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90・フーカの大剣

え~、なんというか・・・すみません。

更新が1ヶ月以上もしていないとか、本当にすみません。

おそらく「あぁ、この作者も失踪パターンか・・・」なんて思ってる方も多いかと思います。

しかし、自分としてはこの話は何があろうと完結までUPしようと決めているので、多少・・・いや、大分間が空こうとも更新していくつもりなので、生暖かい目で見て頂けると助かります!

「ご主じ~ん!どこですか~!」

「ご主人様~!」

「ここだよ~!」


やっとみんなが来た頃には辺りは真っ暗になっていて、町の門の外は高い壁のせいもあって、何も見えないほど真っ暗になっていた。

みんなの声に気付いて俺が照炎(フランマ)を出すと、すぐに向こうも気付いてくれた。


「すまん、(あるじ)。遅くなってしまった」

「すみません、ミツルさん」

「別に大丈夫だよ」


みんなはそれぞれに紙袋を持っているところを見ると、それなりに服は変えたようだった。


「ところで主様?わたくしの武器というのは何処ですの?」


武器屋では全く武器が見つからなかったので俺が武器を作ると言ったところから、フーカは少し期待してくれているようで、若干ソワソワしながら聞いてきた。


「あぁ、早速見てくれ」パチンッ!ボッ!


俺が指を鳴らして照炎(フランマ)をいくつも出すと、暗闇の中から地面に置かれた2本の大剣が浮かび上がった。


「大きい・・・」

「ご主人、いくら何でも大き過ぎないですか?」

「恐らくフーカなら大丈夫だろうと思って作った」

「ありがとうございます、主様。・・・ところで、なぜ2本もあるんですの?」


確かに普通はこんな大きな剣は1本で十分だが、今回2本作ったのには理由があった。


「今回作った剣は2本とも硬さを重視しているが、硬さに合わせて重さも増している。硬さをそこそこにしてそこそこ重たい剣と、頑丈だけど凄く重たい剣を作ったんだ。試しに左の剣から持って欲しい」

「わかりましたわ」


早速フーカは左の剣にゆっくり歩み寄り、片手で静かにクロモリの剣を持ち上げた。


「中々ですわね」

「とりあえず、試し切りでしてみてくれ。『Ut(ウト) veni(ヴェニ). Golem(ゴーレム).』(出て来い。ゴーレム。)」

ゴリゴリゴリ・・・ドーン!


土魔法とアクアゴーレムの応用で普通の岩で出来た3m程のゴーレムを出した。


(あるじ)は魔物であるゴーレムまで生み出せるのか・・・」

「凄いですわね。ですが、こんなに硬そうな物で試し切りしてよろしいんですの?」

「問題ない。むしろ、この程度で折れたりするならそれまでの武器だったって事だ」

「わかりましたわ。では、遠慮無く!はぁぁああ!」


フーカは大剣の重さを軽々と振り被りながら飛び上がると、ゴーレムの脳天から一気に振り下ろし、ズッドーーン!という地響きを鳴らして両断すると、辺りには衝撃波と共に土煙が舞い上がった。


「どうだった?フーカ」

「そうですわね。悪くは無いですが・・・そんなには持ちそうにありませんわね」


俺が感想を聞くと、フーカは剣の刃を見てそう零した。

近くに行って刃のところを見てみると、硬い岩で作ったゴーレムとは言え、一回使っただけで結構刃こぼれしてしまっていた。


「なるほどな。じゃあ、もう1本の剣を試してみて。扱い難かったらこっちを使い捨てで使って行こう」

「わかりましたわ」ドン!


