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夢小説が、殺しにくる!?  作者: ササユリ ナツナ
第三章 高校生編
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政策会議



 休憩が終わり、後半戦が始まった。


 といっても、お茶をしたのが幸いしたのか、それとも私が合格点を貰ったのが良かったのか、最初の時とは違い、とても朗らかなムードで話し合いが始まった。


 アンタローは、いい子にして喋らずに我慢している。

 その分、ご褒美として、私の分のクッキーをあげて、ひたすら撫で撫でしてやる。

 アンタローは、今のところ上機嫌だ。


「して、姫様、今後の政策についてじゃが、何か案がございますかな?」


 ローガンが、にこやかに聞いてくる。

 実は、さっきまでは思いついてなかったんだけど…。

 でも、いざ、こうしてジェルミナールの人たちを目の前にすると、なんだろう、実物が見られて、具体性が増したというか…。

 もうちょっと話せば、何か思いつきそうな気がしている。


「はい。そのことですが…。その前に、大事な質疑がございます。皆様のご趣味をお聞きしたいのです」


 5代表は、ハテナを浮かべた。

 しかし、いきなりクッキーがどうのとか言い出した私の言動に慣れてきたのか、特につつかれずに、「では吾輩から」と、第1地区代表のロインが、ピンと立った髭を撫で上げながら、話し始めた。


「吾輩の趣味は、収集ですな。瓶の蓋から、ボトルシップのシリーズまで、節操のない収集癖を持っております。飾り用の部屋を一室持っておるのですが、そろそろ満杯になりそうで、そこが悩みですな、ハッハ」


 私は相槌を打つ余裕もないくらい、口元に手を当てて、真剣に頷きながら聞いている。

 次にティライトに目を向けると、彼は躊躇いがちに話し始めた。


「俺の趣味は、“手合わせ”だ。拳闘でも、剣闘でも、なんでもいい。そこのキツリフネには、よく鍛えて貰っている」


 ティライトの言葉を受け、騎士団長のキツリフネは、小さく一礼をした。


「では、次はワタクシですか。ワタクシの趣味は、芸術鑑賞となりマス。絵画や音楽、芸術に関することにはつい夢中になってしまいマス。趣味が高じて、絵描きの真似事などもやっておりマスが、家内にはわかってもらえない趣味ですネ」


 ヴィスエリアは、頭を掻きながら笑う。

 次に、モンアボカドが続いた。


「私は、これといって趣味と言ったものはないのですが…。強いて言えば、散歩ですね。特に、牧歌的な風景を見ると、思わず足を止めてしまいます。朝に聞く鳥の声などは、とても心が安らいで、いいですよ。一体何にこんなに心が疲れているのかは、自分でもわからないのですがね」


 モンアボカドは、冗談めかして笑う。

 最後に、ローガンが口を開いた。


「わしの趣味は、読書…ですかのう。分野は問わず、学問書から料理書まで、とにかく文字を追っていないと落ち着きませんわい。そろそろ目が疲れてくる年なもので、そこは悩みですかな」


「……なるほど。ありがとう存じます」


 私は礼を述べると、ウーンと考え始める。

 そう、私は、貪欲に、何でも利用をしなければならない。

 フィカスたちとの、思い出すらも。


 確か、あの時、ルグレイが…。

 そう、地上の食事がおいしいって言ってた時。

 フィカスは、たしか、こう言った。

 『料理にしても技術にしても、様々な国が交わって参考にし合い、互いに研鑽してきたものが、進化につながる』と。

 一国のみだと、発展に限界がある…と考えると…。

 もう、国内で多様性を持たせちゃえばよくない?


