other Episode 04:Unknown Shadow
恋一行が丁度夜の学校へと騒がしく移動中の時刻。
特務処理機関第二本部にて、尾崎啓一は暗澹たる室内にいた。そこは6畳の小さな部屋。足の踏み場すらままならないほどあらゆる書類が堆積しているの所為で、実質上残されたスペースはほんの一抹である。
ロッキングチェアに腰を下ろす啓一を囲むような配列で設置されている無数のディスプレイは、関東地方の地図が事細かに映し出されていた。
アリアの戦闘委員や恋の監視委員と比べ、啓一は前線から一歩引いた補助委員、兼、情報委員の役職を担っている。そのため啓一は月数回の頻度でこうして機関本部に夜通し滞在し、?能力?の不正使用及び新たな能力者の出現の推移を見張っていた。
見張り、といっても、大した労力も技術も必要としない。能力者が?能力?を行使すれば、啓一を取り囲むディスプレイが、?能力?を行使したと思われる座標を自動的に割り出してくれる。反応があれば対処策を検討し、戦闘委員を現場に派遣する。それだけだ。
啓一は幾重にも積み重なった?能力?に関する報告書をディスプレイを照明だよりに一枚一枚、速読していた。
「……」
啓一は数分に一度、書類から目を離し、ディスプレイを覗き込む。そして異常が無ければまた書類に目を落とす。そのような機械的動作を啓一は丸一日続けている。それでも啓一からは疲労の色は見られない。
「おつとめごくろうさま」
六畳の部屋に突如沸き出た長身痩躯の人影。それは十年来の親友にでも語りかけるように挨拶を投げ掛け、仕事に励む啓一に缶コーヒーを差し出した。
「久しぶりだね、啓一。調子はどうかな……?」
「用件はなんだ?」
啓一は驚く素振りを見せず、書類に視線を落としたまま答える。
「久しぶりなのに、つれないね……。それも啓一らしくていいんだけど……」
長身痩躯の男は「フフ」と不気味な笑声を上げた。
「滋」
「……なんですか?」
長身痩躯の男――愛沢滋はデフォルトと化した機械的な笑みを湛えていた。
「……その様子だと、キミも相変わらずってところかな……」
「俺が覚えている限り、卿と最後に言葉を交えたのは一ヶ月前だ。感慨深くなれるほどの歳月は経過していない」
「一ヶ月も、です。退屈な任務に明け暮れた僕にとっては長すぎる時間だよ」
書類を黙視する啓一は顔を上げ、初めて滋の全身像を目の当たりにした。鎖骨部分が窺えるほどはだけた純白のYシャツには黒ネクタイがだらしなくゆるめられており、下半身は黒一色だ。肩に掛けられているのは恐らくブレザーだろう。
「喪服はどうした?」
啓一の知る滋の風貌といえば、常時に葬式帰りのような全身黒で統一された喪服像が当たり前の服装。それ以外は見たことがなかった。
「失礼だね……あれは一応背広のつもりなんですよ……。僕も一介の高校生なんでね……制服も着ますよ……」
磨きの掛かった演技で滋は大仰に肩を落とす。
そんな滋には目もくれずに啓一は差し入れの缶コーヒーを啜っている。
「ところで啓一。妹とアリアの組み合わせはどうだと思う?」
「現段階であのふたりの相性を割り出すには情報が少なすぎる」
「僕は『答え』を訊いているんじゃない。啓一の考えを聞かして欲しい。客観的ではなく、啓一個人の意見をね……」
「……《蒲公英》とチームが可能なのは《拳銃屋》だけだ。同様に《拳銃屋》とチームが可能なのも。おそらくは《蒲公英》のみだと俺は踏んでいる。だが、適材適所とは言い難いな。あくまであのふたりならチームとして機能するということだ。単純な戦闘力だけならば、滋、お前にも匹敵するだろう。ただ、それだけだ。任務となると解りかねぬ」
「啓一らしい意見だね……」
「……アリア・G・アンダーソン。《蒲公英》を慰留させ、《拳銃屋》との同棲をさせたのは、滋、お前なのか?」
「知っていたんだ……それとも、勘づいたのかな……?」
「前例のない異能力者をたかだか五級戦闘委員の《拳銃屋》に監視を一任するだけで、俺から言わせれば異常事態だ。アンダーソン本人の希望とは言えど、機関の研究員がその要求を快諾するとは思えない。なら、誰かの差し金と考えたほうがいいだろう」
「それが僕とどう結びつくんだい?」
「機関の上層部を籠絡できる人物を限定すれば数は絞られる。滋、お前は二ヶ月前の『あの日』にアンダーソンと接触したはずだ。上層部を動かせる人物、なおかつアンダーソンの存在を知っている構成員は……滋、お前だけだな」
「ご名答」
表情を変えず、滋は朗らかに答える。
二ヶ月間、恋とアリアの初対面となったあの日。自我を失い暴君と化したアリアに致命傷を負わされた恋に代わり、代理の能力者が派遣された。負傷した恋の救助、および未登録の能力者の捕獲。その任務を担った人物こそ、愛沢滋であった。
