14話、ガレフの森〜関所
「……今日は早いな、どうしたんだ?」
見張り中に小さな魔力を感知したベルクは、美希の入っているテント内足を踏み入れると、雷魔法で小さな発光する球体を中に浮かせてジャリジャリと音を立たせながら何かをしている美希に声を掛けた。
「…うわっ!? ひぃっぅ…!…ぁ、おはようございます。 えっとですね、コルドを数えてたんですよ。 そのなんとか村とかって所で宿とるお金も必要じゃ無いですか。」
出入り口を背にしてコルドを数えていた美希は背後からの声に驚き声の方に向くと虎がいた為恐怖を覚えたが、ベルクだと思い出し朝の挨拶をしてベルクから見える様座る位置を変えると、重ねられたコルド束がベルクの目に入った。
「……お前は商人か何かか? …人間には確かに必要だろうが、足りなければ狩ればいいだろう。」
「商人って……まぁ、それはいいですけど。今ある中で足りる様に使う、必要額以外は何かある時の為に置いておく……が良く無いですか?」
「銅貨や金貨じゃあるまいし、いつでも稼げるだろう。」
日本と異世界のお金の価値観の違いであった。
日本でお金を得るには主に時間を企業に売ってその対価に貰うか、自身が何かを作って売り、必要経費以外の対価が収入になる。大体がこの2つだが、この異世界は魔物を倒し収入得ると言う事が出来る。
収入を得る為の危険度が天と地ほど差があるが、カイルを見るぶんには確かに足りなければ狩ればいいと思うが、買おうとした時に持ち合わせがなく、ちょっと足りないので狩に行って来ます!など、日本人の精神では不可能に近い行いだろう。
「…ベルクさん、お金の管理は私が請け負いますので数えていても気になさらないで下さい。 そんなに時間もかからないですから。」
このまま言い合っても結論は見えないと考え美希は自分の意思を突き通す事にした。
これに対しベルクは何も言わずに頷いた。
「……それで、いくらあったんだ?」
いくらあるのか気になったベルクが質問する。
「えっと…白が4枚、青が237枚、赤が332枚なので……3072コルドですね。 目標額の倍も溜まりましたね。」
「ふむ……4日も掛けてその程度、か。 流石にこの森では仕方ないか。」
「…………え?」
「いや、我の知る冒険者共は日にコルドだけで2万〜50万、素材を持ち帰れれば金貨数十枚の稼ぎと聞いたのでな。」
”共”つまり複数の冒険者から話を聞いた、となると一体どんな人達かと気になる美希。
だがそれより反応を示したのは素材。テイマーが入れば素材が手に入る、つまり頑張れば金貨数十枚のリッチな生活も夢では無いと少し希望を見つけた美希だった。
「………あの…その知り合いさん、ってベルクさんを倒しに来られた方達だったりしますか?」
小さな希望から覚め気になったことをベルクに聞くと
「…そうだな。 そう言った奴らも何人かおるし、そうでは無い奴もおる。 …まぁ、我が住処にしていた場所が場所だっただけにかなりの手練れしか来んかったかもしれんが……これではあまり贅沢は出来んな。」
「へぇー、なるほど。 人達から話を聞いたりしていたから色々お詳しいのですね。 それで、ベルクが住んでいたのはなんてところなんですか?」
懐かしい何かを思い出しているのかいつもより優しい雰囲気の表情をしており、最後は何か欲しかったのか溜息をついて何かを諦めた顔をしていた。
そんなベルクに更に質問すると
「……ふむ。 我個人への質問は1日1つ、時折気分で答えるか答えんかにする。分かったな?」
「ぇ…そんな聞いて下さい的な感じ醸し出してそれは無いやろ………まぁ、確かに普通に考えたらそうですね、失礼しました。」
まだ信用に足りないのか自身の情報を開示したく無いベルクの発言に思う所があったのだろう美希は凄まじく小さい声で悪態を吐くが、考えれば確かに質問のし過ぎは失礼に当たるので頭を軽く下げた。
「おはようございます。 今日はお早いですね、何かあったのですか?」