俺の考えを聞いて納得すると、フーカは地面に剣を刺してもう1本の剣を取りに向かった。


「そっちはさっきのより重いんだ」

「へぇ~」


俺の言った事を話半分に流すように返答を返してくると、先ほどと変わらない様に軽々とその剣を持ち上げた。


「確かに、さっきのよりは重いですわね。ですが、こっちの方がしっくり来ますわ」

「そうか。じゃあ、そっちも試してくれ『Ut(ウト) veni(ヴェニ). Golem(ゴーレム).』」


再度ゴーレムを出すと、フーカは剣を持った感触を確かめるように数回振り回すと、さっきと同じようにゴーレムを真っ二つした。


「なるほど・・・これはいいですわね」


さっきと同じように刃を見てみると、さすがタングステン鋼。刃こぼれ一つ見ることが出来なかった。


「柄の感じとかで持ち難いとかあったら言ってくれ」

「問題ありませんわ。ありがとうございます、主様」


持ち難いとかがあったら修正しようかと思ったが、声を掛けるとフーカは嬉しそうに大剣を眺めて微笑んでいた。


「それはよかった。そう言ってくれると作った甲斐があったよ」

「それより、これは何の金属ですの?」

「タングステンっていう金属だ。」

「タングステン?ミスリルやオリハルコンにしては遥かに重いと思いましたが、そんな金属は聞いた事ありませんわ」

「タングステンは世界で一番硬い金属と言われている。実際にミスリルやオリハルコンと比べた事は無いが、恐らくはそれより硬いと思う。なにせ刃を研ぐ事も出来ないからな」


タングステンの合金は非常に硬く、研ぐ事すら出来ない。

有名なのは東京湾の底、アクアラインの穴を掘った切削機の切刃だ。この切刃こそタングステンの合金で作られている。溶かした金属を四角い型に入れて鋳造した後、硬くて研磨することも出来ずにそのまま状態で使用する事になってしまった。切削機の切刃として取り付けられ東京湾を掘り進む間、あまり取り替えることも無かった合金と言われている。

今回作った剣は、既に微細な刃を魔法で作っているので研ぐ必要も無く、その状態でも切れ味は包丁並みにある。完全に重さで斬る剣だが、切れ味もよくて刃こぼれもしない。

重量を除けば最強の武器とも言える。


「そんな物を頂いてもいいんですの?」

「そこら辺の地面から取り出した物だから別に構わない。それに強さと引き換えに相当重量があるから、金があって軽い物がいいならミスリルやオリハルコンの方がいいだろが、今はこれで我慢してくれるとありがたい」


ミスリルやオリハルコンの存在はこの街の武器屋で存在は知っているが、値段も知らなければ実際に持った事もないので、何とも言えないが、やはり武器は軽くて丈夫なモノが一番だろう。


「いえ、このぐらいの重さがあった方が私としてはいいですわ。1本目の剣も悪くはありませんでしたが、こっちの方がしっくり来ますわ」

「そういって貰えると助かる」


こうしてフーカの武器が出来た訳だが、もうそろそろ他の面々にも武器を作った方がいいかも知れない。

実のところ、既に誰にどの装備を作るかは決めており、エレアとコロハの装備は出来上がっている。まだ完成していないのはシンティラの武器だけだった。


「みんなにも近い内に装備を渡そうと思う」

「え!?ミツルさん、私たちにもですか?」

「あぁ」

(あるじ)。わたしは武器を持つ必要はないと思うのだが・・・」

「エレアの場合は魔法を補助する魔法具を渡す予定だ」

「魔法具!?それは(あるじ)が作るのか!?」

「あぁ、そうだ」

「本当か!?」


こういう時、エレアが無性にかわいいと思える。俺が魔法具を作ると言うと、尻尾が外れるのでは無いかと心配になるほど振りながら目をキラキラさせて詰め寄ってきた。


「ま、まぁ。そのウチな。それよりお腹が空いたから帰ろう」


エレアの不意に見せた可愛さに顔が熱くなったのを誤魔化す様に、俺は宿に帰ろうとみんなを促した。

2・3歩足を進めた時、大切な事を忘れていたのに気付いた。


「あ!忘れる所だった!フーカ。これを使ってくれ」


そう言いながら、魔法袋から金属製の大きい鞘を出した。


「えぇ、ありがとうございますわ。あら?」


お礼を言って来たフーカに鞘を渡すと、何かに気付いた様だった。


「ん?どうした?」

「剣自体は中々の重さがありますのに、鞘は思ったより軽いと思いまして・・・」

「あぁ、そっちはそこまで硬さを求めなかったからな。そこそこ硬くて軽いのにしたんだよ」


フーカに渡した鞘はチタン合金で作ってある。

チタン合金は鋼鉄よりも強度があり、比重としては鋼鉄の半分程だ。ただでさえ重い剣なので、鞘ぐらいは軽い物にしようと思ったのだ。


「ありがとうございますわ。これは、早く主様のお役に立てるようにならなくてはなりませんね」

「期待しようかな」

「フフフッ。えぇ」


剣と鞘を渡したところで、改めて俺たちは宿に向かって歩き出した。




みんなで夕食を食べた後、俺は一人机に向かっていた。

目の前にはパピルス紙の様な紙とペン、それに図書館で書き写したサーマルガンの仕組みのメモ書きと科学辞典が並べられていた。


サーマルガンとは

電流を使い、弾の後方に瞬間的なプラズマ化を伴う爆発を起こして弾を発射する銃だ。プラズマ化に伴う爆発を利用する為、比較的低いエネルギー量でも一定速度未満であれば高い初速が出る。少し違いは有るがレールガンのご親戚のような物だ。

(SF小説・異脳者戦争より抜粋)


なぜこんな物を広げているかというと、シンティラの装備を作る為だった。

他にも炭や水、さっき作ったが不要になったクロモリ製の大剣などを用意してある。


「さて、昨日の夜コロハも相手をしたから今夜は誰も来ないし、頑張りますか!」

トントン!

