表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢小説が、殺しにくる!?  作者: ササユリ ナツナ
外伝 どのページにもない話
152/159

ユウの話



 ツナは怖い。


 たぶん、うっかり足が当たって、蹴るような形になったとしても、ツナは大怪我をする。

 ツナがまだ小さいときに、そう気づいた時の怖さといったらなかった。

 俺はガサツな方だと思う。

 だけど、それに気づいて以来、気をつけて生活するようになった。


 俺は、すぐに頭がカーっとなって、怒ってしまうタイプだ。

 ツナ自身に対して、声を荒げたことはない。

 だけど、ツナは肩を跳ね上げて、この世の終わりが来たかのような表情で怯える。

 自分は、あまり物事を深刻にとらえない方だと思う。

 だけど、ツナに関しては…。

 本当は、俺が傍に居ない方がいいんじゃないかと、思い悩むときがある。

 でも、どうしても、離れられない。




 また、あの夢を見た。

 自分が別の誰かの人生をなぞる夢。

 この夢を見るときは、自分がユーレタイドだと認識できなくなる。

 何年もかけて、呪いが、俺から俺を奪っていくように感じる。

 本当に歪んだ呪いだ。


 ガバリと跳ね起きる。

 朝だ。

 汗をびっしょりとかいていた。

 さっきまで、あんなに鮮明な夢を見ていたと思っていたのに、今はもう、ぐにゃぐにゃとした何かを見ていた、という認識しか持てない。

 自分は…なんだったっけ。


 ふと周囲を見渡すと、周りでは誰かが寝ている。

 マグと…ツナだ。

 それから、アンタロー。

 それを認識した瞬間に、自分はユーレタイドだと思い出す。

 この寝顔に、何回救われてきただろう。




 ルケーチは、平和な村だった。

 小さい村でもあるので、盗みなんて絶対に起こらない。

 すぐに足がつくからだ。


 だけど、俺の母親は、出かける時に家に鍵をかける。


「犯罪っていうのは、させないことが大事なんだよ。お前だって、テーブルの上に『食べちゃダメ』と書かれたメモとジャーキーが乗っていたら、つまみ食いをしたくなる誘惑にかられるだろう? そんな風に、鍵がかかっていない家、なんてものがあったら、誘惑されてしまう人が出てしまうからね。防犯というものは、相手のためにもなるんだよ」


 そう言って、何度も鍵がかかっているかの確認をしてから出て行く。



「あれって変だよなー、なんで3回も4回も確認するんだろうな? 1回で事足りるのに」


 一度、マグに、世間話のようにそう言ったことがある。


「それは、確認行為……というものだ。ひどいものになると……強迫性障害……という症状で呼ばれることがある。強迫観念を覚えるんだそうだ……」


「へええ…」


 マグは、いつもどこでそういう言葉を覚えてくるんだろう、っていうくらい、色々なことを知っていて、面白い。

 聞いたらすぐ答えてくれるから、歩く辞書みたいなやつだと思っている。


「けどそれって、ビクついてるってことだよな、ダッセーの!」


 ガキの頃の俺は、そう言ってそれを笑い飛ばした。




 左手で、ペタペタと顔を触る。

 自分は、ユーレタイドだ。

 これは……。

 これは、確認行為、じゃないのだろうか?

 毎日毎日、失われていない自分を確認する。

 ツナとマグを通して、自分が自分であることに安心する。




 ツナが3年間の眠りについたとき、マグを見ているのが辛かった。

 日に日に衰弱していくのが心配だった…というのは、半分の理由だ。

 もう半分は、マグの必死さが辛かった。

 俺はひょっとして、薄情なんじゃないか…と思ったからだ。


 起こってしまったことは仕方がない。

 ツナが目を覚ました時に、万全の状態になるための行動をするだけだ、と、俺は割り切れていた。

 俺には、悲しい、がわからないから、こんな風に思うのだろうか?

 そう思うと、マグを優しく注意することなんてできなかった。

 ほとんどケンカになりかけたくらいの乱暴さで、マグにきちんと休養を取るようにと言っていた。


 俺は、まだまだガキだった。

 たぶん、マグがいつも通りだったら、そもそも俺を怒らせるような真似を、マグはやらないのに。

 それも、自分のためじゃなく、俺のために。

 やっぱりツナの傍にいるのは、マグがいい。

 何度もそう思うのだが、離れられない。




 ツナは怖い。

 脆すぎて怖い。

 だけど、本当に脆いのは、どちらなんだろうか。


 それに気づいたとき、自嘲気味に笑った。


 ツナから離れられないのは、呪いのせいなんだろうか。

 じゃあ、もし、呪いが解けて、それでもツナから離れられないと思っていたら?


 …その時は、何かがわかる気がする。

 ただの、勘だけど。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