美希達がやり取りをしていると、カイルの起きる何時も通りの時間になっており目が覚め支度を済ませたカイルがテントから出ると、まだ日が出るには早く薄暗がりの中、美希の居るテントが明るく2つの影が出ており挨拶をしに来たカイルは、
こんな早くに美希まで起きて居る為何か事件でもあったのかと思い問い掛ける
「ぁ、おはようございます。 何も起こっていませんよ? …えっと、私がコルドを数えていたらベルクさんが気にしてくれた見たいで、少しお話をしていたん、です……よ。」
カイルの質問に美希が答えた。
そして美希の思考が一度止まる。
この森に入ってから今日まで明るくなるまで夢の中にいた美希はカイルが起きる時間を知らなかった。
寝てる姿は偶に目が覚めた時に気分転換に外に出た時など何と無くテントを覗いた時に見たので分かるが、ベルクに至っては寝ているのかすら分からない。
だが5日も男達より起きるのが遅いと言うのは1女子としてどうなのだろう、これヤバくね? と考えてしまった美希は急に恥ずかしくなり落ち着く為に下を向いて明日から早起きを心に決めた美希だった。
「なるほど、コルドを数えるとは…ミキ様は商業の才もお待ちなのですね! 私は学が全く無いので本当に尊敬致します。 ではお邪魔しては悪いので、私は朝食の支度をしてまいります。」
え、いや。待って、と美希の戸惑う声など耳に入らず輝く瞳で尊敬の念を送って言ってくるカイルは、一礼してスッと朝食の準備に行ってしまった。
多分、カイルさんの中で私は凄い人になっているんだろう。っと美希が思うのは誰の目から見てもそう捉えられる程であった。
「…まぁ良いではないか。 お前が本気になれば天変地異を巻き起こす災禍の魔女になれるのだからな、あながち間違えでは無いだろう。」
美希の心の声が勝手に聞こえてくるベルクは美希に告げた
「全っっっっ然嬉しくないから!! …っというか、ベルクさんの方が私の何倍も強いんだから、その言葉はお返しします!」
「……そうでもないぞ?昔に一度軽い気持ちで戯れた事があるのだが、空の国アウデルテ、一般的には天空城と呼ばれている国があるのだかな。 そこに住まう天空人と呼ばれる奴らは男女問わず成人すれば王狩りと言うスキルを保有していてな。”暴乱の王虎”と二つながある我の様な王と呼ばれるもの、また王たる資質のある者に対して絶大な力を発揮するものでな。 最終的にはこの世界で生まれた勇者御一行と其奴らに負けてしまったんだよ。」
声を張って反論した美希に対してベルクの昔を思い出す様な楽しげな答えに言葉が出なかった。
戯れと言うからには遊びに行く感覚で破壊活動をとったベルクに対しても、そのベルクを打ち負かした人達にも、そして空に国があると言うファンタジー過ぎる展開にも。
後に図書館で調べ物をしていた時に見つけた本を読んだ時に美希は知る。 地上のほぼ全てを壊し尽くし、高ランクの冒険者達を、緋色以上の魔物達を、その時代の魔王を赤子を撫でる様に打ち倒し、そして負けたと言っていた天空城をも壊滅寸前にまでさせた事を。
人類壊滅クラスの生きる天災、魔獣王、暴乱の王虎として2100年前の記録に記載されていた。 1200年前からはその強さから戦いの神として剣闘士を始めとした戦う者達の支持を一時得、300年前からはその時歴代最強と言われていた魔王を勇者の友として打ち破った聖獣として今でも一部から崇められていると言う事も他の本で知る事になる。しかし、後の本人情報で転生など知らぬ人々は偶々2100年前と300年前の姿が同じであっただけで、その時その時によって容姿が変わる為、未だに正確な事は分かっていないらしい。
そんな事を知っていたとしても変わらないが、今知らない美希は未知なる事実を想像の中でし、ベルクへの恐怖が爆発的に上がった。
お互い沈黙の中黙々と美希はコルドをしまい、それが終わるとくだらない事を考えぼーっとして暫くするとカイルから朝食が出来ました、と救いが舞い降りてきたのでサッと向かった。
