4―4 狂詩曲
どうも最近、俺は不条理なラビリンスに迷い込んでしまったらしい。
そうでなければ、自室に男が紛れ込んでいるはずがない。ましてや、その男が殺人未遂の前科一犯を所持しており、近隣に住む使用人の?妹?などと名乗りを上げているんだ。性格から容貌に到るまで、何一つ共通点が見当たらない。
愛沢滋。
男はそう名乗った。そして、未梨の使用人である愛沢さんの?兄?。
斉藤がこのことを耳にしたら発狂しそうだと、潜在的に思ってしまったのは余裕が存在するということなのだろうか。
「なんだ、あんた。帰ってきてたんだ。ただいまぐらい言いなさいよねー。不審者かと思っちゃったじゃない」
滋に警戒するあまり、家主の存在を忘れていた。
どこから沸いて出たと言えば、恐らく俺が気付かなかっただけで階段を登りという通常ルートで来たと思われるオフクロが、片手に湯気立つティーカップを携えつつ背中を小突いている。
不審者なら目の前にいるんだが。
「扉の前でぼーっとしないでくれる?」
ひかがみにオフクロの容赦を知らない爪先がめり込んだ。尻餅を付く俺を尻目に横切り、そのまま部屋に足を踏み入れ、
「はい、滋さん。コーヒー容れてきたから、どうぞ」
名ばかりの学習机にコーヒーを置くオフクロに、滋はあくまで笑顔のまま謝辞を述べる。オフクロも満更でない笑顔で滋を一瞥すると、自然過ぎる素振りで俺の存在を露骨にスルーし、部屋から出て行った。
声を掛ける隙すら見つからない。前科一犯の不法侵入者を追放するどころか、コーヒーを差し出すなど言語道断。人が良すぎるにも限度があるぞ。
「勘違いしないで下さいね。僕は堂々と正面玄関から来させて頂きました。ここまで優遇を受けるとは予想外ですけど……いい母親ですね……キミの処遇が羨ましくなるほど……」
俺は尻餅をついたまま、開け放しの扉に鍵を掛ける。
「……で、用件はなんだ」
「キミと話がしたかった。一対一で、誰の阻害も無しに、ね」
その発言を訊いて俺は初めて滋の顔をまじまじと直視した。心の内がまったく読めない微笑、アイドルでもやればコアなファンが多数付きそうだ。服装は見方によれば、リクルートスーツにも見えなくも無いような気もするが、やはり端的な感想を述べさせて貰うと喪服にしか見えない、が、今は滋の容姿など問題視される点ではない。
こっちはつい一年前まで俺を殺すなどと、冗談じゃ済まされない台詞で脅されたんだ。その張本人が俺と話がしたいだと?
やめてくれ。冗談は能力と服装だけに留めて欲しい。
「連絡無しに来たことはお詫びします……だけど、緊急な事態でして……それにキミとってもいい情報になるものを僕は多数所持している……良かったら提供して上げようと思ってね……」
「お前が逆の立場だとして、信用できるか?」
滋は意表を突かれたように目を丸くした。一瞬浮かべた笑みは、苦笑だろうか? 未梨とは一味違った意味で、無機質な印象を受ける。笑顔以外の表情があるのか疑わしい。
「いいね、仁井哉くん。その質問は実にユニークだよ。そうだね……僕がもし、キミの立場だとしたら……どうなんだろう……多分、僕は信用しない。でも、相手は未曾有かつ異彩な存在……下手な行動、発言は仇になる可能性は極めて高い。そう言った現段階の状況を分析すると、大人しく話に耳を傾ける――他にも選択肢は数個浮かんだけど、これが一番得策だろうね。どうかな?」
わずかに見開かれた糸目が俺を明晰に捉えている。
滋の回答は間違えてない、シャクに触るほど正論だ。それが、気に入らない。
「……いいから、話せ。そしてさっさと帰れ」
皮肉にも滋は笑顔で応対する。淡泊でもなければ邪険をしてくる訳でもない。逆に毒気を抜かれそうだ……が、警戒しすぎて損することはないだろう。
「そうだね……まず、キミは特務処理機関を知っているかい?」
