アンタローの話
ボクは粒漏れ餡太郎と言いますっ。
愛くるしいのがお仕事です!
普段はツナさんのお世話してあげています。
ユウさんとは、遊んであげています。
マグさんとは、一緒に居てあげています。
フィカスさんは、操縦してあげています。
後輩のルグレイさんの面倒を見てあげています。
ハイドさんは、前に敵対していた人と似てるけど、たぶん気のせいですね。
ボクはこの世に発生した時に、なにか、大事な役割を持っているような気がしていました。
それはまだまだわからないのですが、でも、その後にサヨナラが待っていることは、なんとなくわかっていました。
ツナさんたちと色々な景色を見て回るのは、とても楽しいです!
でも、楽しいがたくさん降り積もると、悲しくなります。
お別れしたくなくなるからです。
うれしい気持ちがたくさんあると、悪いことになってしまうのでしょうか。
むずかしいです。
ツナさんは、ボクのことが大好きです。
だから、お別れになると、ツナさんは泣いてしまうと思います。
それはイヤだなって思います。
イヤだなって思っているうちに、美味しいご飯が目の前に来ます。
イヤなことは、すぐに消えてなくなるので、長続きしない感情なんだなって思いました。
だから、本当に少しずつ、旅の間に、ちょこちょこと、どうすればいいかを考えます。
考えているうちに、眠くなって、寝てしまいます。
ボクの毎日は、それがすべてです。
今日も楽しい一日が終わってしまいます。
それは、お別れが近づいてくるということです。
イヤだなって思います。
だから、いいことにしてしまおうと、やっと結論が出ました。
その時が来たら、ボクは笑顔で居ます。
ツナさんに、大好きって伝えます。
お別れを、大好きっていうための、きっかけにします。
それまでは、伝えるのを我慢します。
そうしたら、少しだけ、いいことに思えるでしょうか?
未来のことを考えるのは、むずかしいです。
むずかしいですが、いつかはやってきます。
それだけは、どうしようもなく知っています。
悔いが残らないように生きる、という言葉があるのは知っています。
知っていますが、無理だなって思います。
ずっとずっと、ツナさんのお隣で寝ていたいです。
ユウさんと遊びたいです。
マグさんの頭の上に乗りたいです。
フィカスさんにブラッシングされたいです。
ルグレイさんと一緒にお買い物に行きたいです。
ハイドさんには、いつか名前を呼んでもらいたいですねっ。
やりたいことに、際限なんてないって思います。
どれも、諦めがつきません。
ある日、ルグレイさんと一緒にお買い物に行きました。
ルグレイさんは、あるお店を外から覗くと、がっくりと項垂れました。
どうしたんですかと聞きました。
そこは、おじいちゃんおばあちゃんが経営していた、サンドイッチの専門店だったそうです。
ルグレイさんは、「一度入ってみたかったのに、後回しにしているうちに、お店が閉じてしまったようです」、と教えてくれました。
お店の中を見ると、からっぽでした。
そこは、かつておいしそうなパンの匂いや、食材の匂いにあふれていた空間だったのでしょうに。
今は、そのことが嘘みたいに、からっぽでした。
なんだか、ボクのようだと思いました。
ボクも、この世界から居なくなってしまったら、こんな風に跡が残るのだろうと思います。
誰かが、確かに、どこかに居た、跡。
今はそれを、さみしいことだと感じてしまいます。
ですが、ツナさんの中に、ぼくの跡が残るのなら。
ほんの少しだけ、それを嬉しいと思ってみても、いいでしょうか?
からっぽの跡が残ってしまうツナさんは、それを悲しむかもしれないのに。
ボクは、思ったよりも、ワルなのかもしれません。
でもきっと、ツナさんは、ワルなボクでも許してくれる気がします。
それはとても、幸せなことです。
幸せ過ぎて、悲しくなります。
生きるということは、とてもむずかしいことですね。
ぷいぷいっ。




