58・図書館
気づいたらマイブックが100件を超えてました!もう、これは皆さんのおかげとしか言えません!本当にありがとうございます!
すごいな~。自分の書いた小説を気に入ってくれる人が100人も居るなんて、今でも信じられません。
感想やアドバイス等を頂けると非常にありがたいです。これからも楽しんで書いていこうと思いますので、どうぞこれからも宜しくお願いします。
集中強化週間が始まってから5日が経った。
今日と明日は頭も体も休める為の休日と最初に決めていた日である。
この5日間で大分俺たちは変化を遂げていた。
まず、シンティラは
元々の才能があったのか、大分鋭いパンチが出せる様になっていた。
休日に入る最後の日にはギコと組み手を開始していた。まだまだ基本の動作と経験が足らないので、ギコからすれば子供と遊んでいる程度だが、ギコ曰く筋はいいそうだ。
次にエレアだが、
大分、火属性の魔法の基本を無詠唱で出来る様になっていた。
完全無詠唱は難しい様で苦戦している様ではあるが、魔法名を言うだけの無詠唱であれば通常の2倍から3倍の威力で問題なく扱えるようになった。
つい昨日だが、ケイトに教えた水の科学についても教えた所だ。
ミーナに教える身体の医学的基本知識も一通り終えることが出来た。休み明けからはいよいよ簡単な脈診と薬の調合だ。
最後に俺だが、
ゲンチアナから借りた魔法書に書かれた魔法を一通り使える様になっていた。
火属性魔法は
・爆発(Fragor)魔力に応じた範囲を爆発させる。
魔法のランクとしては4段階目だが正直、水素と酸素の混合気体を生成して爆発させる『水爆(Hydrogen Bom)』があるので、威力としては劣るところがあった。しかし、発動までの時間は遥かに『水爆』より早いので、使えて損は無いだろう。
・焔旋風(Flamma Turbo)普通は直径10mの炎が竜巻の様に燃え上がる魔法である。
しかし、竜巻の仕組みを理解していた上で使ったせいか、どんなに魔力を押さえても、俺の場合は直径20mから小さくなる事は無かった。ランクとしては4段階目だ。
・炎龍(Flamma Draco)その名の通り、龍の形をした炎が出現する。大きさは自由に変えられるが、小さくしても5m程までにしかならず、それ以上小さくなる事は無かった。ランクとしては5段階目だ。
水属性魔法は
・霧隠(Caligo)自分を中心に濃霧を出す魔法。しかし、自分も見えなくなってしまうので非常に不便。しかし、練習している時にシンティラが練習で漏れ出した電気が濃霧に触れた瞬間、霧の中を電気が縦横無尽に駆け抜けた事があった。使い方によっては高威力な魔法になりそうだった。ランクとしては2段階目。
・氷結結界(Gelid Obice)半径500mの範囲で気温を-50℃まで下げる魔法だ。最初は単純に『氷結』の範囲攻撃版だと思っていたら、魔力の流れ方からして、別物の様である。この魔法は、空気中等の水分を凍らせる『氷結』とは違い、空気そのモノを冷やして、周りの物を凍らせるようだ。ランクとしては5段階目だ。
治療魔法は
・回復(Recuperatio)体力や疲労を回復させる魔法だ。しかし、使った本人は魔力を使うので逆に疲れてしまう。つまり、自分には使えないと言う、何とも都合の悪い魔法だった。
魔法の習得はこの上なく順調だった。しかし、近接戦闘に関しては大した変化が無かった。
初日に大型のアクアゴーレムが2体では非常にキツイ事がわかったので、大型が1体と小型が2体で永遠と格闘していた。2日目の時は3分でやられて、昨日の時点で4分半しか持たなかった。
正直、全然進歩していないのだ。
進展が無いと言えば、召喚魔法についても進んでいなかった。
少しずつではあるが、ゲンチアナから借りた本を読み進めてはいる。
召喚魔法の前編に記載があった基本的なやり方(召喚自体が特殊なので基本的と言っていいモノかわからないが)である「魔物の真名を探り、強制的に服従させる。」というのは、偶然的ではあるがフェンリルとの契約がそれに当たる事も確認は出来ていた。