「ん?」


今日は誰も俺の部屋に来ないだろうと思って気合を入れると、ドアをノックする音が聞こえて来た。


「誰だろ?開いてるよ」

「俺だ」


誰だろうと思ったら、部屋を訪ねて来たのはフェンリルだった。


「フェンリルか。どうした?」

「いや、なに。たまには静かに寝たいと思ってな」

「あぁ・・・それは、すまなかった」

「ところで(ぬし)は何をしている?」

「あぁ、ちょっとシンティラの装備をな」

「ほぉ~。あのトール神の如く力がある、あの娘に武器を与えるのか?」

「シンティラの力はそんなになのか・・・。まあ、力はあるが方向性が無くてな。だからそれを直線的な攻撃に変換しようと思ってるんだ」

「直線的というと(おおゆみ)や弓矢にするのか?」

「まあ、物を飛ばすという意味では近いが、それとは比べ物にならない威力を持った物『銃』を作ろうと思ってる」

「ジュウ・・・俺の時代には無かった物だな」

「あぁ、歴史としてもここ7・800年の物だからな。知らなくて当然だ。原理としては爆発(フラゴル)(いし)(つぶて)が飛んでくるのと同じだ。それが筒状の物の中で起きるから、物が真っ直ぐ飛んでいく」

「ほう、それはまた強力そうだな」

「まぁな。そう言えば、向こうの部屋はどうなってるんだ?フーカが居るからベットが足らないんじゃないか?」

「それなら問題ない。どうやらコロハとシンティラが一緒に寝る様だ」

「そっか、それは良かった。俺はこれの製作があるかフェンリルは先に寝ててくれ」

「そうだな。言葉に甘えるとしよう」


そう言ってフェンリルはベッドの横に移動すると、そのまま丸くなって目を閉じた。

こうして見ると邪神・ロキの息子では無く、ただデカいだけの犬に見えてしょうがなかった。しかし、神話の世界をある程度知っている俺からすれば、こいつが温厚で居られるだけ今の日常は平和だと思えて仕方がなかった。





「さて、どうなるかな」


シンティラ用に作ったサーマルガンを作成し始めて1週間。ようやく完成したので俺は朝のトレーニングがてら、いつものように街の外へやって来た。


今回作成したサーマルガンは、大きさがアサルトライフル程で、AK-47の様な形をしている。装弾数は20発で、シングルアクションになっている。マガジンも含めて全体は電気を通さない絶縁素材で作っていて、銃身の下部分に左手を当ててそこから電気を送る仕組みになっている。


銃の後ろに肩に当て、銃に取り付けたスコープを覗いて狙いを定めて試射をしてみる。

目標は距離にして2km程先にある木だ。

通常のライフルの初速は730m/s、射程は600m程だ。しかし、サーマルガンの性能は別格だ。サーマルガンの初速は初速1200m/s、射程は約3kmだ。

さらに恐ろしいのはその威力だ。約マッハ3.5で飛ぶ弾丸は、周囲の空気を突き破りながら進むので、直接弾が当たらなくても敵の肩を掠るだけでも、その肉を抉る事が出来る。


ロクであった時に銃の仕組みや手入れの時に部品をバラバラにする方法を学んでおり、しっかりと覚えて何度も解体と組み立てを繰り返して来たが、銃自体を作るのは初めてだった。

暴発の不安もあるので、念のため『不可視(トゥーレス・)強壁(インビジビリウム)』で自分を包み込むように発動させて対策を取った。

準備が出来たところで、いよいよ試射だ。

狙いを定めて・・・電気(グロム)を発生させる。そして、トリガーを引く!


バツンッ!ッパーーン!


放電の音と共に視界が一瞬光ると、遅れて雷が落ちる様な音が周囲に鳴り響いき、的にしていた木は幹の中程から折れてしまった。


「うん。中々悪くないな」


しっかりと狙ったところにも(的自体が折れてしまったので不確かだが)ちゃんと当たったし、威力や射程範囲も申し分は無く、成功と言える出来に一人で満足の笑みを浮かべていた。

その日はマガジンが空になるまで撃って誤作動・暴発が無い事を確認して試射を終えた。




「さて、いつ渡そうかな。やっぱり今日の特訓の時がいいかな・・・ん?」


みんなの装備をいつ渡すか考えていると、やけに街の人通りが多い事に気付いた。

それぞれの動きを見ていると荷物を荷台に乗せたり、家の窓を板で塞いだりと、大忙しのようだった。


「どうしたんだろ?」

「おい!ミツル!」


状況がわからず首を傾げていると、後ろから俺を呼ぶ声が聞こえて来た。振り向くと、そこにはギコとアイリがいた。


「あ、ギコさんとアイリさん。おはようございます」

「おい、ミツル!今はのん気にしてる暇はねぇ!」

「そうです!ミツル様も早く!」


明らかに焦っている二人に、さらに状況がわからなくなっていたが、ギコが口にした言葉で全てを理解する事が出来た。


「スタンピードがこの街に向かっている!」

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