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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

破滅の聖女

破滅の聖女〜壊れた世界で〜

作者: てと



「おい、聞いたか?最近続いていた荒れた天候や魔物のスタンピードは、最近噂の破滅の聖女のせいらしいぜ」


「まったく迷惑な聖女だよな。贅沢三昧でこの世界の調和するだけなのに、何が気に入らねえのやら」


宿屋で食事をとっていると、皆んなが破滅の聖女の話題で持ちきりだ。


「聞いたか?破滅の聖女を殺すためどこの国も懸賞金をかけてるらしいぜ!!聖女を殺せば一生働かなくて、贅沢三昧な生活が待っている!!どうだ?話に乗らないか?」


「いいな、それ!!女一人殺すだけで楽な人生がおくれるんじゃな!!ガハハハハ」


向かい側に座るケイレブから怒りの感情が伝わる。私はケイレブの手を握り首を振る。この手が神殿からも国中からも追われる私を守ってくれている。私はもうこの手が、、、ケイレブがいればなんでも良くなってきた。どんな言葉も今の私には届かない。


もう、人気の無い場所で隠れる様にして生きるのも最近じゃ良いと思ってる。ケイレブさえ側に居てくれれば、なんでも良い。


宿屋の二階に上がり、二人部屋へと入る。するとケイレブが落ち込んだ様に私に話しかけてきた。


「マリカ……辛い思いをさせてすまない……」


「気にしてないよ、ケイレブがそう言ってくれるだけで十分……ケイレブが私の心も守ってくれてるし……」


自分で言っておいて、恥ずかしい台詞を言ったもんだと恥ずかしくなる。多分、私はケイレブの事が好きなのだろう。


私が元の世界に帰る術を探しながら、神殿からも国中からも逃げ、共に行動する内に私はケイレブに想いを寄せるようになった。全てから自分を守ってくれる唯一の人間。


「必ず、マリカを元の世界に帰す術を見つけてみせるから待っていてくれ」


「その……最近じゃあ、ケイレブと一緒に隠れながら暮らすのも悪くないかなあって……」


「マリカ……それは………」


「あ、いや……これは最終手段!!そう最終手段だから!!」


二人の間に沈黙が漂い、気まずい。私はそそくさとベッドに入り込みシーツを頭から被って横になる。すると少し時間を置いてケイレブが私のベッドに横になった気配がし、後ろから抱きしめられる。


心臓が口から出るかと思った。バクバクと心臓の音が煩い。ケイレブにはこの心臓の音は聞こえているだろう。


「マリカ……君が望んでくれるのなら、私は全てを君に捧げよう」


まるで騎士の誓いの様な言葉に私の心臓の音は大きくなる。だが温かな腕に抱かれる内に眠気が襲ってくる。私はこの時間が永遠に続けば良いと思いながら眠りについた。




ーーーーーーーーーー



「マリカ!!起きろ!!直ぐに此処から離れるぞ!!」


ケイレブに起こされ、体を起こす。外からはザワザワとした大勢の声が聞こえる。


「此処に泊まっている二人組の男女を探している!!女は破滅の聖女の可能性が高い!!」


私は顔を真っ青にし、ケイレブに手を引かれるまま裏手に回り馬に乗り逃げる。


「逃げたぞ!!破滅の聖女だ!!絶対に逃すな!!」


私はケイレブに掴まり顔を埋める。そうだ、私がいる限り隠れて暮らす事は到底無理に近いのだ。なんで私はそんな夢を見たのだろう。それすらもこの世界は許してくれないのか。


後ろから放たれた矢が馬の足に刺さり、馬ごと転倒する。ケイレブは私を抱きしめたまま転がるが、直様立ち上がり私の手を引いて森の中を走り抜けるが、直ぐに追ってが私達を囲む。


「何故破滅の聖女を守る!!お前も騎士だろう!!」


「私はマリカの騎士だ!!守る理由など不要だ!!マリカ……すまない」


ケイレブは私に優しく微笑み、かすめる様な口付けをして何かの石を私に持たせた。すると、私の周りに薄い膜が張られ、矢が私に放たれても矢を弾き返した。


「マリカ、逃げろ!!結界石がお前を守ってくれる!!」


「嫌だ!!ケイレブを置いていくなんて出来ない!!」


周りの神殿騎士やら国の騎士達がケイレブへと斬りかかる。ケイレブは左手を切り落とされようと、足に剣が刺さろうと、何度でも立ち上がり剣を振るう。だが出血が酷く、私の目から見てもケイレブはもうすぐ死んでしまう。私はケイレブに止めをさそうとした騎士に体当たりし、血溜まりの地面に倒れるケイレブに覆いかぶさる。


「お前らなんて全員死ねば良い!!ケイレブがいない世界なんて、もう壊れて仕舞えば良い!!神よ!!これがこの世界の人間だ!!もう全部壊れて仕舞え!!」


私は泣きながらケイレブを抱きしめ叫ぶ。すると満月だった月が何か巨大で悍しいものが現れる。異形の化け物は世界に轟く様な咆哮をあげ、世界を壊し始めた。


「マリカ……すまない……君を最後まで守れなかった……」


「ううん、もう良いの。ケイレブ、一緒に逝こう?」


私はケイレブの刃こぼれした剣を掴み結界の中に引き入れる。私は剣を首に当て、思い切り掻き切った。ケイレブの横に血を吹き出しながら倒れる。


横になり私達は見つめ合う。すると私達は自然と微笑み、ケイレブは残った右手で私の頬を撫で、私はケイレブの顔を瞳に焼き付けて目を閉じた。








むかし、むかし、この世界の破滅を願った聖女がいました。世界は巨大な魔物に次々と壊され、終焉を迎えました。そして長い月日が経ち、人間という種がまた誕生しました。男の名前を女はケイレブと呼び、男は女をマリカと呼び仲睦まじく暮らしました。そして二人はこの世界の始祖として語り継がれました。




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― 新着の感想 ―
[一言] これ神側どういう考えだったんだろうか・・・あんがいただのシステムだったのかね? レイアースのセフィーロのように、願いで世界を支えるというシステムとしての神・・・
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