 私は背筋を伸ばし、話し始める。


「まず、前もって皆様にお伝えしなければならないことがあります。わたしは、今がジェルミナールの改革の時ではないかと思っている…ということです。古き良き慣習を守ることも大切でしょうが、わたしはそれをやる気はありません。そこが、お父様の政と、大きく違うところだと思います」


 5代表は、無言で頷いた。


「さて、そこでご相談なのですが。今までは、すべての地区に対して、同じような政策が行われてきたものと存じます。まずは、そこを変えます。皆様のお顔を拝見し、こう思いました。せっかく代表者が個性を持っているのに、それを地区に反映させられないのは、勿体ないのではないか、と」


 特に反論もなく、話を促すような視線を向けられた。


「地区ごとに特色を出してみるのはいかがでしょう? 手始めに、皆様のご趣味を反映させてみましょう。第1地区は、美食と娯楽の都市。第2地区は、健康と闘技の都市。第3地区は、音楽と芸術の都市。第4地区は、花と農業の都市。第5地区は、本と学問の都市」


 「おお」とか「なんと途方もない」とか、場が色めき立った。


「はい…仰る通り、途方もない作業が必要になります。金銭も人も、大きく動くでしょう。従来通りにやっていては、まず人手が足りなくなります。しかし、この国には、誰にも使われていない人手が眠る場所がありますよね?」


「“貧民街”…か」


 ティライトが、にやりと笑った。


「はい。あそこを、経済の輪の中に入れます。聞けば、住む場所は父の政策によって整えられたということですので、あとは、わたしのほうで、食事を用意していくつもりです。皆様には、一週間で、街をどう変えるかの企画書を作っていただき、予算の申請や必要物資の確保などを細かく記して提出していただきたく存じます。わたしのほうは、その一週間のうちに、貧民街を何とか出来るのかどうか、視察に向かってみる予定です。貧民街という名前も変えていきたいですね…。開拓村とかにしましょう」


 考えながら話すので、いきなり決まったりする。


「質問が無いようでしたら、わたしの方からは以上です」


「では一つ」


 ロインが手を上げる。


「アイデアが思いつかず、アドバイザーを必要とした場合は、姫様に直接伺えばよろしいかな?」


「そう…ですね。ですが、おそらくわたしよりも、利用者の心に近い意見ができる方をご紹介します。まず、第1地区は、こちらのルグレイ。彼は、特に美食に対しては一家言あります」


 ルグレイは、いきなり名前を呼ばれて驚きながら、しかし一歩前に出て、頭を下げた。


「次に、第2地区は、こちらの、ユーレタイド。武の研鑽を独自に重ねて来た彼の意見は、とても参考になると思われます。次に、第3地区は、こちらのフィカス。数多くの芸術品を目にし、審美眼を持つ彼でしたら、必ずやご期待に応えられることでしょう。第4地区は、わたしですね。わたしの種族としての力が、疑問を解消することにつながりましょう。第5地区は、こちらのマグシラン。学問を、地区の顔にするにおいて、わたしの参謀としてこれまで尽くしてくれた、その利発さは折り紙付きと言えるでしょう」


 一人ずつ紹介していく。


「物資については、こちらのフィカスが商人ですので、あらゆるものを揃えて提供できるものと存じます」


 ついでにフィカスを紹介すると、フィカスは丁寧に一礼をした。


「ご紹介にあずかりました、フィカスと申します。対価さえ頂ければ、奥様への贈り物から、武器弾薬に至るまで、どのようなものでも、可能な限りご用意いたします。どうぞ、これから御贔屓にしていただければ幸いです。お代のほどは、貴族様への紹介状でも可能でございます」


 うわーー、フィカスが別人みたいだ…!!

 私はちょっと感動してしまった。


「最後に。…国王生誕祭ではなく、建国祭にしていただけると、大変ありがたく存じます」


 私は頭を下げた。

 5代表は、シンと静まりかえる。


「ふむ…。一段落と言ったところだな。では、いったん解散として、ここからは、自由に意見を窺える交流時間としようか」


 クランの一言で、場が弛緩した。

 私は、ふーーと安堵の息を吐いた。


「ラズに聞きたいことがあれば、いつものように余に謁見を申し込むと良い。ラズに一から業務を教え込むよりも、余が中継ぎをする方がよほど早いからな。通常業務の方も、余の方に持って来るように。ラズには新しい政策だけに集中させるつもりだ」


 クランは5代表へと指示を続ける。


 なんとか…なんとか、終わった…!!


