一人目:赤城達也
「最初は赤城君なんだけど・・・」
「あぁ、あのストーカーね」
アキが吐き捨てるように言う。
ストーカー、か・・・まあ、確かにそうかもしれない。
一人目、赤城達也君。
元野球部のキャプテンで、ピッチャーをしていた。
初めて喋ったのは7月のある日の放課後。
私が先生に頼まれて体育倉庫にメジャーを取りに行くと、赤城君が倉庫の中でひっそりと泣いていた。
泣いているところを見られた彼はとても慌てていて、同時に見てしまった私もかなり焦った。
何も言わないわけにはいかなかったから、「どうしたの?」と尋ねた。
話を聞くと、前日の高校野球の県大会で、彼のミスのせいで相手にホームランを打たれ、敗退したということらしい。
「うーん、そんなに責任感じることないんじゃないかな、一生懸命やった結果だもん。みんなちゃんとわかってくれてると思うよ?」
野球の知識が全くない私はこんなありきたりな言葉を赤城君に言ったあと、
「邪魔しちゃってごめんね」
と言ってメジャーを取ってすぐに体育倉庫を後にした。
この行動の何が赤城君の気持ちを揺らしたのかわからないけど、この次の日に赤城君が話しかけてきて、
「鈴鹿、昨日はありがとうな。おかげでだいぶすっきりしたよ」
と言ってきた。
そして、そこから休み時間ごとに私に話しかけてくるようになり、
さらにどうやって知ったのか知らないがLINEも友達追加され、分単位でメッセージが来るようになった。
最近は放課後一緒に帰ろうと誘われるようになってきて、何かと口実をつけて断り続けている・・・
「だから、はっきり『キモイからやめろ』って言ってLINEもブロックすればいいんじゃん」
話を一通り聞いたアキが言う。
「まあ、そうなんだけど・・・」
「それが出来ないんでしょ?まあ由麻はそうよね・・・」
アキがため息まじりにそう言った。
「でも、マジでこのまま放っておいたらそのうち家とかについてきてもおかしくないんじゃない?何かあってからじゃ遅いでしょ」
「ええ?さすがにそれは・・・」
「相手はド変態ストーカー野郎よ、何してくるかわかんないって!気をつけな!」
「うん、そうね・・・」
私は話している間もずっとLINEの通知が鳴り続けるスマホを見て、そう返事することしかできなかった。