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92・バール、スタンピード戦2

Pugna(プグナ) Start(スタート)!(戦闘開始!)」

Ignis(イグニス) properate(プロペラテ) in(イン) manu(マヌ) mea(メア)・・・」

Congelatio(コンゲラート) ab(アブ) hasta(ハスタ)・・・」


俺の合図と共にエレアとケイトがそれぞれに炎射矢(フランマ・アロウ)氷槍(ファメア・グラキエ)の詠唱を始めた。

最近では無詠唱ばかり練習している為、完全詠唱ともなるとその量や威力は段違いのモノになっていた。


Famea(ファメア) glaciei(グラキエ)!」「Flamma(フランマ) Arrow(アロウ)!」

「お!すげ!」


ケイトとエレアが放った氷槍(ファメア・グラキエ)炎射矢(フランマ・アロウ)はその数、100を超える槍や矢となってスタンピードへ向かって行った。

目視で見る限りで空を飛んでいる魔物の数は少し減ったが、まだまだ多量に残っていた。しかし、二人の放った攻撃は確実に魔物の数を減らしていた。


「おぉ!エレアもケイトもすごいな!」

「へへへ!」

「フフンッ!わたしも強くなってるからな!」


ちょっと褒めたはいいが、二人ともドヤ顔で得意気にして来た。


「じゃあ、俺も負けてられないな!二人とも、次の詠唱を開始!その間に俺が数を減らす!」

「どうせなら、先生も一緒に撃ったらどうですか?」

「いや、俺と一緒に撃つと、攻撃同士がぶつかって威力が半減するからな」

「確かに(あるじ)の魔法はすごいが、それは一緒に撃っても変わらないと思うが・・・」

「フンッ!舐めるなよ!」


エレアの提案を鼻で笑い、同時に氷槍(ファメア・グラキエ)炎射矢(フランマ・アロウ)を無詠唱で発動させた。

ただし発動させた無詠唱は、いつもの力を制限している魔法ではなく、何の魔力制御もしていない、楽な範囲で出している魔力量で発動させた無詠唱だった。

その数、無限。氷槍(ファメア・グラキエ)は次々に槍の形を形成しながら飛んでいき、炎射矢(フランマ・アロウ)は宙に浮かせた60余りの火の玉から次々と矢を放ち始めていた。

