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94・バール、双頭竜戦2

1月も半ばを過ぎまして、大変遅ればせながらとなりましたが・・・

新年あけましておめでとうございます。

今年も一年、なんとか創作を続けて行けれたらな~っと思いますので、生ぬるい目で見守ってください。

今年も宜しくお願いします。

「ハァハァハァ・・・キリが無いな」


戦闘を開始してから大分時間が経ったが、相変わらず魔物に周りを囲まれた状態で居た。


「あまり魔力を使いたくないが・・・しょうがない!」


あまり出し惜しみしている状況でもなかったので地面に手を着き、魔力を込めると、地面から無数の槍が飛び出して周囲の魔物を容赦なく串刺しにした。


「グギャアァアァアァ」


魔物を串刺しにした頃、双頭竜の咆哮が再び辺りに響き渡った。


「チッ!もう限界か」


双頭竜の咆哮に目を向けると、既に空の雷が大分落ち着いていた。

見る限りではまだ双頭竜は完全には回復していないようだったが、散々雷に撃たれて気が立っているようだった。


「今の内にやるしかねぇな!鵺!太刀!」

「はい!」

「これでも!喰らえ!」


急いで双頭竜に駆け寄り、魔力操作(マギカ・オペレート)で首の高さまで飛び上がり、太刀になった鵺に疾風刃(ガレ・ラミナ)を纏わせて、その太い首に切り付けた。


「グギャアァァァアアァ!」


疾風刃(ガレ・ラミナ)を纏わせた一太刀は、双頭竜の片方の首を跳ね飛ばす事が出来た。

跳ね飛ばした首からは勢い良く血が噴出して、血の雨を降らせ俺の全身を真っ赤に染め上げて行った。


「もう一つの首も貰うぞ!っ!ぐあ!」


もう片方の首にも攻撃をしようと、空中で『不可視の強壁』を出してそれを足場に再度飛び掛ろうとした瞬間、横から双頭竜の前足が襲ってきた。瞬時に『不可視の強壁』を出したが、時空間(スローモ)魔法(ーション)を使っていない状態では魔力と空気の生成が間に合わず、攻撃を喰らってしまった。

巨大な足から放たれたビンタは俺をかなりの速度で弾き飛ばした。

咄嗟に『不可視の強壁』を進行方向に発動させ、地面に激突する頃には十分に衝撃を緩和出来る程度の魔力と空気を生成する事が出来た。


「大丈夫ですか!?ご主人!?」

「あぁ、なんとかな。だが、肋骨が数本と腕にヒビがいってるな。だが!」


俺は起き上がり大きく息を吐いて、気合を入れなおし、


「まだ、行ける!」


加速魔法(アクセラート)で飛ばされた分の距離を思いっきり駆け戻り、そのスピードを殺さず駆け抜けるように、双頭竜の前足の片方を切り落とした。


「グギャアァァァアアァ!」

「本当に元気だな!こいつは!」


再度切り掛かる前に双頭竜の状態を確認すると、既に切り落とした首の半分程が生えて再生していた。


「さすが、黄金の林檎の守護竜といった所か」


一体どこまで体を切れば弱らせる事が出来るのかわからなかったが、今は考えるより先に攻撃を続ける事が先だった。そこから何度も足を切り、尾を切り、生えて来た首を切り、胴体に魔法で攻撃を打ち込んだが、弱らせるどころか再生の速度が徐々に速くなっていた。


「キリが無いな!」

「ご主人!ここは退くべきです!」

「ここまで来てか!」

ピシャンッ!ドーーン!


再度斬り掛かろうと踏み込んだ瞬間、眩しいほどの光が瞬き、轟音と共に双頭竜へ稲妻が落ちた。


「あっぶねぇ~」


いくら電気(グロム)を発生させていれば耐性があると言っても、最大で10億ボルトの落雷にあえば痛いだけじゃすまない。


「大分空は落ち着いてるから、しばらくは大丈夫だな」


空を確認すると、まだ少し雷が光っていたが、大分弱まって来ていた様だった。

なんとか、双頭竜を弱らせようと再度斬り掛かった。


「ギァアアアアアアアァァ!」

「こいつ!本当に無敵か!・・・ん?」


何度も何度も斬っているが中々弱りを見せない中、不意に違和感を覚えた。しかし、その違和感はすぐに判明した。先程まで、弱らせるどころか再生の速度が徐々に速くなっていたが、急激に再生が遅くなったのだ。


「もしかしてこいつ・・・鵺!」

「はい。何ですか?」

「ちょっと我慢しろよ!」

「は?」

ズバ!バリバリバリバリ!