しかし、中編に当たる「魔物を極限まで弱らせて、契約印を魔物の体に刻み込んで使役する。」に関しては、書いてある方法はまだ実践出来ていなかった。
それどころか、ゴブリンの巣を掃討して以来、ギルドの依頼を何も受けていないのだ。
そろそろ、それぞれの特訓の成果を見る為にも、討伐依頼を受けてみるのも良いかも知れない。
しかし、今日は休日。それぞれに自由行動をさせている。
俺は俺で一人、街の西にある図書館へやって来ていた。
「デカいな・・・」
見上げたそこには、大きなヨーロッパ宮殿のような建物があった。
建物の前には幅の広い階段があり、その左右には恐らく知識の象徴であろう、本を持った大きな女性の像、2体が出迎えてくれた。
入り口には重そうな3mを越す大きな扉が口を開いていた。これだけでも中二心を擽られる趣きだった。
「おぉ!・・・スゲー・・・」
しばらく薄暗い廊下を通り、それを過ぎると、思わず声を出してしまった。
通路を抜けると地下1階から6階まで吹き抜けになったホールに出た。
ホールは縦長になっていて、左右には各階にギッシリと並べられた本棚を見る事が出来た。
自分の通っていた大学の図書館も大きかったが、それとは比にならない大きさに圧倒されていた。
しばらく、その盛観な光景を眺めていた後に、早速目的の本を探そうとホールに降りて行った。
階段を降りると、その脇にカウンターを見つけた。
いくつかのカウンターが開いていたが、その内、一人の男性係員が目に入った。
こういう大きい図書館の場合は年配でしかも、背中が丸まっていない司書に声を掛けるといい。
自分も友人に聞いた話だが、実際に公立図書館や大学の図書館で本を探す時、そういう人に声を掛けると大概、スムーズに案内してくれた。
今の時代は電子検索案内のパソコンなどがあるが、この世界にそんな物は無い。
「すみません。ちょっとお尋ねしたいのですが・・・」
「はいはい。何でしょうか」
「魔法書は何処の棚にありますか?」
「魔法書ですか。失礼ですが、魔法ギルドか冒険者ギルドのギルド証はお持ちで?」
「はい」
「ほー・・・」
ポケットからギルド証を見せると、老男性の係員がそれを見て少し驚いた表情をしていたが、直ぐに普通に戻ってギルド証を返してくれた。
「失礼致しました。ではご案内致します。」
そういって、カウンターを出ると左の奥へと案内された。
後ろをついて行くと、ふとその男性が笑いながら先ほどの驚いた表情について話し始めた。
「フフフッ・・・まさか生きてる間に貴方のような方にお会い出来るとは・・・人生、わからないモノですね」
「え?」
「フマナ・・・本の中だけだと思っていたのですが」
「あぁ、ご存知だったんですね」
「えぇ・・・これでも魔法文字を研究していた魔術師だったんです」
「そうでしたか」
「まぁ、もう年なので引退しましたがね・・・」
「なるほど、それでさっきは驚いていらしたんですね」
「えぇ。しかもその方が、魔法書を所望となれば色々と考えてしまいました・・・しかし、貴方は大丈夫そうだ。おっと、こちらです」
男性と話していると重厚そうな扉の前に着いた。
「入る前に注意事項ですが、書庫内での魔法は禁止です。また、魔法書を音読する事も禁止されています。複写は構いませんが、持ち出しは禁止されています。退出する時は持ち物を検めさせて頂きますので、ご了承をお願いします」
「わかりました・・・。ところで先ほど、大丈夫そうと言っていましたが?」
「えぇ、私の見る目は確かです。貴方は大丈夫そうだ」
「そうですか・・・ありがとうございます」
結局のところ、老男性の係員が言った「大丈夫」とはなんの事なのかはわからなかったが、なんとなくお礼を言っておいた。
「書庫内は入って右側に基本3属性の魔法書があります。中央は魔法具についてや魔法を使う上での考え方、心得みないな哲学書が。左側の隅っこに治療魔法に関しての本があります」
「あの、召喚魔法やランク5段階以上の魔法書はありますか?」
