1・異世界へ
気が付くと、木造の天井と窓には青い空が見え、頭には濡れたタオルが乗っていた。
壁には俺が着ていた服が吊るされ、自分は首元から少し切れ目が入って、紐で軽くとまったシャツを着ていた。
(ここはどこだ?確か…あの女に落とされて、気づけばこの状態・・・まったく状況がわからん。)
ガチャっ
「あ、気が付きましたか?」
部屋の扉が開かれ入ってきたのは、きれいな銀髪をポニーテールに結んだ青い瞳の17・8歳位の少女だった。間違いなく美少女の部類に入るだろう。
しかし、気になるのは頭には犬のような耳。細い腰から生えてる尻尾。
人ではないか、またはレイヤーであることはすぐにわかるそして…
「頭を酷く打ったみたいだ…」
「大丈夫ですか?」
呟く俺に、心配そうに覗き込んでくる。そして、頭の上に乗ったタオルを取り換えてくれた。感触もしっかりある事から、幻覚や妄想の類では無い事はわかった。
あとは・・・
少女がこちらに背を向けて、タオルを桶の水に再度漬けて絞っている。そこに手を伸ばし、尻尾に触れてみる。
「ふみゃ!」
べちゃ!
濡れタオルは見事に俺の顔面に張り付いた。
「な、な、ななななんですか!いきなり女の子の尻尾触るなんて!」
どうやら本物らしい・・・顔を真っ赤にして、こちらに人差し指を向けて震えながら言ってくる。
「それは本物だったのか・・・」
「あ、当たり前です!獣人なら普通ですよ!」
「獣人?」
「そうです!獣人なら普通・・・」
いきなり言葉が止まった。少女の方を見ると、向こうもこちらをジーっと見てきている。
「もしかして…魔人族ですか?」
「は?」
(魔人族?魔人的なやつもいるのか?)
「じゅ、獣人じゃないなら・・・ま、魔人って、こ、事ですよね?」
少女は何を勘違いしたのか、怯え始めた。
「何を怯えてるか知らないが、魔人とかいう奴じゃない」
「そうですか・・・」
「人間だ」
一度ホッとした顔がまた引きつり出した。
「に、人間?」
「ああ、人間だ」
「う、嘘でしょ…?」
「嘘を言ってどうする」
少女は顔色が青くなっていき、「ふえぇぇ」と情けない声を出して、俺が寝かされているベットに倒れて気を失っていた。
(さて、どうしたものか…しかし、一つわかったな。)
ここは異世界だ。