そのとき、アリアと啓一の間にどのような遣り取りがあったのかは、啓一の想像の圏外だ。
「何が目的だ?」
「アリアには恋に無い物をたくさん持っている。それを妹に知って貰いたいだけだよ」
啓一には、滋の目論見が垣間見れたような気がした。
恋がアリアから学べること。
もし、啓一の考え通りならば、近い内に恋は『壊れてしまう虞』がある。
「……」
滋はこれ以上語りそうにない。なら、啓一もこれ以上語る必要はない。
啓一と滋。ふたりは既に『壊れている存在』だった。
十月の夜は心身ともに冷える。それは格別に寒い。
「寒いです……」
そう呟いたのは、十月の寒さを甘く見ていた愛沢恋。自宅を後にして五分足らずで、スカートのまま出掛けた失態を忸怩たる思いで後悔していた。防寒具として着衣している機関特製ロングコートも膝頭までしか届かず、すねは寒さ洗礼を直撃している。
「お前ら、だらしがないぞ」
下着と言っても得心できそうなデニムパンツと、綺麗なへそ丸出しのペアトップ。赤バンダナを頭部に巻き付けたアリアは毅然と言った。アリアの恒常性は常軌を逸しているらしく、寒さ暑さともに凌げる耐性を備え持っている。彼女があえて露出の多い衣類を選出しているのは、動きやすいという一点の理由だけだ。いや、もしかすると獅子時代の慣習が人間となった今でも根強く残っているのかもしれない。
華凛はアリアの異常なまでの寒さ耐性に懐疑的な視線を向けていたが、詮索はせずにただただ歩を進めていた。弟がそれほど心配なのだろうか? 最悪の事態を予想しているのだろうか? ならばそれは杞憂に終わることだろう。
――なんだってあの健二さまです。
女の敵、尻軽、夢想家、白昼堂々卑猥な言動を包み隠さず言う下劣人間。恋が抱く望月健二のイメージは限りなく底辺に位置していた。しかし最低な性格を補うことが可能なほど、健二は顔は良い。客観的に見ずとも健二は確実に男前であり、恋心を抱く愚かな女子も何人かはいる。というのが、恋が望月健二に対して持つ一般的な情報だ。
健二が無事と断言できる理由が恋には確かにあった。
恋が知りうる健二は殺されても死にそうにない。入学当初、生意気と先輩に洗礼という名目の暴力を振るわれたときも健二はへらへらと笑いながら顔面で拳を受け止めていたという。抵抗はせずにただ笑みを湛えていた。実際に健二の暴力直後の顔をたまたま見かけた恋は背筋に怖気を覚えたほどだ。目元が腫れ、唇が切れ、それでも笑っていた。
そんな健二が事件に巻き込まれていようが、いつもの如くへらへらと笑っているに違いない。恋はそんな確信を持ってい。電話越しに健二が怯えていたと訊いたが、それこそ華凛がパニック状態になっただけだろう。恋はそんな確信を持っていた
中学校の壁沿いに白黒のパトカー一台が駐車してあった。考えるまでもなく、華凛が事前に連絡を取った警察であろう。パトカーが無人ということは既に校内捜索でも始めているのだろう。
正門の前は異様な静けさに包まれていた。
静謐の空間。異常に思えるほど無音の世界。
通い慣れた正門は別物に見える。姿形こそ同じだが、ただの門に威圧感を感じることはなかったはずだ。日が落ちたなどの理由ではなく、もっと根本的な意味で薄暗く気味が悪い。
そして恐ろしい。
「恋……」
「ええ……」
アリアのぼやきに恋は小さく答える。
恋は肌を焦がすような嫌な感覚を全身に覚えた。アリアも尋常ならざる雰囲気を掠め取ったのだろう。
経験、とでもいうべきなのだろうか? 校内にはなにかがいる。
おそらくは?能力者?。
しかも相当上位階級だ。確証はない、恋が今まで培ってきた経験が警告を鳴らしていた。どういう仕組みか不明だが、機関の包囲網をかいくぐり、?能力?を行使している。
パトカーに誰もいないところを見ると、警察は既に校内に入っているのだろう。平和のなかで堕落してきた日本警察が解決出来る問題ではない。
「華凛さま……一旦、家に戻りましょう。ここで待ち惚けていたら凍死してしまいます」
平静を取り繕う恋。頬には一滴の汗が伝っている。
早急に機関と連絡を取り合う必要がありそうです――今すぐ駆け出したい衝動を抑え込み、華凛に不穏な気配を悟られないように笑顔を取り繕う。
「……あたし、ちょっと中に入ってくる」
華凛の一言に恋は凍り付いた。
呟いた華凛の行動は普段の彼女とは思えぬ軽やかな身のこなしで容易く正門を乗り越えた。無駄な動きがない、一連の動作はまるで何かの突き動かされているようにも見える。
「ここまで付き合ってくれてありがとう! ここからはあたしひとりで行くよ!」
「ま、待って下さ――」
声を絞り出せたときには、既に華凛の姿は闇に溶け込んでいた。暗闇での戦闘訓練を受けた恋は夜目は利くほうだ。にも拘わらず、恋の視界には華凛の形すら見えていない。
