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出会いは突然にー

教室の自分の席につき、彼は本を広げた。

本を読めば秀才っぽく見えるし、何よりも読むときに下を向けば、自分の顔にさらりと髪がかかり、それをかきあげる姿に女子生徒がみとれ、男子生徒も彼にはかなわないと認識を深めることがわかっているからだ。


小難しそうなブックカバーを取れば中身はめくるめく官能うずまくいやんな小説であるのだが。




「席につけー。今日は転校生を紹介するぞー」


教室に入るなりやる気のなさそうなけだるい声で担任がそう言った。

ざわめく教室。

この金持ち学校に編入とは、かなりめずらしい。

それなりに資産家の家庭でないと授業料は払えないし、そんな資産家の家に産まれていれば大体は幼稚舎からこの学園に入る。

なんで編入?


「なんでも今まで海外にいたらしくてな。日本に戻ってきたから編入、という形になった。ほかは本人に言ってもらおう。おい、入ってくれ」


教室中の視線が入口に集中した。



がらりと扉を開け入ってきた人物に、秋帆は目を奪われた。しん、と静まりかえった教室に、彼の声が響く。




「・・・辻影秀英つじかげ しゅうえい。よろしく」



淡々とした、短くそっけない挨拶。

しかしそれでよかった。

なぜなら、誰も聞いていなかったからだ。


彼は、それはそれは、精悍な少年であった。


190センチ近くあるであろう身長、無闇矢鱈についたのではない、ほどよく筋肉質な肉体、黒い短髪をたてたことで見える額は秀でており、怜悧な輝きを放つ眼や高い鼻筋、なによりもその放つ雰囲気が、彼はただの少年ではないと物語る。



「・・・おーい、みんな、拍手ぐらいしろよ」


教師の声を聞いて、我に返った生徒たちから大きな拍手が沸き起こった。


-こんなかっこいい人見たことない-


女子生徒からも男子生徒からもそんな声が漏れ聞こえた。


ギリッ


歓迎ムードの生徒たちとは反対に、唇をぎりぎりと噛み締め、秋帆はとんでもなく苛立っていた。


ちくしょう、こいつ・・・俺の思う理想の男像まんまじゃん!!むかつくー!!


彼の心はそう叫んでいた。

彼の見た目はお世辞にも精悍とは言えない。

体つきも、身長はそこそこあるが筋肉がつきにくい体質のせいか華奢であるし、顔も中性的で間違っても男らしいとは言えない。

自分とは正反対の男らしい秀英が、かなり妬ましいようだ。


「席は、そうだな、おっ、東条の横が空いてるか。そこにしよう。東条、辻影の面倒、見てやってくれ」


教師がそう言った途端に、秋帆はその噛み締めた唇をなんとか笑みに変え、目元も根性でなごませながらできるだけ爽やかに言い放った。


「はい、もちろんです。辻影くん、ここだよ」


秀英が秋帆のほうを見た。

目があった途端に秀英は驚いた顔をし、何事かをぼそりと口走った。



その言葉は小さく、だれの耳にも届かなかった様子であったが、なぜか秋帆には彼がなんと言ったのかがはっきりとわかった。


「・・・姫だと?俺は男だっつーの」


張り付けた笑みもそのままにドスのきいた声で小さく毒づく。



「辻影、ほら、さっさといけ」


秀英は担任に促され、やっと一歩を踏み出した・・・かと思うと、ものすごい速さで秋帆のもとにやってきた。

しかも、先ほどまでの無表情はどこにいったのだ、とつっこみたくなるほど頬を赤らめ眼を潤ませ、口にかすかな笑みをうかべながら。



「うわっ」


「あぁ、懐かしい。お元気でしたか?」


秀英は秋帆の目線に合わせてしゃがみこむと、片膝をたてて手をそっと握ってきた。

・・・意味不明な言葉と一緒に。


「いや、おま・・・ごほん、辻影くん、どうしたの?君の席はそこだよ。それに、僕らは今日が初対面じゃないか。もしかして誰か知り合いにでも似てるのかな?」


キモイんだよこのやろう、手をはなせ!と叫びたい気持ちをおさえ、優しく諭すように秀英にそう言うと、握られた手をさりげなく引き抜いた。誰にも見られないようにズボンで拭ったのはご愛嬌だ。


「なにを・・・ん?」


何かを言い募ろうとした秀英が黙った。

信じられないというように秋帆の姿を凝視している。

そして急にさぁっと青ざめると、口をぱくぱくさせて叫んだ。


「・・・・・・男!!」


あたりまえだ、どこ見てやがったこんちくしょう!!


秋帆は笑顔で青筋を立てながら心の中で怒鳴った。

女の子に間違われちゃうほど美人です(`・ω・´)ドヤ顔!

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