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99・旅立つ準備

大変お待たせしてしまって、すみません。。。

「もう更新されないんじゃないか?」と思った方も多いと思いますが、ちゃんと話は進めていきたいと思います。

ただ、仕事が忙しいのと8月にあるお祭りの準備で手が回らなくなってきています。

気長に待っていただけると幸いです。

『魔導師ブミナ・ミル』別名、『獅子(しし)山羊(やぎ)のブミナ』

その魔導師が使う魔法の種類は数多く、その種類を全て知る者は居ないと言われている。

薬にも詳しく、今までも数多くの薬を魔法ギルドに発見報告をしているらしい。

その他の事に置いても知識が豊富で、世界で一番知識を持っている者とも言われている。

しかし戦闘ともなると、他の被害を考える事無くその強大な魔法を放ち、暴走ともいえる惨状を作り上げる。

当初は魔法ギルドに登録しておらず、冒険者ギルドにのみ登録していた。その頃に『獅子(しし)山羊(やぎ)のブミナ』の二つ名が付いたそうだが、本人はその名前で呼ばれるのを嫌っているそうだ。

二つ名の理由はその体の特徴から呼ばれたモノで、頭は獅子そのもので足は山羊になっている。当初は魔獣と間違われる事も多かったらしい。



「なんか、性格といい、姿といい、俺の知ってる奴のような気がするんだが・・・」


もう一人の魔導師であるブミナの詳細を聞くと、どうも俺の知っている奴にそっくり過ぎていた。


「ミツルさん、会った事があるんですか?」

「いや、あった事は無いが・・・」

『オレは会った事あるぜ』


俺達が話していると何処からともなく深く反響するような声が聞こえて来た。


「リンド・・・。お前も封印の中から話せたのか」


封印してからというモノ、一切喋らなかったので完全に隔離されている物だと思っていたが、そんな事はなかったらしい。


「なんで今まで黙っていたんだ?」

『腹いっぱい食べたからな、寝ていた』

「そうか・・・。っで?どんな奴だったんだ?そのブミナって魔導師は」

『一言で言うなら軍隊を(ひき)いた嵐だな』

「軍隊?」

『あぁ、奴は1000以上の羽が付いたゴブリンを召喚し、ウザッたい程の魔法を連発して来た。奴自身も魔法を放つが、ゴブリン共も魔法を撃って来たからな。一瞬でバラバラにされたのはあれが最初で最後だな』

「リンドが一瞬でバラバラって・・・どんな攻撃だよ」

「先生、誰と話してるんですか?」


俺とリンドで話していると、ケイトが不思議そうに声を掛けて来た。その声に気が付くと、隣に座っていたシンティラも不思議そうに首を傾げていた。


「え~っと・・・」

「あぁ。そういえば、シンティラとケイトはあの場所に居なかったから知らなかったな」


なんて説明しようかと悩んでいると、エレアが思い出したように言ってきた。


「ん?エレアは知っているのか?」

「えぇ、南の平野に行った時に会いましたわ。その時に主様をリンドから受け取ったんですもの」


エレアに問い掛けた疑問がフーカから返ってきたので、コロハにも目を向けると笑顔で頷いていた。どうやらシンティラとケイト、あとカームとサーニャ以外は、すでにリンドが召喚獣になっている事を知っていたらしい。


「そうだな。シンティラとケイトは会った事はあると思うんだが、この間のスタンピードの時に不死竜が来ただろ?」

「えぇ、居ました」

「あいつが召喚獣になった」

「「・・・は?え?ええぇえぇ!!」」


不死竜が召喚獣になった事を話すと、シンティラとケイトが声を合わせて驚いてきた。

っというか、そこまで声を合わせるなんて器用だ。


「姿は出す事が出来ないけど、紹介するよ。双頭の不死竜・リンドだ」

『リンドだ。いずれ機会があれば、本来の姿で改めて挨拶しよう』


声はするが姿が見えないリンドに対して、リンドに会っていない組は只々信じられないと言った表情をしていた。

傍から見るとなんだか腹話術をしているみたいに見えるだろう。

いや、きっと俺が竜の首の形をした人形を片手にはめれば完璧に違いない。

どうやら封印の中からも外の様子がわかる様で、簡単にみんなで自己紹介をして行った。


「ところで、ゴブリンに翼があると言っていたが、そんな種類はこの世界に居るのか?」


先ほどのリンドの話で気になっていた事があった。ゴブリンが進化するにしても、そんな翼が生えている進化なんて聞いた事が無いし、それに俺の予想が正しければ、そいつ等はゴブリンじゃない。


