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35・売り物と買い物

なんと、急遽2話同日更新!

今日は意外と書き進められたので、更新してしまいました。

え?今日は休みだったかって?もちろん今日も仕事でしたよwww

「アハハハハッ!」

「ラークさん・・・そんなに笑わなくても・・・」

「い、いや!し、失礼失礼・・・クッ!ククククッ」


ギルドを後にすると丁度お昼を回った頃だったので、どこかおいしい店でもないかと思い、ラークの所へランチを誘いに来たのだが。

ギルドの帰りだと伝えた所で、鵺は最初のミリの対応をまだ根に持って居るらしく、ラークにギルドで起きた事を話したのだ。

やはりこの鳥は余計な事しかしゃべらない。


「いやいや、失礼失礼。鵺殿はそう言いますが、私も受付の方が間違えたのもわかりますよ。一般的には剣士なら剣士、魔法使いなら魔法使いの身なりという物があるんですよ」

「見た目で判断するなんて、ご主人の凄さがわかってないんです」

「そういうお前だって、筋肉質でガタイがいい奴を指して『脳筋さん』って言うだろうが」

「それは頭の中まで筋肉で出来ていて、頭の悪そうな顔しているからです。ギコさんの事は、初めから何も言いませんでした!」

「ククククッ・・・。それにしても『(えん)(けん)のギコ』殿に勝つとは、ミツル殿も恐ろしい方だ」

「炎剣?」

「えぇ。ミツル殿と戦われた方ですよ。『炎剣のギコ』・・・彼の剣は炎の様に力強くて早い。しかも剣士でありながら魔法使いの証である、火属性3段階目の『炎射矢(フランマ・アロウ)』を放ち、剣に『照炎(フランマ)』を宿しながらの攻撃するなど、通常の魔法使いでも難しい戦い方をする方です。噂ではあの方が試験官を受け持った方は誰一人、合格した者が居ないとか」

「あぁ~・・・確かに」


それもその筈だ。

こっちが少し余裕を見せれば本気で掛かって来るし、弱ければ倒される。

そんな試験官なんて聞いた事が無い。しかも倒された奴は弱いという理由で不合格なのだから、尚更性質(たち)が悪い。


「それより、ミツル殿。今日はこの後の予定はお有りですか?」

「いや、ないですけど」

「では、買い物に行きましょう!」

「買い物・・・ですか?」

「はい!いくら魔法使いとして接されるのが嫌いだからと言っても、今のままでは冒険者どころか一般市民に見られてしまいます!」

「はぁ」

「ですので!折角サーニャさんにも帽子を貰ったんですから、それに合った服装で市民らしくない服を買いに行きましょう!」


確かに冒険者と見られないとなると、いろいろとこれから不都合もあるかも知れない。

ラークの提案はもっともなモノなので、昼飯を食べに行きがてら買い物に行く事になったのだが・・・。

なぜか、ラークが一番張り切っているのがよくわからなかった。




「さてさて、最初に仕立て屋に行きましょう!」

「行きましょー!」


昼飯のワイバーンサンドなるモノを食べた後、ラークと鵺が張り切って買い物コースを進み始めた。


「ラークさん・・・買い物の案内は非常に有難いんですが、店を空けちゃって大丈夫なんですか?」

「ああ、奴隷たちに任せてありますので、問題ありません」

「奴隷?ラークさんは奴隷を持っているんですか?」


店の中を見る限りだと、奴隷っぽい人物は見当たらなかったので正直驚いた。


「ええ、ミツル殿も会っているじゃないですか」

「ん?俺もあっている?」

鼠族(そぞく)の子ですよ」

「え!?あの女の子が奴隷だったんですか!?」

「ええ、他に2名の男の鼠族がいます。

商店の奴隷ですから、一通りの商品知識と対応の仕方は教え込んでます。

それにうちの場合は、あの店の規模を運営していくのに必要で3兄弟を買ったんです」

「へぇ~」

「まあ、今日はその辺も回りますので、どういうのが理想か考えといて下さい」

「はぁ・・・わかりました。・・・ん?」


余りにも奴隷制度がこの世界では身近になっている事に衝撃を受けていて、何となく返事をしたが、遅れてラークの言葉に気付いた。


「え!?『今日はその辺も』って、奴隷を買うって事ですか!?」

「冒険者ギルドで魔法使いとして登録されたんですから、従者の1名でもついていないとおかしいです。それに今日は月に2回の奴隷市が開かれる日なので、これを逃すと半月後になってしまうんですよ」

「いや、別に・・・奴隷はいなくても・・・」

「ダメですよ!」


奴隷の購入は断ろうとした瞬間ラークは立ち止まり、こちらに振り返って真剣な顔で言って来た。


「ミツル殿。確かにミツル殿は優しいですが、その優しさが逆に目立って近くに居る者に不幸が降りかかる事もあるんです。

なるべくでいいので『普通より少し変わっている』程度に納めましょう」

「は・・・はぁ」

「なので、今日は仕立て屋と奴隷市に行きます!あぁ、お金ならミツル殿の持って居るお金で十分過ぎる程なので、心配はしなくて結構ですよ!

