第7話 悪霊の街・エルソン2
エルソンという街に辿り着いた。
外見は5mもの壁が街を覆っていて随分と大きい。要塞都市といった印象だ。大きな門が正面にあったので、そのまま近寄り、門兵に身分証を見せた。兵は直立不動の敬礼をして説明を始める。
「この街は現在、夜の外出を控えるように領主さまから伝達されております。今までは外部からの侵略など攻撃は完全に防いでおりましたが、街の内部にある炭鉱から悪霊が出てくるようになった為、攻防戦が5か月間継続しております」
聖騎士ミキオ「5か月間も!?……うん、続けて。」
「領主さまは王都へ報告し、騎士団の援軍が来ましたが、1週間前に半壊、現在は押されております。敵は死霊系のゴーストと思われますが、出現するタイプは様々な亜種が存在しており、絞り込むのが難しく、弱点を突くという作戦はかなり厳しい状況です」
勇者サトシ「なるほど、浄化魔法の効果は?」
「はい。効果はございますが、殲滅するほどの決定打を放てる治癒師がおらず、難儀しております」
聖女ミズハ「分かりました。わたしの浄化魔法が期待できます。今夜にも対処いたします。皆さまは他に情報がありましたら、私たちにお知らせください」
門兵「イエス!マーム」
……ということで通過を許され、宿泊施設の場所を教えてもらって、夜までに更なる詳細な追加情報を提出するよう求めた。
ミズハは話を聞いただけで容易に俊滅できると判断し、兎にも角にも暗くなるまではゆっくりしようという事になった。
驚くことに、否、逞しい住民の人たちはお店は出しているし、普通に歩いている。悪霊は、夜以外は出てこないそうで、攻防戦の形勢が圧倒的に悪くならない限りは、愛着のあるこの街が必ず復活するからと、住み続ける覚悟だという。郷土愛が強いんだなと感心した。
宿で軽装に着替えて、ぼくはミズハとユアイの3人でお店巡りをした。購入するのはペンダント。アクセサリー店を何件も見て、鳥の串や焼き魚、焼き肉の出店などに寄っては買い食いした。
お祭りの時は特に美味しく感じるよね、さっき食べた串焼きも本当に美味しかった。
あるアクセサリー店にて、輝くようなペンダントを見つけた。宝石が入っており、側がオリハルコンだった。ミズハとユアイに「どうかな?」と聞くと二人とも「すごく奇麗」、「お兄ちゃん、持ってるね」と喜んでいたので、二人のプレゼントとして購入した。
店の親父さんが二人を見て「別嬪さんを連れて、兄さん、羨ましいぞ」と僕に向かって言った。
少し恥ずかしながら「幼馴染と妹ですよ」と返事をしたら「なぜかもっと羨ましい」と言われた。
早速、ぼくは回復と基本スキル増強を付与して、彼女たちにペンダントをつけてあげた。
ヨシタカ「とても似合ってるよ」
ミズハ「相変わらずヨシタカ君の付与魔法はすごいね」
ユアイ「お兄ちゃん、ありがとー。大切にするね」
二人とも、昔の感覚に戻っているのか、ニコニコで、手はつなぐは、腕は組むは、抱き着くは、普通のカップルのようなイチャイチャぶりだった。
人類を代表するような重要人物とは、とうてい思えないや。
それからも「ネーネー、あっち~」とか「温泉があるよ、入りたいよね、魔王退治の帰りに。」とか、ぼくは引きずられていくのであった。
ミズハ「ねぇ、私たちが育ったところの《《教会》》、ユアイちゃんやヨシタカ君が勇者パーティに入る女神様が加護を与えて下さった場所。全てが終わったら、教会に一緒に行こうよ」
ユアイ「《《教会》》、思い出す……、いきなり自分がVIP待遇になって衝撃的だったよ。お兄ちゃんと手を繋いで訪れたいな」
義孝「うん、約束するよ。あの教会行こうね」
★★★★★
ミズハ「ふふっ、楽しすぎて疲れちゃったわね」
ユアイ「わたしもー。今までお兄ちゃんと離れてたから、お兄ちゃん成分を補充しないとね」
ミズハ「ずるい!わたしも」
と言いながら、また二人で引っ付いてくる。
ヨシタカ「二人とも甘えん坊さんだな~」
笑って、ユアイの頭をなでる。ミズハの腰に手を回す。
ミズハも凄く笑っていた。昔の夏祭りもこんな感じだったなぁと思い出す。またこのタイミングで、ミズハは少しだけ寂しい顔をした。
ヨシタカ「なぁミズハ、今一瞬だけど寂しい顔したよね?何か悩んでいることあるの?相談に乗るよ」
ミズハ「ううん、何でもないよ。疲れただけかな。気にしてくれて、ありがとう。わたし、あなたの事いつも好き。幸せだよ。」