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69・死の価値、生の証

今回はグロもエロもありますので要注意です。

教官から試験の合否基準と試験開始が伝えられた。

最終試験は『武器を使っての戦闘、及び殺害』。


この少年たちは、定期試験で不合格を3つ以上取った者たちだ。

この施設では、定期的に国内外から子供が連れて来られる。

そして、この施設から居なくなるには2通りがある。


一つは、卒業基準の18歳迄合格し続けて戦地の第一線で戦う事。

もう一つは、試験に落ちて殺される(間引き)事だ。


この最終試験はイチからジュウの者しか行わない。

単純に施設に居る時間が一番長いという事もあるが、それだけの実力があるという事でもある。


「俺もさっさと帰りたいから始めるよ?」


そう言って俺が二本の短刀を構えると、少年二人は目を涙ぐませ、恐怖で歯をガチガチと鳴らしながらも武器を構えた。


(それでいい。あまり、苦しまない様にしてやろう)


そう心で呟いて、俺は二人の少年に向かって凶刃を振るった。




最終試験を終え、俺は自室の部屋にあるシャワー室で返り血を落としていた。

最初にこの最終試験を受けたのは4年前、相手は同じ年の女の子だった。

その時は、「殺したくない」と泣いて喚いて拒否をした。しかし、女の子は覚悟を決めて襲って来た。

俺の体は本能的に生き残る事を選び、気付けば俺と女の子は鮮血に染まり、女の子は冷たくなって動かなくなっていた。その後も試験は定期的に行われた。

罪悪感や背徳感は3年前に置き去りにして来たので、今更罪の意識は感じていない。


ただ、試験が終わった後は堪らなく温かみを欲していた。


コンコン!


しばらくシャワーを浴びながらボーっとしていると、部屋をノックする音が聞こえて来た。


「はい!」

「私・・・」

「あぁ。イツか、開いてるよ」


部屋を訪ねて来たのはイツだった。


「お疲れ様・・・」

「あぁ。そっちも無事合格したんだな」

「うん・・・」


最終試験が終わった事もあって、昼間のイツとは雰囲気が変わっていた。


「お願い・・・すぐ、いい?」

「あぁ・・・」


俺はイツを優しく抱きしめて、ベッドに倒れ込んだ。


いつからだったか、最終試験が終わるとハチがナナの所へ行き、イツが俺のところに来るようになった。

俺たち4人は普段から仲がいいが、最終試験が終わると人肌の温もりを確かめる為に、それぞれ体を重ねていた。


(イチ)から十五(トウゴ)までは、ある程度自由が許されている。

食事の量・就寝時間・専用武器の所持・男女関係などだ。


俺とイツは互いの体温を求める様に、肌を重ねて夜を過ごした。



翌朝、定期試験の後は決まって休日なので訓練はない。

俺たち4人は食堂で待ち合わせて一緒に食事を取り、明日からまた始まる訓練に備えて自室に戻り、体を休める事に専念した。



そんな生活が3年過ぎた頃、事件は起こった。



「あ~疲れたな~!」

「ハチ!お前、今日の演習の時、予備拳銃落としただろ!」

「あ・・・ばれてた?」

「『ばれてた?』じゃねーだろ!それ拾った相手ペアに、罠仕掛けられて危なかったんだぞ!」

「わりー!わりー!」


いつも通り訓練を終えた夜、部屋で(くつろ)ぎながらハチと喋っている、いつもと変わらなかった。


ズッドーーーーン!


窓の外が轟音と共に明るくなった。


「な、なんだ!?だれか火薬庫で反乱でも起こしたのか?」

「いや・・・そうじゃないみたいだ」


俺が窓際で体を壁に隠しながら外を覗くと、遠くに見える島の岸壁にある砲台が燃えて、空には爆撃機が飛んでした。


ゥゥゥウウウウウゥゥゥ、ゥゥゥウウウウウゥゥゥ・・・


「チッ!今更、空襲警報かよ!」

「行くぞ!ハチ!」


けたたましい空襲のサイレンが鳴り響き、俺とハチは急いで戦闘服に着替えて部屋の外に出た。


まだ、この建物には爆撃が落ちていないみたいだが、時間の問題だろう。本来ならすぐに非難するべきなのだろうが、俺たちはイツとナナの部屋へ急いだ。


ガンガンガン!

「イツ!ナナ!居るか!」

ガチャッ!


乱暴に部屋を叩いて二人を呼ぶと、既に二人は戦闘服に着替えていた。


「一体どういう事なの!」

「わからないが、恐らく・・・と言うか、確実なのは敵国から攻撃を受けてるって事だな」


ナナからの質問はこの状況では愚問としか言えなかった。

この島は戦争が始まってから一度も、敵国の攻撃を受けた事は無かった。

しかしこの国は戦争中で、その為に俺たちは訓練を(おこな)って来ていた。


俺たちは急いで寮を脱出し、寮から一番近い第3武器庫へ向かった。


タタタタタタッ!タタタタタタッ!