あぁ!あと、お金の事で思い出しました!今朝作って頂いた甕ですが、もう売れましたよ!」

「は!?もう売れたんですか!?だって今回、10個も作ったんですよ!?」

「えぇ、ちゃんと値引きせず道具屋協会の決めた金貨5枚です。ですので、売却手数料の4割を引いた、金貨30枚を帰ったらお支払しますね」


今朝カーム達に売却依頼した甕4つとは別に、ラークから依頼を受けて10個作って置いた。

今回は二人から「何かしらの作者印を付けて欲しい」とも言われていたので、薬屋の家紋としてはメジャーな、丸に五三の桐を付けて渡した。

カーム達は別の街や村で売るので問題は無いが、バールの街ではすでに道具屋協会が金貨5枚と値段を定めていた為、そこから値段の変更が出来なかった。

そもそも確かに便利ではあるが、約半年分の生活費と同等の道具を買おうという奴がそんなにいるとは思って居なかった。

しかしその性能は事前に、イノシシ肉を売ったガルさんが喧伝していたので、あっという間に噂は広がっていたそうだ。


「次はいくつ作って下さいますか!?」

「え~っと・・・ラークさんには申し訳ないんですけど、カームさんが戻って来るまでは、次の入荷は無しで・・・」

「ええ!なぜですか!?今は作れば売れる状況ですよ!?」


次回の納品を未定と伝えると、ラークは俺の肩を掴んで迫って来た。


「そ、そうなんですけど・・・やはり、この品を最初に扱い始めたのはカームさんです。なので、カームさんを差し置いてドンドン売るって言うのはどうもですね・・・」


やはり最初に扱い始めたのとカームには価格の上限を伝えている以上は、一方だけ潤うと言うのもカームに悪いと思って居た。


「・・・フ~、そうですね。確かにそうかも知れませんね・・・。いやいや、お恥ずかしい。目の前にぶら下がった金に目が眩んでおりました」

「すみません」

「いやいや、とんでもない。ミツル殿の言う通りです。私もカームを配慮しなくてはいけませんでしたね・・・さて!気を取り直して、最初の店である仕立て屋に行きますよ!」

「あ!ちょっと!ラークさん押さないで下さいよ!」


さっきまで、落ち込んだような顔をしていたラークだったが、パッと色を変えて当初の目的である買い物モードに切り替わった。

ただし、先ほどまでのやり取りを誤魔化す様に、俺の背中をグイグイ押して仕立て屋に連れて行かれた。





「いや~。出来上がるのが楽しみですね~」

「ヨウウさんの絵ではご主人の服、すごくカッコよかったですよ!」


仕立て屋を出ると、ラークと鵺は満足げに俺を連れて市場の方へ向かっていた。

当の俺はと言うと、確かに服のデザインは申し分なくカッコよかった。

しかし、それまでに何枚も布を体に当てて合わせたり、採寸を細かく取られたりで少し疲れ気味だった。


仕立て屋だからなのか、羊の角が生えたヨウウと言う女性が担当してくれた。

これがまたテンションが高く、若干それで疲れ気味なのだ。


その上、これからあまり気乗りがしない奴隷を買いに行くという。

それだけで、足取りは重くなっていた。


しばらく歩くと大勢の人が集まっている大きい広場に出た。

周りを見ると、あちらこちらで仮設の舞台のような物が建っていた。

その上では首に首輪と値札のようなプレートを下げた男や女、年齢も俺より少し上ぐらいの奴から10歳に満たないような子供まで並んでいた。


「いや~午後の遅い時間ではありますが、まだまだ賑わってますね~」

「うわ~、すごいですね!ここにいい方が居るといいですね!ね!ご主人!・・・ご主人?」


二人はテンションが高い様だが、俺はそんな気分にはなれなかった。

並んでいる奴は全員、絶望や悲しみ、魂が抜けたような廃人気味の奴ばかりだった。

正直、この光景は好きになれない。見ているだけで吐き気がしてくるのだ。


「ご主人、大丈夫ですか?顔色が真っ青ですよ?」

「ミツル殿!どうしましたか!?どこか具合でも悪いのでしょうか!?」

「いや・・・どうもこの雰囲気は好きになれない。見てるだけで気分が悪くなってくるんですよ」

「そうでしたか・・・。なるほど、ミツル殿の優しさと言うのはこういう所で弱くなってしまうのですね・・・困りましたね~」

「すみません・・・」

「いえいえ、それがミツル殿の良さでもあるのです。仕方ありません、今回のところは───」

ッパーン!


ラークが今回は引き上げる事を口にしようとした瞬間、青白い光と共に大きな音が響いた。


「なんだ?電気がスパークしたみたいな音がしたが・・・」


俺も光と音の方を向くと、その方向からざわめきと怒号が聞こえて来た。


「こいつ!奴隷の分際で!」

「いやー!」

ピシャンッ!

「ひゃうっ!」

ピシャンッ!ピシャンッ!

「クゥッ!ヤッ!」


鞭を打つような音と少女の悲鳴がこちらまで聞こえて来ていた。


「何でしょうか・・・奴隷の中に魔法使いでも居たのでしょうか?まあ、その内騒ぎは収まると思いますが・・・とりあえず、ミツル殿一度帰・・・り・・・あれ?」


ラークが騒ぎからミツルに視線を戻すと、ミツルはすでにそこに居なかった。


「ご主じ~ん!待ってください!」


鵺の声のする方を見ると、獣人でもあり得ないようなスピードでミツルが騒ぎの方へ走って行くのが見えた。


「やれやれ・・・。面倒なお方だ」


とりあえずラークはその場に座って、ミツル達を待つ事にした。

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