじゃない、喜ぶことだ…!


「……、……うん、わかった、わたしも、まけないように、がんばる」


 私はユウの言葉に、しっかりと頷いた。


「そうそう、そういえばマグに聞いたぜ、ツナ、記憶が戻ったんだって?」


 え? とマグの方を見ると、静かにマグは頷いた。


 そうか、そういう風に話してくれたんだね。

 私は、素直に話すことにした。


「うん…。でもね、はなしたいことと、はなしたくないこと、まだ、せいり、ついてない」


「そりゃ当然だ。俺も今が楽しいから、別に無理して聞きたいってことはねーからな、そこだけはわかっておいてくれ」


「ン……ありがと」


 私は仄かに笑った。

 すると、マグとユウが急に黙り込んで、じっとこちらを見てくる。


「? どうしたの?」


「いや……やっと笑ってくれた……と思ってな」


「なんか、懐かしいな、感極まるっつうか」


 ユウは、へらへらと軽薄な笑みを向けてくる。


 あ、そうか。

 自覚はなかったけど、驚きの連続だったから、笑う余裕なんてなかったのかもしれない。


「…あのね、ユウ、マグ、わたしも、おなじ、きもち、だからね。こきょうの、はなし、きかなくても、いっしょに、たび、できるからね」


 私の言葉に、しかしユウは首を振った。


「いや、そこはもうマグと話し合ってんだ。前にツナが俺らに、ホームシックになったか? って聞いてきたことがあっただろ? あの時に、なんかこう…ツナに即答できなかったり、話をごまかしたりする流れが、死ぬほど邪魔だなって思ったんだよ。しかもツナが『しまった、聞いちゃダメだったかな』みたいな雰囲気出してて、もうな…かえって申し訳なかったっつーかなんつーか。他人の地雷が見えねーのは当たり前なんだよ。そんな当たり前のことが邪魔になるくらいなら、もう話した方がいいみたいな結論にはなってる。ツナさえよければ聞いてくれねーかな?」


「いや、今日はもうやめておこう……ツナが眠ってから一時間で……オレが起こしてしまった……まだ疲労があるだろう」


 なるほど、それでまだ私の眠気は晴れてないのか…。


「でも、せっかくだし、おきてたいな。こうして、おとなしく、してるぶんには、へいきだよ?」


「そうだな、そうして貰うと俺も精神面ですげー助かる。じゃあ今日は別の話でもすっか」


 ユウは、いつもの笑顔になった。


「ン……。けっきょくハイドは、あれから、こなかった?」


「あ~、一回だけ危なかったな。でも回避できたぜ、安心してくれ」


「たぶんハイドは……オレの自滅を狙っていた……ところもあるだろうからな……デューのおかげでそれも上手くいかず……手を引いたんだろう」


 マグは、手持無沙汰にマフラーを巻きなおす。

 私にとっては見慣れた仕草だが、大人のマグがやるのは初めて見るので、ちょっと感慨深い。


「そっか…。ここに、すみこみ、って、どんな、かんじの、くらし?」


「別荘ゆえ……人手が足りていなかったらしく……ユウは薪割り、オレは調理補助……だな。よく物語で……下働きが……ジャガイモの皮むきを……延々とやらされる……理由が分かった……あれはめんどくさい……誰もやりたがらない」


「あとはツナの世話とかだなー。マグが筋肉が衰えないようにって、毎日ツナの手足の運動させてやったり、伸びてきた前髪を切ってやったりとか、まあ甲斐甲斐しいのなんの。あ、ちなみに俺はツナが床ズレを起こさねーように定期的に位置をずらしてたんだぜ、偉いだろ!」


 ちょっと!?

 眠り姫的な世界観に床ズレを持ってくるのはやめてよ雰囲気壊れるでしょ!!!?

 なんでそういうところだけリアリティがあるんだよこのクソファンタジーは!!


 でも、今のでわかった。

 なるほど、二人の距離感がおかしいのはそれだったんだね?

 そりゃ毎日毎日そんなに私にベタベタ触ってたんだったら、色々マヒして何の抵抗もなくなるでしょうね。

 じゃあデューは何だろう…?


「デューも、わたしの、みはり、してた?」


「ああ、デューは定期的にふらっとやってきては、『読みたい本があるついでに私が見張ろう、君たちは気分転換に外に出たまえ』つって俺らを追い出してたな。隠してるつもりなんだろうけど、アイツの気遣いってわかりやすいんだよなー」


 ユウの答えに、やっぱり、と思った。

 そこそこ一緒に過ごしてきたんだったら、ぬいぐるみ説が当たってそう!


「でもデューは、親父さんの呼び出しや社交とかで屋敷を空けることはあっても、ほとんどずっと俺らと居たんだぜ、よっぽどツナのことが大事なんだろうなー」


 デューが大事なのは唯一の友人であるユウとマグだよ…気づいてもらえないデューが可哀想すぎる。

 ちゃんと口で言わないからだよ、デュー。


「おきたとき、はなが、いっぱいあったのは?」


「あれはマグが、ツナが好きな花だからって毎日のように供えてたな」


「心なしか……花を傍に置くと……ツナが微笑んで見えたからな……」


「そっか…ありがと」


 嬉しいけど、本当に嬉しいんだけど、最初見た時は献花かと思ったよ!?


