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14・野宿の敵

「いや~、コロハさん完全にあれでしたね!」


昨日からずっと黙っているかと思えば、いきなり鵺が声を掛けてきた。


「あれってなんだよ・・・。それより、お前は二人にあいさつしなくてよかったのか?」

「え?あぁ、僕は昨日の夜の内にしておきました!今日はこうなるだろうと思ってましたからね」


どうやら俺が寝る前に準備している時、こっそり二人の所へ話に行っていたようだ。


「なんだよ。こうなる事がわかってたって・・・」

「え?まさか・・・ご主人はわからないんですか!?」

「お前は何を言っているんだ」

「コロハさんはご主人の事を好きだってことです」


何を言い出すかと思えば・・・


「まあ、1か月近くも一緒に生活していたんだから、嫌いな訳は無いだろう」

「あ~もう!そうじゃなくてですね。男としてご主人を見ているって事です!つまり、恋に落ちたって事ですよ!」


(何言ってるんだこいつは・・・確かにコロハは俺の好みだし、あんな子が恋人だったら俺も嬉しいが・・・)


「今まで家族みたいに生活していたからな、そんな事全然考えた事もなかったな」


正直言うなら嘘です。物凄いそういう事考えていました。


「は~・・・ご主人は女心がわからないんですかね~」


無性にバカにされてる気分だ。


「そういうお前はどうなんだよ・・・」

「僕には同じ女の子として多少わかりますよ!」

「へぇ~・・・ん?お前女だったのか!」


出会って1週間は経っていないが、一人称が「僕」と言っているので、すっかり男だと思っていた。


「む~僕はれっきとした乙女(おとめ)です。」

「そうか・・・鳥か刀の形しか見ていなかったからわからなかった・・・」

「ひどいです!やっぱりご主人は女心がわかってません!」

「はいはい・・・」


言葉が通じてもこの鳥は相変わらずうるさいので、適当に聞き流すことにした。




そのまま街に向かう道を歩いて行き、日が暮れる少し前に少し開けた場所があった。


「ここを~キャンプ地と⤴する⤵」

「なんですかそれ?」


わからないよな・・・なんでもない。北海道のとあるディレクターのマネをしたかっただけだから・・・。


「いいや・・・まあ、ここで今日は休もうと思う」

「もうですか?まだ夜には早いですけど・・・」

「確かに早いが、持ってる食料が少ないからな。狩りをして料理をすればいい時間になる」

「なるほど」


そうと決まれば、早速獲物を探す。


魔力(マギカ・)操作(オペレート)で空気を少し圧縮して魔力を混ぜて、それを前方の森に向けて弾けさせる。スケルトンを倒してから森で訓練する時に編み出した探知魔法(ソナー)だ。

原理はレーダーのように魔力と空気の波を作り、空間内を把握する魔法だ。

治療をするときに、ゲンチアナが人の体内に魔力を流して異常を見つける魔法サーチを使うところを見て思いついた魔法である。

今の所、森などの障害物が多い所では距離にして500m、何もない所で800m範囲の状況がわかる。一応、探知魔法(ソナー)と名付けている。


「お!あっちの方にウサギみたいのが居るな」

「出番ですか!?」


嬉しそうに鵺が声を上げた。本当は氷槍(ファメア・グラキエ)で仕留めた方が楽だが、時々空は飛んでいたが、ほぼ今日一日こいつは何もしていないので物足りないのであろう。


「ああ、じゃあよろしくな」



獲物の方に向かって森に入った。2分もしないうちに茶色っぽい大きめのウサギを見つけた。距離にして40m弱ってところだ。土魔法(サト・マギカ)の射程に入った所を確認して、ウサギを中心に直径10m程の囲いを作り出した。

こうなれば逃げられる事はない。練習もかねてある程度動けるようにした。


「鵺。縄鏢なわびょう

「はい!」


縄鏢(なわびょう)は最近新たに見出した鵺の形態だ。形は紐の先に苦無のような刃物が付いている。

これなら外しても手元に戻せるし、紐の引き方によっては外したと見せて背後から刺せるように出来る・・・らしい。

まだ実際には引いて戻す事しか俺には出来ていない。全て前の世界の知識だ。


素早く動くウサギに対して数回投げてやっとまともに当てる事が出来た。やはり木を相手に投げているのと実際に使うのは違い、練習が必要のようだ。


捕まえたウサギは大きく、余った肉をどうしようかと考えながら先ほどの開けたところに戻ると、一台の馬車が停まっていた。


「むっ!何者だ!」


一人男がこちらに気づいて、剣を構えてきた。


「いや、怪しい者じゃないです。ここで休もうと思って狩りから戻って来たところなんですよ」


鱗に覆われた尻尾が付いた男はしばらくこちらを睨みつけてきていたが、俺の手に持っているウサギと肩に載っているワシのような鵺を見て、納得して剣の構えを解いてくれたようだった。


「すまない」

「いや、いいんです。俺はミツルといいます。この先のバールの街に向かう途中なんです」

「そうか。俺はトカゲ族のカーム。同じトカゲ族の三人で行商をやっていてな、一人は今、ションベンしに行っている。あと一人は具合が悪くて馬車で寝ている」

「あれ?カム兄、その人誰?」


カームと話していると15歳ぐらいの同じく尻尾が生えた男が馬車の向こうの森から出て来た。


「紹介しよう。こいつは俺の弟でケイトっていう。こちらはミツルさんというそうだ」

「よろしくっす!ケイトって言います!」

「こちらこそ、ミツルです。よろしく」


ケイトが手を出して来たので軽く握手を交わした。


「そういえば、良かったら一緒にどうです?俺一人だと、このウサギを食べ切れる自信が無いんで」

「お?いいのか?」


4人で食べるには少し少ないかもしれないが、野宿には十分だろう。


「俺は一人分の調理器具しかないから、何か貸してもらえますか?」

「ああ、もちろんだ・・・サーニャ!中から鍋を取ってくれないか?」

「・・・は・・い」


聞こえた返事は弱った女性の声だった。

幌馬車から見せた女性の顔は唇が青く、顔も土気色をしていた。


「余計な事かもしれないですけど、治療した方がいいんじゃないですか?」


どう見ても辛そうにしている。治療できない病気とか、なにか理由があって治療できないのであろう事は何となく感じた。しかし・・・


「ああ、そうなんだが、今は金が無くてな・・・バールの街まで行けば金が入るからそれで診て貰おうと思ってな・・・」


カームが気まずそうに答えてくる。

正直旅なんてした事は無いしこの世界の事情もよくは知らないが、これだけはわかる。

旅にはいくつかの敵がいる。盗賊・魔物・自然災害などだ。病もその一つだろう。しかし、この人たちは病気を甘く見過ぎている・・・。

次回更新はまた1週間以内です。

※↑の予定でしたが諸事情により次を上げます。 7/13 2:50

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