疑問2
興味が湧かなかった、と言えば嘘になる。けれど、むやみに足を突っ込めばどうなるかくらい分かってた―――。
『○○小学校 六年生徒事件』。他殺か自殺かが断定できないため、捜査が難航した事件。それは未だに解決されていない。
「どうです? 何か分かりそうですか?」
叔父はしかめっ面で、う~んと唸る。「これだけじゃ分からないな」
「やっぱりそうですか……」
がっかりした様子を演じたが、それくらいは予想していたので本当は落胆なんかしていない。一般人が、新聞に載っていた情報や目撃者の話をしたところで、何も答えられないのは当然のことだ。だが、叔父は一般人にはできないことが一つだけできる。それは―――。
「その時の状況をもっと鮮明に覚えている人がいれば、僕の能力を使って犯人を知ることができるんだけどねぇ……」
叔父は、人の記憶をわずかに覗けるらしい。それに、この世の者ではないものに干渉することができるとも言っていた。この能力は霊媒者に似ているが、そうではない。霊媒者は、自分に霊を乗り移させて、死者とその親族の会話を手伝っている。会話を成立させるには、自らが媒体とならなければいけない。だが、叔父は自分が媒体とならずとも、死者と生きている人間に会話をさせることができるのだ。……でもまぁ、その違いは微々たるものだ。霊媒者は魂だけになった死者のために一時的に器を提供する。けれど、叔父は提供しない。……それに、霊媒者は他人の記憶は覗けない。たったそれくらいの、微々たること。
「いいえ、高尾さん。俺が本当に知りたいのは、黒幕が誰かということじゃないんです。何故あんなことになってしまったのか、だ」