異常だ、何もかもが。
「アリアさま……」
恋は力無くその場にへたり込んだ。
理屈ではなく、本能が『踏み込んでは行けない』と警告を鳴らしている。
「冷静になれ、恋。我は彼女を連れ戻すため向かう。恋は機関の連中やらと連絡を取ってくれれば良い」
「華凛さまの救助はわたしが向かいます!」
「ダメだ。確かに地形は我よりも恋の方が詳しいだろう。だが、我は鼻が利く。目視はできんが、彼女の匂いはまだ消えていない。それに万が一の場合、恋は彼女を護りつつ相手を牽制することが出来るか? 恋の?能力?ではそれは不可能だ。彼女の前で発砲するつもりか? 自分の素性を明かすつもりか? 今の関係を崩したくなければ我に任せるんだ」
「で、でも! 華凛さまは……大切な……友達……なのです」
恋の懇願に、何故かアリアは罰悪そうな表情をする。
「……あのだな……我は、その、なんだ? 機関への連絡する手立てを知らんのだ……すまぬ、我はまだ人間社会について勉強不足のばかりに……」
自嘲気味にアリアは言う。
確かに、まだ機関の構成員となり日の浅いアリアは連絡先を知らないのも無理はない。恋が連絡、アリアが華凛救助。互いの能力を鑑みれば、その方が円滑に問題を処理できる。
頭で解っていても納得は出来ない。
恋は彷彿と浮かび上がる感情を押し殺す。
「解りました……そう、しましょう」
踵を返そうとした、刹那――
――異様な感触が恋の身体全体を覆い尽くした。
寒気、怖気、足下から頭部に掛けて全身を駆けめぐる。
そして、
「お相手さまは全てを掌握しているらしいです……」
気がつけば恋とアリアは正門の?内側?にいた。
自らの足で正門を乗り越えた記憶はない。
間違いない、相手は?能力者?。しかもこちらの動きは全て読まれている。
「予想はしていたが、脱出できそうにないな」
手探りで正門を調べようとしたアリアだが、門に触れる前に見えぬ阻害物に立ち塞がれた。虚空には透過した鋼でも配置してあるかのように覆われていた。
閉じこめられた。
「絶対領域精製可能な?能力?です。下手をすれば、一級指定、最低でも二級指定が掛かるほど強大な力を持っています」
「上等だ」
「ですね」
背水の陣。結果的には追い詰められたことになるが、選択肢をひとつにしてくれたことで恋は開き直れた。文字通り、もう後戻りは出来ない。なら、前に進むしかない。
残された選択肢――校内に潜む能力者を潰し、華凛を救出する。
華凛を無傷で保護するには、素性を隠してはいられない。
「《拳銃屋》に挑戦状を出したことを後悔させてあげます」
ここ、恋の通う中学の敷地面積は広くもなければ、狭くもない。灯りさえあれば一目でグラウンドを見渡せるほどの面積はそれなりにある。
荘厳の闇。通常の夜よりも遥かに視界が悪く、気味が悪い。
隣にいるアリアでさえかろうじて視認出来る程度。
しかし出入り口たる昇降口は迷い子を誘い込むように皓々と明かりが灯っていた。
誘い込まれているのは明白だ。
「まず、この異質な空間の創造者は能力者と見て間違いないでしょう」
昇降口前で恋は厳戒態勢を敷きつつ、話を切り出した。
「この校舎を包み込む?能力?ですが、先程におっしゃいました通り、二級指定以上の実力を持っていることは確定です。?能力?は『空間創造』、もしくは『結界』。『空間創造』の場合、ここはわたしたちの住む世界とは根本的に違う世界になります。その名の通り能力者自らが地球上に存在しない世界を創り出すのです。『結界』の場合、既存の空間――すなわち学校を外部から隔離するよう壁を巡らせます。もし、学校で多発する行方不明者とわたしたちを誘い込んだ能力者が同一人物なら、この学校は『空間創造』で作り上げられた異空間でしょう。ここなら能力者の思うがままに人を問わず監禁できますし、助けを呼ぶことも逃げることもできません」
「……要約すれば、ここは校内に潜む異端者が作り出した異次元なのだろう? その程度の?能力?ならば相手を直接叩けばいいではないか」
「はたして、そう易々と相手が白旗を挙げてくれるでしょうか? 空間を創造する以外、常人と変わらない人間なら、それこそわたしたちが出る幕も無く他の誰かが片を付けてくれると思います。相手の能力者は空間を創造することで付随する攻撃性のあるオプションかなにかあるのでしょう。それがどのような物となりますと憶測の域になりますが、それでも強いて言うなら…………やっぱり解りません」
空間創造――その手の?能力?は聞き覚えがあった、どうにも思い出せない。過去の能力文献に空間創造能力についてを判読した覚えは確かにあるのだが、記憶に靄が掛かっているようでうろ覚えの状態だ。
いや、ひとつだけ覚えている。
