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夢小説が、殺しにくる!?  作者: ササユリ ナツナ
第三章 高校生編
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笑ってはいけない



「まず、第1地区。ロイン卿」


 立ち上がったその人を見て、私はびっくりした。

 座っている時から大きかったが、立つと本当に大男!

 というか、マッチョマン!!

 その人は、小豆色の髪と口髭の持ち主で、髭は特に、きっちりと手入れされて、ピンと立っている。

 鍛え上げた胸板は、服の上からでもわかるくらい、ムキムキしている。


「お初にお目にかかりますな、姫様。ロインと申します。第1地区を治めております。区内の者からは、サー(Sir)と呼ばれ、親しまれております故、姫様にも気軽に呼んでいただけると助かりますな」


 ロイン卿は、それが癖なのか、口ひげを丁寧に撫で上げてから、席に着いた。


「では、第2地区、ティライト卿」


 クランの言葉を聞き、ロイン卿の隣にいる人に目を向ける。

 が、その人はピクリとも動かず、腕を組み、目を閉じたままだ。

 寝ているのかな、と思うくらいの姿勢のその人は、ルグレイと同い年くらいで、面々の中ではひときわ若い。

 何かの間違いでそこに居るんじゃないか、と思うほど、浮いている。

 濃い藍色の髪をしていて、ただ座っているだけなのに、ナイフのように鋭い印象を受けた。


 驚いたことに、クランがティライトの代わりに説明を始める。


「…ティライト卿は、見ての通り、年若く、新しく5代表に加わったばかりだ。彼の父、ヴェルタイガ卿は、我が国屈指の武人でな。元騎士団長の反乱を鎮めるため、大怪我を負い、引退を余儀なくされた。それも、心を乱した余のためにやってくれたことでな。此度、余が頭を下げに行くと、息子であるティライト卿を代表にと推してくれたわけだ」


 クランの説明に、私はもう一度ティライトの方を見る。

 ティライトは、仏頂面を続けており、とても友好的には見えない。

 クランが説明を続ける。


「ティライト卿は、当然、父をないがしろにして傷つけた余のことを恨んでおる。此度のことも、乗り気ではなかったのを、余が条件を付けて、無理やり引っ張りだした」


「条件、とは?」


 私の問いに答えたのは、クランではなく、ティライトだ。

 彼はゆっくりと、藍色の瞳を開く。


「その男の“命”を、いつでも狙ってもいい、という条件で、俺はこの場に居る。安心しろ姫さん、あなたのやり方に逆らう気はない。俺の狙いは、あなたの父のみだ」


「………」


 私は、驚きで息を呑んだ。

 しかし、ティライトの瞳を見ても、そこには憎しみではなく、理知が宿っているようにしか見えない。

 …ひとまずは、暴走をするタイプではない、と判断してもよさそうだ。


「ああ、もちろん、俺が気に入らなければ、いつでも他の者に挿げ替えてくれて構わない。俺はこの“スタンス”を変える気はないからな」


「…いえ。よろしくお願いいたします、ティライト様。父は、宿願を果たすまでは、決して死には至りませんから」


 私は、にっこりと、フィクション可愛い笑顔を向けた。

 私の言葉に、ティライトだけでなく、クランも驚いているようだ。

 みんな、貴族だからあんまり感情を表に出さないんだけど、私がフェザールで、弱いテレパシーがあるせいなのだろうか、なんとなく、感情の動きが肌でわかる。

 ひょっとして今は、翼を出しているから、余計にわかるのかな?


「……。では、次。第3地区、ヴィスエリア卿」


 次に立ち上がったのは、ひょろっとした体型で、鼻が長い人だ。

 髪色はくすんだ金髪だが、きちっと撫で上げてある。

 片目にはモノクルをつけており、神経質そうで、なんというか…私の偏見で、「ピエール」って名前を付けたい感じの人だった。


「お目に書かれて光栄でありマス、姫様。ヴィスエリアと申しマス。お母君に似て、お美しくなられマシタね…。ぜひ、新国王の肖像画を描く際には、ワタクシめに依頼していただきたい所存でありマス」


 私の偏見のせいで、流暢な喋り方も、カタコトに聞こえてくる。

 第一印象って、大事だなあ。


 と、というか、まずい、一回情報を整理しよう。


 ・第1…ロイン卿 (マッチョ)

 ・第2…ティライト卿 (アサシン(?))