「?能力?の存在が表沙汰にならないように丸め込んでいる能力者たちだけで構成された機関だろ」
「概ね正解。注釈を加えると特務機関のなかにも一般人は多数存在しているよ。もしかしたら、一般人のほうが多いかな? 一口、能力者と言ってもピンからキリまでバリエーション豊富だし、僕や椿のような人間を虐げられる能力は稀有のほうなんだよ。キミの?音?みたいに日常生活に応用できない能力者が、大半を占めている。使えない能力者を無闇やたらと集結させるより、有能な一般人を雇ったほうが効率がいい。機関はそう判断したんだ」
ああ、そう。
「僕の?能力?を知ってるかい?」
――彼は精神エネルギー変換系。自分の意志である程度まで?液体?操作が可能。
「知らん」
肯定をしないのは単に俺が意固地になっているから。「はい、知っています。あなたの能力は〜〜」などど、脳内がピンク色に染め上げられている奴らの談笑だ。
滋は学習机に置いてある湯気立つティーカップを手に取り、くるくると回す。カップ内の液体がうねっているのが確認できる。数秒回した後、結局一口もつけずに俺の眼前のフローリングにティーカップを設置した。
意図が読めん。まさか、飲めというのではあるまいな。
「?能力?は万能じゃない。少なくとも僕のは、ね」
液体のうねりは止むどころか勢いは俄然増し、ティーカップ内に本格的な渦が発生し出した。
赤墨の液体はうねりつつ紐状へと変化し始め、地球の重力に逆らうようにカップから数センチ離れている宙へと螺旋を描きながら浮かび上がり、一ヶ所に集う液体は少しずつ人形を構築していった。
長髪、無機質な表情をした少女。
そのモデルは恐らく一昔前の未梨だろう。全身の色合いが赤墨という除いちゃいかん点を除けば、限りなくリアルな未梨だ。髪質から衣類まで精緻に完成している。俺が歩んできた人生観では、種も仕掛けも無しにコーヒーが精緻な人間を構成することは断じて起こりえない現象だ。よって、これは夢である。
と、一年前の俺なら現実逃避を行っていただろう。しかし溜飲が下がるが如く、一年間堆積を続けた鬱積、およそ7割部分を外科手術により摘出されたように、俺の精神をどこまでも澄み渡っている。不透明な真実が透明になった瞬間。
?能力?は実在する。人間たる以上、知的好奇心というものは付き物、ましてやあのような?能力?を目にして、気にならない生命体が存在するわけがない。断言できるね。なんなら俺の貞操を賭けてもいい。
それはさておき、滋の?能力?は本物と立証された。つまり、俺は未だ嘗て無い窮地に追い立てられている。にも拘わらず、俺の精神状態に変化が見られない。脈拍は上がらい、冷や汗どころか汗一つ出てこない。
第六感が滋の存在を安全と認めているのだろう。謂れとなる根拠もないが、自信だけはある。
「このコーヒーは約百ミリリットルだろうね……さて、問1。果たして、この液体にいくつの水素分子が含まれいると思う?」
一応、現役高校生な訳だが、理系を色々な意味で捨てた俺にその問題に答えられるだけの知識はないに等しい。百ミリリットルのコーヒーに含まれている水素原子の数など、人生を生きる上必要でない知識であることは明白である。海馬組織に留める価値も存在せん。
「約、10の18乗。僕の能力は無からの水素原子生成、水素原子操作。僕が今現在行っていることは10の18乗ある水素原子を操作しているんだ」
解らん。天文学的な数字ということは解ったが。
「僕以外の人間が、この概念が理解できる日は来ないだろうね。同じようにキミの?能力?概念を僕が理解できる日は来ない。?能力?概念は能力者本人以外には解らないんだ」
ぴん、と滋が唐突に指を鳴らすと、赤墨の人形は一瞬でただのコーヒーに戻り、ティーカップ内で弾けた。多量の液体がフローリングに飛散したのは、この際目をつむってやろう。