山菜やキノコ、そして偶々落ちた狼の肉を使ったスープと串焼きが出てきたのだが、スープはまだ美味しいが肉が硬く獣臭い。串焼きに関しては噛んだ瞬間独特の獣臭い肉汁が口を満たし顔を顰めてしまう程で、これに関してはカイルも初めて使って見た肉らしく深々と頭を下げて謝り「私が全て頂きますので」と言う始末だったので残すわけにもいかず食べ切った。
ベルクは普通に食べていたが、感想を聞くなど今の美希には出来なかった。
それから何時もより少し早く出発し歩き駆けを使い進んだ一行は昼前に森の切れ端が見える場所まで来ていた。
「やっと森から抜けれる…… シャワーなんて贅沢言わないけど…水浴びor湯浴みが! 村が! 宿が! 私を待っているーーー!!!」
女の子が水浴びもせず5日もただひたすら森を歩く事がどれだけの負担だろうか、これまでそんな経験が無い美希のテンションはガレフの森からの出口を見て跳ね上がり、叫びながら走った。
その後を「ミキ様!どうされたのですか!?」っとそんな美希の心を知らない為心配しながら追い掛けて走るカイルと、ため息を吐いて少しだけ歩く歩幅を大きくするベルク
「やっと森抜けたーー!! なにこの達成感……いまなら登山家の気持ちがなんかわかる気するわ。」
森を1番に抜け、眩しい快晴の空から射す太陽の光を目を細めなら向けて、独り言を呟く美希
「ミキ様!? ぁ、あの…どうかなされたのですか?」
後ろから追って走って来たカイルが止まって空を見上げる美希を不思議そうに見ながら、声を掛けた。
「え、あ! ご、ごめんなさい。 特に何も無いです。 強いて言うなら早く村で体を洗いたいって心が叫んだだけです。」
「…心が、叫ぶ?……ぁ、いえ、そ、そうですか。 ミキ様に何も無ければそれで良いのです。 少し急いでアレーラ村に向かいますか?」
ちょっと恥ずかしい思いをしながらカイルの問いに答える美希、そして初めて聞いたフレーズに意味は分かるが理解が遅くなってしまったカイルだが
確かに女性の殆どが身なりを良く気にする事を思い出し、美希を気にして急ぐかを聞いた。
「んー……早く行きたいってのは確かにあるんですけど…周りを見ながら行きたいってのもありますから、同じペースで行きましょう。」
この美希の発言に場所を覚えるのはとても重要な事だと理解していたカイルは確かにと頷き、笑顔で分かりましたと答えた。
「………いや、今向かえば面倒ごとに遭遇するかもしぞ? 見てみろ。」
いつの間にか美希達の元に来ていたベルクの視線の先には黒い煙幾つかが立っていた。
白い煙なら昼食の準備や火を使う仕事をしている所もあるだろうが黒い煙は違う。
何かが今正に燃えて最中だと伝えている。
「……木とかゴミを燃やしたりする風習とか?」
異世界には異世界の習わしがあるだろうと思い楽観的な言葉を使う美希これに対しベルクが
「…仮にあったとしても、一つに纏めて燃やすのが一般的だろ? だが今は見えるだけで幾つも黒い煙が出ている。 今何かに村が襲われて戦闘中と考えるのが一般的だろうな。」
鎮火して白くなる気配の無い黒々とした煙が複数あるのは美希の目から見ても確かではある、ベルクの答えに美希はカイルを見ると、ベルクの答えを肯定する様に一つ頷いた。
「なら急いで行きましょうよ! カイルさんとベルクさんがいれば助けられると思うし、怪我してる人達だっていっぱい居る筈です!」
「向かったとして村人が全滅していたらどうすんるだ? 関所が近い分兵士達が来て居るだろうが、それも破れていて、後から来た我々は王国から疑いを掛けられるかもしれん。 間に合った所で関係のない、手間だけのかかるだけの事だ。」
美希は早く助けに行きましょうと叫ぶが、冷静な判断を下すベルク。
この世界で人の命とはそんなに軽いものなのかと心でつい思ってしまった美希。