まさに止む事の無い氷の槍と火の矢の雨と言ったところだ。


「やっぱり、先生はすげぇ・・・」

(あるじ)なら国も滅ぼせそうだな・・・」

「おい!二人とも、感心してないで!次の攻撃準備!」

「「は、はい!」」

「シンティラ!」

「はい!」

「高くに飛んでる奴を狙ってくれ!俺の攻撃じゃ届かない!」

「わ、わかりました!」

「そろそろ、コロハ・フーカ・フェンリルも準備しておいてくれ!」

「はい!」「待ちくたびれましたわ!」「フン!精々暴れるとするか!」


近接戦闘担当へ冷静に声を掛けるが、正直俺は少し焦っていた。すでにスタンピードの先頭は森から出て、俺達の約1.5km程の距離まで来ているが、数が多すぎるのだ。


Famea(ファメア) glaciei(グラキエ)!」「Flamma(フランマ) Arrow(アロウ)!」


エレアとケイトの第2撃が放たれる頃には大分空の魔物は減っていて、あとはシンティラとケイトに任せても問題ない程になっていた。


「エレア!アクアゴーレムと炎龍(フランマ・ドラコ)を待機させておいてくれ!」

「わ、わかった!あ、(あるじ)!これは多くないか!?」

「あぁ!俺もそう思ってる!最悪は数を減らせるだけ減らして逃げるぞ!」

「わ、わかった!」


エレアに指示を出した後、俺は少し目を閉じて集中した後、気合を入れて詠唱を開始した。


Universe(ウニウェーセ),Quod(クォド) totum(トートゥム) est(エスト).(森羅万象、全ての在る者よ、)」


詠唱を開始すると一気に空は暗くなり、辺りには強い風が吹き荒れ始めた。


Et(エト) revertamur(レウェータマー) ad(アド) nihil(ニヒル),(無と還れ)」


詠唱を進めると、その風がいくつもの渦出来ていき、次第に空から雲が垂れる様に地面へ向かって伸び始めていた。


Par(パー) fiammam(フランマム) autem(アウテム) creationis(クレァティオニス),(創生の炎よ)」


次第に離れているここでもわかる程の熱気がいくつもの渦に集まって行った。この時点で既に、渦の真下にいる魔物はもがき始めていた。


impuneque(イムプネクェ) seligit(セリギト)!(来たれ!)」


既に熱気も竜巻の数も多くなっていたが、この魔法の真価は魔法名を言った後に起こる。

この凶悪な魔法の名前は・・・


Draco(ドラコ) habitat(ハビタット)!(炎龍の住処!)」


魔法名を放った瞬間、魔力も一気に使った感覚があるが、それ以上に目の前の情景が凄まじい事になった。

先程まであった細く小さかった竜巻が急に大きくなり、そしてその竜巻は超高温の炎を纏って荒れ狂っていた。さらにそれが1本や2本では無く、数えれば17本の豪炎の竜巻が出来ていた。


実はこの魔法を使ったのは今回が初めてだった。っと言うのも、この魔法は『Grimoire(グリモアール) de() Grande(グランディ) mage(マージ)(大いなる魔導師の魔導書)』に載っていた魔法なのだが、その記述を読む限り「野山を炎の渦に飲み込ませて、全てを灰に還す魔法」と在った為、試すに試せなかった魔法なのだ。まさに、大いなる魔導師の魔導書と呼ぶに相応しい魔法ではあった。

その効果もあり、先程まで危険を感じていた魔物の数は激減し、少しきついかもしれないが、フェンリルやエレアのアクアゴーレムと炎龍(フランマ・ドラコ)があれば、なんとか対処出来そうな程になっていた。


「ご主人様~!」

「ん?ゴフ!」


シンティラの俺を呼ぶ声に振り向くと、いつもの様に助走をつけて抱き着いて来た。


「空は終わりました!」

「お!ご苦労さま!ケイトもお疲れ!」


シンティラと一緒に空の魔物を倒していたケイトにも労いの言葉を掛けたが、ケイトは目の前に広がる景色に目を丸くして突っ立っていた。


「せ、先生・・・これは?」

「あぁ、炎の超広域魔法を使った。高威力だから俺でもしばらくは抑えられないのが難点だけどな」

「こ、これを先生が!?・・・・・・か、勝てない」


目を丸くしたまま驚いたケイトだったが、しばらくその光景を見ていると、俺に挑むという事を強制的に不可能だと理解した様だった。


「さて、あともうちょっとだ!遠距離組は少し休んでくれ」

「先生はどうするんですか?」

「俺は近接戦闘組に合流するよ」

「あ、(あるじ)!ちょっと待ってくれ!」


俺が、近接戦闘組の方へ向かおうとした時、エレアが呼び止めて来た。


「どうした?」

(あるじ)は今、武器が無いはずだ。(あるじ)も私と一緒にゴーレムで戦えば」

「大丈夫だよ。俺には電気(グロム)もあるし、新しく自分の武器も作った。それに剣も地面から作ればいいからな」

「だが、しかし!」

「心配してくれるのは嬉しいが、俺も少し暴れたくてね。ちょっと体動かして来るよ」


そう言って俺は、一番戦闘力的に不安なコロハの方へ走り出していった。


「先生・・・この状況で少し暴れたいって・・・」

「あぁ、この上ない程暴れてるな・・・。まったく、(あるじ)が本気で暴れるって言ったらどうなるんだか・・・」

「先生が本気で暴れたら、きっと世界が無くなると思います・・・」

「ハハハッ・・・冗談に聞こえないのが怖いな」




「コロハ!」

「ミツルさん!あれってミツルさんがやったんですか!?」

「あぁ、あれで大分数は減ると思う」

「ほぁ~・・・ご主人。ますます強くなってますね」

「すごいです・・・。あ、ミツルさんはこちらに来てどうしたんですか?」

「いや、コロハの事が心配でな」

「あ、ありがとうございます。で、でも、私も大分強くなったんですよ!?」

「あぁ、それはわかってるけど、大きい魔物は一人じゃキツイだろ。フーカは武器が大きいし、フェンリルに関しては心配するだけ無駄だ。そうなると、コロハが一番不利だろ?」

「そ、それはそうかも知れませんが・・・」

「それに、鵺と一緒って言うのが余計に心配だ」

「む~!ご主人!それってどういう意味ですか!?」

「そのままの意味だ。さて、無駄話はこの辺にして置こう!来るぞ!」


俺が前に目線を向けて注意を促すと、既に討ち漏らした魔物が100mの距離まで来ていた。

迫ってくる魔物はゴブリンや馬ぐらいの大きさの恐竜、体長2m程の犬など様々なモノが居た。その他にはトロルや巨大なライオンの尻尾が蛇になっているマンティコアなどの大型の魔物も見える。


「コロハは小さい奴を頼む!俺は比較的デカイのを相手にする!」

「はい!わかりました!」

「出来るだけ1撃で仕留めろよ!あっという間に囲まれるからな!」

「は、はい!」


コロハに注意を言い残し、俺は腰に下げているホルダーから取り出した黒い武器を両手に走り出した。


「暴発してくれるなよ!」

カチャカチャ!


