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侵食  作者:
終わりの予感
4/30

疑問


                      2


とある喫茶店。広田友樹は携帯電話を取り出した。時間を確認する。午後六時四十二分。待ち合わせの時間はとっくに過ぎている。そのとき、カランカランと店の入り口から涼しげな音が鳴った。広田友樹はそちらに目を向ける。無精ひげを生やした、三十半ばくらいの男が入ってくる。男はきょろきょろと挙動不審な動きをしていたが、彼を見つけるとにっこり笑ってきた。


 「やあ、遅くなってすまないね」


 広田友樹は不機嫌そうな顔をして、「別にいいですよ」と答えた。


 「高尾さんが遅刻してくるのには慣れてますから」


 突き放すように広田友樹は叔父の高尾に言う。


 「悪かったって。……まいったなぁ、トモくんが機嫌を直してくれないぞ」


 「何すか、それ。俺をそこら辺にいるガキみたいに言わないでください」


 広田友樹は口角を尖らせ、拗ねたような表情を見せる。高尾から見れば彼も充分子供だ。すると広田友樹は、彼がそう思ったのを悟ったようで、「誰も機嫌なんて悪くしていませんよ。高尾さんに約束した時間を守って欲しいだけです」と言った。


 「分かってるんだけどね、どうも時間間隔が皆と違ってるみたいで……」


 「無駄な話はここまでにしましょう。本題に移っても良いですか?」


 高尾は思わず苦笑した。広田友樹には子供っぽい言動が目立つが、妙にサバサバしたところもある。


 「ああ、もちろん。君は三年前の事件を調べているんだったな。君が関わってる三年前の事件と言うと……」


 「『○○小学校 六年生徒事件』。自殺か他殺か分からず、迷宮入りになった事件」


 「一つ訊いてもいいかな。トモくんは、三年前のあの現場にいたんだろう? 現場にいたなら疑問に思うことなど一つも無いと僕は思うんだけど―――」


 そのとき、高尾の分の水とお絞りを乗せたトレイを持ってきたウエイトレスが現れ、彼は口を噤む。


 「ご注文は何に致しますか?」


 「僕はコーヒー。ブラックで。トモくんは?」


 「じゃあ俺もそれにしてください」


 「かしこまりました」


 ウエイトレスが去り、広田友樹が先程の問いに答える。


 「現場に居合わせていたからこその疑問がある。それを人伝に聞いたのなら、ここまで調べようなんて思わなかったさ」


 広田友樹は鞄から一冊のノートを取り出し、ページを開く。


 「これは?」


 「俺が知っている限りのことをまとめたものです」



ちょっと前に書いていた話なので、今読み返すと結構恥ずかしいです。

読んでくれた方に、感謝です。

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