それに対してもベルクは、群れるほどいるのにたかだか村一つやられたとこで軽いだろ、と返すベルクに絶句した。
「それでも…それでも何か出来る事がしたい!」と叫んで煙の方へ走り出した美希。
美希の横に来て「お伴します」と笑顔で言ってくれるカイルにありがとうと心からの感謝を美希は告げた。
かなり走り村が遠いが視線の先まで見えて来た所で、息も絶え絶えな美希とまだまだ余裕の表情のカイル。
少しずつ見えてくる先では、どうやら魔物が村を襲っている様だった。
後ろを振り返って見たがベルクは来てくれて居ない様だった。
こんな状況下でも攻撃魔法を使う勇気が出ない美希は情けなくなり唇を噛み締めながら走り続ける。
大きな斧や槍、ハンマーや大剣を振り回す2m超えの猪を人間にした様な魔物がいた。
ゲームや漫画で俗に言うこれがオークなのか、と思った美希。 ゲームや漫画では可愛いーっとか言ってた自分を殴ってやりたいと思う。
現実はとてもじゃ無いが可愛いとは言えない。 毛は小汚く汚れ、顔つきはキツくかなり醜悪、大きな体に膨れた腹、ボロい布を巻き付けた清潔感の一切無い服、この距離で血や燃えている煙の臭いに負け無い獣と牛乳を拭いて放置した雑巾と生ごみを混ぜた様なとても表現できるレベルでは無い鼻が曲がるどころか目が痛くなる異臭。
ハッキリ言って近づきたく無いが、戦っている人が見える以上耐えて向かうしかなく、足を進めた。
「オークの様ですね。 シルバーの5ですので単体相手なら大したことはありませんが、今回はかなりの規模で来た様です。 ……シルバー7のハイオークや、ゴールド9のオークキングがもしいれば…ミキ様には酷ですが、早急に離脱すべきだと思います。」
オークは基本的に小規模な群で点々としているが、ハイオークやオークキングが出現するとオーク達は一つの群れに集まり統率される。
新しく集まった群は初めに付近の村をや町を襲い男女問わず殺すか食べる。 子供の肉はオークのご馳走らしく必ず持ち帰り、強い者から順に食べるらしい。
子供以外も男女問わず持ち帰り、女は繁殖の為、男は性欲の強いオーク達の時折の趣向変えor保存食、またオークキングがいれば行為をすると男の体でありながら女と同じく子を宿せる身体に作り変えられると言う残酷な未来が待っている。
故にカイルは此処にいる人々を何としても助けたいと思うが、美希を危険に晒すわけにはいかない。
一個人がどれだけ強くとも1人が10人と喧嘩して勝てるなど相手が凄まじく弱いか本当に限られた人かかなりの豪運を持っていなければ無理だ。
今回に至っては1人が100〜200人と喧嘩をする様などんな場面でどの様にしても絶望的な状況下。 カイルとしてもしたくは無いが逃げるしか無い状況もあり得る為そう告げた。
「はぁ…はぁはぁ……はーーっ、ふぅ。 カイルさんは、危なくなったらすぐ逃げて下さい。 私はやれるだけやったみます! ……うん、多分これなら言い訳通用するね。”闇夜に輝ける全天の星々、天流るる川よ、不毛の大地に安らぎの恵みを” 天の河」
美希が使った魔法はウル級最上位治癒魔法、同名の全天魔法のウル級[俗に言うオリジナル魔法]と言う上位魔法の一つ上の攻撃魔法を応用した治癒魔法で効果は治癒魔法と言って良いのか分からない程強力。
詠唱を終え魔法名を言い終えると、美希が立っている場所から、せき止められていた水が流れるが如く濃い青だが、表現する言葉が見当たらない程の美しさを醸し出す冷んやりとする水重さや抵抗の一切感じない”空気の川”と表現するしか無い物が美希の腰の高さで村全体を通り越して、美希からは見えないが関所を過ぎた所まで続いていた。
この魔法が続く限りの効果は、継続的な瞬間大回復、全身体系デバフ及び毒などの異常系完全防御、効果範囲内の発動者指定の味方に身体能力向上及び魔法障壁、効果範囲内の発動者指定の敵に全身体能力の低下及び継続的な麻痺か睡眠何かを掛け続ける、と言う極めて敵に使われない、そして味方が使えば最高の魔法である。美希も気付いたが、この魔法はオリジナル魔法な為知識だけ与えられたものの、加護の効果が発動しない。