 ・第3…ヴィスエリア卿 (ピエール)


 よし、よし、まだいける、覚えられる!

 個性的で助かった!!


「では、次。第4地区、モンアボカド卿」


 立ち上がった人を見て、「まずい」と思った。

 中肉中背、そしてこれと言って特徴のない顔立ち。

 覚えられるかな…!?

 でも、優しげで、すごく爽やかな感じはする。


「はじめまして姫君。モンアボカドと申します。お見知りおきくだされば幸いにございます。クラン様とは、同学年なのですが、なかなか信じていただけないのが悩みですね」


 え、そうなんだ!?

 確かに、クランの方がよっぽど若く見えるなあ。


 …あっ、特徴があった!

 この人、喋ってるのに、目をつむってるのかと思ったけど、物凄い糸目なんだ!!

 よかった、糸目で覚えよう。


「では、最後だ。第5地区、ローガン卿」


 噴いた。

 ちょっと!!!

 やめてよ、ここ笑っちゃいけないところなのに!!

 老眼鏡て!!!

 なんでオチ持ってきちゃったの!!?


 まずい…!!

 他の人はどうなのか知らないが、少なくとも私は、授業中とかの、笑ってはいけない場面だと、物凄く笑いの沸点が低くなるタイプだ。

 けど、悔しい、こんなしょうもないネタで…!!!


 ローガンは、その名の通り、ご老人だった。

 クリーム色の髪色で、好々爺という感じだが、身体コントロールをしてなおこの外見と言うことは、実年齢は一体いくつなのだろうか…。


「姫様、わしはローガンと申します。ジェルミナール王家とは、ボイセン老からのお付き合いですからのう、姫様で3代のお付き合いとなりますわい」


 うぐぐ、何か喋ってるのに、全然集中できない…!!


 待って待って、ひょっとして、オチとかじゃなくって、実はみんな、名前がこういう感じだったってこと!?

 試しに、一番最初の、ロイン卿を思い出してみる。


『区内の者からは、サーと呼ばれ…』


 ………。


 サー・ロイン。


 ぐわああああっしょうもねえええええ!!!

 不味い不味い不味い、笑っちゃう!!!!


 なんだろう!?

 高校になってから、小・中学生の時ほどの爆発的な威力はないのに、確実に細かくジャブを決めてくるんだけど!!!?


 ちょっと待って、じゃあ他の人も!!?


 サーチライト、サービスエリア…。

 モンアボカドさん可哀想でしょ!!!!?

 なんで一人だけ寿司ネタなんだよ!!!!!!!!


 『モンアボカド卿(糸目)』で覚えようと思ってたのに、一気に『モンアボカド卿(寿司)』になっちゃったじゃない!!!


 いきなり絶対に笑ってはいけない政策会議が始まったんだけど、どうしろって言うの!!!?


 私は肩を震わせて俯いて、必死に笑いをこらえている。

 地獄か…!!!

 もういっそ、ページが戻ると信じて、笑うか!?

 いやダメだ、ページが戻らなかった場合のリスクが高すぎる、初対面で、誰にも意味のわからないことで笑い転げるなんて、信頼を失ってしまう…!!


 いや、というか、この土壇場で思い至るのも何だけど、そもそもページって戻るの!?

 だって、ハイドが生還してる道筋を選んじゃったんだよ!!?

 これたぶん、もう二度とページが戻らないって考えておいた方がよさそうだよね!!?

 くおおおっ、まだ、心の準備ができてないのに、退路が着実に断たれていく…!!


 憎い…!!

 登場人物の名前がおかしいことに気づける世界から来たこの身が、憎い…!!

 なんでこんな適当な名前を付けた…!!?


