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夢小説が、殺しにくる!?  作者: ササユリ ナツナ
第三章 高校生編
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モンスター・テラリウム(1)



「ここが“モンスター・テラリウム”か……」


 私たちは、ティライト共に、船から無人島に降りる。

 ティライトは、ニヴォゼからの船旅も、「これが地上か」「これが海か」と物珍し気にきょろきょろとしていて、前に私を第2地区に案内した時とは、立場が逆転していた。

 ティライトは、地上に対する嫌悪感もないようで、ジューンのように空気が汚いとかは言わなかった。

 そして、今日はいつものような薄着ではなく、ちゃんとした冒険衣装を着ている。

 マントとかがあって、カッコイイ!

 わかるよ、マントって、かっこいいよね!


「じゃあ、船にバリアをかけるね!」


 私は停泊している魔道クルーザーに創造魔法を使いながら、どうしてこうなったのか、改めて思いを馳せた。



-------------------------------------------



「それなら、いい場所を知っているぜ?」


 不敵に笑うハイドに、私は思わず聞いた。


「どういうこと? まだ魔物が居る場所があるの?」


「そういうこと。魔石って、便利だろ? 人間の間でも高値で取引されているし、だから効率よくそれを作る場所を、かつて魔族の一人が考案したんだ」


 ハイドの言葉に、フィカスが驚いたような声をあげた。


「作るとは…? 魔石は確か、長い年月を生きた魔物の中に生成されるものだろう?」


「なんだ、よく知っているな、ゴーグル。つまり、魔物が生きやすい状態を維持すればいいんだよ。それと、人間の間ではあまり知られてはいないだろうけれど、他の魔物を捕食した際に、その中にある魔石は融合される。食物連鎖を作ってやれば、効率よく魔石が生み出せるってワケ」


「なんという…。“魔族”とは、途方もない発想を、いとも簡単に行うのだな」


 ティライトが、感動したように言った。


「ふふん、お前たち人間が、愚鈍なだけさ。その島は、世界の端近くにあるから、船だって迂闊に近寄らない。利口な船乗り程、世界の端から落ちることを嫌うからな。そこは魔族の間では、『モンスター・テラリウム』という名前で通っている。ぼくは何百年か前に一度行ったきりだけれど、よほどのことが無い限り、まだ存在している可能性が高いぜ」


「それは、王…ではなかった、商人としては、放っておけない情報だな。魔石の宝庫のようじゃないか」


 フィカスが乗り気の姿勢を見せると、ユウも頷いた。


「それって、そこでなら、思いっきり暴れられるってことだろ? ありだな、あり!」


 もはやティライトとの話し合いなどは形だけなので、みんなもう、かしこまった態度をとることなど、頭から抜け落ちていた。

 マグとルグレイは、渋い顔をしている。


「そんな危険な場所に・ツナを近づけさせる気か……?」


「そうです! 姫様には刺激が強すぎます!」


「確かに、戦力にならないわたしが行っても、足を引っ張るだけかもしれないよね…」


 私が唸り声をあげても、ティライトは涼しい顔だ。


「俺たちで姫さんを守ればいいだろう。俺も男だ、戦っている勇姿を見せたい気持ちが大きい」


 前に屋敷の防衛戦の時、ルグレイも似たようなことを言ってたなあ。

 男の人って、本能的にそういうところがあるのかな?