だが逆に言うと、加護無しでこの範囲とこの性能である。
この後の説明も、以前大金叩いて買ったスクロールを使ったと言えば言い逃れできると言う事は目撃者がいなければ大丈夫だとはベルクに教えてもらっているので心起きなく使ったのだ。
だが発動してから5秒程でmpの減り方が半端ではない事に気付き体の力が少しずつ抜けて行くような感覚を覚える、そして美希の規格外mpを持ってしても10分〜15分が限界な程に削れているのが分かる。
「…傷が治って……!」 「…なんと美しい……」 「隊長!! オークどもがほぼ全て睡眠もしくは麻痺状態のようです!!」 「…神よ、感謝いたします…」 「…奇跡だ。」 「もうダメかと思ったぜ。」「私達助かるの!?」
口々に村にいる生き残りが歓喜の声を上げているのが聞こえるが、それどころではない。
隣にいるカイルも呆然として状況を飲み込めずただ眺めているがそうじゃないと言いたい。
…言いたいが体への負担が凄い。
走ったからの汗とは別に更に汗が零れ落ちる、立っているのもキツイ、魔法の効果中は確かにオーク達は何も出来ないが解いた途端に解除され、すぐに襲い掛かってくるだろう。
魔法の効果を知っている美希は今感動に震える人々に対し焦っていた。
「……凄まじですね…。 これは一体…ミキ様? 顔色が優れませんが大丈夫ですか?」
我に返ったカイルが美希にどんな魔法を使ったのか聞こうと見た時異常に気付いた。
まだ手で数えれる程しか魔法を見ていないが、今回は明らかに美希が辛そうにしているのが分かる。
「……はぁ………はぁ………。 か、……カイルさん、……この魔法は、余り長く持たないので……早く、みんなに……ひ、避難を。」
絞り出した掠れる声で伝えた美希の言葉にカイルは慌てて美希をお姫様抱っこで抱えて村の中に走った。
そして息を目一杯吸い込んで
「皆さん!! 聞いてください!!! もう間も無くこの魔法は切れます!! 早く避難を!! もう一度言います!!ーー」
カイルが2度繰り返して言うと、村人らしき人達、冒険者らしき人達、兵士らしき人達が一斉に慌て始める。
「関所へ向かうんだ!! あそこなら我等王国兵がまだ多くいる!! 王国も近い!! 急げ!」
兵士の中の隊長らしき人の声に皆関所がある方へ走り始めた。
その後を追って美希を抱えたカイルも走る。
その頃ベルクは村の前に着いていた。
なんだかんだ向かって来ていたのだが、状況を見て溜息をついた。
溜息の理由は3つ。
1、ベルクはオークが嫌いである。 その理由は存在そのものが只々穢らわしいと感じるからである、更に言うと動物や魔物でも種を残せる為力の差が分からないオークに狙われた事もあるからだ。
2、これ程の収入資源を手放して逃げる人々を見て。 悪臭のするオークの毛皮はシュリの実と言う消臭と洗剤の効果を持つ実で洗えば臭いは消え質のいい毛皮になりそこそこの値段で売れる。テイマーがいなくともベルクの大気の覇者の力で探った所460体前後、これ程までにいるのだからテイマーが居なくとも幾分かは取れるだろうと。
3、かつてベルクの破れた時の決め手の一つの魔法を見て。 大魔法”天の河”勇者御一行の癒し手が中心となり200人前後の魔法使いが達が力を合わせて行使した魔法で、3分程で魔法使い達が力尽きたがその間一瞬睡眠に入り、起きれば体が痺れるを永遠と繰り返され、その状態で絶え間無く強化された攻撃がくると言う苦い思い出を振り返されたからだ。
「……全く面倒だ。 …まぁ、何も無いよりはマシと言った所か。」
美希達を追うために風魔法を使って自身の周りに風の膜を張り臭いを消し、歩く道に転がっていればボールの様に風魔法で吹き飛ばし、時にオークが嫌いなベルクは頭を圧縮した風魔法で押し潰したりしながら向かった。