「姫様、どうかされましたかな?」


 ロイン卿が、心配そうに私を窺ってくる。

 ああああ、ダメだ、この人が肉に見えてきた!


「あ、いえ…。先程、母と祖父の話が出たもので。皆様にも、ご家族がいらっしゃるのかなと、思いを馳せておりました」


 何とか、持ち直すために、話題を変えた。


「ああ、なるほど。人となりに興味を抱いてもらえるとは、光栄ですな、ハッハ。吾輩の場合は、先程話題に出た、姫様のおじいさまのボイセン老に、息子二人の名をつけていただきましてな。ヴァニック・フィレ・シモフリーと、ヴァサーシ・ティル・シモフリーと申します」


 助けて!!!!!

 誰か、助けて!!!!!!!

 肉に殺される!!!

 死んじゃう…!!!!!

 呼吸が、もう…!!!!


「そ……ですか……」


 肩だけではなく、声も震える。


 なんで今まで笑ってもいい場面でこういう名前が出てこなくて、笑ったらダメなところで畳みかけてくるんだよ!!!!!!


「…ラズ、どうした」


 案の定、クランから、咎めるような声音が来た。

 ダメだああ考えろ考えろ、不自然じゃない流れを!!!


「いえ…。わたしに、祖父が居たことを、初めて知りましたので…。申し訳ございません、動揺してしまいました。ですが、考えてみれば、当たり前の話でしたね」


「…そうだったな。だが、今する話ではない。気を整えよ」


「はい…」


 まだちょっと危ないが、なんとか耐えた!!

 偉い、偉いぞ、私…!!


 あとは、私の笑いのツボに来るような言葉が出なければ大丈夫だ。

 私が弱いのは、クランが唐突に手を叩いて、「たれかある!」とか言い出すことと、あと「朋友」と「誤謬」って言葉の響きに弱い。

 なんかどれも、間抜けじゃない?


 そんなことを考えているうちに、ローガンが口を開く。


「さて、姫様。本題に入る前に、国王生誕祭の準備がございますからのう、まずは誕生日をお聞かせ願えますかな」


「おい、待てよ。今のは、どういうことだ? あんた、自分の娘に、家族のことすら伝えていないのか?」


 反応したのは、ティライトだ。

 しまった、クランに噛みつく材料を与えてしまった!?


「何の情報も与えずに放置して、そのくせ自分の都合で引っ張り出してくる…いいご身分だな? まだ17の娘だぞ。可哀想に、家族との思い出が一つもないことを、あんなに震えて我慢していたじゃないか。何とも思わないのか?」


 えっ、そう受け取る!?

 いや、でも普通そうか、まさか笑うのを我慢していたとはお釈迦様でも思うまい!!


 でも、おかげで笑いの波は去った。

 ありがとう、ティライト…!!

 ありがたいけど、でも、反論はさせてね…!!


「いえ、ティライト様、今のはわたしが未熟でした。注意を受けるのは、当然です」


「姫さん、あなたはわかっちゃいない。あなたの母の話も、祖父の話も、ここに居るヤツラはわかっていて口に出したんだ。あなたの動揺を測っているんだよ。そのうえ、“生誕祭”だと…ふざけるのも大概にしろ、どこまでいじめれば気が済む!」


 ティライトは勢いよく立ち上がり、ローガンを睨みつけた。

 …そうか、ティライトは知っているのか。

 私の誕生日が、母の命日であることを。


「ほほ…若いのう、ティライト卿。しかし、我々の国を預ける方が、どのようなお人柄なのか。知っておくのは当然の権利と思うがのう」


「…ローガン様の仰る通りです、ティライト様、矛をお納めください」


 私はにっこり笑ったつもりだったが、微笑にしかならなかった。


「…わからないな。なぜ、そうまでして国に…いや、その“父親”に尽くそうとする? 長年幽閉されて、情も何もないだろう」


 あれ…離宮のくだりも嘘だってバレてるのか。

 ひょっとして、ここに居る人たちには、クランは真実を説明しているのかな。

 そういえば、一部には真実を話していると言っていたような気がする。

 ティライトは、茶番に耐えかねてこうなった…ってことか。

 まっすぐな人なんだなあ…。


 だけど、試されているという事実は、どうやら変わらないようだ。

 ただ、遠回しだったのが、直接的なものに変わったってことだけで。

 …ちゃんと、向き合おう。


「…確かに、情はありません。この国にも、父にも。ですが、そのことと、飢えている人たちをどうにかすることは、まったく別の問題です。わたしには、国の立て直しのために、最も効率的な道をたどることができる立ち位置が与えられています。でしたら、その道を行くことに迷いはありません」


