第6話 悪霊の街・エルソン
魔王城へ向かう馬車の中では、再会の喜びと親交を深め合った。
勇者馬車は5名乗りの仕様であり、サスペンションが効き、馬車特有の辛い振動が軽減されていた。また馬には付与魔法をかけ、体力強化と自動回復で長距離、且つ、早く到着できる。騎士たちの馬車も同様だ。
サスペンションのない普通の貴族の馬車より豪華に出来ているのは、それだけ本気度の高い魔王討伐だからであった。それでも馬は万能ではない。生き物としての限界があるため、途中での水飲み休憩は必須である。
ぼく達は、12歳で女神様の加護を受け、もう6年間ものパーティとなっている。会話は多少、口の砕けた感じになっている。
聖女ミズハ「ねぇ、大きな湖があるよっ。奇麗だ~」
大魔導士ユアイ「ミズハねえちゃん、光が湖に反射して奇麗だネ」
聖騎士ミキオ「良さそうな魚が棲んでそうだな。釣りしたくなるねぇ」
勇者サトシ「この自然の美しさ、これらを守らねばと強く思うよ」
聖付与師ヨシタカ「ぼくは、このメンバーもしっかり守りたいな」
勇者一行は、途中の大きな街であるエルソンにて3日の宿泊をすることに決めた。この街はミスリル、オリハルコンをはじめとする希少価値の高い鉱物が産出することで発展してきた。それなりに街は大きく、宿泊施設も多い。買い物もできるので息抜きには最適な街であった。
ユアイ「ねぇねぇーお兄ちゃん、街に着いたらさ、一緒に買い物行こっ!」
ヨシタカ「うん、時間があったらいいね」
ミズハ「私も行く。ダメと言ってもついて行くからね!」
ヨシタカ「ダメだなんて言わないよ。一緒に行こう」
ミズハ「うん!」
ヨシタカ「二人にはミスリルのお土産を買ってあげようか。自動回復の最上位魔法を付与しておくよ」
ミキオ「俺の買い替えた魔道剣にも付与頼むな」
サトシ「聖剣には付与できないのが悔しいよ」
ヨシタカ「ミキオの剣には重ね掛け、サトシにはペンダントに付与しておくよ。宿に着いたら剣を出してね」
ミズハ「ふふ……なんだか昔に戻ったみたいだね」
ユアイ「だったら今日は一緒にベットで寝よ。お兄ちゃんも入れて」
ミズハ「だ、ダメよっ!婚姻前の男女が一緒の寝床に入って……同衾するなんて、だって、わたし……ブツブツ」
ミキオ「ははっ、ミズハちゃんはキスの経験もないんだろ?」
ミズハ「キ…キス…バカにしないで!私だって、キ…キ……ちょっと助けてよヨシタカくん」
ヨシタカ「まぁミズハもユアイもキスの経験ないんだから、許してやってよミキオ」
ミキオ「そういう事にしておいてやるさ」
サトシ「お~い皆、炭鉱の街エルソンが見えたよ」