 ルグレイは、ティライトの気持ちがわかるのか、反論できないでいる。


「…けど、それで父さまの治世に戻った時に、スムーズに事を進めることができるのなら…。あんまり役には立てないと思うけど、一緒に行くくらいならできるよ!」


 私がそう言っても、マグはまだ渋い顔だ。

 ユウも、なぜか微妙な態度をとっている。


「けど、ティライトの戦闘スタイルって、魔物向きじゃねーんだよなあ……」


「まあまあ、いいじゃないか、ユウ。俺たちでフォローをすればいい。ティライトにはナっちゃんの前で好きなだけ奮闘して貰おう。俺も微力ながら手助けをしよう」


 フィカスがユウを宥めた。

 ハイドは、「お前、面白がっているだろ…」と、前と同じようなことを言っている。


「条件をクリアするためには・仕方がない……か。全員・ツナに戦わせる気はないようだしな。ただし、不味いと思ったら・必ず逃げることだ。これが、オレからの条件だ」


 マグは、眉間にしわを寄せながら、しぶしぶと許諾する。

 ティライトは、嬉しそうに頷いた。


「決まりだな。お前たちも、もはや俺に敬意を払う必要はないぞ。地上では、お前たちの方が“先達”なのだからな」


「ぷぃいいっ、ではティライトさんも、ボクの舎弟ですね!」


 いきなりアンタローが喋り出して、ティライトはぎょっとした。


「……驚いた、喋るのか、その“精霊”は」


「あ…うん。今までずっと喋るのを我慢してくれてたんだよ、ねー、アンタロー」


「はいっ、ボクは粒漏れ餡太郎と言いますっ、ツナさんがつけてくれた名前です!」


「そうか…。そのツナという者は、変わったセンスの持ち主だな」


 ティライトは、ユウたちがツナとかナっちゃんとか散々言っているのに、私のことだとは思っていないらしい。

 本当にマイペースな人だな。


「あ…ティライト、わたしね、地上では、ナツナって名乗ってて…」


 なんとなく、恥ずかしげに自己紹介をした。

 ティライトは、目を丸くする。


「…そうか。地上では、姫さんを王族のように扱わなくていいということか。俺も、公式の場以外では、“ナツナ”と呼ばせてもらおう。流石にこれならば、間違えて口に出す可能性もないだろう」


 なんだか、ティライトは上機嫌だ。

 名前を気に入ってくれたのだろうか?


「ま、ぼくが居れば、ピンチに陥ることもないだろうからな。お前たち、安心しろよ、いざって時は守ってやるからさ」


 そのハイドの頼もしい一言で、私たちの久々の冒険地が決定したのだった。

 冒険地っていうか、戦闘地だけど…。



-------------------------------------------



「…よし、これで大丈夫だと思う。ただ、無差別に誰も入れないようにしたから、解く前に突っ込まないように気を付けてね?」


 本当なら魔物だけ入れない聖なるバリア的なものを張れたらよかったのだが、そんなことをして、万が一魔族のハイドだけ入れない、みたいなことになったらすごく嫌だったので、完全に誰も近寄れない仕様にした。

 ハイドはそれでいいって言いそうだったが、私自身が、拒絶されるハイドを見たくなかった。

 みんな、私のそういう気持ちをわかっているようで、好意的に頷いてくれた。


「その方がわかりやすくていいよな!」


 ユウは、いつものように、からっと笑う。


「じゃあ、ここからどうす…わっ!?」


 島の内陸の方に目を向けると、ぴょいーんと、半透明の、大人の拳くらいのサイズの生き物が跳ねて行っているのが見えた。


「早速魔物ですか…!!」


 ルグレイが私の前に立ちはだかって、剣を抜こうと構えた。

 が、その生き物は、襲ってくる気配がない。

 ハイドはふんわりと浮き上がって、空中に腰かけるような姿勢で説明をしてくれた。


「あれは、プランクドンって名前らしいぜ。まあ、名前なんてどうでもいいんだけれどね。死骸を食べて…というか、体内で分解して生きているヤツラさ。ぼくらはまだ生きているから、こっちには無関心ってわけ。島のあちこちに居るぜ」


「うわあ、食物連鎖がしっかりしてるねえ…!!」


 私は思わず感想を述べた。


「ということは……この島はまだ・テラリウムの役割を果たしている・ということだな。最大限に警戒をしておいた方が・よさそうだ。ツナを中心に囲むか……」


 マグは、陣形を考えている。


「それなら、そこのティライトってヤツを先頭に、赤毛とゴーグルと騎士で一塊にする方がいいぜ。少し先を豪快に突き進んでもらったら、そっちに魔物は群がるだろうからな。固まるよりも、2チームに分けた方がいい。ナっちゃんチームの方は、ぼくが気配を目立たせなくする魔法をかけてやるよ」