「わたしも聞いた事が無い」

「わたくしもですわ」

「そうですね~。私もお婆ちゃんとかからも聞いた事がないです」


俺が知らないだけかと思ったが、みんなもそんな種類は聞いた事が無いらしい。そうなると・・・


「なあ、リンド。そのゴブリンたち、詠唱無しで魔法を使ってなかったか?」

『あぁ。そういえば使ってたな』

「え!ゴブリンが無詠唱魔法を!?」


もしかしたらと思って聞いてみたが、間違いなかったようだ。それに対してエレアが驚きの声を上げ、周りのみんなも驚いていた。


「やっぱり、そうか・・・」

「先生はそれが何か、ご存知なんですか?」

「あぁ。俺の予想が当たっていれば、そのゴブリン一体だけでも並の冒険者で相手をするのは厳しいだろう。ただ、話を聞いただけでは推測しか出来ない」


俺の予測が正しければ、そいつ等はゴブリンではなく正真正銘の悪魔。恐らく下級悪魔か中級悪魔だろう。

なんとなくだが、そのブミナの正体についても確証が付いてきた。

そう考えていると、エレアがブミナの行動についてさらに教えてくれた。


「基本的にその名前と姿に関してはブミナは有名ではあるが、公然に出て来る事は(まれ)だそうだ」

「引き篭りなのか?」

「そういう訳じゃないと思うが、普段は魔法の研究をしていると言う噂だ。それに今までにその魔法を向けられて生きていられる、奴など・・・いや、ここに居るが・・・ともかく、そんな奴は居ないと言われているんだ。それだけに噂が勝手に生まれてる部分もあるようだけどな」

「なるほど・・・。まあ、それであれば会う事も無いだろう。会っても敵にならない様にするしか無いかな」

「確かに、リンドを一瞬でバラバラにするだけの奴を相手にしたくは無い」


最初の話から大分話が流れたが、ブミナについては『なるべく接触しない。もし、接触しても敵対しない』という話になった。

もし俺の予想が正しければ、相手は大総裁とも言われる怪物。関わらない方が得策だ。


「さてと。話は変わるけれど、今日の予定について話しておきたい。主な予定としては旅の準備だが、ケイトはカームさんたちといつも旅をしているから、そっちのいい様に準備してくれ。」

「はい!」

「こっちのメンバーは最初にみんなである程度衣類を買いに行こう。その後、シンティラとエレア、フーカは買出しを頼む。」

「ミツルさん、私はどうするんですか?」


指示を出していないコロハが聞いてきた。


「コロハは俺と一緒に来てくれ。ラークさんのところで色々やる事がある」

「わかりました」

「じゃあ、早速出掛ける準備が終わったら行動しよう」


簡単に予定を話して声を掛けると、全員が一斉に席を立って行動を開始した。


その後ケイトたちとは別行動を取り、長旅という事もあって下着なども買い揃えていった。

昼にラーク商会に着くと、既に店の裏にはラークに頼んでおいた馬車や必要な品物などが揃っていた。2日で1から揃えるのは大変だろうと思っていたが、そこは流石としか言えなかった。

