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夢小説が、殺しにくる!?  作者: ササユリ ナツナ
第一章 小学生編
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工芸祭り

「じゃあ明日出立ってことで、今日はこのメッシドールで過ごす最後の日ってことだな、ツナ、最後に見ていきたいところとかあるか?」


 朝ご飯を終えて、私の筋肉痛のチェックが終わり、旅立ちの日が決まった。


「買い出しも済ませてる……もう丸一日……自由に使っていいからな……よっぽどのことがない限り……反対もしない」


 昨日まで私はぐったりと宿で過ごしていたので、マグも気を使ってくれている。


 う、うれしい、のんびり観光したかった! 


 悩むまでもなく、私の答えはきまっていた。


「うみのほう、みにいきたい!」



-------------------------------------------



「晴れたなーー」


 ユウが眩しげに空に手をかざしながら呟いた。

 私たちは、三人でぽとぽとと砂浜に足跡を落としていく。

 私は相変わらず、アンタローを持つ係だ。


 夜の海は水が苦そうで苦手だが、昼間の海は何度も来たくなるくらい好きだ。

 足元にある桜貝を拾い上げる。

 キレイな形をしているかと思ったが、砂から出してみると、はしっこのほうが欠けていた。

 ハズレだったので、アンタローの口の中に入れてやる。


「ぷいいぃぃいっ! 表はざらざら、裏はつるつる。 これ、好きです。気に入りましたっ!」


 アンタローは嬉しそうに、ぽりぽりと桜貝を食べた。


 そして私はさりげなく、船着き場の方に目をやる。

 もう船は停泊していない。

 フィカスは出航してしまったようだ。


「ツナ、アイツが気になるのか……?」


 マグがいち早く私の行動に気づいた。


「ン……おわかれの、あいさつ、できなかったから」


「いいんだよそんなのやらなくったって! 近づいたらまたエッチスケッチワンタッチされるぞ!」


 また出たよ小学生ワードが!


 ユウがこれ以上ヘソを曲げても困るので、私は散歩コースを、職人通りの方へと変えてもらった。


「なんだ……? 前に来た時より……賑やかだが」


 買い出し担当のマグが、首をかしげて通りの方を見る。

 釣られて見てみると、のぼりや出店がたくさん出ていて、その合間をたくさんの人が縫うように移動している。

 まだ職人通りにたどり着いていないのに、ワイワイ音がこっちまで届いてきた。


「おまつり? かな?」


「いや、確かメッシドールの祭りは6月の海神祭で、にぎわうのは港の方だって聞いたぜ、俺は。へーい、おっちゃん、これ何の祭りだ?」


 ユウが持ち前の行動力で、通りすがりのおじさんをつかまえた。


「ん? ああ、旅の冒険者さんか何かかい? あれは地元民の間じゃ有名な、工芸祭りさあ。 三日間だけ開催される小さなお祭りなんだが、子供も楽しめる催しもあるから、せっかくだし参加していきな!」


「地元民以外も参加していいのか?」


「そりゃもちろん! 町内の人たちには、前もって10枚綴りの回数チケットが配られて、無料で遊べたり割引があったりするだけの違いさあ。兄さんたちもたくさん遊んで金を落としていってくんな!」


 なるほどなるほど、町内会のお祭りみたいなものなのかー。

 にこやかに答えてくれたおじさんに、ありがとうとお礼を言うと、おじさんは「いい思い出を作っていきな!」と言って、私に回数券を1枚だけ分けてくれた。


 えーーー、いい人…!