「では、ラズよ。そなたには、戴冠式について話さねばならぬ。部屋に戻るぞ」


「えっ、そんな無駄なことをやるのですか?」


「何が無駄なのだ。国民へ披露もかねて、政策の発表の場にもできる。開拓村…だったか。その辺りの意識を変えるには、絶好の機会だ。きちんとやるように」


「……かしこまりました」


 はやく地上に帰ってゴロゴロしたいよーー。

 今はそれしか考えられない…。


 私は不満交じりにアンタローを抱え上げると、クランについて部屋を出る。

 最後に振り返った会議室の中では、さっそくわいわいと、マグたちと顔を突き合わせての討論が始まっていた。

 騎士団長のキツリフネは音もなく立ち上がり、護衛のように、私たちの後に続いてきた。


「…そういえば、キツリフネ様のご趣味などは…?」


 部屋へ向かう間、ついでのような物言いで聞いてみる。

 キツリフネは、自分が話しかけられるとは思っていなかったのか、少し驚いていた。


「…それがしは、刀剣の収集を少々」


「わあ、殿方らしくて素敵ですね。愛刀などもあるのでしょうか?」


「御意にござります。これなるは、愛刀、『ヒトリシズカ』…」


 キツリフネは、ちょっと嬉しそうに、腰元の刀剣の柄に触れる。


 なんでこの人だけ武士なの…?

 騎士団長(武士)ってちょっと新しすぎて戸惑うんだけど…。


「複雑ですね。名刀の活躍の場があってほしいような、平和であってほしいような…」


「まさに。まこと世の中は儘ならぬもの。去るも地獄、残るも地獄なれば、それがしはこの世を突き進むのみ…」


 …クランは紹介の時、キツリフネは寡黙な人って言ってなかったっけ?

 ひょっとして、クランが話しかけないから答えないだけでは…?

 あの人、友達とか居るのかなあ…。


 思わず、前を行く背中を見てしまう。


「キツリフネ、ここまででよい」


「は。では、失礼仕る」


 キツリフネは一礼すると、廊下の端に寄った。

 クランは扉を開け、部屋に入る。


 私も部屋に入り、扉を閉め…。

 そして、へたりこんだ。


「…ラズ、どうした?」


 返事もできない。

 我慢していたが、もう限界だった。

 私は、知恵熱を出していた。

 普段、頭なんてあんなに使わないから…。


 そのまま、アンタローを床に落としてしまい、絨毯の上に倒れ込む。

 アンタローは、「ぷいっ」と言って、テンテンと転がった。

 誰かが私を呼ぶ声が、わんわんと耳の奥で響いた。



-------------------------------------------



 額が、ひんやりと冷たくて気持ちがいい。

 ふと目を開けると、私はベッドで寝ていて、誰かが覗き込んでいる。

 クランだ。


 …何故か安心して、また目を閉じた。




 どこか、遠くが騒がしい。

 ふと目を開けると、全然遠くなかった。

 私の周囲には、ユウたちが心配そうな顔をして、何事かを喋っている。

 今、何時くらいなんだろう?

