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真相
6
空は鉛色。教室の中はとても暗いのに、電気がついていない。誰もいないのかと思いきや、人影が見えた。……美月だった。
「おはよ美月。早ぇな、お前」
「おはよ、トモくん。早いね」
美月はにこりと笑う。柔らかな表情だった。つられて、友樹も笑う。
「今日は良いことでもあったのか?」
「ううん、違う。今から良いことが起こるんだよ」
「今から?」
「うん。もうすぐ田代加那慧くんがここに来るんだ」
「田代加那慧? ……知らない名前だな。転校生か?」
彼女は「違うよ」と言った。「私の願いを叶えに来てくれるの」
広田友樹は首を傾げた。美月の願いを叶えるためにやってくるのか。変な奴だな、と。……けれど、それで美月が喜んでいるのなら、それで良いと思った。友達が留学してしまい、彼女は悲しんでいたのだ。気晴らしになるならそれで良い。
彼女は誰にも聞こえないような小さな声で、呟いた。
「ごめんね、トモくん」