「ハイド、すごい、頼りになる…!!」


 私はアンタローを抱きしめる腕に力を込めながらハイドを見上げる。

 ハイドは、「当然だろ」と、ふふんと笑った。


「……そう…ですね。仮にもティライトは5代表ですからね、怪我をさせるわけにはいきませんよね…」


 ルグレイはものすごく不服そうに、私から離れてティライトの方へと行く。


「うわあ、絶対負けなしの布陣だね!」


 ティライト組の四人を、ドキドキしながら見た。

 しかし、ユウとフィカスは、若干緊張しているようだ。

 なんでだろう、二人ともあんなに強いのに。

 ひょっとして、ティライトの戦い方が魔物向きじゃないって言ってたのと、関係あるのかな?


 ハイドはさっさと、私とマグとハイドとアンタローチームの方に、気配を消す魔法をかけた。

 「大きな音を立てたら、居場所はバレるから気をつけろよな」と添えて。

 既にこちらを認識しているフィカスたちには認識阻害は働かないようで、こちらの様子を見た後、ティライトは先陣を切るように歩き出した。


 砂浜から、草原の方へ。


「わっ!?」


 私は、小声で驚いてしまった。


 だって、草原が、動いている。

 ただしく言うと、普通の草原の中に、動く草原がまぎれているというか。


「あれは、ウォーキングウィードだな。草系の魔物で、日光を摂取して生きているから、やっぱりこっちを襲ってはこない、安全な奴だぜ」


「へええ、比較的安全な魔物も居るんだねえ…」


 ドキドキしながら、ウォーキングウィードの隣を通りすぎる。

 よく見ると、草の根っこの方に、つぶらな瞳があって、根っこが足のようにうねうねと動いて移動している。


「ということは・草食の魔物が居る……ということか」


 マグは、生態系に興味津々のようだ。


 足の遅い私と違って、ティライトはガンガン前に進んでいっている。


「ティライト、よっぽど戦いたいんだね…。男の人って、ホントに戦うのが好きなんだね?」


 私が言うと、マグはちょっと困ったような顔をする。


「……まあ、時と場合によるだろう。いいところを見せたい相手がいる・とかな」


「そうなの? マグにも、そういう気持ちがあったりするの?」


「………、………ヒミツ」


 マグは、マフラーを巻きなおした。

 最近は冒険装束をあまり着ていなかったので、そういう仕草を見るのは久しぶりな気がする。


「でも、それって、人に見せられるような、自分のいいところを知ってるってことだよね。そういうの、ちょっといいなあ…」


「あはっ、ナっちゃんは確かに、いいところよりもトロいところの方が目立つからなァ。この間のアレだって、わざわざ自分から魔法王のところに顔を見せに行ったクセに、ガチガチに緊張して何も喋れなかったし? まったく、仲直りをしたと思ったらアレなんだから、もはや不器用ってレベルじゃないよね?」


 ハイドがからかうように、痛い所をついてくる。

 うぐぐ、そうなんだよね。

 あのBPO事件以来、なんでか急に、クランとスムーズに喋れなくなったというか…。

 意識しすぎてダメになるなんてこと、あるんだなあ…。


 私が反論をしようとすると、ハイドが鋭く制した。


「シッ。来たぜ」


 宙に浮いて、視線が高いハイドが、何かを見つけたようだ。


 ハイドの見ている方向を見ると、二足歩行の豚みたいな魔物が、遠くからティライトたちの方へ、10匹ほどの徒党を組んでやってくるのが見えた。


「あれは、確か…。三元オークか、イベリコオークか、ブラックオークのどれかだな。オーク系が何種類か居た気がするんだけれど…あれを見る限り、一種族に統合されちゃったのかな。まあ、生態系ってそういうものだよね」


