普通になりたいだけなのに
時は夕暮れ
私の目に映るのは愛しい貴方の涙です。
「なんか、元気ないね?何かあったの?」
部活帰りの恋人を捕まえたは良いものの
いつもと違うその様子に思わず聞いた。
「別に何もないよ」
最初の方こそ、そう渋っていたけどやがて
ぽつりぽつりと話してくれた。
要約すると以下3つに分けられる。
1 顧問の先生が結婚したらしい
2 結婚相手は同じ学校の先生
3 先生は奥さんと子供と仲睦まじく話していた
これだけ聞くと、当たり障りのない日常の中の出来事なのだが
「羨ましかった」
と、呟いた彼女を見て己の無力さを痛感した
人生でこれ程までに己の無力さを恨み、理不尽さを感じることは18年生きていて感じたことはなかった。
人を愛するということは当たり前の事だと勝手に思っている。
なんだかこの社会から弾き出された気分だった。
無理だと分かっていながらも、彼女と家族になりたかった。
でもそれは一生叶わない願いだ。
「どうしてこんなに愛してるのに結婚できないんだろうね」
なんて当たり前な事を口走ってしまうのもどうか許してほしい
仕方のないことなんだ。許可されていないものを出来るわけがない
だが、それを我慢すれば彼女と一緒に居られるのならと意見を飲み込む。
なんて事はないだろうずっと恋人でいれば良いのだから
いつだって世間の耳に届くのは一定数を超えた数の声だった。
私が生きてきた狭い世界の中ではそうだった
「学校は社会の縮図」
とはよく言ったもので、私が小学生の頃は何でも多数決で決まっていた。
少人数で意見が通らなかったクラスメイトも時間が経てば大多数の声を受け入れた。
いつしかそんなものだろうと諦めていた。
自分1人が意見したところで大多数の意見は覆らない
それならばみんなの歩く方向へ足並みをそろえて歩いていればなんとかなる
そうしていくうちに自分の意見なんて無くなっていく
だから今回もみんなの歩く方へと少数派が合わせればいい
輪を乱さ無いように
誰にも迷惑かけないように
なんて事はないはずだ。
それで社会が平和なら
なんてことはないはずだ
なんて、ことはないはずだ