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私が小学校の低学年のときに見ていた夢を秋帆の夢として書いてみました。

はぁっはぁっはぁっ



手をひかれ、ただただ森の中を走り抜ける。



-姫様、こちらです、お早く-


すでに羽織っていた打掛はどこかにいってしまい、履物もぬげ、足袋が真っ黒になっている。

踏みしめる枝や葉は足袋を傷つけ、それに包まれた柔い足からは血が滲んでいる。

手を引く青年は、鎧を血と泥で汚し、片手に刀をもって辺りを警戒しながら、足を止めることなく走り続ける。



はぁっはぁっはぁっ



ー !! 追っ手が参りました、こちらへ、さぁ-



周囲から馬の蹄の音、そして二人を探す追っ手の怒声が聞こえる。

青年は速度をさらにあげた。

ついていこうとするも、着物の裾が邪魔をする。



はぁっはぁっはぁっ



-くっ・・・このままでは・・・-



人の声がかなり近い。



はぁっはぁっはぁっ



青年はぴたりと足をとめ、その場に跪いた。



-姫様、お先にお行きください-



何を言われているのか、わからない。わかりたくない。



ーいや、いやよ!!あなたを置いて行けないわ-



-このままでは姫様まで奴らに!この向こうにある国境を超えれば、あなた様は安全です。御祖父様のお国には、奴らも手を出せますまい-



必死に言い聞かせるその顔は、普段の涼しげで、優しい雰囲気が霧散するほど強張っている。



-あなたも、あなたも一緒に-



-私はここで。   姫様のご無事をお祈り申し上げております。 それでは、御免仕る!!-



言い募る声を遮り、青年は激情を押さえ込んだ声で別れを告げ、追っ手を惹きつけるためにわざと名乗りをあげ、国境とは別の方向に走り出した。



ーいや、行かないで、行かないで



           -康秀!!-






ジリリリリリリリリリリリリリリリ!!!!!!!!


ガンッ!!




「あ゛~~~~・・・またかよ・・・」



大音量で鳴る目覚まし時計に拳を叩きつけ、地を這うような低い不機嫌な声を出してむくりとベッドから起き上がる。 

 


「ふあぁぁ~ ったく、もう見飽きたんだよ。どうせなら胸とケツがでかいグラビアアイドルとかの夢ならいいのによ」



サラサラの色素の薄いショートヘアを手でガシガシと乱し、その中性的かつ耽美な顔を大きなあくびで歪ませながら、彼はぼやいた。



彼-東条秋帆とうじょう あきほ高校2年生性別♂-は、ここ数カ月、同じ夢を見続けていた。



時代は戦国、敗戦した国の姫がその国の武将に手をひかれ、ひたすら森の中を走って逃げている、そんな夢だ。

見るほどにリアルさが増し、二人の感情まで流れ込んでくる。

だが、そんなものはどうでもよいのだ。

そう、問題なのは-


夢の中で、彼自身がその敗戦国の姫である、ということだ。



「ちっ・・・なんで俺が女なんだよ。そんな願望、ねぇっての。」


舌打ちをかまし、ベッドから降りた。






「みて、東条君よ!」


「と、東条君!おはよう!」


「東条君!おはよう!!」



きゃあきゃあという黄色い声がかけられる。


「みんな、おはよう」


その声に返事をするのは、サラサラと髪を風になびかせ、髪と同色の眼を細め、その秀麗な顔に笑みを浮かべた、東条秋帆、彼だ。

彼は私立籐凌大学附属高校(国内有数の金持ち学校だ)の制服であるブレザーをきっちりと着て、爽やかな空気をまきちらしている。

今朝グラビアがどーだとか舌打ちだとかを部屋でぶつくさやっていた人物とは思えないほどで、その姿はさながら王子様だ。


「今日も素敵~~~」


「ほんとよねぇ、あの爽やかさ、誰にも真似できないわぁ」


そんなことを言い合っている女子生徒に、外面はなんとも思っていない風を貫きつつも内心ガッツポーズを決め、彼は颯爽と歩いた。

-ふっ、ちょろいぜ-

女子生徒の歓声は全て彼のものであった。

彼女たちの言葉は、純粋に彼を異性として意識し、彼の美しさを讃えるものであった。



この日までは。




楽しんでいただけるか不安ですが、がんばります。

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