鵺に声を掛けて気合を入れて足に斬り掛かり、その直後に大出力の電気(グロム)を傷口へ放った。


「痛い痛い痛い痛い痛い!痛いですって!ご主人!」


鵺は元々武器なので命に係わる様なダメージではないが、それでも電気(グロム)は相当痛いようだった。しかし、それでも試してみて良かったと言える効果が目の前に現れた。


「鵺。あれを見ろ」

「痛いですって!ご主人!それに何を見ろって・・・あれ?」


鵺もその変化にすぐに気付いた。


「あれ・・・傷口、全然治らないですよ?」

「あぁ、どうやら奴の弱点は電気らしいな」

「なるほど・・・だから、雷が当たらない時間が長かったさっきは治りが早くなっていったと、そういう事ですか?」

「そうみたいだな」

「でも、どうするんですか?いくらご主人でも、こんな巨大な相手にずっと電気(グロム)を放ち続けるのは無理です。それに、さっきの嵐の魔法も、もう一度はキツイんじゃないですか?」


鵺の言う通り。もう豪雷嵐(キュムロニンバス)を放つ程の魔力は残っていないし、双頭竜が弱るまで電気(グロム)を当て続ける事も不可能だ。


「シンティラを連れてくるべきだったか・・・考えても仕方ない。一か八かでやるか!」


方法は思い付いたが、自分自身もどうなるかわからない賭けに打って出る事に決め、再度双頭竜へ走りより、その体を斬り付けながらも首辺りに登って行った。


「鵺!これで最後だ!封印するぞ!」

「はい!」

時空間(スローモ)魔法(ーション)!」


魔法名を叫ぶと、俺と鵺以外が全てモノクロの世界に変わり、すぐさま双頭竜の首元にマークを斬り付けた。

マークは円の中に三角を描き、そこにリンゴの実と鳥の翼と蛇を描き込んだ。

我ながらにいいマークだと満足しながら、鵺を鞘に納めて腰から外した。


「鵺・・・」

「はい!」

「失敗したら、すまない」

「え?」


俺は鵺に静かに謝ると、そのまま鵺を遠くへ投げ飛ばした。


「ご主人!」

「さぁ!行くぞ!解除!」

バリバリ!ズッドーーーン!ガーーーン!


時空間(スローモ)魔法(ーション)の解除と同時に強力な電気(グロム)を空へ放った。その直後に雲も周囲も、何もかもが強烈な光に包まれ、双頭竜の真上からその身を覆うほどの光の柱が落ちて来た。

俺がした事は単純で、レーザー誘雷の原理を利用しただけだ。


レーザー誘雷とは

雷雲に向けて強力なレーザーを当てて稲妻の通り道となるプラズマを発生させ、稲妻を安全な場所へ誘導するモノだ。


今回俺がやったのは、電気その物を空へ放って雷雲の中の電気を一点に集めたモノだ。

眩い光の中で俺は最大出力の電気(グロム)を放ち、全身を襲う激痛の中で不可視(トゥーレス・)強壁(インビジビリウム)で双頭竜の頭の位置まで来ていた。


「我、汝を統べる者!汝の首に示すは汝を知る者の証!黄金の林檎を守りし竜座の汝に、今我は力を示した!我を認め、我に(くだ)るべし!我に従え!ラードーン!」

「ギャアァァアァァァァ!」


召喚獣の宣言と共にラードーンの名を叫ぶと、双頭竜は一際大きい咆哮を轟かせた。

正直、これで降伏してくれないと、俺には後が無い。それにラードーンの名を呼んだが、双頭竜の名前が外れていたら効果は半減してしまう。

今回の宣言は弱らせて従わせる宣言句と、魔物の真名を使って強制的に服従させる宣言句を同時に使っている。相手が本当にラードーンであれば、通常の召喚獣の宣言1種類では足らない。なにせ、相手はフェンリルと同じく神の息子なのだ。


ラードーン

ギリシア神話に登場する神、あるいは怪物たちの王であるテューポーンと上半身は美女で下半身は蛇、ケロべロスを始めとする怪物達の母であるエキドナの子の一人である。


「ギャアァァアォォォォ!」


再度、大きな咆哮が響き渡ると、俺と双頭竜は炎と電光に包まれ、決着が着いた。





「おい!待てってお前ら!」

「離せ!」


双頭竜との決戦が行われていた頃、街の北から更に離れた森にあるバールの人達が避難しているキャンプ地で騒ぎが起きていた。


「離して下さい!ミツルさんの所に行かせて下さい!」

「そういう訳にはいきません!ミツル殿はあなた達を守る為に行かせたんです!それを無駄にするつもりですか!?」


エレアとコロハはミツルの元へ行くと言い始めて聞かないのだ。

最初に行くと言い始めたのはシンティラだったが、そのシンティラはギコから首筋を手刀で打たれ、既に気を失って大人しくなっていた。


「チッ!離せ!」

ボッ!