 動けるかな…と思って、体の具合を確かめてみると、結構すっきりしている。


「ツナ、起きたか……」


 こういう時、一番に気づくのは、いつもマグな気がする。


「ごめん……寝てた……」


「姫様、お水をどうぞ…!」


 ルグレイが水差しから水を注いでくれて、私は起き上がると同時に、一気にそれを飲み干した。


「ツナ、あまり一度にたくさん飲むな……」


 マグに注意されてしまった。

 なんだか、覚えのある光景な気がする。


「……ン、ごめん…。わたし、どれくらい寝てた?」


「ぷいぃいっ、ツナさんツナさん、安心してください、ボクがいますよ! ボクは、ここですよ!」


 アンタローが、ルグレイの頭の上から、ぴょーんと飛んでくる。

 着地の前に、すかさずユウがキャッチした。


「こらアンタロー! ツナは疲れてるんだから、大人しくしろって…!」


「ぷいぃいいっ」


「アンタロー…!」


 抱きしめられなかったので、手を振ってみる。

 アンタローはそれだけですごく喜んで、目をぎゅっとつむりながら、ハートを飛ばすように、ぱたぱたと耳を振って応えてくれた。


 かわいいなあ…。

 犬とか猫とか、飼ったことないけど、こんな感じなのかな?

 おじいちゃんが金魚とか熱帯魚とか飼ってたから、そういうのとは一緒に暮らしたことがあるんだけど…。

 金魚→アンタロー、という一足飛びの飼い方になってしまったな…。

 アンタローは上級者向けな気がする。

 そんなどうでもいいことを考えていると、マグがさっきの私の問いかけを、きちんと拾ってくれた。


「ツナ、外はもう・夕方だ。すまない……まさか倒れているとは思わず・5代表とずっと話し込んでしまっていた……」


 マグが、しゅんとしている。

 私は慌てて首を振った。


「ううん、その方が助かるよ…!! そもそも、わたしが王様ごっこに付き合わせてるんだし、ごめんね、こき使って…!」


「案ずるな。ナっちゃんには申し訳ないくらい、俺は一人でテンションが高い。商人のフリをして、他国の情勢を探る…。俺がどれほど、こういう生活をやってみたかったことか。やっと念願が叶ったと言えよう」


 フィカスは本当に生き生きしているので、そこは安心できた。


「それより姫様、横になっていてください。お体に障ります」


 ルグレイが、そわそわしながらそう言った。

 あまり心配をかけるのも申し訳ないので、私はもぞもぞとベッドにもぐる。


「話し合いとか、どうなったの…?」


「それがさ、すげー盛り上がったんだよな。なあ?」


 ユウが同意を求めると、ルグレイは頷いた。


「はい。どうやら、5代表の方々も、今の天界の情勢には、行き詰ったものを感じていたようでした。新しい刺激を、本当に純粋に喜んでくださって…。しかし、私が今回最も驚いたのは、ティライトの存在ですね」


「…? ルグレイの知り合いだったの?」


「はい。同い年の上、お互いに力を求めての修行の日々を過ごしておりましたので、何かと交流がありました。お父君がかつての5代表だということは存じておりましたが、まさかこのような形で再会するとは…」


「わあ、じゃあ、友達と会えたんだね、よかったね…!」


「いえ、特に友情も敬意も感じたことはありませんね」


「あ…そうなんだ……」


 ルグレイって、結構クールなんだなあ。


「ティライトっていやあ、やたらツナのこと聞かれたぜ。街の指針よりも、ツナのことを聞かれた割合の方が高かったな…」


 ユウが、ちょっとムスっとして言っている。


「まあ、あれは気に入る流れだろうな。これから要注意だな」


 フィカスも、ちょっとムスっとしているようだ。

 うーん、微妙なところだけど、嫌われているよりは、気に入られている方が、今後やりやすいのかな?


 一方で、マグは淡々としている。


「最後の方は・全員で意見を交換し・かなり未来の方まで話をした。学問の第5地区は・医療系の研究施設を・第2地区との連携で作っていきたいということだ。芸術の第3地区は・花の街である第4地区と組みやすい。各地区に特色が出たことで・連携はかなりやりやすいという結論になった」


 えっ、なにそれ、熱い!

 昨今流行りの、コラボレーションってやつだね!!


