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9・魔法の在り方

「ほー・・・獣化する魔剣じゃったとはのー」


ゲンチアナが珍しそうに鵺を眺めていた。


「婆さん。何か魔獣とかに言葉を喋れるようにする魔法とかって無いのか?」


このままキュイとかクェでは聞きずらいし、何よりうるさい。

まずは言葉を話して貰わなければ。


「う~ん・・・」


しばらくゲンチアナは顎に手を当てて考えているが、思いつかないようだ。


「そういえば、コロハから無理矢理聞いたが・・・召喚魔法使えるんだろ?その契約とかで何とかならないのか?」

「っ!コロハ!」


ゲンチアナが驚いてコロハに怒ろうとして目を向けた瞬間、俺がコロハの前に立った。


「婆さん、怒らないでやってくれ。俺は“無理矢理”聞いたんだ・・・コロハは悪くない。」

「むッ!・・・ふー、まあお主になら大丈夫じゃろ・・・」


一瞬、怒りの顔を見せたが、納めてくれるようだ。コロハは俯いたまま「ごめんなさい」と声が漏れていた。


「まあ、誰にも言わないから大丈夫だ。安心しろ。」

「・・・さて話を戻すが、召喚獣は契約したからと言って意思の疎通や言葉が通じる様にはなれん。こちらの命令に従うようにするだけじゃ」


獣化になるのであれば魔獣のように一度召喚して言語が通じるようになればと思ったが、そうはならないようだ。現代魔術の本の中に古代魔術にそういったやり方があると書いてあったが、この世界では少し違うみたいだ。そこで一つ閃いた。


(魔道具の方向性でそういった物があった気がする。魔石が存在すればもしや・・・)


「そうか・・・そういえば聞きたいんだが、この文字は魔法で使った事あるか?」


そういってコップの水を指に付けて、机の上にFのような二重矢印模様を描く。


「・・・いいや。魔法で使った事は無いの・・・しかし、どこかで見た事があるような気もするのー」

「なるほどな・・・」


(この世界には無いのかもしれないな。しかし魔法陣の考えがあるならば有効なはずだ。)


俺が机に書いた文字・・・それはアンスールというルーン文字だ。


ルーン魔法は自分が集めていた魔法関係の書物や小説にも多く登場している北欧神話の頃の文字だ。

一つの文字に数種類の意味を持ち、単体はもちろん、組合せや文字数によって効果を表す。

現代ではタロットカードの次にメジャーな占いとして使われ、逆さにすると違う意味になり、それも含めると多くの意味を持つので魔法陣に組み込まれる事が多い。

単体や複数の組合せで効果が変わり、使う際は石や木などの自然物に刻んで使う。そして魔力などの力を加え、正しい意味をイメージして効果を発揮する。



(これは試して価値はありそうだ。)


(おもむろ)に席を立ち釜戸に向かって細い薪を手に取った。

その様子をコロハとゲンチアナが不思議そうに見に来る。

もし自分の理解が正しければ、この世界はより強いイメージと魔力によって魔法は発動する。


つまり、イメージが大切な点と、その意味を形として残せるルーンは継続的な効果が見込める可能性があるという事だ。

手に取った細い薪に「<」のルーンを刻んでイメージする。


「<(ケン)」は火・情熱・知恵・開始・勇気の意味を持つ。


火のイメージをして「ケン!」と声に発し魔力を込めると、薪は燃え始めた。しかも手から放してイメージをやめても、細い薪は文字の部分だけ残して燃え続けていた。

照炎フランマでも、太い薪にめがけて20秒~30秒は向けていないとすぐに消えてしまう。

そこから考えると魔力の消費量は極端に低くなり、尚且つ持続性も申し分なかった。


「わ~・・・すごい・・・細い木がこんなに長く燃えるなんて・・・」

コロハの声で二人に目線を向けると、驚いた表情でこちらを見ていた。

「うん。うまくいったみたいだな」

「お、お主・・・何をしたんじゃ?」

「え~っと・・・術を魔法陣にしてそれを一つの記号にした魔法・・・とでも思ってくれればいいと思う・・・」


認識としてはおそらく間違っていないだろう。



魔法陣とは

数式・円や直線で結ぶ環状図形・文字などによって魔法の準備から発動までを補助・増幅・代行・起因する物だ。

()のソロモン王は72もの魔法陣を研究し、悪魔を召喚させた。

現代になって書籍などで魔法陣や呪文が公開されているが、そもそも魔力が出せる人が居ないし、魔法陣に必要な魔石なんて物もお目に掛かれる物でもなかった。

ルーンはその始祖にして集約図と認識しても大丈夫だろう。


「さて・・・」


(あらた)めて鵺に近づく。問題はこのルーンをどうやってこいつに取り込むかだ。


「鵺。お前刀になった状態で、刀身に傷つくと痛みとかってあるのか?」

「クェ!?クェ~、クキェキュキュキュ。」(え!?まぁ痛いですが、そもそも簡単には傷がつかないです。)

「そうか・・・どうするかな・・・」

「あの・・・」


悩んでいるとコロハが申し訳なさそうに、声を上げた。


「ん?コロハ、なに?」

「いや、アクセサリーとして着けても効果は無いのかな?って思って・・・」

「それだ!」

「ふぇ?!」


俺が大声を出すと、コロハが驚いて声を上げた。


「婆さん魔石とか、魔力が(こも)った石無いか?」

「微弱なやつならあるが、それでいいかの?」

「十分だ!」


ゲンチアナから受け取った丸い石にアンスール・ケン・マンを刻み込んだ。意味は言葉・知恵・人間である。

それを落ちないように足に付けて魔力を通す。

体や石が発光する事も無ければ、目立った変化もなかった。

しかし・・・自分の予想が正しければ、俺以外にも言葉が通じるはずだ。


「なぁ・・・鵺、なにか感じるか?」

「え?特に何も感じませんが、変わったのでしょうか?」


鵺がしゃべった瞬間すぐにわかった。

さっきまで二重音声だったモノがなくなっているのである。

コロハ達を見ると目を見開いて鵺を見ていた。その状況に鵺は不思議そうに首を傾げて言葉を口にする。


「コロハさん達が固まってますが、何か僕に変化があったんでしょうか?」

「いや・・・見た目に変化は無いがの、儂らにお前さんの言っている事がわかるようになったんじゃ。」


ゲンチアナの言葉にしばらく鵺も固まっていたが、意味が理解できたのか翼をばたつかせてはしゃぎ始めた。


「本当ですか!僕の言っている事わかるんですか?!」

「ヌエちゃん!ヌエちゃんの言ってる事、わかりますよ!」

「ありがとうございます!ご主人!」


コロハと一緒に喜んで、その勢いでコロハと改めて自己紹介などを初めた。

すっかり二人は仲が良くなったみたいだった。

その横で俺は一人、確信を持った笑みで喜びを噛みしめていた。それは・・・


自分の持っている知識は、この世界で魔法として使う事が出来る・・・。

また、4・5日後に更新予定です。

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