「へ、へえ、美味しそうな名前だね…」


 ハイドの説明に、やっぱりこういうネーミング設定を考えたのは私なんだなあ、と改めて思った。


 オークたちは、原始的な棍棒を手に持っていて、ティライトたちの方を一匹が示すと、全員でドタドタと突進を始めた。

 どうやら、ティライトたちを、別のオークの勢力か何かだと思っているのだろう。


 マグが、念のためとでも言いたげに、庇うように私の前にスっと出て、油断なく、目の前で繰り広げられようとしている戦闘を見据える。


「ツナ……動くなよ。声も潜めろ。アンタローもだ」


「う、うん…!」

「ぷいっ」


 私とアンタローは、小さく返事をした。

 ドキドキしながら、ティライトたちの背を見つめる。


 ティライトは、「俺がやる」と言いながら、一歩前に出る。

 そして、迫りくるオークたちの前で、低く身構えた。

 刀を鞘に納めたままの、居合の構えだ。


 なんでたまに和風な要素が出てくるんだろう、このファンタジー。


「お見せしよう、我が姫に捧ぐ、トッカータ―――」


 一瞬で和風が消えた……。


   シャランッ―――!


 私には、ティライトが、優雅に一歩を踏み出したようにしか見えなかった。

 そして、気が付けば彼は、目の前のオークに背を向けている。


 いつの間にか抜刀していた刀を、カチンと鞘に納める。

 それと同時に、先頭にいた一匹のオークが、血飛沫と断末魔を同時に上げて倒れた。


「腰間秋水、“波千鳥”―――。我が刃に、斬れぬものなし」


 ええええええええええ!!!?


 ティライトは一匹倒したら満足していて、他のオークたちは、向けられた無防備な背に、意気揚々と襲い掛かっている。


「はあああああっ!!」


 ユウとフィカスとルグレイが、そうなることをわかりきっていたかのように、ティライトを守るために、入れ違いで躍り出た。

 ユウは大剣を、フィカスは鎖鞭を、ルグレイは双剣をふるって、それぞれティライトを狙っていたオークを、横合いから一匹ずつ倒していく。

 ティライトがうまい具合に囮になっていたようで、オークたちは思わぬところからの斬撃を、かわすことができなかったようだ。


「ティライト、まだそのように隙の大きな戦い方をしているのか!」


 ルグレイが、叱りつけるようにティライトを注意する。


「フン、ルグレイ、お前にはわからんさ。“ロマン”を求めてこそ、男―――」


 ティライトは、謎の風格を醸し出しながら、ゆっくりと、オークたちの方を振り向いた。

 バサリとマントが風をはらむ。

 フィカスがいち早くそれを察して、ティライトに場を譲るように下がる。


 ティライトは、今度はすらりと刀を抜き放ち、残ったオークたちの隙間を、ゆらりとくぐりぬけるような動きをした。


「三の白蛇」


 そう言いながら、ティライトは、ほとんど無作為というような刀さばきで、手近なオークに裂傷を刻んだ。


「四の蝙蝠、五の青鰐、六の紫蝶、七の黒猿、八の黄鹿―――」


 ティライトが言葉を重ねるたびに、オークたちから小さな悲鳴が上がる。

 そのたびに、小さな傷が増えていく。


「九の火蜥蜴、十の蜂鳥、十一の風、十二の地震、十三の鷲、十四の鸚鵡、十五の遠雷―――」


 言い終わる頃に、ティライトは完全に、オークたちの傍を通りすぎていた。

 そして、オークたちに無数の傷を刻んだティライトは、満足するかのように、カチリと納刀する。


 しかし、見るからに丈夫なオークたちがそんな浅い傷で倒れるはずもなく、多少怯んだような鳴き声を上げた後は、すぐに背を向けているティライトへと、棍棒を掲げて全員で襲い掛かった。

 ティライトは、カッコイイ決めポーズをしていて、ピクリとも動かない。


「やれやれ、余所見をしてくれるのは、助かると言うべきか」


 フィカスはそう呟いて、鎖鞭を振るう。

 それだけで、一匹のオークの首に鎖が巻き付いた。

 ルグレイもユウも、それぞれ、ティライトへ襲い掛かるオークへ、急いでトドメを刺しに行った。


「ツナ、ここからは・刺激が強い……」


 マグが私の目を塞ぐ。

 オークたちの断末魔の声が上がるのが聞こえてからしばらくして、目隠しがはがれた。

 しかし、私の腕の中のアンタローは、衝撃の表情をしながら、プルプルと小刻みに震えながら、もろもろと粒をこぼしている。

 アンタローに目隠しはされなかったんだね…?