足りない物や追加で欲しい物等を書き出して、午後の買出しなどの話をしながら昼飯を食べた。

午後は指示通りシンティラとエレア、フーカは買出しに向かって行った。


「さてと、コロハ。今持っている剣を見せてくれないか?」

「え?あ、はい」


コロハがいつも使っている二本の剣を受け取って鞘から抜いてみると、刃は所々欠けており、いくつか細かいヒビも見る事が出来た。


「スタンピードの時は心配だったから鵺を貸したが・・・改めて見ても、もう限界だな」

「やっぱりそうでしたか・・・」

「俺としては新しい剣を渡したいと思ってはいるんだが、なんとなくコロハがこの剣に対して思い入れがあるように思えたからな。一応聞いて置こうと思ったんだ」


また再会する予定ではあるが、ゲンチアナとの思い出の品だったらと、強引に剣を渡すのはどうかと思った。

しかし、コロハの口から出て来たのは違う者だった。


「私のお父さん。トベラって人の剣だったそうです」

「そうか・・・お父さんの物だったのか・・・」

「えぇ・・・。と言っても、私が生まれる前に死んでしまって、会った事も無いんですけどね。ある時、森に行く時の護身用としてお婆ちゃんが渡してくれたんです。」

「そうか・・・となるとどうするかな」


少なからず愛着が付いて居て、しかも家族の形見であれば他の物と言う訳にはいかない。


「あ、あの。そこまで気にしなくていいです!愛着が無い訳ではないですが、戦ってる最中に折れてしまっては危険ですし」


どうするか考えて居ると、コロハがなんでも無い事をアピールするように両手を振って言って来た。

しかし、その物に対する話を聞いてしまった後ではそうも行かない。


「では、その剣を形成し直すと言うのはどうでしょう?」

「ラークさん」


悩んでいると、後ろからラークが声を掛けて来た。


「形成し直すとなれば最短でも3日掛かります。王都に行った時に打ち直して貰うと言うのは如何でしょう?」

「なるほど・・・」


ラークからの提案はもっとも最善と言える案だろう。


「よし。コロハ、この剣を俺に任せてくれないか?」

「え!?あ、はい。お任せしますが・・・」

「大丈夫。もし、心配なら隣で見ていてくれ」

「わ、わかりました・・・」


ラークの案を取り入れる事にした。ただし、俺自身が金属を操作する事が出来るので、この場で作り上げる事にした。

剣を受け取り、魔力を流して含まれている物質を確認すると少し俺は驚かされた。


「よくこれで今まで戦って来れたな・・・」


コロハはその言葉に対して首を傾げていて、この剣がどういうものかをわかっていないようだった。


一言で言うなら『ひどい』。

魔力を通して解かる限りだと、銅・鉛・アルミ・ニッケル・スズ・鉄など、大まかには銅が主体だが色々な物が混ざっていた。それどころか、金属以外の不純物も多すぎるのだ。金属同士も混ざっている訳では無く、寄せ集めと言った感じで、その為に場所によって強度が全く違うチグハグな状態になっていた。

このままでは一度溶かして形成し直したとしても、強度に不安しか残らないモノになってしまうだろう。


「コロハ。このままだと形成し直しても、またすぐにダメになりそうだ。大分手を加えるけど構わないか?」

「はい。ミツルさん全てお任せします」


コロハに念の為聞いたみたが、返答はすぐに返って来た。

コロハの了承を得た所で、俺はラークに頼んで斧を2本譲ってもらった。


「よし!やるか!」


ここからはフーカの剣を作った時と同様に、暑さとの戦いになって来る為、気合を入れた。

まず、コロハの剣と斧の金属部分を溶かして混ぜ合わせた。この時点で既に周囲は物凄い熱気に包まれていた。

しかし、溶かしただけでは意味が無い。ここから金属以外の物質を排除していく。

熱で既に燃えてしまって炭化してしまった物も後で炭素量を調整するので、今は除いていった。


金属以外の物質を排除し終わったら、次は金属の選別だ。

大雑把に見ても9種類の金属が混ざりあっており、中には強度に何の役にも立たない物が多く含まれていた。


まず最初に要らないのはスズと鉛とニッケルだ。スズに関しては特段使う予定が無いので、特に形成する事も無く、取り除いた先から地面に転がしていった。鉛とニッケルは俺のベレッタやシンティラのサーマルガンの弾に使うので一塊にして地面へ置いていく。


次に、アルミと銅も選別する。アルミも何かと便利だから取って置いて、銅に関しては一部を残して除いた。

そして残った大まかな金属だが、鉄・クロム・チタン・モリブテンが残った。大体この位で剣の材料はいいだろう。しかしここで気になるのが、一向に溶けもしないし燃えもしない金属がところどころにある事だ。

剣を形成する為に溶かした金属の温度は現在約3300度。この位の熱になれば溶けないまでも、少しは柔らかくなってもいいが、それが見受けられない。つまり強度を保ったままの状態なのだ。

