もふもふうさぎ
夢の中でわたしは踊っていた。シロッコもミケにゃんもそれからケンも踊っていた。それと、なぜだかわたしの唯一の友達である猫のマナもにゃんにゃんにゃんと踊っていた。
わたしの笑顔もみんなの笑顔も幸せそのものだった。そんな笑顔を見ていると嬉しくて幸せでたまらなかった。
目を覚ますと知らない木目調の天井が視界に入った。
「わたしの部屋じゃない」
わたしは部屋の中を見回した。
チューリップ柄の壁紙が貼られた可愛らしい壁にカントリー調のどこか懐かしさを感じさせる温かみのある木製の家具。わたしの元いた世界のカラフルでポップな部屋とまるで違っている。
ここはもふもふ癒しの空間アパートだ。やっぱりわたしは異世界にトリップしていたんだ。分かっていたことではあるけれど、眠って目を覚ましても元の世界には帰れないんだと思った。
わたしはゆっくり体を起こしベッドから出て、一階に行く。すると、夕食のふわふわとした良い香りが漂っていた。
わたしは、ゆっくりとカフェの扉を開き中を覗いた。店内はしーんとしていてまだ、他に誰も来ていないようだ。
「満里奈ちゃん、ご飯ができているよ」
シロッコがわたしに気づき言った。
「ありがとう」と言ってわたしは席に着いた。
すると、「こんばんは」と可愛らしい声が聞こえてきた。その声に振り返ると、パイナップル柄のワンピースに身を包んだもふもふうさぎがカフェに入ってきた。
そのうさぎは目は丸くてくりくりで睫毛も生えていて、そしてへの字の小さなお口がそれはもう可愛らしくてきゅんきゅんしちゃいそうになる。
「こんばんは」とわたしはうさぎに挨拶を返した。
「新入りさんなんだね。わたしは、うさぴーだよ~よろしくね」
うさぎ改めうさぴーはにこにこと微笑みを浮かべた。わたしってば思わず可愛らしいですねと言いそうになってしまったではないか。
わたしは椅子から立ち上がり、「わたしは川本満里奈です。高校一年生、十五歳です。どうぞよろしくね」と言ってぺこりと頭を下げた。
「満里奈ちゃん、高校一年生って学校の名前かな?」
うさぴーは首をちょこんと橫に傾げきょとん顔になっている。もうこれはぬいぐるみにしか見えなくて可愛すぎるよ。
「えっ? 学校の名前? 違うよ~学年って言うか小学生、中学生の次が高校生だよ」
やはりうさぎに学校の話をしても分からないよねと思いながらわたしは言った。
「ふ~ん、良く分からないけど、わたしはうさぎの学校に通っているよ。うさぎの学校の二年生に進級したよ」
うさぴーは腰に手を当てて自信満々のポーズを取る。
「うさぎの学校に通っているんだね」
「うん、そうだよ」
わたしは、胸を張っている可愛らしいうさぴーを眺めながら教室の席が全てうさぎで埋めつくされている状況を想像してしまった。
うわぁー!! キュートな世界だ。
ああ、それは、なんとも言えないほど可愛すぎるうさぎのパラダイスではないかと思うとわたしの頬は緩んだ。
「満里奈ちゃんぼ~っとしてどうしたの?」
うさぴーがわたしの顔を覗き込んだ。ちょっとこれはドアップですよ。可愛すぎるではないか。ああ、もう癒されまくりだよ。
その時、カフェのドアがバタンと開き、
「ご飯だ~ご飯の時間だにゃ~ん!」と言いながらミケにゃんが入ってきた。
「あ~ミケにゃんってばいつも食いしん坊なんだから」
うさぴーが鼻をぴくぴくさせながら言った。
「だって、美味しい食べ物を食べると幸せな気持ちになるんだもんね」
ミケにゃんはそれはもう幸せそうに目を細めた。
「さあ、お待ちかねのご飯の時間よ」
シロッコが料理を載せたワゴンカートをコロコロ転がしながらやって来た。
「わ~い! ご飯だにゃん」
ミケにゃんはにゃーんと飛び跳ね喜んだ。
実はわたしもご飯が楽しみです。思わず鼻をくんくんさせてしまったのだった。
そんなわたしの隣でうさぴーも鼻をくんくんさせるものだからわたしもうさぎになってしまったのかもと錯覚してしまいそうになるではないか。
「にゃはは、食いしん坊なうさぴーと満里奈ちゃん」
ミケにゃんは言いながら鼻をくんくんさせた。
その姿がなんだかおかしくてそして可愛らしくてわたしは、口元に手を当ててうふふと微笑みを浮かべた。