「すまない、助かる……。よかったな、ツナ……はぐれないようにな」


「うん!」


 私はキャスケット帽がずり落ちないように、しっかりと被りなおし、はぐれないようにマグのマフラーの端を握りしめた。


 工芸祭りに一歩入って、先ほどのおじさんと同じ顔がたくさん居ることに潮が引きかけたが、それでも物珍しさに感嘆の声を上げた。


「うわあーー…!!」


 石畳の上に直接茣蓙を引いて、手作りのガラス工芸アクセサリを並べている人もいれば、木彫り細工の職人が目の前で実演販売をしていたりする。

 飴細工の屋台があるかと思えば、陶芸の花瓶に花屋さんが色とりどりの花を活けていく、コラボレーション展示などもあった。


 その中でも、ひときわ私の目を引いたのは、祭りの一角に用意された子供ゲームコーナーだ。

 子供たちがワイワイ集まってはしゃぐのを、後ろからのぞきこむと、なんと!

 ゲームで得たポイントの合計によって、好きな賞品が選べるという説明と共に、賞品がずらっと展示されていた。


 あ、あれは!!


 ウルトラスーパーヨーヨーや、ヒーロー変身ベルト、ベレッタM92Fのエアガンにカードゲームのキラカードなど、小学生当時に私が欲しかったものが整然と展示されていた。


 えーー、すごいすごい、ベーゴマブレードや、おはじきを発射するオハジキマンとかもあるよ!

 あれも欲しかったんだよね、西のスナイパーの片手撃ちのヤツ。男子は締め撃ち派が多かったけど、私は断然片手撃ち派。

 でも全部旅の邪魔になるし、見るだけにしないと…。


 うずうずしながら心に言い聞かせていたその時、私の視線はある一点で釘付けになった。


「! ユウ、マグ、わたし、しばらくここで、あそんでく!」


 勢いよく振り向くと、ユウは「お?」という顔をして、微笑ましそうに笑った。


「もちろんいいぜ! 楽しそうだよな、代金を子供の二倍払えば大人も参加できるみたいだし、俺もなんかやろうかな~」


「ユウ、ツナのことを……ちゃんと見ておいてやってくれ……オレは用事ができた」


「ええ?」


 言うや否や、マグはふらりと人ごみの中に入っていった。


「…まあ、あいつがマイペースなのは今に始まったこっちゃねーが。まーいっか、よっしゃツナ、何から攻略するんだ? まずは一通り見て戦略立てようぜ!」


「うん!」



-------------------------------------------



 まず最初に見に行ったのは、池でやる釣り大会。

 わざわざフナとかを放してある、キャッチ&リリースが原則の仕様だが、なんでもいいから釣りあげたらポイントが入るという、子供に優しい内容だ。


 釣りは、普通の人間よりも弱い設定の私の腕力じゃ無理だろうなあ…と思っていたら、ぬいぐるみのフリをしていたアンタローが、ひそひそと小声で話しかけてきた。


「ツナさんツナさん、あのですね」


「うん?」


「ボクがこっそり池に入って、ツナさんの竿に食いついてあげます!(キリッ)」


「……えっと、セコわざは、ダメだよ」


「ダメですか(しゅーん)」



 次に見に行ったのは、風船割り大会だ。

 子供が回数を指定して、大人が風船に空気を入れていってくれる。

 自分の順番の時に風船が割れたら脱落というシステムだ。


「ツナさんツナさんっ」


 またアンタローがこそっと話しかけてきた。


「ボクの得意技はですね、今から吹き矢です!(キリッ)」


「……ずるっこは、ダメだよ」


「ダメですか(しゅーん)」



 次に見に行ったのは、テーブルゲームやボードゲームのコーナーだ。

 トランプやウノなど、大勢でできるゲームが多い。


「ツナさんツナさんっ」


「………」


「いいですか? ボクを対戦相手の後ろに置いてください。ボクが合図を送って相手の手札を伝えますから!(キリッ)」


 精霊は悪しき心を持った人間には決して頭を垂れませんみたいな話はどこ行ったんだよ!!!

 コイツ自身がヨコシマの塊じゃねーか!!!!


