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15、薬剤師の仕事

7/25・・・サーニャの病状を少し修正しました。

幌馬車から見せた女性の顔は唇が青く、顔も土気色をしていた。震えていて寒がっている様だが、汗は掻いていなかった。


「ご主人!この人危険です!」

「「うわ!鳥がしゃべった!」」


いつの間にか鵺が馬車の近くに行き、女性の様子を見た瞬間に声を発した。

その声にケイトとカームが驚いて居たが、そんな事は今はどうでもいい。

そんな事より、鵺には医学の知識は殆んど無いに等しい。自分やコロハに教わって薬草は収集を手伝ったりして覚えているが、診察や処方は出来ない。そんな鵺ですらすぐに危険だという事がわかる程だ・・・。恐らく猶予は余りないのだろう。


「カームさん!この人を治療します!」

「お、おい。どうするんだ?」

「自分は薬師です!この人は今すぐ治療しないと危険です!」


俺の言葉に呆然としていて、何も返事を返してこないで立っているだけだ。

この二人は当てにしない方が良さそうだった。


「サーニャさん、薬を作るのでもう少し我慢してください」

「はい・・・すみません・・・」


こちらの目を辛そうに見て弱々しくはあるが反応はしている。目の下のクマや声の出方で体力が落ちている事はすぐにわかる。お腹に耳を当ててみると、呼吸音は弱く、息苦しそうだが変な異音はしない。脈は指を触れるだけで力強さと躍動(やくどう)感を感じるが、血圧は高くない。浮緊脈(ふきんみゃく)だな。舌には白っぽく苔のようなモノも薄っすら見える、細白苔さいはくたいもある。


「いつからこうなりましたか?」

「2・3日前・・・です」

「腕とか足、頭は痛くないですか?」

「・・・はい。膝とか肘の内側が・・・ひどく・・・痛いで・・・す。すこし、楽になる時も・・・あります。頭はずっと痛いです」


なるほど弛張熱しちょうねつ(感染症などに多く、一日に体温の上下が1℃以上ある熱)なら感染症の可能性が大きいだろう。


「・・・病にかかる前に胸のこの当たり・・・心臓がドキドキしたり締め付けるような痛みが運動したりするとありましたか?」


そういって心臓の位置を指して聞いてみる。これで「Yes」と来たら厄介だが・・・


「・・・いいえ。そう・・・いったのは・・・なかったです。」


よし、心臓に病気は無い!使おうとしている薬は少し強く、体力が落ちているから使うのは最前じゃないかもしれないが、これしかなかった。


「鵺!」

「はい!」

「カンゾウとマオウを探して来い!」

「わかりました!」


勢いよく鵺は飛び出して行った。鵺には薬草の匂いがわかるらしく、いつもすぐに薬草を見つけてくる。武器以外にも非常に優秀な相棒である。

鵺が薬草を取って来る間、自分も準備をする。

サーニャを横にして額と脇の下を水魔法・流水(フルエンタ)とほんの少し氷結(コンゲラート)を使い、冷たくした布で冷やした。

次は手持ちの薬剤の準備である。

手荷物からシナモンと杏子(あんず)の種を出して砕いていく。


「ただいまです」

「おう!早かったな!」

「当然です!」


いい具合に粉々になったところで、鵺が両足に細い木の根を3・4本掴んで持って来た。

おそらく飛び出して行ってから15分と掛かっていないだろう。

それを受け取り、洗ってから潰していく。

本当は乾燥させて使うが、今は緊急の為このまま使うしかない。

次に粉々にした物とすり潰した木の根を鍋に入れて煮ていく。

その間もジッとしては居られない。治癒魔法(サニタトゥム)で少しでも体から病気の毒気を出して置く。


「お鍋沸きましたよ!」


魔法に集中していると、ケイトが声を掛けてきた。どうやら鍋に薪を継いでくれていたようだ。

少し煮立たせて、あとは冷めるまで待つだけだ。

出来た薬は今のサーニャには強すぎるので、出来た薬をコップに入れて水で薄めて飲ませた。


「大分不味いが我慢して飲め」

「すみま・・・せん・・・クゥ・・・」


大分不味かったらしい。しかし我慢してもらうしかない。

薬を飲み切ったあと、コップ1杯の水に塩と砂糖を1摘みづつ入れた物を飲ませ寝かせた。

あとは、治癒魔法(サニタトゥム)と薄めた薬を飲ませて行けば大丈夫な筈だ。


「ありがとうございました!サーニャの具合はどうですか?」


一息ついたところでカームが声を掛けてきた。


「あぁ、今夜を越えれば何とかなりますが、まだ危険な状態です」

「本当に申し訳ねェ!恩に着る!」


いきなりカームが土下座をし、見れば後ろにケイトまで土下座をしていた。


「あ、顔を上げて下さい!まだ助かったと決まってないんです!」


そう、まだ予断を許さないほど、脱水と高熱の状態だ。

治癒魔法(サニタトゥム)は病気・毒を治すが、それは初期段階の話しだ。

体力がなく、栄養状態も悪いまま病に掛かってここまで放置すれば、薬も必要となる。

しかし、今のサーニャの状況は合わせても脱水状態で危険だった。


「いや!それでも頭は上げられねぇ!お願いだ!サーニャを助けてくれ!頼む!」

「・・・わかりました、ここまで悪化しているから絶対に助かるとは約束出来ない。それでも全力は尽くすつもりです」

「ありがとうございます!」


まあ、夜通し容態を見ていればおそらくは回復するだろうが、何があるかわからないので絶対では無い事を言っておいた。


「さて、飯の準備を・・・」

「待って下さい!」


飯の準備の為に立ち上がろうとすると、カームが止めてきた。


「?」

「サーニャを診てもらっているんだ!飯ぐらい俺らで作りますんで、待っていて下さい!」

「そうですか・・・ですが、サーニャさんに飲ませる物も作るので、一緒に作りましょう」


ふと空を見ると大分暗くなって来ていた。その後ウサギを捌き、簡単な飯を作るのと並行してサーニャ用のスープを作った。

飯を食べ終わった後に夜の見張りについて話したところ、俺はサーニャの容体を見ているからしなくてもいいと言われた。



夜、サーニャに度々薄めた薬と塩と砂糖が入った水を飲ませ、魔法で冷やした布を変えたり、治癒魔法サニタトゥムして過ごして行った。

大分、書くペースが上がったので次に続きます。

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