『空間を創造した者こそ、その世界のルールとなる』
追憶から掘り出した記憶に恋は嘆息した。
まるで神様そのものです。
「相手は何を企ているのだろうか?」
「不明です。ただ、一連の行方不明事件に関与している可能性が非常に高いです。すなわち、校内に生徒たちが隔離されているかも知れません」
生きていることを前提としてですけど――恋は心中で付け足す。
「とりあえずです。わたしたちが相手の絶対領域に踏み込んでしまった以上、完全にこちらの動きが掌握されていると考えた方がいいです。おそらく会話も、筒抜けでしょう」
目配せで合図をし、ふたり同時に昇降口に滑り込む。
アリアは眉間にしわを寄せた。
「腐臭がひどい……鼻が曲がりそうだ……」
怪訝そうに渋面を作るアリアだが、恋には腐った臭いなど感知出来なかった。嗅ぎ慣れた学校特有の匂いが、鼻を突っついてくる。
「華凛さまの匂いは解ります?」
「判別不可能だ。腐臭がひどすぎて、他の匂いが完全に掻き消されている」
どうする? とアリアは訊ねる。
中学といえど全教室をしらみつぶしに捜すのにはかなりの時間を要するに違いない。それに相手の陰謀が解らない以上、どのような障害が立ち塞がるか不明だ。しかし一刻も速く華凛と合流しなければならない。ただ、その気持ちが恋の焦燥感を駆り立てていた。
望ましい展開としては空間の創造主たる能力者を直接潰し、それ後ゆっくり華凛を捜索したいところだが、そう都合良く絶対領域の支配者と相見えることもないだろう。なにしろ今回の相手は桁が違う。
沈思黙考をする恋。
「……誰か来る……左から……数はひとりだな……」
かろうじて聞こえる程度にアリアは声を殺し、言った。
状況を把握する前に恋は手を引かれ、下駄箱の死角に誘導される。
「来るぞ……!」
アリアに促されようやく足音が近付いていることに気付いた。接近してくる人物は足音はすり足気味に極力音を立てないようにしているらしい。だが、閑散としたこの空間ではその行為は無駄に等しい。衣擦れのような微細な音が明晰に鼓膜に伝わってくる。
緊迫した空気が昇降口を梱包した。
殺した足音が明確に聞き取れるのだ。転じて、相手が?恋とアリアの会話?を訊いていた可能性が極めて高い。
足音は昇降口でピタリと止んだ。
――やはり、気付かれています。
限界まで張り詰められた緊張感。
敵か、それとも無害な一般人か、もしかすると華凛が呼び出しという警官だろうか?
「誰かいるのか?」
静寂を破ったのは聞き覚えのある胴間声。
同時に動いたのがアリアだ。人間とは思えぬ俊敏な動きで物陰から飛び出し、声が響いた方向へと姿を消した。
「アリアさま! ダメです!」
身を投げ出し、恋は声を荒げた。
声を訊いた瞬間、恋はその人物の全てを悟ったのだ。
望月健二――恋がここに至ることになった因果人物だ。華凛の失踪で忘れかけていたが、本来の目的は健二の救助。その健二が今、目の前にいる。
そして健二を知らぬアリアは愚行に走った。
「なんだ、知り合いか」
場にそぐわぬ頓狂の声が上がった瞬間、アリアは姿を現した。
まるで重力の向きが逆転したようにアリアはブロンドヘアを逆立て、二本足で天井に張り付いていた。そしてコンマ数秒の間にアリアは健二の背後へ音もなく降り立つ。
淡い紺色の詰襟、学校指定の制服を着ている健二は恋に気付くやいな、軽はずみな様子で駆け寄ってきた。
「なんだ、恋じゃん。こんなところで散歩か?」
「それはこちらの台詞です、健二さま。あなたこそこんな夜の学校でなにをしているのです? どこかの麗しゅうご令嬢と逢い引きでもしているのですか?」
「そうだといいんだけど、残念ながら違うのだなー」
恋と健二。皮肉の応酬で双方険悪ムードを漂わせているが、その表情は弛緩されていた。
現在の状況を忘れているように罵り合うふたり。蚊帳の外に置かれたアリアは意味深に秀眉を寄せていた。
「俺は見ての通りお化け屋敷やなんやにはかなり強い。富士急の四十分のあれも何が恐いのか説明されても理解できないな」
「何を呑気なことを……大体、健二さまの所為で華凛さまが無茶な行動を……!」
「いいから、訊けって。とにかく、ここは普通じゃない。校内から出れないんだ。なにかが狂っている。おかしい。電話だって訳が解らんうちに遮断されたし……どういうわけだろうなぁ? そういやー、姉貴ヒステリー気味だったけど大丈夫かな?」
なるほど、顔は類似しているが、性格が別物だな――アリアは健二の振るまいから概ね性格を割り出していた。献身的な華凛とは違い、健二は自己本位で物事を見ているらしい。だが、その佇まいは落ち着いているように見える。何一つ状況の理解出来ない人間が闇に満ちた学校に閉じこめられ、平静を保てるほど健二は頑強な精神の持ち主なのだろうか?