「問2……?能力?を開花させる条件。キミはどう思う?」
アトランダムじゃあないのか、そんなん。
「機関の方々もそう主張する人間で八割方を占めます。彼らにとっては、些末な事なんでしょうね……。?能力?開花が完全無差別なものではありません。なんらかの条件があるはずです……」
言い切るには、理由があるんだろうな。
「理由ですか……。たとえば、そうだね……少女Aがいるとしましょう。少女Aは科学的な差し添えが無くても、自力で空に羽ばたける、と考えていました。しかし、少女Aの周りの人間は「できるわけがない」と反駁します。至極当然ですね。僕もそう思いますから。僕にも生まれながらついた先入観があるのでね」
一息つくかのように滋は、コーヒーを一口だけ啜る。あれだけ喋れば喉も渇くだろうからな。
「だけど、結果的に少女Aは大空を羽ばたいた。科学的差し添え無しに、ね」
「?能力?が目覚めたんだろ?」
「その通りです……では何故、少女Aは?能力?を開花することができたのでしょう?」
俺は鼻頭に手を添え、考える。
妥協するには十秒として掛からなかったけど。
「少女Aがそう望んだから、結果的に空を羽ばたけた。これしか思いつかん」
「六十点、かな。概ね正解です……フフ……」
滋はさらにもう一口コーヒーを啜り、
「観念の崩壊。すなわち新たな概念の確立、?能力?が開花するときです。少女Aは、偏向した独学理論に1パーセントの疑念を抱かなかったことで、観念という遮蔽壁を破壊し、少女A独自の概念を生み出した……そこには少女Aにしか理解できない概念がある……おもしろいものです」
一応、俺は能力者だが、そのような奇天烈な頭脳を持ち合わせていないのは自覚しているつもりだ。
「今の話は一例に過ぎないよ……。キミは生まれながら付いた先天性の?能力?だったね……。実は先天性の?能力?は稀有な例でして、僕の?能力?も先天性のものなんだ……友達になれそうだ」
全力で断るし、話もカシオペア座の方向に逸れている。そもそも何の話をしていたんだっけ?
「余興に過ぎない話ですよ……。キミも紛いなりに能力者として、知る権利があると思ってね……椿からは、最低限の説明しか受けていないんでしょう? 良心の気紛れだと思ってくれて構わないよ……」
無性に脱力感が仰がれてきた。知る権利があると思ったという理由一つで遠路遙々俺に会いに来たというのか? ならば電報一本寄越せばそれで済むことだろうが。直接出向いたのには、少なからず理由があるはずだ。
「そろそろ本題に入って欲しいね」
「……では、仰せの通りに。キミに訊きたいことがあります。包み隠さずに教えて下さい」
プライバシーに拘わってくるものなら、情報の秘匿はするぞ。生い立ちぐらいなら教えてやらんでもないが。
「キミは昨夜から早朝に掛けて?夢?を見なかったかい? 明晰夢のように現実感漂う夢を……」
「……見たかもな」
未梨の見方が少し変わった幼なじみに、能力者という肩書きが追加される事件となったあの日。俺の現実認識が360度回転した挙句、さらに10度ぐらい屈折してしまったあの日。夢の中だが、超常現象の塊のような二足歩行の巨大水人形まで表れた。思い出したくもないね。
「決定だね」
「何がだ」
言い終える前に俺の右腕に、ねっとりとした粘着性の強い?何か?が絡み付いてきた。強靱な捕縛力……血流が止まっているかもしれない。反射的に視線を右腕に落とすと、限りなく無色透明な?アメーバ?のようなものが蠢動している。見間違えるはずがない――夢で見た滋の?能力?だ。
「動かないで下さい……被害は最小限に押さえます……」
指先一本ですら動かそうにない。右腕は完全に?アメーバ?に取り込まれたっぽい……未梨の真似で肉ごと引き離す膂力も無ければ、実行力も無い。回復機能は備わってないからな。