「ハッ、聖女ジューンの次は、聖女ラズベリーってことかよ。ご立派なことだな」


 なるほど、不信感は姉からきてるのか…。

 あの人、ホント罪深いなあ…。


 でも、確かに、私の言っていることは、この人たちにとっては胡散臭いよね。

 私だって、本当は、ジェルミナールのためじゃなくって、ジェルミナールが地上に落ちてこないようにするために頑張ってるわけだし。

 でも、そこは流石に言えないしなあ…どうしよう。

 もういいや、丸投げしよう。


 私はゆっくりと立ち上がり、アンタローをテーブルに置いてから、ティライトの方へと歩き出す。


 ティライトは少し動揺しているようで、立ったまま、私の動きを目で追って…自分の目の前に来た私と、向き合った。


「ティライト様、言葉の上では、信じていただくことは難しいと思われます。わたしがどうすれば、ティライト様は満足していただけるのでしょうか? どうぞ、何なりとおっしゃってください」


 貪欲に、目の前にある物は、何でも使おう。

 それが例え、ティライトでも。

 かなりの賭けだが、もう仕方がない。


 ティライトは、しばらく茫然とした表情で、私を見ていた。

 だが、ふいに歪んだ笑みを向けてくる。

 ティライトは、勿体ぶるように歩いて距離を取ると、スラリと剣…いや、刀を抜き放ち、私の心臓に突き付けた。


「だったら、こうしよう。…姫さん、あなたは俺に、父親の代わりに“心臓”を捧げられるか?」


 私は、少し目を見開いて、刃先をじっと見つめる。

 前に、包丁の刃の部分を、戯れに自分に向けてみたことがある。

 背中のどこかが、ヒヤッとなるくらい、怖かった。

 包丁ですら怖いのに、こんな風に刃物を突き付けられて、怖くないわけがない。

 せっかく剣と魔法のファンタジー的な世界に居るのに、この辺の感覚はもう、恥ずかしいくらい一般市民だった。


「……それは、わたしの心臓を抜き取る代わりに、ティライト様は、父へのわだかまりを水に流す、という意味と受け取ってもよろしいでしょうか?」


「………ああ、そうだ。そうすれば、俺はあなたの父親を、全力で補佐するし、あなたの死は“美談”として国中に流す。それだって、国の立て直しのための、効率的な道の一つだろう?」


