プロローグ
「あ~、いたいた!探したんですから。」
一日が終わり、眠りにつこうとしていた俺の前に突如、美女が姿を現した。
金色の髪を腰までおろし、人の家に靴のまま立っていた。
しかし、玄関のカギは閉めた。物音すらなかった。しかし美女が自分の部屋にいる。
「ふぅー。妄想癖が悪化したか…」
「想像豊かですこと。」
独り言、半ば現実逃避して再度眠りにつこうとすると。楽しそうにくすくすと反応してきた。もちろんこんな美女と関わり合いなど無い。
(きっと妄想に違いない。もしかすると、俺はすでに寝ているのかもしれない。)
「不審者を前に寝るなんて、大した方ですね。」
「っ!」
笑いながら俺に触れてきた。確かに触られてる感覚がある。夢じゃない!
飛び起きて再度美女を見た。紫色をした怪しい瞳はまっすぐこちらを見ていた。
「…誰だ?」
「明日、迎えに来ますね。」
(俺の質問はガン無視かよ!)
そう言い残し、壁に吸い込まれるように美女は消えた。
(ま、まさか幽霊か?俺幽霊見たの初めてだ…。いや今はそこじゃない。明日…迎えに来る?お迎え?どういうこと?・・・よし。寝よう!)
考えたところで面倒だったので寝ることにした。そう、見なかったことにする。
翌朝休日の惰眠を程よく貪り、起きた。昨夜のことを思い出して壁を確かめてみたが、何も異常はなかった。やはり夢だったのだろう。確認することが終わり飯を軽く食べると、また布団の上に戻った。そして、ぼーっとし始めた。
俺の趣味でもある妄想である。
中学の頃から魔法に憧れて、化学や物理の書籍、ファンタジー物の小説、魔術や呪術の本などを読み漁っていた。
所謂、中二病患者である。
魔術の中には魔法陣のような数学的な要素を含む物や、日本語訳になっていない物もあった。
それが功を奏してか英語・数学・化学・物理は得意となり、大学も医大にすんなり入れた。
やはり魔術師に付き物である薬学に興味を持ち、薬学部・生薬学科に入った。去年から大学院で漢方(万能回復薬的な物の生成)を研究している。しかし魔法的な憧れを今もなお持ち続け、魔法を妄想している。
「居るかしら?」
「…幽霊が出る時間には早くないか?」
自分の意としない昨夜の妄想が姿を現した。
「あら、これでも生きてるんですよ。」
なにが面白いのか、くすくす笑ってくる。
「昨日も言ったけど、迎えに来たの。」
「一緒に行くとは言った覚えはないが?」
「そうね。取り合えず・・・頑張ってね」
「は?人のはなsっ!」
突然俺の居たところに穴が現れ、落とされた。
落ちる時、謎の美女はにこやかに笑って、この国の皇族のように手を振っていた。