泰然としている滋は、ごそごそと内ポケットから携帯電話を取り出し、熟練の手付きで操作し出した。俺の為に110をしていないことは確かだ。
「こちら、派遣戦闘委員、《狂詩曲》……目標物を確保……任務完了。ああ、?音?の能力者に怪我はない。フフ……僕を甘くみないでほしいね」
携帯を折りたたまれた途端、金縛りが溶けたように右腕が自由を取り戻した。見れば?アメーバ?状の物体は綺麗さっぱり右腕から剥離し、今では滋の腕に絡み付いている。
任務完了? なんのことだ。
「僕が秘密裏――と言っても全部の任務が秘密裏だけど。特務機関から一任された任務。それが?これ?の回収」
摘むような形で握られている?それ?を見て、俺は自分の右手に視線を転じた。
あるはずの物が、無い。
「……そんな?指輪?ひとつ盗るのが、任務か?」
人生初の誕生日プレゼント――未梨から授かった?指輪?が滋の手には握られていた。
滋は無機質な笑顔に、不気味さをブレンドさせた禍々しい笑みを浮かべる。
「まったく……椿も僕に面倒な役回りを押し付けてくる……たまにはゆったりとした休暇がほしいよ……そうだね……温泉に浸かりながら……」
「返せ」
「それはできません。?指輪?をキミに返したら僕は任務放棄と見なされ、特務機関からきついお灸を据えられることになるからね……減給はされたくありません。それに……あと一日、?指輪?を嵌めていたなら、キミは確実に死んでいたよ」
バカ言え、俺の思い当たる一番のバカ野郎でもな、もうちょっとマシな言い訳が出来るぞ。それともなんだ、指輪が呪われたアイテムだとか言うのか?
「呪いのアイテムですか……そうだね。これは一種の呪いのアイテムです。一見してなんの変哲の無い?指輪?だろうけど……これは突然変異した能力媒体の一種でね……人間が身に付ければ精神を蝕み続け、その者の末路は運が良くて廃人、普通はこの世とさよなら。現実世界に於ける呪われたアイテムみたいなものさ……」
滋は伸びきった前髪を弄いながら、注釈を加え続ける。
「解っていると思いますが、椿は?指輪?を能力媒体とは気付かず、キミに渡した……と、僕は予測します。あくまで予測ですが、ほぼ間違いないよ。品行方正な椿がキミに危害を加えるとは、到底考えられないからね」
俺にも考えられない。伊達に十年も付き合ってない。未梨の性格は把握しているつもりだ。時折未梨が凶行に走るのは見てきたが、少なくともそれは、ちょっとだけ人間離れした行動を取るだけで、級友や道行く人々に危害を加えることは一切なかった。昨日だって?笑顔?で?指輪?をプレゼントしてくれたんだ。あれだぞ、未梨の笑顔はな百万ドルの夜景にも勝るぞ。普段からあの笑顔を保ち続けていれば、男女問わず未梨の周囲には雑踏が出来上がるぐらいなもんだ。
だけどな、
「結局のところ、それはマジで呪われたアイテムなわけか?」
「そうです」
滋の加工前メラナイトのような瞳には、わずかだが非難の色を帯びている。
「この?指輪?は椿の無意識レベルに近い精神的ストレスによって形成された能力媒体です。トリガーとなったのがキミの存在。凡百の想いが錯綜する不安定な精神状態のなか、捌け口に選ばれたのが?指輪?」
端的な説明を求める。
「ここ一年、椿の精神状態が極めて不安定だったのをキミは知っているかい?」
それは初耳だし、俺の視力に異常が発生してない限り、未梨は普段と誤差1ミクロン範囲の表情変化で日常を過ごしていたはずだ。情緒不安定な様子はなかったぞ。
「椿は機関や?能力?、自分の正体を告白した要因で、キミから忌避されるんじゃないかと、密かに恐れていた……それが一年前からストレスを貯め続け……今に到る訳です。?どういうわけ?だか、椿の精神は今現在、空前絶後、あり得ないほどの落ち着きを見せています。これからは少しは自重して下さいね……」