「第2地区の方なんだが、一般層に受け入れられやすい、スポーツ的な競技型を発展させていくポジションで行くらしい。ティライトはなんだかんだで頭がいいぜ。こっちの意見はちゃんと聞くし、貴族にしては珍しいタイプだと思う。今度、個人的に手合わせしようぜった話になったんだよなー、楽しみだ!」


 ユウは、なんだかんだでティライトとは気が合ったようだ。


「…そういえば、今更なんだけど…。騎士とかって、体を鍛えてるみたいだけど、どういう仕事をするの? だって、魔族も魔物も、こっちには居ないんだよね?」


 本当に今更、ルグレイに聞く。

 ルグレイは少し笑って、嫌な顔一つせずに説明をしてくれる。


「姫様、騎士の仕事は何も、魔物退治ばかりではありませんよ。王を暗殺から守るのは当然として、例えば建設中の工事現場で事故があれば、力仕事のできる人手が必要ですよね? 騎士見習いも、街の見回りから入り、力仕事のできないご老人の手助けなどを義務付けられています。酒が入って暴れた人を押さえたり、ケンカを仲裁したり…意外にやることはあるのですよ」


 あ、なるほどなるほど、自衛隊・救急隊・消防隊・警察官…を合体させたみたいな立ち位置なのかな?


「えーー、なんか、地味じゃね? 英雄を目指して騎士団に入った、みたいなやつはどうしてるんだ?」


 ユウが聞くと、ルグレイは首をかたむける。


「さあ、どうなんでしょうか…。おれは姫様以外のことはどうでもよかったので、他の騎士の悩みなど、気にしたことがありませんからね。ただ、騎士同士の手合わせは、魔法戦も含めて真剣でやりますので、その辺りは、一番気が抜けない、刺激的なイベントではありますね」


 ルグレイは、天界に戻ってきてから、ちょいちょい昔の喋り方みたいになっている。

 たぶん、自分では気づいてないんだろうけど…。


「…あっ、ごめんルグレイ、今気が付いた、今ってひょっとして、ご家族に会うチャンスなんじゃない!?」


「…? ああ、そういえばそうですね、おれも今思い出しました。しかし、今は政権交代の大事な時ですからね。落ち着くまでは、当分姫様の傍に居させてください。その方がよほど気が休まりますから」


 ルグレイは、にこにこしながらそう言った。


「そっか…じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうね」


 ルグレイと一緒に笑い合う。


「…そういえば、あの人は?」


「あの人? …ああ、陛下のことですか。私たちが部屋に戻るまで、姫様の看病をしていただけたようで。解熱の魔法を使っておいた、と一言述べると、通常業務をやりに出て行かれましたね」


「…そっか」


 きっと、無表情で淡々とこなしたんだろうなあ。

 予定を狂わせてしまったことを、後で謝っておくべきなのかなあ…。


「さて、ならば次は、明日から貧民街…ではなく、開拓村をどう攻略するかだな」


 フィカスが喋り続けようとした時、いきなり別の声によって遮られた。


「ちょっと待った」


 パ、とハイドが、ベッドの上にふわりと浮かんで現れる。


「ハイド!」


「おっと、歓迎は無しだぜ? うざったいからな」


 ハイドは、先制攻撃をするように、ルグレイたちを言葉で制す。

 そのまま空中で、見えないソファーに寝そべるような姿勢をして、頭の上で手を組んだ。


「ジェルミナールの奴ら、だいぶ変わっていたな。昔はもっとギラギラしたヤツラだったんだぜ? ま、他国の侵攻とかを気にしなくてよくなったわけだからな、そりゃ腑抜けにもなるよなァ。安心しろよ、今日の会議のヤツラの中に、ナっちゃんに危害を加えようと思っているような不届き者は一人も居なかった。…というか、今後も現れそうにないだろうぜ。あのティライトってやつは、鼻持ちならないが…」