恋が必要以上に忌避する理由も茫漠と解るような気がする。確かに恋とは馬が合いそうにない人柄だ。
健二は客観的に分析しても、軽薄な男に違いないだろう。
しかしアリアの中でなにかが引っかかっていた。
自己本位の下劣な男など警戒するに値しない人物、のはずだ。
先程、健二を拘束しようと接近した瞬間、アリアは戦慄してしまった。あと一歩で間合いに入る――刹那に放たれた圧倒的な威圧感が動きに制限を掛けてきた。やむを得なく天井に跳躍をし、背後から奇襲を仕掛けようとした時、恋の制止を促す声が響いたのだ。
もし、あのまま背後を奇襲をしていればどうなっていただろうか?
「アリアさま、どうかしました?」
「ん……何でもない」
どうやら、無意識のうちに拳を握りしめていたらしい。汗ばんだ手のひらが深いなワンシーンを彷彿とさせる。
あの時の威圧感は忘れられない。脳裏に焼き付いている。
アリアは心中で舌打ちをした。
望月健二という男の素性。華凛の行方。空間創造主の魂胆。通常では気付けない臭いまで感知してします嗅覚。これらの事柄からアリアの不満と苛立ちが鬱積していた。
それでもアリアは厳粛とした態度は崩さずに、低次元な諍いを繰り広げるふたりの一歩後ろに歩いていた。今は、校舎二階、一年生らの教室を捜索中だ。健二に罵倒を浴びせつつも、恋は着実に華凛捜索にも思案を巡らしているらしい。現に一階の探索は既に終了済みである。
アリアの主観からみた校舎は少々入り組みすぎていた。
天井からは蛍光灯の弱々しい明かりが廊下を照らしていた。ひとつひとつの部屋はどれも類似点が多く、短い間隔で連なっており、アリアは教室の違いを見分ける術が解らなかった。
健二の証言によれば、女子の筆跡による呼び出し文書たる手紙が知らぬうちに鞄の中に紛れ込んでいたのだという。内容は愛の告白、ではない。いや、もしかすると見る者によっては恋文にも見えなくはないかもしれない。
『親愛なる望月健二さま
わたしはあなたを必要としています。あなたがいなければわたしはおそらく生きていけません。今日の放課後、屋上で待っています
あなたを必要とする者より』
手紙とはこのご時世に随分古典的な手法ですね、と恋は毒づいていた。
健二はこの恋文(らしき物)に懐疑心を抱かず、ひたすら屋上で待ちぼうけ、やがて日も暮れたところでようやくタチの悪いイタズラだと悟り、結果、校内に閉じこめられた。健二はたまたま巻き込まれた被害者なのか、それとも故意的に誘い込まれた罠なのか。
解ることはこの空間を作り上げた人物は生徒による内部犯行ということだ。
アリアがそう結論付いた。恋も同じ結論に到っているはずだ。
「ところでさ……赤バンダナの外人さんは何者よ?」
「武芸十八般を極める旅途中にたまたま家に逗留している風来坊さまです。彼女が成す武術には感嘆を覚えます。コンクリートさえも豆腐のように砕いてくれる頼れる存在です」
健二の疑問に恋はいけしゃあしゃあと嘘を並べて答える。よくもそう一瞬でまことしやかな嘘を作れる恋のほうが感嘆を覚える人物に相応しい。
恋の言動にアリアは肯定も否定もせず口を開いた。
「アリア・ガーネット・アンダーソン。アリアで良い」
「日本語上手っすね。良かったら今度アリアさんの武術とやらをお披露目してくださいよ。俺、強い女の人って憧れるんですよ。いいっすよねー」
喋りながら近付いてくる健二。気配も表情もなにもかも、奇を衒ったところはない。ただ、恋が嫌悪感を剥き出し、半ば呆れ気味な様子で虫でも放逐するように手を動かした。おそらくは適当にあしらえという暗黙の合図なのだろう。
――言われなくとも承知している。
「アリアさんはマジでコンクリートとか砕けるんすか?」
「ああ。多少指先が痺れるが、可能ではある」
「うお、すっげ。その強さの秘訣はなんっすか?」
「……自分を否定しないことだ」
言って、アリアは苦笑いをした。我は一体なにを考えているのだろう?
日を重ねる度に霧散していく獅子時代の記憶。我ひとりが消えたところで非情集団のあいつらが、気に留めるとは思っていない。むしろ食事の配分が多くなった事柄をささやかに喜んでいるのではないだろうか?