 やっぱりあの魔女が言ってたことは聞き間違いか何かだったんだろうな。


「ユウ、アンタロー、もってて?」


「ぷぃいいい?????」


「おー、まかせろ! がんばれよツナ、応援してっからな!」


「うんっ」


 ユウにアンタローを押し付けると、私は手遊びコーナーやテーブルゲームコーナーに狙いを定めて、いざ出陣とばかりに子供の群れに飛び込んでいった。



-------------------------------------------



「僕のターン、ドロー! 3エネを消費して、僕はレガシーソード・ジョンを召還! このカードは召喚時に行動できない代わりに、直接アタックフィールドに召喚することができる! カードを一枚伏せ、ターン終了!」


「おおっと、サトゥル選手の場にリメンバーソード・ジョンとレガシーソード・ジョンのLRコンビが揃った! しかし残り体力ギリギリ! このチェインコンボで乗り切ることができるのかーっ!(司会のお兄さんの実況)」


「わたしのターン! フィールドにレガシーソード・ジョンがいるばあい、エネルギーしょうひナシでキャプテン・シヲマネキスをアタックフィールドにしょうかんできる!」


「なっ、そんなニッチなカードを切り札に…!?」


「さらに5エネをつかい、キャプテンのスキルでプレイヤーに、ちょくせつダメージ! くらえ、しをよぶシヲマネキス!」


「うああーーー! くっ、負けた…!」


 対戦相手のサトゥルくんは、がくりと項垂れた。

 私は大会用貸し出しデッキを運営へと返す。


 はーっはっはっは!

 やっぱりね!

 アンタローにはああ言ったものの、私はほとんどずるっこみたいなことをして勝っている。


 なぜなら、リアルでこの場面を書いたところだけめちゃくちゃ覚えているからだ。

 クラスメイトのサトル君は、カードゲームがとても強くて、基本的に読み合いが下手な私は一度も勝てたことがない。

 だから小説の中だけでも勝とうと思って、それはもうドローカードから戦略まで細々と、せっせせっせと書き連ねていたというわけだ。


 対戦相手の顔立ちがサトルくんにそっくりだったときに、すべてがわかった。

 『あ、これは参加したら勝てるヤツだ』と。

 でもサトゥルくんて。

 我が子を食らうサトゥルヌスの存在を知っていると、ちょっと連想してしまって面白い名前に感じてしまう。


 はーーー、勝った。

 なんて……………虚しいんだろう…………。


 私、自分ではそこそこ明るい性格と思っていたんだけど、実はそうでもなかったのかな。

 誰にも見られてないからいいけど、結構これ薄暗いことしてないか?


「はいお嬢ちゃんおめでとう! 優勝の100ポイントだよ!」


「わーー、ありがとう!」


 100と書かれた木札を、うきうきと手にする。

 ウインクキラーや一休さんなど、いろいろなゲームをやってみたが、その辺は全然勝てずに30ポイントや10ポイントの木札ばかりが溜まっていたので、かなり嬉しい。


 フィカスに貰った500エーンも、マグがお財布に入れておいたくれたお金も全部使い果たしてしまい、ユウのところに合流して、合計で何ポイントになったのかの計算を一緒にする。