「えぇ、奥の扉にあります。ミツル様はギルドランク中以上なので閲覧が可能ですので、扉にある差込口にギルド証を差せば入れます」
「わかりました」
「では、ごゆっくりご覧下さい」
「ありがとうございます」
そういって老男性がお辞儀すると、そのままカウンターの方へと戻って行った。
「さて、奥の扉か・・・」
俺には『科学知識を正しく理解していれば魔法は使える』という法則があるので、魔法を使う上での考え方や心得みないなモノは必要がない。
ここに来たのは3属性以外の特殊魔法がどういったモノがあるのかを見る為だった。
「もしかしたら、俺が科学では知っているが魔法として思い付かない事もあるかも知れないしな・・・」
早速奥の扉に入って行った。手前の書庫には数名の利用者が居たが、奥の扉に入ると利用者の姿は見当たらなかった。
しばらく表紙を眺めながらどういった魔法があるのかと思ったが、ほとんどが魔法文字や魔法語と呼ばれているラテン語についての本ばかりだった。
しばらく歩いていると、部屋の一角の棚に気を引く表記があった。
『未解読禁書』
禁書と名前が付く位なのだから、きっとすごい魔法が書かれている本があるのだろうと一瞬思った。しかし、よく考えてみればよくわからない表記だ。
未解読と言う事は、内容がわからないはずだ。なのに禁書にされている。
なんとも中二心を擽る表記だ。
ワクワクしながら棚を除いてみると、フランス語で背表紙に『Sensual quotidienne』と書かれた本が目に入った。
「これは・・・『官能的日々』?エロ本?」
本を手に取ると、やはりフランス語で書かれた官能小説だった。その他にスペイン語で書かれたSF小説やサンスクリット語で書かれた仏教の本が置いてあった。
中には英語表記で『クマリク山にて冒険者が発見』と書かれていた。
恐らく、こちらの書き込みはこの世界で記入された物だろう。
「なるほど・・・人だけではなく、物もこっちの世界に来るのか・・・まあ、俺の場合はあのアマのせいなんだがな・・・あと、他には・・・ん?」
久々の現代活字印刷に懐かしさを覚えながら見ていると、日本語で書かれた小説を見つけた。
「お!懐かしい本があるな~」
その本は俺が小さいの頃に読んだSF小説だった。
内容は超能力者と科学者が戦っていく内容で、思えばこの本を読んだ時から魔法や超能力に憧れて居たのかもしれない。
「今は本当に超能力者みたいになっちゃったが、人生何があるかわからないな・・・ん?」
パラパラと斜め読みしていると、気になるシーンが目に入って来た。
そのシーンは重力を操る超能力者と小型のサーマルガンを持った科学者が戦っているところだった。
(「わ~たしの記憶が、確かならば!この事については、少し前のページに・・・」あった!)
心の中でモノマネしながら前のページを捲ると、そこには大雑把だが目的の物が書かれていた。
目的の物とは・・・
『サーマルガンの仕組み』
サーマルガンとは
電流を使い、弾の後方に瞬間的なプラズマ化に伴う爆発を起こして弾を発射する銃だ。プラズマ化に伴う爆発を利用する為、比較的低いエネルギー量でも一定速度未満であれば高い初速が出る。少し違いは有るがレールガンのご親戚のような物だ。(SF小説・異脳者戦争より抜粋)
つまりシンティラの電気を使って、方向性を持たせた武器が作れるのだ。
プラズマの作り方は大体わかっているので、帰ったら早速作ってみようと思い、メモ用に持ってきた紙にサーマルガンの仕組みを書き写して置いた。
その後も、その周辺の本を読み漁っては、新しい魔法のヒントをメモに書き留めていった。
「おや、ここにいらっしゃいましたか・・・」
棚の端に置かれた机で夢中になって本を読んでいると、案内してくれた老男性の係員が声を掛けて来た。
「はい。どうしましたか?」
「いえ、申し訳ないのですが閉館でして・・・」
「あ!それは失礼しました!」
俺は謝ると、急いで片付けを始めた。
「ん?ミツル様、これは?」
「はい?」
本を元に戻していると、老男性が俺の書いていたメモ紙に注目していた。