そのままにしておく事も出来ないので、一先ず取り出してみる事にした。


「なんだこれ?」


一塊にしたそれは灰色をした金属で、今まで高温で熱されていたにも関わらず、取り出して近くに持って来ても全く熱くなかった。


「それって、もしかしてミスリルじゃないですか?」


俺が首を傾げてその金属を眺めていると、少し離れていた所で見ていたラークが声を掛けて来た。


「ミスリル?これがですか?」

「恐らく・・・よく見せて貰っていいですか?」


コロハも知らないようで、マジマジとその金属を眺めていた。

ラークが良く見せてくれと言うので、そちらの方へ金属を浮かせたまま持って行った。

すると、ラークが突然指でチョンチョンと突っつき始めた。


「ちょっ!ラークさん大丈夫なんですか!?」


俺が焦る声を上げても気にした様子を見せないラークが一通り金属を見た後、こちらに笑みを向けて来た。


「大丈夫です。ミスリルは熱に対して極端に強く、1週間も熱しないと形成する事が出来ません。なので、さっき熱したばかりのミスリル位なら今触っても生暖かい程度なんですよ」


ラークは金属の塊を両手で受け取りながら説明してくれた。


「へぇ~・・・おっと、今は剣に集中しなきゃ」

「では後程、詳しくご説明しますね」

「よろしくお願いします。」


ファンタジー溢れる金属、ミスリルの現物が目の前にあると思うとそちらに興味が絶えないが、今はコロハの武器を作る事が優先なので再度金属の塊に意識を戻し、集中する事にした。

ラークは後で説明してくれると言うと、そのミスリルを持って店に戻って行った。


意識を戻して金属を更に分けていく、合金として使う物は混ぜたまま取り出していく。

炭素等も加えてクロモリ、チタン合金の二つに精製して、分けた後はこの二つを層にして剣の形を形成していく。

神経を集中させて厚さ0.02mm程の厚さで重ねていく。


精製した金属が無くなるまでその作業を続け、最後に流水(フルエンタ)で浮かせた水に突っ込むと、剣に反りが生まれてやっと二つの剣が出来上がった。


「フ~・・・出来た」


出来上がると同時に二振りの剣を地面に降ろして息を付いた。剣を作るなんて経験は、フーカの大剣とこれで2回目だが、自身ではいい出来だと確信していた。

形は元の形と殆ど一緒に作ったが、強度は格段に上がっている。元の剣は余計な物が多く含まれており、しかも剣全体で均一では無かったので非常にバランスが悪かった。

今回、斧も一緒に溶かして精製し、不純物や要らない金属を取り除いた事によって足らない量を補ったが、取り除いた不純物や使わない金属の量はもう一振り両手剣が作れるほどの量になっていた。


「こんなに使わない物があるんですね・・・」


地面などに転がしている金属を見てコロハがそう零した。

なんとなくだが関心と言うよりも、なにか思う所がある。そんな感じの目でそれらを見つめていた。


「さて、この金属も冷やしたら、竜車に積まなきゃな」

「え?」


俺が次の作業に入ろうとすると、コロハがキョトンとした顔でこちらを見てきた。


「ん?どうした?」

「いえ、その・・・。不要な金属って言っていたので捨ててしまうのかと思って」

「いやいや、この金属は全部使い道があるからな。俺の武器やシンティラの武器にも使うし、銅とかは食器や鍋も作れるからな」


今回出た金属はスズ以外は回収して別の物に使う予定があった。その事を告げると、心なしかコロハは少し嬉しそうにしていた。

きっと、今まで愛用していた剣の一部が捨てられてしまうと言うのが悲しくなっていたのだろう。なんとなくだが、その気持ちは少しわかるような気がしていた。


コロハの剣はそのまま外に置いておき、もう少し冷ましてから試し切りなどをして貰う事にした。

それまでの間にラークに用意して貰った竜車の中へ、用意して貰った物や自分たちの物などを載せる事にした。


ラークが用意した竜車(竜属の動物に引かせるので竜車と呼ぶらしい)はカームたちの馬車より大きく、街の中で見るバスのように決まったルートを回っている乗合馬車ぐらい大きかった。具体的に言うと、空の状態で余裕で15人程乗れる大きさだった。

