私の名前は
再び目を開けたとき、そこにあった光景は、これまで見たことのないものだった。
まるで空へと伸びる大理石の柱。
以前、ヨーロッパのツアー旅行でしか見たことのない、巨大な窓。
窓の両脇には、真紅のキャンバスカーテンが掛けられている。
床は、一枚一枚の石英で敷き詰められ、現代の富豪が使うような……
なんて言えばいいのか、とにかく圧倒される威厳があった。
赤いカーペットは、俺の視線を空間の出口、非常に重厚に見える大扉へと導いている。
その両脇には、見知らぬ兄姉たちが立っていた。
アニメでしか見たことのない、メイド服やスーツを身にまとって。
——待て、違う……
兄姉……たち?
なんでそんなふうに思ったんだ?
彼らは、明らかに俺より年下なのに!
「え……?ここは……?」
なんとか口から二言、三言、日文を絞り出す。
しかし、気づけば口から出ていたのは、全く聞いたことのない言語だった。
俺はしばらく呆然とした。
その時、見知らぬようで、どこか懐かしい声が響いた。
「ライアン、早くお父様を迎えに行きなさい」
経験がある人は少ないかもしれないが、幼少期、記憶がない状態から一気に過去の積み重ねが流れ込む瞬間がある。
俺にとって、その瞬間がまさにそれだった。
自分のものではない、多くの記憶が突然、流れ込んできた。
モード城、大公、邸宅、母、父……
俺の意識は自然と、赤いカーペットが導く先の光の扉へと歩みを進めた。
その光の中で、粗野だが精悍な顔立ちの男が見えた。
安心感を与える広い肩。
黒く整えられた髪に、わずかに白髪が混ざり、
青い瞳には経験と老練さが宿っている。
「お父……?」
ちょっと待って!誤解しないでくれ!
俺はそんな軽々しく『お父さん』なんて呼ぶタイプじゃない!
ただ、脳が勝手に反応しただけだ!
光に近づくにつれ、初めてその男の背後に小さな影がいることに気づいた。
その子は、男の袖を掴むことなく、年齢に似つかわしくない気品を纏い、
幼くも優雅に、後ろに立っている。
幼稚園の大小姐が劇でプリンセスを演じるときのような雰囲気、とでも言えばいいだろうか。
目を離せない。
銀色の髪を持つ少女だ。
適切な距離まで近づくと、まるで会話トリガーのあるゲームのように、彼女とのやり取りが始まった。
男が口を開く。
「ライアン、パパが新しい遊び相手を連れてきたぞ。君と同じ10歳だ。君の努力を刺激するのに、これ以上ふさわしい子はいないだろう」
現代社会でこれを言ったら、炎上必至だろうな……。
「自己紹介しなさい」
男は少女の背中を軽く押す。
少女は意外なほど落ち着いた声で答えた。
「は……はじめまして」
「私の名前は、リノです」