手前のゴブリンの顔を踏み台にして飛び上がり、俺は昨夜完成したばかりの武器をマンティコアへ向けた。


「悪いが、死んでもらう!」

ガン!ガンガンガンガン!


発砲音と共に、マンティコアと一緒に周囲の魔物へヘッドショットを喰らわせた。


俺が作った武器。それはロクの時に使っていたお気に入りの銃。ベレッタ92だ。

ベレッタ92は弾倉15発の拳銃で非常に弾道も安定しているので、ロクの頃は好んで使っていた。

さすがに魔物であっても眉間に一発喰らえば、容易に倒す事が出来るようだった。


「この感覚・・・懐かしい感じがするな」


前世以来の銃の感覚に懐かしさを感じながら、ひたすらに魔物を葬って行った。


「さて、他は・・・ん?」


自分としては大分余裕があるが、他はどうかと目を向けると、後ろが異様に騒がしい事に気付いた。


「オルァァァアァアア!」

「ハァアアア!」


なぜか、ここに居る筈がないギコとアイリ、それに冒険者ギルド長のブルホンを含めた冒険者達が居た。


「ギコさん!?それに皆さんまで!どうしたんですか!?」

「フン!バカな事してる奴が居るって、行商から聞いてよ!それとあれだ!え~っとなんって言ったか・・・」

「ラーク商会です!」

「そうそう!ラークって奴からもそれがお前だって聞いたんだよ!それにしても、本当に規格外だな!お前!」

「そうだったんですか!」


どうやらカームとラークから俺たちが戦っている事をギコたちに伝えてくれた様だった。


「さすが人間(フマナ)と言ったところか」

「ブルホンさん。助かります」

「フン!儂らが来なくても、問題無さそうだがな」


ブルホンは鼻で笑いながら言って来たが、こっちとしては本当に助かっていた。他の面々に関してはあまり心配していなかったが、コロハだけは戦闘力が俺たちの中で一番低く、気にはなっていた。しかし、冒険者ギルドの面々が来たとなればそこまで心配はしなくて済むと思っていた。


「しかし、人間(フマナ)の魔法と言うのは伝説や話では聞いた事があったが・・・指先一つで国を滅ぼすというのは本当のようだな。これほどまでとは・・・」


未だに荒れ狂う炎の竜巻を見ながら、ブルホンは少し汗を掻きながら呟いていた。


「大分魔物も減ったので、もうそろそろ消そうとは思ってますけど・・・ん?」


俺が改めて燃え盛る炎に目を向けると、何とも言えない違和感を感じた。

真っ赤に染まる景色の一部に黒いモノが動いている様な感じがするのだ。

次第にその影ははっきりと輪郭を持ち、それと共に大砲でも連続して撃つかのような音が近づいて来た。


「ん?なんだ?」「おい!何の音だ?」「だれか魔法でも撃ってるんじゃねぇか!?そんな事よりガンガン魔物を狩るぞ!」


周囲でも異変に気付く者が出て来た。

そして・・・


『ギャアァァァァ!』


その正体が炎から姿を現し、地響きの如くステレオ音声で咆哮した事によって、冒険者も魔物でさえも、周囲の時間が止まったかのように、その存在に目が奪われた。


「なんだ、ありゃ?」


その姿は見る者に恐怖を与え、その絶対なる力を象徴するかのような大きい翼は、羽ばたけば大抵の生物を吹き飛ばす事が出来る。世界中の神話の中に登場する、もっとも知られたモンスター。


「双頭竜か・・・」


まずは、遅くなってしまった事を謝らなくてはいけませんね・・・

申し訳ないです。

会社の統合って、本当に面倒事ばかりですよ・・・

さて、次回の更新ですがはもうちょっと早めに上げようと・・・頑張ります。

気長にお待ちください。

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