しかし、このままでは荷物を詰めるだけで大分場所を取られてしまう。


そこで、魔法袋を作った時の原理で収納BOXを作る事にした。この発想は以前からあって、その為に既にラークには長方形で厚手のクッションを3枚と人が余裕で入る位の木箱を2つ用意して貰っている。


魔法袋と同様に箱の内側へ『Grimoire(グリモアール) de() Grande(グランディ) mage(マージ)』の中に書かれていた魔法陣を書いて、あとは暗黒(ダーク)物資(マター)をイメージして魔力を込めていく。

何の問題も無く出来た所でそこへ荷物を詰めいて行った。

全てが詰め終わり、コロハと二人で竜車に乗せ、そこにクッションを置けば完了だ。

シート部分のクッションは少しこだわって柔らかい物にして貰った。やはり座席が固いと振動などでケツが大変な事になるからだ。

基本的には異空間収納BOXに何でも詰め込むので、竜車の中は広々と使える。そのため、もう少し小さい竜車でもいいかもしれないが、フェンリルが居るのでどうしても大きめになってしまう。


一度、契約印に入るか聞いたところ


「ヒマだし、俺は外に居る」


との事だった。あと、試しに馬車を引くか聞いたら睨まれてしまった。

なので、フェンリルも竜車の中でくつろいで移動する事になった。


「あれ?ミツル殿。荷物はどうされましたか?」


店からラークが戻って来て疑問の声を掛けて来た。


「あぁ。もう詰める物は詰めてしまいました」

「詰めてって・・・どちらに?」


ラークは首を傾げながら竜車の中と周りを見渡していた。


「用意して頂いた箱の中にですよ」


俺がラークに異空間収納BOX兼座席の箱を指さしながら言うと、ますますわからないと言った感じで首を傾げてしまった。

それもその筈、ラークの用意した物は、保存食・鍋・フライパン・包丁などの調理道具・大型のテント・人数分の寝袋・各種薬草などだった。一番の荷物は大型のテントと人数分の寝袋だろう。それだけでもラークの用意した箱に納めるのは困難だった。


「実はあれに魔法を掛けて中身を拡張しているんです」

「中を・・・拡張?」

「つまりですね。こういう事です」


そう言って自分の上着の内ポケットに入れてある魔法袋を取り出し、そこから『Grimoire(グリモアール) de() Grande(グランディ) mage(マージ)』を取り出した。


「え!?は!?今その袋畳まれて・・・え?」

「はい。この魔法はこういった入れ物の容量を実際より大きくする魔法なんです」

「そんな事が・・・」

「あ!いい事を思い付きました!」


ふとした思い付きではあるが、ラークにも魔法袋を作ろうと思い付いた。


「ラークさんも魔法袋使いませんか?」

「わ、私ですか!?」

「えぇ、この街に来てから何かとお世話になってましたので、そのお礼です」

「いえいえ、そんな。私の方こそミツル殿には儲けさせて貰ってますので!」

「まぁ、餞別だと思って下さい」

「それは私たちが送る方では・・・」

「まぁ、細かい事は気しないで、ちょっと待っていて下さいね」


ラークの性格だと、このまま受け取って貰えそうにないので、言葉だけ残すと走って表に出た。

ラークの店の向かいの並びにある皮用品屋に行き、肩掛けにも手持ちにも出来る2wayのブリーフケースの様な物を買って来た。

そして馬車のところまで戻り、魔法袋の要領で魔法バッグを作って渡した。


「ラークさんこれを」

「本当に・・・よろしいのですか?」

「はい。この街に来てから助けて貰って、本当に色々助かりました」

「いえ。こちらこそ甕の事やミーナが薬師になった事だって―――」

「それはこちらにも利益がある事ですからお互い様です」

「それは・・・そうですが」

「そうですね・・・では、これは今後何か助けを求めた際の前金って事でどうですか?」


俺の言葉にしばらく考える様にしていたラークだったが、何かをあきらめる様にして頷いてくれた。


「そうですか・・・わかりました。そういう事であれば、頂戴して置きましょう」

「ありがとうございます。それで・・・早速お願いなんですが・・・」

「はい?」


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