「お、ちょうど400ポイントかー、やったなツナ、こんなことならもっと早くから来て遊べばよかったなって思ってたが、結構溜まったじゃんか!」


「え……」


 私はショックを受けて黙り込んでしまった。

 あれを片方ずつ渡すとしても、あと100ポイント足りない。

 当たり前だ、本当なら三日間をかけて楽しむお祭りなんだから、1日やそこらで溜まるポイントが振るわないのは至極当然と言える。

 ユウにお金を借りようかと思ったが、空を見上げると、もう夕暮れが近い。

 子供ゲームコーナーは、そろそろ片づけようかなという雰囲気が漂いはじめている。


「ツナ」


 泣いてしまいそうなのを我慢していた時、マグが帰ってきた。


「おーマグ、どこ行ってたんだよ、ツナ大活躍だったんだぜ!」


 話しかけるユウをそっちのけにして、マグは真っすぐに私のところへ来て、私の手にバラバラと何かを落としてきた。


「…?」


 見ると、私の両手いっぱいに、100ポイントの木札が積まれていた。


「えっ、え??」


 びっくりしてマグを見上げると、彼は景品交換所を指さす。


「早く交換しろ……店が閉まる」


「! う、うん!」


 私が急いで景品交換所に走っていくと、ユウが不満たらたらになっている声が聞こえた。


「ずっりー、自分だけ遊んでやんの! 俺だって遊びたかったのに!」


「オレのは遊びじゃない……本気だ」


「ええ? どう違うんだよ」


「ユウは全力で楽しんで遊ぶから……負けた子供は悔しがり……お前をズルいと責めるだろう……お前が責められるのは……オレも面白くない」


「はあ? マグの場合はどうなるってんだ?」


「オレは鬼気迫ったガチ勢だ……という雰囲気だから……子供も文句を言えずに……静かに泣いただけだ……オレはその涙を金で拭く……そういった政治もできる」


「うわ、マジで本気だなお前…」


「射的や宝探し……大人との腕相撲……ツナに出来無さそうなものは……すべてやった」


「た、ただいま…」


 マグの過保護が加速している気がする……そんな恐ろしい気配を感じながら戻ってくる。


「ツナ、どうだった……欲しいもの……あったんだろう……手に入ったか?」


「うん! はい、これ! ちょうど1000ポイントだったから、ふたりぶん、もらえたよ!」


 そういって、私は二人へ、大人用の黒い本革のグローブを差し出した。


 そうこれはなんと、指を出す穴が開いているヤツ!

 ずーっと欲しかったんだよ、こういうの、かっこいいよね!

 でもどこに売っているかわからないし、私の普段の行動範囲ってスーパーとか百貨店だったから、全然見つからなかったんだよ!

 はーー、夢を果たせた、スッキリ。


「ツナ…」

「………」


 二人とも驚いたように、レザーグローブをじっと見ている。


 …はっ、しまった、私の趣味を押し付けてしまった!?

 これはひょっとして、「はい誕生日プレゼント!(広辞苑を渡す)」みたいな、趣味の合わないプレゼントをもらって困るシチュエーションだった!?

 どうしようひたすら欲しさだけで動いて全然何も考えてなかった、でもこれ大人用のグローブだから私がつけられないし!!


「あ、あの、ぼうけんに、ての、ほご、ひつようかなって、あとあと、かわしょくにんの、ひとの、じしんさくだって、さっき、いわれたよ…!」


 必死にグローブの機能をアピールする。

 どうしよう、冷静に考えたら、普通に買った方が安くついたとか、あるよね!?

 心の中であわあわしていると、ユウが私の頭を、帽子ごとぐしゃぐしゃと撫でまわした。


「ありがとなツナ、確かになんでやたら手の皮が剥けるんだ?とか思ってたんだよ! そうか、グローブが必要だったんだな、冒険者には!」


「バカだなツナ……自分の欲しいものに……使えばよかったのに」


「ぷぃいいいい???」


「えっ、じぶんの、ほしいものだったよ! よろこんでくれたら、うれしいな!」


「何言ってんだよ、そりゃ嬉しいに決まってるだろ!」


「大事に使う……」


「ぷぃいいいい??????」


 ごめんアンタロー!! ホントごめん、アンタローの分は考えてなかった!!


「ほら、アンタロー…」


 グローブの梱包材を、アンタローの口の中に入れてやる。


「ぷいぷいっ! カサカサと音を立てる所が好きですっ! 気に入りました!(もぐもぐ)」


 よかった、機嫌が直ったみたい。 


 こうしてメッシドールでの最後の一日は終わった。


 あのおじさんが言ってた通り、いい思い出、できたなーー。


 私はスキップで宿へ向かう。

 ずっとこんな感じだったら、この世界も住みよいのにな。




<つづく>



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