「エレア!てめぇ!」


いい加減離さないギコにエレアが無詠唱の魔法使ってきた。


「エレア!ミツルの気持ちを裏切るつもりか!?」

「わたしは(あるじ)に生涯を捧げると誓った!(あるじ)が居なくなる位なら、わたしも逝く!」

「もうちょっと冷静になれ!さっきの異常な光を見ただろ!あんなところに突っ込んでお前に何が出来る!」

「うるさい!」

「あぁ、そうか!じゃあ力尽くでも、俺はミツルとの約束を守らせてもらッ!」

ドーン!


ギコが実力行使に出ようと刀を抜いた瞬間、思いっきり横に吹き飛ばされた。


「フーカ・・・」

「わたくしも、主様の命令に従う気はありませんわ。それに、わたくし達の主様は『異論がある時は異議を許す』とおっしゃられてますし、異議を言うには会いに行かなければいけませんわ」

「あぁ、そうだな。ラーク!コロハを離せ!」

「エレア殿!」

「わたし達の(あるじ)はミツルだ!(とが)めならば(あるじ)から受ける!」

「クッ・・・フー、仕方ありません」


ラークはエレアの言葉に少し苦い顔をした後、ため息を吐いてコロハを離した。


「そう言われては仕方ありませんが、無事に帰って来て下さい。勿論ミツル殿も一緒に」

「もちろんです」

「コロハ!行くぞ!」

「ラークさん!シンティラちゃんの事、お願いします!」

「えぇ。わかりましたが、早めに戻って来てくださいね」


エレアとコロハとフーカは街の南へと走りだしたが、すぐに足を止める事になった。


「フェンリルさん・・・」

「お前らは(ぬし)の命令を無視するのか?」

「さっきも言いましたわ。主様へ異議を伝えに行きますの」

「フェンリル。お前は(あるじ)が心配では無いのか?」

「いや、心配だ。だが、約束した以上は守るのが召喚獣だ」


3者の前にフェンリルが道を塞いだ。

フェンリルはミツルの命令を一番の優先事項に選択したようだった。しかしそれはエレアたちに取って、いい事でもあった。


「フェンリル。あなた、主様との約束を守るっておっしゃいましたわよね?」

「あぁ」

「その約束って、わたくし達を頼むって話ですわよね?」

「その通りだ」

「じゃあ、わたくし達を守って下されば問題ないのでは?」

「・・・どういう事だ?」


フェンリルもそうだが、エレアとコロハもフーカの言いたい事が今一わからず、首を捻っていた。


「つまり、主様の命令は『連れて逃げろ』ではなく『頼む』と言っただけで、わたくし達と一緒に戦って守るのは『頼む』に入るのでは?」

「・・・・・・」


フーカの言葉に全員黙ってしまった。確かに理屈ではあるが、誰が聞いたって完全なる屁理屈だった。確かにミツルは一言も「連れて逃げろ」とは言っていない。


「クッ・・・ククククッ。アハハハハハハハ!」


沈黙を破る様にフェンリルが盛大に笑い始めた。


「確かに!確かにそうだ!これはやられた!」

「フフフフッ!わかって頂けて嬉しいですわ」

「フ~ッ、仕方ない!」


一頻り笑ったフェンリルはため息を吐きながら、体を低くした。


「乗れ。お前らが走るより早い」

「ありがとうございます!フェンリルさん!」

「すまないな。フェンリル」

「振り落とされないようにしっかり掴まっておけ!」


全員背中に乗ると、フェンリルは全速力で走り始めた。その巨体を活かして木を薙ぎ倒し、一直線に森を抜けて行った。

街の北にある草原を抜けて、東側から南に向けて走ると、自分たちの主人と離れた時と同様にその巨大な魔物の姿が離れた距離からも確認出来た。


(あるじ)・・・」「ミツルさん・・・」

「速度を上げるぞ!」


フェンリルは更に速度を上げ、足をつけた地面は爆発したかの様に抉れ、その力の強さが一目でわかるほどだった。

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