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狂気の指導者

作者: さきら天悟

「日本は自国の核兵器を保有すべきである」


202X年のことだった。


「C国との軍事的緊張により、防衛費は増え続け、

今や財政の危機に瀕している」


2021年C国のバブル崩壊に端を発し、

世界恐慌が巻き起こった。

C国は国内の不満を日本に向け、

さらに日本領海内の地下資源を得るため、

開戦の準備をしているという情報が米国から入っていた。


「核兵器を配備により、防衛費は3兆円程度、

削減することが可能となります」


これまで蓄積された財政赤字2000兆円と世界恐慌により、

財政はこれ以上持ちこたえられない状況だった。


「C国は開戦と同時に核兵器を使ってくるでしょう。

それは日本に核兵器がないからです」


「総理」

と野党議員が手を上げた。

「核兵器の使用は国際法上違法です」


「違法ではありません。

合法です。

なぜなら、第二次世界大戦時、アメリカが2発の核爆弾を使用しましたが、

なんの咎もありません」


「総理、世界各国が許すはずがありません」


「各国は黙認するでしょう。

どの国も自国のことで手一杯です。

各国が、核兵器の使用で最も憂慮していることは、

隣国に被害を及ぼすことです。

しかし、すでに2011年のフクシマ事件で核汚染のシミュレーションはできています。

島国の日本では、核兵器使用しても隣国に影響を与えないことは明らかです」


「総理、総理ッ」と叫び、野党議員は立ち上がる。

そして、指を差す。

「総理、あなたは狂っている」





この日本情勢を受け、C国は行動を抑えた。

時を待つことにしたのだ。

このまま開戦の準備を続ければ、日本に核保有の機会を与えてしまう。

じきに政権は倒れるとふみ、

そして、日本へ工作員を送り込んだ。




翌年C国の党大会を経て、指導者が変わった。

幾分、日本への強硬姿勢が緩んだ。

それを受け、総理への抗議デモが続発した。

「戦争、反対」

「核保有、反対」

政権は国民の支持を失い、総理は辞任することになった。


「この国民は狂っている」

と総理は最後に漏らしたと言う。






政権が交代した。

野党連合の政権が誕生し、

日本初の理系出身の総理が誕生した。


「防衛費を40%削減します。

それを科学研究費に充てます」


彼は公約通りに実行した。

10兆円を超えた防衛費を4兆円減らし、

その分、科学研究費に充てた。


「彼は狂っている」と、

この時アメリカ国防省高官は自衛隊幹部に漏らした。


彼は日本の得意分野に予算を割り振った。

それは素粒子、量子力学の分野だった。

これまで多くのノーベル賞を獲得している分野だ。

カミオカンデやスーパーカミオカンデで、

ニュートリノに質量があることを発見した。

また粒子加速器で新たな原子は生成した。

原子記号113ジャポニウム。

彼は合計9器の量子加速器や衝突型加速器を建設した。

粒子を衝突させ、反物資や新たな原子を生成させたり、

衝突によるエネルギーを研究する目的だった。

彼が行った予算配分は一部の勢力に称賛されたが、

有識者は「狂っている」とコメントを発した。






それから数年後のことだった。


「機は熟した」

C国指導者は幹部の前で演説した。

「日本進攻のXデイは7月〇日とする」


C国スパイの報告では、防衛費削減で自衛隊員の士気は下がり、

兵器装備も時代遅れになりつつあった。


「8月8日に原爆投下を行う。

目標はF市。

我が国への影響も少ない」


8月8日に決定したのはアメリカに文句を言わせないためだった。

広島や長崎に原爆を落としても何も非を認めていなかった。


「これで太平洋は我が国の物だ」


党及び軍幹部らから拍手喝さいが起こった。






7月〇日C国は尖閣諸島に上陸した。

日米連合艦隊は奪還作戦を展開したが、失敗した。

ヨーロッパ諸国は冷ややかで、関わりたくなかった。

日本は世界を巻き込むため、C国との国交を断絶し、開戦に踏み切った。





米軍は後方支援の方針を取った。

矢面に立たさせるいわれはない。

しかし、情報面では協力した。

もちろん、8月8日にC国が核兵器を使用することもだ。

合わせて、アメリカが報復核を使用しないことも。


8月8日午前零時、アメリカ大統領は国防省から

『人工衛星で核爆発確認』との緊急連絡を受けた。


「ちょっと早いな。

予定では午後零時のはずだ。

それ見たことか。

大幅な防衛費は狂気の沙汰だったんだ。

それで、日本の被害はどうだ?」

大統領は左手でこめかみを抑えながら言った。

これからの対応を考えると頭が痛くなった。


『いえ日本ではありません。

C国です。

C国3箇所です。

核兵器発射基地です』


「どこからの攻撃だ」


『衛星ではミサイル弾道は確認できませんでした』


「工作員なのか」

大統領は首をひねった。

開戦中の核施設への潜入など信じられなかった。


『今、また連絡が入りました。

さらに3箇所で核爆発が検出されました』


「日本に神風がふいたと言うのか」

大統領は鋭い目つきになった。

「日本がどんな手を使ったのか調査しろ。

世界を揺るがすことになるかもしれない」

大統領は電話を切り、ホワイトハウスに向かう準備に入った。






「自業自得さ」


総理は一人執務室で呟いた。


「核兵器を保有することなんて、

今や頭が悪いやつがすることだ。

俺はすぐにイメージした。

素粒子の衝突でエネルギーが発生すると聞いた時に。

地球の岩盤をも通り抜ける素粒子をC国の核施設で衝突させる。

その位置情報の取得と精度には苦労したが、

理論的には可能と分かるのに。

本当にバカなやつらだ」


総理が防衛費を削って、衝突型加速器を建設したのは、

C国の核兵器を直接攻撃するためだった。

核兵器内のプルトニウム上で素粒子を衝突させ、。

この衝突によるエネルギーで核分裂を誘発させたのだ。

しかし、衝突エネルギーは計算上核分裂を起こさせるギリギリのレベルだった。

そこで総理は考えた。

「3つ素粒子を衝突させれば、より大きなエネルギーを発生できる」


そして9器の加速器で3箇所の核施設を攻撃したのだ。


彼はニヤリとした。

彼の笑みには狂気の陰が差していた。

ハリウッドで映画化してくれないかなあ~

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