「離せ…!!」


 ユウの小さな叫び声が聞こえた。

 一瞬目を向けると、こちらへ来ようとしていたユウを、フィカスが止めていた。

 …フィカスは、私がどうにかするって、信じているんだ。

 動こうとしない、マグも、ルグレイも、きっとそうだ。

 …いや、動こうとしないんじゃない。

 二人とも、こぶしを握り締めている。

 動かないように、しているんだ。


 ……急に、勇気が出てきた。


 おかげで私は、冷静にティライトの様子を見ることができた。


 やはり、彼の目には、理知が宿っている。

 そして、憎しみではない感情が、伝わってくる。

 この人が持っている気持ちは…迷い、だとわかる。

 たぶん、信じたいんだ。

 クランのことも、私のことも、本当は信じたいんだ。

 だから、こうして、私を試すようなことをする。

 たぶん、この場に居る人はみんな、大なり小なり、そうなんだろう。


 私は、自分の心臓の上に手を置き、両手で包むようにする。

 どうしても、指先は震えてしまうので、何とか、隠した。

 図太く、図太く…と、自分に言い聞かせる。


「……承知いたしました」


 私がそう言うと、場に、小さな動揺が走ったのを、肌で感じる。


「それが胡散臭いものではない『聖女』の証明になるのでしたら、わたしはとても『聖女』らしく、それを受け入れることにしましょう」


 にっこりと笑う。


「…どういう意味だ?」


 ティライトの藍色の瞳は、やはり迷いに揺れている。

 私は、胸を押さえていた手を下ろして、無防備にティライトへと腕を広げる。


「ティライト様の申し出を、受け入れます。どうぞ、その刃で、この心臓をえぐり取ってください。ただし、それ以外のものを捧げる気はありません」


「……どういう、意味だ?」


 ティライトは、同じ言葉を繰り返した。

 本人は、同じ言葉を言った自覚はないようで、じっと私を見ている。


「わたしの血を、一滴も出さずに、心臓を抜き取っていただきたいのです。わたしの血で、みなさんのお召し物や、この素敵な絨毯、そして、わたしのドレスが汚れるのは、『聖女』として、胸が痛みますからね。わたしが死した後、シミ一つないドレスを、お父様には売り払っていただきたく思います」


「………」


 ティライトは、ポカンとした顔で、私を見ている。

 どれくらい、間が空いただろうか。


「……く。くっくっくっく…!! あっはっはっは!! 何が“聖女”だ、クレイジーな姫さんだ!!」


 ティライトは刀を下ろすと、体を曲げるように笑い出した。


「震えていたくせにな…!! いいだろう、俺の負けだ…」


 ティライトは、刀を鞘に納めると、片膝をついた。

 私が、えっと思っているうちに、ティライトは胸に手を当て、私を見上げる。


「あなたに、忠誠を誓う。俺は、この身を賭して、あなたに尽くそう」


「…!」


 えっ、やった、なんとかなった!?

 焦った…!

 だって、魔法がある世界なんだよ!!?

 『いいだろう。とっておきの心臓抜き魔法を見せてやる!』みたいな展開も覚悟してたのに!!

 よかった…!!!!

 本当、綱渡りだったよ…!!


   パチパチパチパチ…!


 急に拍手の音がして、びっくりして出所を見ると、ロイン、ヴィスエリア、モンアボカド、ローガンが、私たちへと拍手をしていた。


「いやはや、一時はどうなることかと思いましたぞ!」


 ロインが、心の底から言っている。


「なかなかどうして、一筋縄ではいかない方なのですネ、安心しマシタよ」


 ヴィスエリアが続き、モンアボカドも頷いた。


「そういったところは、父親似なのですね。あなたになら、この国を任せられます」


「いい覚悟を見せていただきましたわい」


 ローガンも頷いている。


 クランの方を見ると、頭痛に耐えるように、眉間を揉んでいる。

 ひょっとして、心配してくれたのかな…?


 まあいいや、なんとなかってよかった!!


「ありがとうございます、では、お茶にしましょうか。実は、クッキーを焼いてきているのです」


 おかげで私は、自然にこう切り出せた。

 実は、今日は、お茶にしないといけないんだ。

 だってユウが、「ぜってー毒見したい!!」って言い張るんだもん……。


「クッキー…?」


 (この流れで?)みたいなティライトの動揺を感じ取るが、もうユウのためにガンガン進むしかないんだよ私は!!

 若干不思議ちゃんみたいな行動になってるけど気にしてられない!

 私はいそいそと席に着き、ルグレイは給仕のように、手に下げたバスケットをテーブルの上に乗せる。

 これなら、人様にお配りする前に、毒が入っていませんよアピールができる。

 というか、なんで私は、自分で作ったクッキーをユウに毒見させるつもりなの?

 自分で食えよって感じだよ、シュールじゃない…?

 しかし、無理やり毒見役を使おうと思うと、そうするしか手がなかった。


「…まあいいだろう、確かに休憩は必要だ」


 クランは渋い顔をしながら、銀の鈴を鳴らして、給仕を呼び寄せ、茶を持ってこさせる。


 すごく疲れたが、なんとか、前半戦は終了した。




<つづく>



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