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オマケの小話



結婚式が無事に終わり、数日が経ち、城内の雰囲気も落ち着いてきた頃、エレノアとブライアンは、互いに忙しい合間をぬって城の中庭で寛いでいた。


「ずっと気になっていたんですけど、何故8年も会いに来られなかったのですか?」


「唐突に、何の話だ?」


ブライアンに誤魔化している様な雰囲気は感じられない。しかし、エレノアはニヤリと笑う。


「もしかして、兄様にずっと勝てなくて、会いに来られなかったとかなのかしら?」


「だから、何の話だ?」


「8歳の頃から兄様に紹介されて再会するまで、何故会いに来られなかったのか、ずっと気になっていたの。」


「何を言っている?ほぼ毎日会っていたぞ。8歳の頃からずっと。」


ニヤリとしていたエレノアの表情が、キョトンとした表情に変わる。


「え?」


「毎朝、庭で会っていただろう?」


そんな記憶など、何処にも無い。


「何処の?」


「エレノアの屋敷の庭だ。エレノアは、いつも花々に水をあげていただろう。」


確かに毎朝、庭の花に水をあげていた。

8歳の頃『朝、花々に水をあげると、水滴が朝日で光り輝いて、とても美しい景色になるんですよ。一緒にどうですか?』そう、ソフィーに言われ、その日から毎朝水やりをしていた・・・していたが、何時もソフィーと2人っきりで、他の者は誰もいなかった・・・いなかったはずだ・・・


「はい・・・」


「俺は、体力強化のために毎朝 走って、エレノアに会っていたぞ。」


「・・・は?」


「雨の日は、残念そうに窓から庭を眺めていただろう?」


確かに・・・確かにそうだが・・


「それは・・・・それは・・・会っているとは言いません!!私、気付いていないじゃないですか。」


「俺は、毎日見ていたから問題ない。」


「問題だらけです。何故声をかけてくれなかったのですか!」


「汗だくで、ゼーゼー言いながら声をかけたら変質者みたいだろう。」


「気付かれず、毎朝覗き見ている時点で変質者です。」


「大丈夫だ、エレノアのご両親や、屋敷の者達は気付いていたからな。」


「私が気付いていないでしょう!!」


「そうだな。これからは俺も、毎朝エレノアの側で水やりをしよう。」


「そういう事では無くてですね・・・。」


「エレノア、過去の事よりこれからの事だろう?」


「いい事言った風に、話を纏めようとしないで下さい!!朝、会えないのなら着替えてから、お昼にでも来れば良かったでしょう。」


「昼は・・・次期国王として学ぶ事が多くてな、時間が無かった。」


「では、夕方にでも。」


「夕方の空いている時間は、馬車で屋敷の前を通り、エレノアに会いに行っていた。」


「だから、それは()()とは言いません。何故声をかけてくれなかったのですか?」


更に問い詰めれば、ブライアンは視線をそらし、ボソリとした声を出す。


「それは・・・その・・・先ほどエレノアが言った通り、条件を満たしていなかったから・・・エレノアの兄に勝てなかったからだ。」


悔しそうに、しかし素直に言うブライアンに、エレノアの方が驚いてしまう。


「本当に?」


「本当だ。最初の頃は毎日挑んでいたが、数秒で返り討ちにされ。あまりに毎日挑むので、月に一度にしてくれと言われ、鍛えて準備をし、挑んでいたんだが、それでも勝てず・・・それでも諦めずに、挑み続けていたのに・・・エレノアが急に、友人達に男性を紹介してもらおとしているという情報が入ったから・・・必死で・・・初めて勝って会いに行ったのに・・・エレノアは俺の事を覚えていないし・・・それなら、先に逃げられない様に妻にしてから・・・。」


ブライアンの話だけを聞くと、かなりの悪女の様に聞こえるが・・・


「それで、猫を被って私に近づき、何の説明もせず結婚の儀をしたと?」


「・・・うむ・・。」


「私が、本当の事を知ったら逃げると思ったのですか?」


「逃げなかったと言えるのか?」


そんなの、答えは決まっている。


「言えません、全力で逃げました。」


力強く答えれば、ブライアンの呆れと笑いを含んだ声が返ってくる。


「ならば、これで良かったのだろう。」


「うぅぅ・・釈然としないのですが・・・。」


「なんだ、現状に不満があるのか? エレノアの望んだ、財はあるが貴族では無く、次男で、現在騎士団に所属している男と結婚出来ただろう?しかも、8歳の頃から人生を捧げ、愛してくれている男と。」


「それだけ聞くと、私がもの凄い幸せ者に聞こえるのですが・・」


「違うのか?」


「違いませんが・・・何だか釈然としない!!!」


エレノアの苛立ち紛れの声と共に、ブライアンの笑い声が、城の中庭に響いていた。





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