「止まれ!」


もう少しで武器庫に到着すると言う所で、自動小銃の連射音が響いて来た。

曲がり角に差し掛かるところで建物に身を隠し、武器庫の方を覗いた。


「チッ!遅かったか!」


すでに敵らしき兵士が武器庫を占領し、建物の前には訓練生や教官が倒れていた。


「ダメだ。既に制圧されている」

「うーん、第5倉庫はどう?」


イツが透かさず提案して来た。


「第5倉庫?そんなモンあったか?」

「ハチ!なんであんたが知らないのよ!アンタのスナイパーライフルはそこにあるでしょうが!」

「え?あぁ。あれ、第5倉庫だったのか」

「あそこなら、まだ制圧されていないと思うわ!」


ナナの言う通り第5倉庫ならば制圧されている可能性は低い。

ここからは直線距離で1kmほどあるが森の地下にあり、入口も草むらに隠れる様に地面に扉があるだけだ。


「よし。考えて居てもしょうがない、すぐに向かおう」

「ルートはどうするの?ロク」

「ここから最終試験場に行こう。あそこの地下道から森に抜けられる」

「ゲッ!俺、あそこ臭いから嫌いなんだよ」

「贅沢言うな。それともハチ、今持ってる17発しか入っていない拳銃で特攻するか?」

「それは流石に無理!」

「じゃあ、文句を言うな。行くぞ!」


俺たちは身を低くして、最終試験場へ走り出した。




パン!パンパン!


最終試験場に着くと、そこにも敵兵居た。

しかし、見張りの敵兵は戦場にも関わらず、物陰に隠れもせず歩いているだけなので、いとも簡単にヘッドショットで片付ける事が出来た。


俺たちは手信号でお互いにコミュニケーションを取り、素早く最終試験場の建物へと入って行った。



「チッ!暢気(のんき)なモンだぜ・・・」


先に地下通路への隠し扉がある部屋を除いたハチが顔をしかめた。


「どうした?ハチ」

「敵兵が訓練生の女子を連れ込んでヨロシク()ってやがる」

「敵は教育もまともに受けてない様だな。敵は何人だ?」

「右に2人、左に1人だ」

「右は任せろ」

「わかった1・2の3で行くぞ」


俺とハチで打ち合わせをして、ドアノブに手を掛けた。


「1・・・2の3!」

パパン!パン!パン!


俺たちはしっかり一発ずつ相手の頭を外す事無く打ち抜いた。


「おい。ハチ・・・」

「あ~、え~っと・・・なんだ。角度的に見えなかったんだ」


ハチが伝えた人数は「右に2人、左に1人」。

しかし、実際は右に3人、左に1人だった。


「これは演習じゃないんだ。もっと集中してくれ」

「わるい・・・気を付ける」

「はぁ・・・とりあえず、入口のイツたちを呼ぶぞ」

ピーーー!


てへぺろしているハチにため息を付いた後、入口で敵が入って来ない様に張っているイツたちに指笛で合図を送った。



「うわ!向かって来る敵がバカばっかだと思ったら、本当にクソね」


イツとナナかやって来て、部屋の状態を見るとナナが汚いモノを見ると様に死んでる敵兵を見て言葉を零した。


「とにかく急ごう」

「この子たち・・・どうする?」


俺が隠し扉を開き中に入ろうとした瞬間、イツが訓練生の女子たちをどうするか聞いて来た。


「武装もない状態で連れていけばこっちも危ない。可哀想だが、面倒を見る余裕はないな」

「・・・そうね」

「そ、そんな!」


俺の判断にイツは冷静に納得した。それを聞いた女子の一人が声を上げた。


「私たちも連れて行って下さい!死ぬのは嫌なんです!」

「悪いが、それでこっちが危険に晒されるのは御免だ。お前らは腐っても訓練生だ。自分たちの身は自分で守れ。行くぞ!」


俺は突き放す様に言葉を投げかけ、3人に号を発して通路へと入って行った。


俺たちは地下通路を走って行った。

その最中に横から視線を感じて目を向けると、イツが俺の顔を見ていた。


「どうした?イツ」

「いえ・・・なんでもない。ただ、あの判断はどうかと思う」

「訓練生の女子を突き放した事か?」


俺が先ほど、訓練生の女子を見捨てた事を意味しているのかと聞くと、イツは首を横に振って否定した。


「違う・・・女の子たちを『見逃した事』・・・私だったら、不安因子になるから殺している」

「そうか・・・俺もまだ甘いな」


イツの言う通り、女子をその場に生きたまま置いて来たのは得策ではなかった。

建物の周りには敵兵が居て、彼女たちに与えられた武器は俺たちが殺した敵兵の銃、それと叩き込まれた戦闘知識だけだった。

そんな状態で最善の方法を考えたならば、必然的にこの通路に入って来る事はわかりきっている。

しっかりと通路に入って扉を閉めてくれれば問題は無いが、最悪の状況はその扉が発見されて、敵に後を追われる状態になる事だった。

それを考えれば、連れて行くか、殺すか、どちらかにして置いた方がよかった。


「まぁ・・・ロクのそういう甘い所も好きだよ」


イツが、小声で何か言った様だったがよく聞こえなかった。


「ん?なんか言ったか?」

「いえ・・・なにも」

「そうか?」


俺たちは地下通路を駆け抜けて、第5倉庫がある森に辿り着く事に成功した。

ちょっとした宣伝ですが、同時進行・・・と呼べるほどのペースでは無いですが、『庵乃雲』という話も書いてますので、是非見てみてください。

話としては、異世界ファンタジーとは違うので好みは別れると思いますが、個人的には書き辛い作品です!

なんでかって?主人公は無双しないし、ハーレムはないし、むしろ若干病んでる子だし・・・

まあ、そちらも何か気づいた点や揶揄、罵詈雑言などあればドンドンお願いします!

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