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17・魔法具技師じゃないよ?

「ミツルさん!よかったら一緒にバールまで行きませんか?」


朝の騒ぎから落ち着き、サーニャを寝かせた後に朝飯を男3人で食べていると、ケイトがいきなり提案して来た。


「それはいい!そうして頂けませんか?サーニャもまだ全快にはなっていないので不安ですし、俺からもお願いします!」


カームからも頭を下げて来た。確かにサーニャの容体も気になるところだし、何より馬車に乗せてくれるのは非常にありがたい提案だった。


「そうですね・・・サーニャさんの状態も気になりますし、お言葉に甘えます」

「ありがとうございます。バールまでですが、よろしくお願い致します!」

「こちらこそお願いします」


カームが嬉しそうに頭を下げて来たが、こちらとしてもありがたい話だ。


「よろしくお願いしま~す」


朝からどこかへ行っていた鵺がいつの間にか戻って来ていた。


「鵺。朝からどこに行っていたんだ?」

「サーニャさんの薬に使うカンゾウとマオウを取りに行っていました!思ったより苦労したんですよー」


そう言って鵺が向けた目線の先には沢山の薬草の根が置いてあった。昨日は急いでいた事もあって3・4本程度であったが、今回はその5倍の量があった。


「ああ、助かる。ありがとな!」

「へへへっ当然です!」


そんな会話をしていると二人の目線がふと気になった。


「二人共どうかしましたか?」


鵺も目線に気づいたのか、首を傾げて声を掛けた。


「いや・・・きのうも思ったんですが、なんで鳥が喋っているんすか?」


ふむ・・・ケイトの言っている事はもっともな話だ。普通は鳥が喋る事なんてないだろう。


「ああ、これはこいつの足についている石が動物に言葉を喋らせる魔法具なんです」

「ほー・・・そんな魔法具があるんですか。しかもこんな小さい物で・・・始めて見ますがどちらでこの魔法具を?」


商人の(さが)なのかカームが興味津々に聞いて来た。


「この魔法具は自分で作ったものですよ」

「ご自分で作った!?」

「ええ・・・」

「では魔法具技師でもいらっしゃるんですか!?」


魔法具技師?なるほど・・・魔法使いは居るけど地位があるという事は人数が少ないという事である。

しかし、この世界に科学という知識や技術はほとんどない。


つまり生活に必要な物は道具で補うしかないようだ。

それが魔法具であり、それを作る魔法具技師は必要なのだ。


「いや、これ一つしか作った事が無いので魔法具技師ではないです」

「そうですか・・・ところでこの魔法具ですが、また作ったりする事は出来るのでしょうか?」


(やっぱりそれか・・・)


「いや、偶然出来た物なのでまた作る事は難しいですね」

「え!?あの時ご主人は簡単に・・・むぐっ」


おっと危ない・・・急いで口を押えたがこういう時、鵺の言葉が他の人にもわかると厄介だ。

何せこいつの口は囀る(さえずる)様に軽いが、物覚えは鳥のくせにいい。

こんな物を世に出したら厄介事に巻き込まれるに違いない・・・。

あまり目立つ事は避けたいのだ。


「まあ、自分は他の道具も作れませんし、この魔法具も偶然うまくいっただけなのでまた作る事は難しいですね」


口ではそう言ってはいるが、笑顔と共に少し威圧的な魔力を放出させてみると、カームもケイトも何も聞いて来なかった。




食事を終えて片づけを済ませると、早速馬車の旅が始まった。

馬車に初めて乗ったが・・・なんというか・・・

尻が痛い・・・


馬車が石を踏んだりする度に強い衝撃が尻を襲ってきた。



しばらく我慢していたがこれ以上は無理だと思い、試行錯誤していた。

そこで魔力操作(マギカ・オペレート)でクッションを作って座る事を見出した。

魔力消耗は然程(さほど)多くないし、非常に快適になった。


その様子を目を覚ましたサーニャが、目を丸くして見ていた。


「ん?ああ、目を覚ましましたか・・・って言ってもこの揺れじゃあ寝られないですよね」

「いえ・・・あの・・・なんで、ミツル様は浮いているんですか?」


サーニャの言うとおり、傍から見れば自分は浮いているように見えるだろう。

魔力操作は酸素と窒素を圧縮し魔力を混ぜたモノだから、全くの透明だった。


「ああ、そうだ!サーニャさんにも敷きましょうか」


そういうとサーニャは俺の言っている事が理解出来ないようで、首を傾げていた。


魔力操作を四角くイメージして、その上に布を被せた。

すると低反発のベッドの完成だ。


「ここにどうぞ」

「え!?でもこの中は何も入っていなかったはず・・・え?」

「まあ、細かい事は気にしないで」

「わ、わかりました」


戸惑いながらもゆっくりと腰を掛けると、硬すぎず柔らかすぎずの感触で少し沈んだ。

そのまま戸惑いながらもゆっくり横になると馬車の振動は殆んど感じず、心地よい感触が全身を支えてくれた。


「ふー・・・なんだか心地よい感じです」

「それは良かったです」

「これも魔法なんですか?」

「まあ、そうですね・・・風魔法の応用みたいなモノです」

「そうですか・・・ミツル様は風の魔法使いなんですね・・・あれ?」


サーニャが突然起き上り、何か考え込み始めた。


「どうかしましたか?」

「あの・・・気のせいで無ければなんですけど・・・今・・・詠唱していなかったですよね?」

「ええ、無詠唱ですね」

「え?それって・・・そういえば、治療魔法も無詠唱でした・・・」

「はい。自分はある程度ですが、無詠唱で魔法を使えます」

「そうなんですか・・・あれ?え?この布が冷たいのも魔法ですか?」


熱はまだ完全に引いてはいないので、魔法で冷やした布を額に乗せて時々替えていた。その布が毎回冷たい事にサーニャが気づいた。


「ええ、水魔法で冷やしてます」

「風に水まで使えるんですか!?一流の魔法使い様じゃないですか!」


(あれ?婆さんやコロハそんな事言っていなかったぞ?もしかして、3属性と治癒が使える俺って特殊なのか?)


「ええ、まあ・・・」

「ミツルさん!聞きたい事があるんです!火の魔法って、俺にも使えるかな!?」


誤魔化そうとした瞬間、御者台から戻って来たケイトの乱入によってサーニャが固まってしまった。


俺はもしかして、普通じゃないのかもしれない・・・

なんだか短い気がするので2話同時投稿します。

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