プロローグ
ケータイのアラームが鳴り、私はいつも通り起きた。
今の時間は朝の5時30分。
眠たくて重い身体を動かして洗面所に行き歯を磨く。
胸辺りまである髪を梳かして寝癖を取り5分くらいでパッと化粧をする。
部屋に戻って教科書、筆記用具、化粧道具の入ったポーチ、財布を学生鞄に突っ込み、学生服に着替えて鞄を持ち部屋を出てリビングに向かうと
「あら、おはよう美紀。昨日買ったパンをあるからさっさと食べて行っといで」
「…おはよう。 水だけでいいわ、コンビニでご飯買うついでになんか買うから。」
(はいどうもー、私、美紀です!
お母さんとの朝の会話です。
この後私は普通に水飲んで、靴履いて学校に向かうんですよねー。
で、うちの学校家から遠かったんで電車で1時間弱かかるんで、チャリで駅まで行って電車に乗って学校に着いたんですよー。
忘れもしない、この日。
私の誕生日の前日。
取り敢えずこのまま”それ”が来る所まで見て行きましょうか。)
電車から降りて10分程歩くと美紀は学校に着いた。
学校に着くと特に挨拶などはせず普通に下駄箱で靴を変え、教室に向かう。
教室に入って自分の席に座っても誰とも挨拶をしていない、が、ここまで家をでてから彼女は男女問わずにその視線を集めていた。
若干つり目で少しキツイと言われる顔立ちだが、大和美人。この言葉が似合う整った顔立ちに、スタイルは出るところは出て締まる所は締まっている。
こう言った容姿のため、中学校時代から今の高校3年生迄友達はおろか、彼氏も出来たことがない。
崇められる事はあっても遠巻きに見ながら誰も挨拶すらしてくれないと言った生活のして来ていたのだ。
授業を受け、学校が終わるとそのまま徒歩20分の所にあるカフェでアルバイトをしているので、そのまま22時迄働き帰り道である。
家に帰る為に駅に向かう途中に横断歩道がある。
青信号になり、歩いて丁度真ん中辺りの所で右側からライトの光が凄い勢いで美紀に吸い寄せられる様に向かって来ていた。
その光の方に顔を向けるとまるでスローモーションの様にゆっくりと見えたが、身体はまるで言うことを聞いてくれない。
「このトラックに轢かれて死ぬんだろうな私」 と心で呟いたのも束の間、こちらに向かって来るトラックから目が離せず見続けていたのだが、反対の左側からも車がこちらに向かって来る音が聞こえたのだ。
何故か動く首を動かし左側を見ると、そちらからもトラックが向かって来ていたのであった。
そして美紀が「ありえな…ぎゃぁ!っっ」
ありえないと言おうとしたところで、左右から来るトラックは、美紀を中心に吸い込まれるように見事に左右から同時に挟んだのだった。
春川 美紀、トラックに挟まれて死亡。
「あははははっ♪あーーはああっ、あはは!」
(そして今。
意味不明な死に方をした私はなーんにもない真っ白な世界に挟まれて潰れたであろう身体は何ともない状態で地に足をつけている。
そして目の前は絶世の美女、もとい女神様が私の死に方を空中にスクリーンを出して、それを見て大爆笑しています。)
「あのさ、女神様なんやんね?確かに面白いかも知らんけど、笑い過ぎちゃいます?」
(ぁ、私関西の子なんでこんな喋り方にたまーっになります。 ってかこっちが本当ですねー。)
「いやさぁー、挟まれて死ぬって…ぎゃははははっ♪っ…はぁ…はぁ…死ぬー、笑いじぬー!!」
(このババァ…、殺したいわマジで。)
「あーー、笑った! さて、こんだけ楽しませて貰ったし、今から貴女を違う世界に転生させてあげるわ。
取り敢えず、身体能力の上昇と、魔法全般と…後何でもいいけど、欲しい力ある?あったら3つ迄ならあげちゃうっ♪」
「はぁ…? 異世界で生きろ的な? 訳わからんくなってきたうち…。」
女神の言葉に美紀の思考が追い付かず悩んでいると
「そーねぇ…。春川 美紀ちゃん? 分かりやすく言うとね、私は不謹慎にも笑い過ぎしまった…ぷ…
と、反省しているの。 だからお詫びに異世界、言葉通り異なる世界に貴女をそのまま送ってあげる、と言っているのよ。
送ろうとしてる世界には魔王は勿論、勇者に王様、騎士様に冒険者、女の貴女にはより取り見取りな男がいるわよー?」
(このババァを信じたくない私がいるけど、さっきまた笑いそうになっとったし。 ぁ、でも待って!もしかして…)
「女神様! 獣人はいますかっっっ!? 何でもいいけど、できれば! できれば虎の獣人とか!!!?」
そう、美紀は無類のケモナーなのであった。
友達のいなかった美紀は勉強に飽きた時にやったゲームや見た漫画、アニメなどで獣人に恋い焦がれていたのだ。
「えーっと…、いるみたいよ? 魅了の力とか付けとく?」
美紀は大喜びした。
そして魅了の力に対して即答で
「いりません。私が欲しい力は、ゲームである白魔法と召喚魔法、それとテイマー!! この3つです!」
美紀の言った言葉に苦笑いを浮かべながら女神は
「えぇ、良いわよ。 回復と守護を司る白き力と、異なる門を開く力と、獣、魔獣を意のままに操る力ね。
これはおまけで魔力の回復が常時2倍になる私からの加護ねー。
じゃ、いってらっしゃいー! …また笑わせてね?w」
「え…ちょ…」
女神は自分の言いたいこと言うと指をパチンっと鳴らした。
美紀は何か言おうとしたが、白い光に包まれ意識を飛ばしてしまったのだった。