 ハイドはフンと鼻を鳴らし、しかし何か、とても面白そうにしているように見える。


「そ・こ・で、相談なんだけどさ。ナっちゃんに、ぼくの護衛が必要ないってわかったワケだろ? ぼくはここから、自由時間を貰ってもいいかい?」


「……また何か・企んでいるわけか」


 マグが半眼でハイドを見ると、ハイドは隠そうともせずに、くすくすと笑った。


「さすがの慧眼、御明察。ちょいと面白い気配を見つけてね。そっちに遊びに行きたいんだ」


「なんだ、それをいちいち俺たちにことわる辺り、パーティーの一員の自覚があるんだな。可愛いじゃないか」


 フィカスの言葉に、ハイドは嫌そうな目を向けた。


「お前さ、わざとそういう言い方をしているだろ? ゴーグルって、ぼくのことをちょっと好きすぎるんじゃない?」


「ああ、よくわかったな。アンタのように、真っすぐに歪んでいる奴は、俺の周りに居なくてな。最初は興味深い気持ちの方が大きかったが、今やメロメロなんだ」


 フィカスは相変わらず、冗談か本気かわからないような物言いをする。


「……あーあ、付き合っていられないな。ま、いいけれど。それで、どうなんだよ。許可を貰えるのか、貰えないのか」


「あ…わたしは、いいよ。ちょっと寂しいけど、ハイドがやりたいことをやる方が優先だもの」


「…まったく、ナっちゃんってホント寂しがりだよな。安心しろよ、用事が終わったら、矢のような速さで帰ってきてやるからさ! ねむの木の夢より遠くに居ようとも、きっと君の元へと帰ってくる。しゃぼんだまのような月にかけて誓うよ」


 ハイドはちょっと機嫌がいいように見える。

 ユウも、仕方ないなと言うように、頭を掻いた。


「まあ、今更ハイドがツナを困らせるようなことをしねーってのはわかってっからな。俺も賛成だ。そんで、ハイドが居ない間、俺らはツナを一人にさせるのは危ないって思ってりゃいいんだろ?」


「なんだよ赤毛、よくわかっているじゃないか、そういうことさ。身分がどうので、若干一人にさせる機会が多くなるのは、ぼくもちょっと心配だけどな。ナっちゃん、着替えの時みたいに、白髪を傍に呼んだりして、我儘をたくさん言うんだぜ? 誰もナっちゃんに逆らえないんだから、そうやって強引に行くことを覚えておくべきだ」


「……そうだな。ひとまずはその対処でいけるだろう……」


 マグも頷いた。


「ぷ…」


「あはっ、それじゃ、決まりだな! お前たち、ぼくの友達に傷一つでもつけたら許さないからな。ただでさえ危なっかしいんだ、ちゃんと守っていろよ! 終わったら、どんなオモチャが居たか報告してやるから、楽しみにしておけよな!」


 アンタローが喋る前に、ハイドは物凄く急いで言葉を被せた。

 そして、フっと姿を消す。


「…やれやれ、新しいオモチャを見つけたら飛びつく辺りも可愛い、と言いたかったのだがな。もう行ってしまったか」


 フィカスは残念そうだ。ユウも、頭を掻く。


「まあ、村をどうにかする辺りなんて、特にハイドが退屈する場面だろうからなー。仕方ないっちゃ仕方ないか」


「やはり私はハイド様に嫌われているのでしょうか…全然目線を合わせて貰えませんでした…」


 ルグレイが、しゅーんとしている。


「あ…。ルグレイとアンタローは、まぶしすぎるから…って、ハイドは言ってたから…!」


 なるべくいいような言い方をして、元気づけた。


「ぷいぃっ、仕方ありませんねっ、ボクは神々しいキラキラですからね!」


 アンタローは嬉しそうだ。

 私は、先程までハイドが浮いていた辺りに目を向ける。


 なんとなくタイミングを逃したから聞けなかったけど、面白い気配って何なんだろう?

 帰ってきたら話してくれるみたいだし、楽しみにしておこうっと!




<つづく>



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