「荒唐無稽って知ってるか?」
緩慢な動きで肩を竦めた滋は、
「説明、言葉に根拠が無く、実に馬鹿げている。確かそうでしたよね……それがどうかしたかい?」
いい、何でもない。皮肉が通じないほど対応しにくい奴はいない。
「その?指輪?が呪いのアイテムなんて根拠がどこにあるんだ?」
「キミは?夢?を見た……それだけでいい。全てを如実に物語っている」
だから、何を根拠にいっているんだ。夢なんて誰でも見るだろう。
「……フフ、ごもっともな意見ですね。いいでしょう、説明します。まず、昨夜から明朝に掛けて、ここ一帯に強力な?能力?反応が見受けられたらしいです。当初は椿を疑いましたが、違いました。原因はキミの嵌めていた、この?指輪?です」
俺には?能力?反応とやらが観測できることに対して驚きを覚えたい。
「さきほどにも話したように、この?指輪?は能力媒体、一種の呪いのアイテム。能力媒体は精製者の凡百の想いが集束して、出来るものです。キミの見た現実感漂う?夢?は、椿の想いの結晶、いわば過去に起こった現実……。僕も一度ぐらいはタイムトラベル気分を堪能したいものです」
床下で陶器が割れるような甲高い音とオフクロの嬌声が響いた。何やってるんだか。
滋は鼻で笑い、
「僕がキミから?指輪?を強奪したのも、ちゃんとした謂れがあるんだよ」
ああ、それが一番の疑問だ。まさか見せびらかしじゃあなかろうな。
「この?指輪?にも潜在意識が宿っている。無いに等しい意志がね。僕が熱弁を振るえば、この?指輪?は賢明に拝聴しているんだよ」
訊けば訊くほど、現実が遠退いていく話だ。驚愕する要素がたんまりしているが、素直に驚けない俺の精神は徐々に普遍から離れ掛けているのだろう。?指輪?に意志があると訊いて、「ああ、そうなんだ」と納得しかけてしまう。脳内がメルヘンチックになってしまう。
「?指輪?に意志が宿っている、と、強奪はどう結びつくんだ。関係ないんじゃないのか」
「大有りなんだ。僕の任務をこの?指輪?に悟られれば、キミに被害が出ることは明白。自己防衛の為に手段を問わずに?指輪?はキミの指に粘着していた可能性もある。最悪、キミの指を切り落とすぐらいの心構えはしてたんだよ」
物騒だ。遠い昔なら義手やら義足やらに一抹の憧れを抱いていたが、あの頃の俺は小学生特有の病に侵されていただけで、今となっては健康第一的な考えに到達している。何より痛いのはごめんこうむりたい。
「納得はしてもらえたかな?」
得心とまではいかないが、一応把握したつもりだ。?指輪?なら勝手に持って行け。
「では、僕はそろそろ失礼させて貰うよ……解っていると思うけど、椿には件の用件は内密にお願いします……」
ベットから重い腰を上げた滋は、名残惜しげな視線をこちらに浴びせつつ――
「ちょっと待て。お前は全て終わったかも知れんが、俺にはまだ山ほど訊きたいことがある」
「フフ……いいですよ。思えば一方的に僕が語りかけていたようなものでしたね……」
意外にも素直に応じた滋はベットにでも腰を下ろすかと思いきや、部屋唯一の窓辺のポジションを取る。俺に背を向けたままだが、きっとその表情には笑みが浮かべられていることだろう。
「大凡予想できますが……仰せの通りに、どうぞ。僕が答えられる限り、いくらでも情報を提供しましょう……」
「まず、」
俺自身について。
滋は特務機関を裏切ったのではないのか。
夜通し尋問しなければならないぐらい疑問を貯蓄しているが、最初に訊きたいことは決まっている。
「まず?」
復唱せんでいい。
「お前と愛沢さんの因果関係についてだ」
近いうち修正するかも。矛盾点がないかとハラハラハラスメントしています。
次話は……あれです。続きません。「5」に入ります。
番外編始めました。繊細は「Other Episode」でっ!