――ノスタルジックになっている場合ではないな。
失われていく記憶の代用品が『アリア』としての記憶。恋との生活。
獅子に戻ったところでアリアが帰趨するべき場所は無いかも知れない。いや、無いに違いない。いっそのこと一生を人間として過ごすほうが充実した毎日を送れるような気がする。それだけ恋と過ごす日々は愉悦に浸ることに等しい。
それでもアリアは獅子としての自覚を失ってはならないと思っていた。自己意義を見出す唯一の手段がそれである。自分を『人間』と認めてしまったときに今の『アリア』は『アリア』ではいられないような気がした。
「アリアさま?」
「アリアさん?」
恋と健二は不思議そうな表情でアリアを窺っている。
知らぬ間にアリアは歩をとめていた。
「……すまんな」
「どうかしましたか?」
恋は華凛の安否を懸念しつつも、アリアの容態も気に掛けてくれている。
「いや、問題ない。腐臭で感覚が鈍っているだけだ」
嘘ではない。ここに来て一層に腐臭が強まっている。それがアリアの思考を鈍らしている間接的原因というのも嘘ではない。
「臭いの源は、近い」
階段を上り、三階へ向かう。
上り切った直後、強烈な腐臭がアリアの鼻腔を刺激した。
予想以上の腐臭にアリアは吐き気が催し、膝が地に着いた。熱く、酸味の強い流動物が下から上へ、喉に流れ込んでくる。喉が焼けるように熱い。それでもアリアは逆流してきた流動物を全て嚥下し、胃の中へ戻した。
「大丈夫だ……」
アリアは極力鼻腔を刺激しないように口から空気を吸入する呼吸法に変え、ゆっくりと立ち上がる。
不安げに見詰めてくる恋の視線が機微な部分に突き刺さった。健二ですらアリアの体調に不安を覚え始めている様子だ。
――これでは足手まといではないか。
「腐臭は……そこに立ち込めている」
「……ん、そこって愛沢のクラスだよな?」
アリアが指で促したクラスに健二が答えた。
「それより、腐臭ってなんっすか? 臭いなんてなんもしないっすよ?」
「健二さま、半永久的に黙っていて下さい」
恋は軽いステップで教室に歩み寄った。後を追うようにアリア、健二が扉の前に立ち塞がる。神経を扉の向こう側に集中するが、不穏な気配は感じられない。
扉の奥は腐臭の巣窟だ。アリアは全ての臭いを感知しないよう呼吸法を変え、腐臭への対策を敷いた。多少の息苦しさを考慮すれば、思考に差し障りがない程度には動ける。
開けます、と恋のアイコンタクトにひとつ頷く。
接着音を殺しつつ人ひとりのスペースを開け、恋は滑り込んだ。続く健二は疑問符を湛えつつ、粗雑に扉を全開にした。煩わしいとでも思ったのだろうか? その行いについて、恋は糾弾をせずに嫌悪感をあらわにして秀眉を寄せた。
「うっ……なんです……この臭いは……」
「うお……くっせぇな……」
恋と健二は双方同じように鼻を押さえた。健二はすぐさま音を上げ、教室から退出した。
嗅覚を遮断しているアリアに、腐臭を感知不可能だが普遍的な嗅覚の持ち主でさえこの有様だ。アリアには想像を絶する臭いに違いない。
「……あそこだ」
アリアは呟き、闇に満たされた教室を臆することなく進む。
「……これは……なんだ?」
おそらくは衣服と思われる上に、土塊のような茶褐色の粉末状の物体が満遍なく堆積していた。注視して窺うと土塊に埋没している中には制帽、ポーチなどがある。
しゃがみ込んだまま思案を巡らせていると天井の蛍光灯が数度点滅し、部屋全体を照らし出した。恋が点灯スイッチを入れたのだろう。
「それは……警察官の制服でしょうか?」
警察官。その職はアリアにも聞き覚えがあった。
「世の秩序を保つ聖職、だったな?」
「そうです。問題は何故、警官の制服がこのようなところにあるのでしょう? これを着ていた本人はどこへ消えたのでしょう? 服を脱ぎ捨てなければならない状況に陥ったとは想像しかねますし……それにこの土塊が不可解です」
恋は足で土塊を漁っている。
「やはり、これは華凛さまが呼び出した警察のようですね」
?それ?を見たアリアは不快感を煽られた。
黒と銀で縁取られた?拳銃?が恋の足下にある。
「……スミス&ウェッソン。警察官標準装備の自動拳銃です。数刻前まで警察官はここにいた。しかし予想足りしない?何か?に襲われ、姿を眩ました。まるで神隠しです。もしかすると、この土塊が人の残骸なのかもしれません。そうならばまるで養分を吸い取られた人間の成れの果てのようです……」
恋は不気味な仮説を壊れた笑みで説く。まるでそう確信しているように。
「どうすればこのような姿に人間はなれるのでしょう? 蚊のように鋭いくちばしで生気を吸い尽くすのでしょうか? 崩れ落ちる瞬間はどのような気持ちなのでしょう? 苦しい? 悲しい? 走馬燈は見えるのでしょうか?」