「ユウ、マグ、きょう、わたしと、いっしょに、ねれる? はなれたくない、また、となりでねる、やりたい」


「ツナ……」


 マグがジーンとして、しかし何か葛藤を抱えるような苦悶の表情をした。


「構わない……が、今日だけだ……今後旅に出ても……部屋を別に取る……必要もあるかもしれない」


「えっ、なんで!? きらいになった?」


「いやそれは違うって! いいかツナ、中身は3年前と変わらないにしても、外見は年頃の女の子だろ?」


 ……あ、そうか、そういえばそうだった、まだ鏡を一回も見てないから全然その認識が持てない…!

 というか、年月を実感できていない私の感覚では、昨日までは宿屋で同じ部屋OKだったのに…という感じなので、不満でいっぱいになる。


「ツナ……オレたちは本当は……別に一緒に眠っても構わない……だが、もし、万が一……井戸端会議中のおばさんたちが……ツナのことを『はしたない』と……評価したとする……。オレはその方々を……撃ち殺さずにはいられないだろう」


「そりゃダメだな、ツナに死体を見せるのは刺激が強すぎる」


 うわあ、この人たち三年でダメな方向に歪んだなあ……。


 その時、ガチャリと扉が開いて、デューが戻ってきた。


「お、デュー、ちょうどよかった、俺らが使ってる客室に布団敷きまくっていいか?」


「敷くとは…? 絨毯に直接敷くのかね?」


 デューは、訝し気にメガネを押し上げる。


「そうそう、後で俺らで洗って返すからさ! 床にたくさん敷いて、そこで今日は三人で雑魚寝するんだよ!」


「なんだって!?」


 デューが予想外に大きな声を上げて驚いて、私たちはその声に驚いた。

 マンガだったら、デューの背後にベタフラッシュが見えただろう。


「だ、ダメ…かな?」


 おずおずと私がうかがうと、デューは冷静さを取り戻すように居住まいを正した。


「失敬、あまりに私の中になかった文化なので、つい驚いてしまった。もちろん構わない。が、一つ条件がある」


「なんだ……なんでもやるぞ……」


「私も共に雑魚寝とやらを味わおう」


 あ、そういうことね、やりたくてワクワクしたんだね。


「思えば魔物退治や坑道探索などはこなしたが、物語に出てくるような野宿を、私はまだやったことがなかった。床の上に直接布団を敷いて眠りにつくなど、ほとんど野宿と同じではないか、ぜひやろう」


「いや……だいぶ違うと思うが……」


 デューは何年たってもお坊ちゃんなんだなあ。

 ちょっと微笑ましくなる。


「よし、そうと決まれば……ツナ、イチゴを……買ってきてある……落とした衝撃で……少し潰れてしまったが……久しぶりだろう……きっと美味いぞ」


「いちご! うれしい!」


「おー、これでようやく俺らはイチゴ地獄から解放されるな…」


「全く。三年目がいつになるかわからないからと、このところ毎日買い込んだイチゴを食べさせられたからね、一段落でやれやれといったところか」


 マグも何年たってもマグだった……。


 そんなこんなで情報量の多かった一日が過ぎ、結局私は9時までも起きていられず、早めに雑魚寝ルームに移動させてもらった。

 早めに寝てしまうのは少し寂しいけど、ユウもマグもデューもアンタローも一緒に寝るもんね。

 安心して眠れそう。


 そう思って眠りについたことを、私はすぐに後悔することになった。



-------------------------------------------



「ツナ、ツナ……起きろ……ツナ」


「ン……?」


 揺さぶられて目を覚ます。まだ辺りは暗い。


「あれ、マグ……もう朝…?」


「いや、0時だ……寝る前にツナの起きた顔を……見ておこうと思ってな……おやすみ」


「え? あ、うん……おやすみ…?」


 マグは隣で横になって眠りにつく。

 もうマグの中で私が寝るのがトラウマ状態になってないか?

 ちょっと心配になったけど、私はすぐに眠りにつくことができた。



-------------------------------------------



「ナツナくん、ナツナくん、無事かね?」


「う……」


 揺さぶられて目を覚ます。まだ辺りは暗い。


「あれ、デュー……もう朝…?」


「いや、夜中の2時だ。用を足したついでに一応確認しておこうと思ってね」


 用…? ああ、トイレか。


「フム、再発はないようだね、無事で何よりだ、おやすみ」


「ン……」


 呪いの再発ってイヤなこと考える男だな…。

 うう、ねむいよう……。

 一度寝返りをうってから、丸まって眠りにつく。



-------------------------------------------



「……っ!?」


 急に呼吸が苦しくなって目が覚めた。まだ辺りは暗い。


 何かフカフカぶよぶよしたものが私の顔の上にあって、息が苦しい。

 何とか根性でそれを横に転がした。


「ぷいぃいい~…」


「………」


 でかいアンタローが寝返りを打って今度はユウの方に転がっていく。

 しかしユウは起きるどころか、スーパー寝相で応戦を始めた。


 付き合ってられないので寝た。



-------------------------------------------



「ツナ、おーい、ツナ、起きれるか?」


「ふあ……」


 揺さぶられて目を覚ます。辺りは若干明るい。


「え……なんじ?」


「ああよかった、6時だよ、そんじゃジョギング行ってくらあ!」


 ユウは勝手にすっきりした顔をして、さっさと部屋を出て行った。




 …………。


 安眠させて!!!!!!?




<つづく>



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