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23・悪夢

※残虐な描写が今回は多いので気を付けてください。

気が付くと俺は暗い建物の中に居た。窓から見える空は月は見えず、曇っていた。

辺りには酷く匂いが充満していた。


(何だ・・・?この匂い・・・ひどく生臭い)


「や、やめろ!やめてくれ!グアァ!」


後ろから突然声がしたので振り返ると、黒尽くめの男に人が殺されていた。


『えっ!?』

「きさま!よくもぉ!」


驚きの声を出した瞬間。俺の横を別の男が駆け抜け、黒尽くめの男に斬り掛かった。

しかし


「フッ!」

ズパッ!


黒尽くめの男が笑いを零した瞬間、斬り掛かった男は声を上げる事無く首を()ね飛ばされた。


『なんなんだ、こいつ!しかもここはどこだ!?』


全く状況が解らない。自分はバールの街に向かう途中にカーム達に会い、一緒に行動していた筈だった。いくら考えても直前の事が思い出せない。


「居たぞ!」


状況を把握しようと考えていると、武装した大勢の男達が自分の後ろと黒尽くめの向こう側に姿を現した。


「追い詰めたぞ!」

『ちょっと待ってくれ!俺は関係────』

「●●!こんなところに一人でノコノコ来やがって!生きて帰れると思うな!」


俺が関係ない事を釈明しようとした瞬間、妙な言葉で遮られた。


(一人・・・?俺は見えていないのか?)


「組織がお前のようなイカレた奴をいつまでも放って置く訳ないだろ!あの時、死んでいればいいモノを・・・しかも、組織にノコノコやって来たんだ。楽に死ねると思うなよ!」

「フッ・・・フフフッ!フッハハハハ!」


突然、黒尽くめの男が笑い始めた。それは明らかに狂った笑いだった。


(こいつ、なんなんだ・・・狂っているのか?)

「何がおかしい!」

「フフフフッ!あぁ・・・あぁおかしいさ・・・。俺を殺す?お前らが?アハハハハッ!出来る訳ないだろ?」

「なに!?この人数で勝てるとでも────」

「逆に聞くが!・・・俺を殺せるとでも?フフフッ」


さっきまで暗かった屋内が雲の関係で月明りで、黒尽くめの男の笑みで歪めた口元から下を映し出した。

月明りに映ったその姿は忍者のような全身黒尽くめで、両手には二刀の小太刀を持っていた。


「きさま・・・。お前ら!(きょう)()の●●を殺せ!」

「「「おぉぉぉおぉぉ!」」」


言葉の一部が聞こえなかったが、男の合図と共に両側から大勢の男達が俺を無視して黒尽くめの男に襲いかかった。


(いくらなんでも、この人数は・・・っ!)


武装した大勢の男達に(なぶ)り殺されるかと思いきや、黒尽くめの男は目にも留まらぬ速さで男達を殺していった。

その光景は余りにも残虐で、吐き気が込み上げて来た。



「はー・・・はー・・・」


瞬く間に武装した70人程居た男達は1/3にまでなっていた。しかし、黒尽くめの男も大分傷を負っていたようだった。


「いくら世界最強の暗殺者と言われたお前でも、この数の猛毒を塗った剣で攻撃されれば(こた)えるだろう」

「フフフフッ!」

「まだ笑ってる余裕があるのか?」

「いやいや、フフフッ・・・最期に楽しかったと思ってな・・・来世はもっと楽しみたいものだ・・・」

「チッ!お前ら!さっさと殺せ!」

「「「おおおおぉぉぉぉ!」」」

ザシュザシュザシュザシュザシュ・・・!


黒尽くめの男は合図と共に襲ってきた男達によって乱刺しにされた。

しかし


「フフフッ・・・ゴプっ!」

ドサッ


最期まで男は笑っていた・・・





ガバッ!

「ハーッハーッハーッ・・・」

「だ、大丈夫ですか?」


息を荒くして飛び起きると、カームが心配そうに声を掛けて来た。

辺りを見ると夜の森の中で開けた所に泊まっていた。


盗賊に襲われた後、順調に道のりを進んでいた。

昼に鵺が大イノシシを連れて来たり、盗賊に遭ったりで予定より手前の場所での野営だが、それでも明日の昼過ぎにはバールの街に着くそうだ。


今日は俺が最初の見張り番をした後、ケイト・カームの順で見張りをすると決めたのだ。

カームが起きているところを見ると、もうすぐ外が白んでくるだろう時間だった。


「大丈夫です・・・」

「本当ですか?すごい汗ですし、さっきからうなされてましたよ」


自分の体を見ると多量の汗を掻いて服が濡れていた。


「いえ、悪い夢を見ていただけで・・・あれ?」

「どうしました?」


言葉を途中で止めた俺にカームが不思議そうに聞いて来た。


ついさっきまで見ていた夢が思い出せないのだ。ひどく吐き気がする程の悪夢だった事は確かだった。


「いえ・・・。なんでもないです」

「・・・?そうですか。まあ今日はお疲れでしょうから、ゆっくり寝て下さい」

「ありがとうございます・・・」


そうお礼を言ってまたシーツに包まって、横になりながらさっきの夢を思い出そうとしていたが、いくら考えても思い出せなかった。しかし、多量の汗を掻いてうなされていた事と、胸に残る吐き気が悪夢の酷さを物語っていた。


(きっと昼間の件があったから、悪夢を見たのだろう・・・)


そう考えながら、再び眠りについた。

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