語るたび恋の表情は壊れていった。唇の端は嘲笑するように吊り上がり、眼球が飛び出しそうなほど目を見開いている。強く握り閉められた両拳から、赤い液体がポタポタと滴り落ちる。もはやその佇まいは愛沢恋という人間とは思えないほど異形なモノに変貌していた。
「恋!」
アリアの咆哮に近い叱咤に恋は身を震わせた。壊れた笑みは消え去り、呆然と血塗れの両手を直視していた。
「……なんでもありません」
「嘘をつけ。恋、今のお前は錯乱状態にあった」
「……そうです。けど、もう平気です」
「本当だろうな?」
「はい……。とりあえず、ここから出ましょう。これ以上の手掛かりを望めそうにありません」
「……解った」
得心は出来ない、出来るわけがない。しかしこのような状況下で無駄な諍いは起こしたくない。恋も華凛の安否を懸念するあまり、錯乱状態になっただけだろう。そうでなくとも移動しつつ、事情を訊ねれば良い。
アリアは一足先に廊下へ出ると、廊下でへたり込んでいる健二と目があった。
「なんか、すごい叫んでいたっすね。どうかしたんっすか?」
「さしたる問題ではない」
「そうっすか」
「……妙に落ち着いているな。お前」
「そういうアリアさんも充分落ち着いてるっすよ」
「我とお前では比較対象にはならん」
「うわ、辛い言葉っす。俺は俺で色々と考えているんっすよ。女の子が一番喜ぶ接し方とか、女の子が一番喜ぶ言葉とか、その他色々。毎日を楽しく過ごせるようにしていまっす。そういえや、明日亜紀ちゃんとデート予定だったんだけどなぁ」
「……ふん」
返す言葉が見つからずアリアは鼻を鳴らす。そのまま健二の隣に移動し、背中を壁に預けた。開け放たれた扉の向こう側では今だ恋が土塊を覗き込んでいた。
声を掛けようにも恋の背中は全てを拒むように見える。
「恋。そろそろ行くぞ」
「おーい、愛沢。さっさと行こうぜ」
健二が呼び掛けても恋は一顧足りしない。
「おい、恋。いい加減に――」
言いながら教室に入り込もうとしたアリアはそれは叶わなかった。
教室内に踏み込もうとした際、まるで意志を持つ引き戸がアリアの存在を拒むように綴じられた。
「……っ!」
隠すことなくアリアは舌打ちをした。完全に相手の思惑通りにやられた。
悔恨の念を覚えている暇はない!
扉をこじ開けようにもピクリとも動かない。
無我夢中でアリアは扉に拳を突き出した。アリアの一撃は人間の内部を粉砕し、岩盤さえも容易く貫く威力を秘めている。
一発、校舎全体が地響きを起こした。
手加減はしていない。にも拘わらず、ただ数センチの厚みしかない木製の扉は傷一つない。
拳を突き出した体勢のまま、アリアは身じろぎした。まさか相手の?能力?がこれほどまで強力のものだとは思いもしなかった。ただ一枚の扉に全身全霊で放った拳を受け止められたののだ。
「アリアさん。これは、やばいっすよー」
驚くこともなく淡々とした健二の言葉に、アリアは猜疑心しか沸かない。一連のアリアの行いを目の当たりにしてなおかつ平静でいられるその精神は異常だ。もしや健二の中でのアリアは校舎を揺るがす破壊力を秘めた一撃を繰り出すのが普通となっているのだろうか?
しかし、それを問い詰めようにも状況が許してくれないらしい。
アリアと健二を除き無人だった廊下が《影》で埋め尽くされていた。人の影がそのまま這い出てきたように《影》は人間の輪郭を酷似している。頑健な《影》、髪が長く女の子の印象を与える《影》、矮小な《影》。ひとつひとつの《影》は人間その物を再現しているかの如く、個性を持っていた。
明確な敵意を放つ《影》たちは両サイドに概ね十体ずつと言ったところだろう。
本来ならば逡巡することなく《影》たちを颯爽と駆逐し、恋の救援に向かいたいのだが、その前にどうしても確認しておきたいことがアリアにはあった。
畏怖の象徴とも言える《影》を目の前にしても、健二の態度は変わらないのだ。
「何故、お前は驚かない?」
「アリアさんだって驚いていないじゃないっすか?」
健二はへらへらと楽天家の笑みを湛え、言葉を続けた。
「なんつうんすかね……世界は広いんだし、こんな摩訶不思議アドベンチャー的イベントが発生してもおかしくないんじゃないっすかねぇ。もしかしてここから俺の物語が始まる可能性だってあるわけじゃないっすか。たまたま巻き込まれそこから俺は主人公とか。差詰め愛沢は秘密組織の一員。この事件をきっかけに愛沢は俺を組織に引き入れて、悪の結社と戦う戦士となるとか。それに……」
黒の集団が徐々に距離を狭めてくる。
アリアは後退り、健二はようやくその重い腰を上げた。
「俺は普通じゃないっすから」
次の瞬間、突風とも言える強風がアリアの髪を逆立てた。
アリアの視界には《影》の間を縫う健二の姿が視認できた。その健二を《影》とすれ違う都度、銀光を閃かせ、攻撃しているようだ。そして、片サイドの《影》たちは同時にその身を縦に切り裂かれ、黒い煙を噴出しつつ跡形もなく消失した。