 皆の方を見ると、ティライトは、先程と変わらずカッコイイポーズを決めていて、ユウたちはぜーはーと肩で息をしている。

 オークたちは、全滅していた。


 ティライトはそれを満足げに見ると、なぜか私の方へと真っすぐにやってくる。

 そして、私の目の前で、暖かな視線を投げかけてきた。


「ナツナ。どうだった?」


 この男、フリーダムだな!!?

 どうだったって言われても!!!?

 私には、みんなで頑張ってティライトという神輿を担いで乗り切ったようにしか見えなかったんだけど!!?


 いや、ポーズとか、かっこよかったけど、確かに!!

 なんだろう、何がダメなんだろう…!?

 漫画とかで見ると、かっこいいんだろうけど…!!

 ティライト、いい人なのに…!!

 やりたいことをやって、満足したらあとは放置っていうやり方がもう、残念過ぎて…!!

 絶対、トドメを刺しきる実力あるでしょ!?

 だけど、ポーズを決めることを優先したってことだよね…!?

 かっこいいけど、マント…!!


「……っ、……ハラハラ、したかな!」


「そうか…。確かに、女性には刺激が強い光景だったかもしれないな」


 どうやらティライトが期待していた答えとは違うものだったようで、ちょっと残念そうにそう言っている。

 どういう答えが正解だったんだろう、難しすぎるうう…。


 マグもハイドも、正気を疑うような目をティライトに向けている。


「ユウ、フィカス、ルグレイ、大丈夫…?」


 荒い息をつきながらこちらに来る3人を、心配そうに窺う。


「あー、まあ、ある意味、ティライトが敵の注意を引き付けてくれるから、楽っちゃ楽…かな…!?」


 ユウがフォローなのか本音なのか、自分でもよくわかっていないような口調で、そう答えた。


「そうだな。これほど面白い戦闘は初めてだ。ガンガン行こう」


 フィカスはどうやらティライトを気に入っているらしい…?

 しかしルグレイは、「ティライトのヤツ、ユウ様たちの手を煩わせて…」と、不服そうにつぶやいている。


「ま、でも、今のところ危なげがなかったぜ? さて、ここからだ」


 ハイドはそう言うと、オークたちの死体の方に目を向けた。


「すぐにあの死体は、動き出す。それを追って行けば、魔石の山が見つかるはずだ」


「えっ、動くの!?」


 私が青ざめてオークたちの死体に目を向けると、ハイドは「まあ見てなって」と、くすくす笑った。


 全員で、固唾を飲んで死体の山を見守る。


 すると、ピン、ピンピン、と、そこら中から、プランクドンたちが、跳ねるようにして集まってくる。

 マグが、納得したようにうなずいた。


「なるほど……。死骸を食べるにあたり・蟻が巣に運ぶように・アイツラのねぐらに運ばれていく・ということか」


「正解。よくできているだろ?」


 ハイドの表情は、とても自慢げだった。

 なぜか、それがちょっと気になった。

 まるで、身内を褒められた時の私のような表情だったからだ。

 …ひょっとして、このテラリウムを作ったのって、ハイドの親しい人なのかな…?


「動き出しましたね。では、ついていきましょうか。姫様はまた、離れたところに居てくださいね。我々が別の魔物に襲われる可能性もありますので」


 ルグレイはそういうと、慎重についていく。

 プランクドンたちは、オークたちの死体の下に群がって、よいしょよいしょと運んで行っている。


 私は「わかった」と頷いて、またルグレイたちとは距離をあけて、ついていくことになった。




<つづく>



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