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ここは、異世界だからだ

朝の光が、厚いベルベットのカーテンの隙間から差し込み、

モード大公邸の最も豪華な主寝室を淡く照らしていた。


いつもの朝と同じように、ゆっくりと目を開ける。

この世界に来てからというもの、俺はずっと裸で寝る癖がついてしまった。

理由は二つ。

この世界の布団が異常に気持ちいいことと——

目覚めた瞬間、自分の手に入れた腹筋を眺めたいからだ。


「坊ちゃま、そろそろお目覚めの時間ですよ。」


落ち着いた声が部屋に響く。


くそっ……この世界にも『起床』ってイベントはあるのかよ。

永眠できる世界は、どこにもないのか……。

目を閉じたまま、俺は無言で抗議を示す。


「坊ちゃま……あなたが寝る時に服を着ないのは知ってます。

だから、あまり私を困らせないでくださいね? お布団、めくっちゃいますよ?」


「3……2……」


「まっ、待って! 起きる、起きますって!!」


くそ……また俺の負けだ。


「起きればそれでよろしいです。今日も一日、忙しくなりますからね。

剣術訓練に、礼儀作法、それにお茶会もあります。」


「これ以上ぐずぐずしてると、リノまで一緒に叱られますよ。」


俺を起こしたのは、専属メイドのリノだ。

もし一言で彼女を表すなら——そうだな、俺の前世……いや、十回転生しても出会えないレベルの美人。


銀河の光を閉じ込めたような長い銀髪。

雪原のように白く滑らかな肌。

そして何より印象的なのは、あの輝く蒼い瞳。

正面から見つめ返す勇気なんて、俺にはない。


……って、何を考えてるんだ、君たち。

女の子の体つきとか気にしてどうする。バカか。


「起きたなら、早くお着替えを。……でも、着替えの手伝いって、本来メイドの仕事ですよね……?」


リノの声が小さくなっていく。

頬が、ほんのりと赤く染まっていた。


「い、いや! 自分でできるから!!」


できる限りの大声で拒否する。


「そう……では、十分後にお待ちしています。」


リノの顔から赤みが消え、いつもの冷たい表情に戻る。


「わかってる、すぐ行くよ。」


彼女が軽く会釈をして部屋を出ていく。

扉が閉まる音を聞いてから、俺はようやくベッドから降り、

のんびりと運動服を一枚ずつ身に着けていった。


さて、みんな気になってるだろう。

どうして俺が、あんな美人メイドの主人になれたのか——

そして、それ以上に重要なこと。

どうして俺が腹筋を手に入れられたのか。


その答えは、ただ一つ。


——ここは、異世界だからだ。



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