「ミツル様。ここの本達を読めるのですか?」
「えぇ、読めま・・・すん」
「すん?」
一瞬読めると正直に言おうとしたが、ここに置かれた本は『異世界の文字』で書かれている。そんなモノを読めると言えば、きっと面倒な事になる事は間違いないだろう。
どう答えていいモノか考えていると、老男性がため息交じりに声を掛けて来た。
「フー・・・やはり、人間族の暗号でしたか・・・」
「え?」
「いや・・・実は、私が現役の時はここにある本たちの研究をしていたんですよ。きっと、すごい魔法が隠されているのだと思いましてね・・・」
老男性は傍らにあった本を手にして、少し寂しそうに、しかし諦めきれない様に本を眺めてそう呟いていた。
「すごい魔法ですか・・・」
「えぇ、ですが・・・人間族の暗号となれば、きっとそれは世に出してはいけないモノなのでしょう・・・」
「いや、そんな大層な物じゃないですけどね」
「え!?」
老男性の本を見る目が、何故か大切な物を手放さなければいけない時が来た様な目をしていたので、つい口を出してしまった。
「ここにある本の多くは、国を滅ぼす魔法や大地を削るような魔法は書かれていません。むしろ、現実で実際に使われた魔法は殆んど書いていないでしょう」
「じゃ、じゃあ何が・・・」
「あえて言うなら・・・そうですね。知識と情でしょうか?」
「知識と・・・情ですか」
「そうですね。例えばこの本は恋愛とそれに付随した事柄が書かれています(まぁ、フランス語で書かれたエロ本だけどね・・・)。こっちの本には冒険者が世界を旅している時に、身長が手のひら程しかない者たちが沢山居る国に行ったり、身長が自分たちの50倍を越えそうな者たちが沢山居る国に行ったりした物語が書いてあります」
「そ、そんな国が本当に?」
「本当にあるかどうかはわかりませんが、そういった『この世のモノ』とは思えない事柄が書いてあるだけです」
「で、では!ここの本たちは危険ではないのか!?」
「えぇ、大体は危険ではないでしょう・・・」
「よかった・・・」
老男性はホッとしたような、でも残念がるような顔で近くのイスに腰を落とした。
「私は、ここにある本たちを研究して、より強力な魔法を手に入れようとしていた。しかし、研究を続けていく内にある事に気付いた。それはこの本たちに書かれている絵はすべて人間族だったのだ。私は驚き、そして恐怖した。この本たちは、きっと多くの国を滅ぼす為に存在しているのではないかと・・・。そして、私は研究をやめた。しかしこの本たちを、どうしても手放す事が出来なかったのだ・・・。フッ!心のどこかでは『まだ人間族の本と決まった訳じゃない』そう思いたかった。しかし、貴方に声を掛けようとやって来た時、その事が確信に変わってしまった。そして、この本たちを闇に葬らなければいけないとも思った・・・。だから、ミツル様」
「なんですか?」
「ありがとう・・・。この本たちは私にとって、既に愛着のあるモノになっていた。それを失わなくていい物だとわかっただけで私は満足だ。だから、ありがとう・・・」
老男性は若干、目に涙を浮かべて笑いながらお礼を言って来た。
そんなにお礼を言われる様な事はしていないが、その様子を見ただけで、良かったと思えた。
それだけに、隠していた事も言わなければいけなくなってしまった。
しばらく、老男性の様子を見守ったところで、決心していう事にした。2冊の本だけは例外的な本だからだ。
「申し訳ないのですが、こうなってしまった以上、この2冊の本について話さなければいけなくなりました」
「え?」
俺が2冊の辞書の様な分厚い本を持ちながら、老男性に声を掛けた。
このエリアにあった本物の魔導書を持ちながら。
作中に『SF小説・異脳者戦争』とありますが、実在しない小説です。
あと、これはスルーして頂いて一向に構わないのですが・・・
「誰か登場人物の絵を描いてくれないかな~」
なんて思ったりしてます。すみません。調子に乗りました。
でも、ここに書いた事は公開してません。募集中です!