立ち止まった健二が携えていた物は一本の短刀のようなナイフ。
アリアは驚愕のあまり絶句した。ただ者ではないと薄々勘づいては、それは可能性の一旦として考慮していただけで、まさか『本物』だとは予想外だ。
たるみきった表情で健二は再び地を蹴った。アリアの真横をすり抜け、《影》たちに向かっていく。その姿はあまりにも場にそぐわぬ光景だ。
逆手に携えるナイフを《影》の胸腔部分に突き刺し、そのまま頭蓋まで引き上げる。一拍遅れてその《影》は黒い煙を切り裂かれた箇所から噴出させ、消失した。縦に切り裂き、横に切り裂き、首を切り裂き……《影》たちは例外なく血飛沫を連想させる煙を噴出した後、その身を闇に霧散させる。そして、健二も例外なく全ての《影》を一閃で仕留めていた。
数十体はいた《影》たちはまるで最初から存在しないかのように、痕跡を残さず消え失せた。ただ存在していたと証明するように健二が携えるナイフの刀身に黒いモノが付着している。 これ以上ないほどにアリアは意表を突かれた。
健二の動きは確実にアリアを圧倒している。《影》の間をぬうスペースを瞬時に見分ける判断力、即決力。未曾有の生物を一撃で仕留める殺傷力には感銘さえ受ける。
「お前、何者だ?」
アリアは問う。理屈では説明出来ないアリアの第六感が健二を危険人物と促している。敵愾心を燃やす《影》を倒したところを見る限りではこの空間の創造主とは繋がりがないのだろうが、それでも多大な影響力を持つイレギュラー分子を野放しには出来ない。いや、健二の行いはアリアを油断させるデモンストレーションの可能性もある。
答え次第では措置もやむを得ない。
アリアは神経を研ぎ澄ませ、臨戦態勢を敷く。単純な力比べならいざ知らず、根本的な疾さでは歯が立たない。
張り詰められた空気。それに対し、健二はへらへら笑いを崩さず、言った。
「ただの正義のヒーロー志望っす」
なんと言えばよろしいでしょう。
もう、めちゃくちゃです。具体的に何がめちゃくちゃなのだというと私の精神状態とか。誤字やら何かあれば、文句の一言備え付けで報告していただければ幸甚です。
とりあえず、いつしかキャラ紹介のリクエストがあったので纏めておきますシリーズその二。
番外編登場人物
愛沢恋――番外編ヒロイン。特務機関派遣戦闘委員、兼、派遣監視委員のふたつの役職を持つ機関屈指の苦労人、通称《拳銃屋》。物質を範囲内にある限り転移可能な、第五級指定『物体転移』能力を生まれながらして使える能力者。
その実体は今をゆく15歳の女子中学生。機関最年少であるにも拘わらず、総合的な戦闘力は群を抜いている。
アリア・ガーネット・アンダーソン――特務機関派遣戦闘委員、通称《蒲公英》。有機物、無機物関係なく、生命が宿るもの以外の物体の形状、性質を変化させることが可能な、第三級指定『性質変化』能力。アリアは能力覚醒と同時に人間へと姿を変貌させた獅子である。そのためなのか身体能力は非凡極まる。
人間へと変貌した姿は腰まで届くブロンドヘア、翡翠色の双眼、褐色の肌、蠱惑的官能的なラインを描く女性にしては長身の二十歳前後の異国の女性。実年齢は三歳。現在は恋と同居中。派遣戦闘委員とはアリアにとっては仮初めの役職であり、恋に恩を返せた時点で元に戻る手立てを模索するつもり。
尾崎啓一――特務機関内で肉体労働以外の全ての役職を担う頭脳派役員。主軸としては任務遂行中の派遣戦闘委員のサポート。その中でも恋のサポートを中心としている。啓一の手腕は機関内で紛れもなくトップであるが、恋やアリアのような能力は保持していない一般人。国立大学に通うまだ将来を嘱望される得難い人材。
望月華凛――恋のクラスメイト。現在行方知らず。
望月健二――華凛の双子の弟。脳天気な生粋の女好き。アリアを圧倒する戦闘能力を持っている。
愛沢滋――特務機関派遣戦闘委員、通称《狂詩曲》。恋の実の兄。水素原子を操作する能力。階級などの繊細は不明。ただ、その実力は機関随一の強者である。
椿未梨――本編のヒロイン。未登場である。
以上、こんな感じです。相当即席です(笑)
今回のお話は文章自体はうまく書けたかも。内容は無視して(笑) どうも原稿用紙45枚分らしいです。
あろ更新遅れてすみません。忙しかったわけでもなく、最近はラノベを読む方に時間を費やしていただけです(笑)
余談
ラノベ以外にも私は一応本を読みます。文学はほぼ読みません。著者極論のエッセイなどをちらちらと読んでいます。そういうものを読み続け、辞書を引き続けているうちに私は思いました。
漢字検定取れるのでは、みたいな。
というわけで、社会人が持っておきたい2級を勉強中。
読み書きはともかく、四字熟語が書けません(笑)
考えが甘かったです。だが、諦めません。
そんなわけで次話は、あれです。番外編二回目終了です。アリアさんを活躍させなければ可哀想なので、多分、長くなります。
では、また近い内に。