第5話 魔王城へ向け、出発!
国王の謁見を終え、そのまま王城から王都のメインストリートを専用馬車で”出立のパレード”を行う。勇者馬車が先頭で、聖女と共に立ち上がって仲良く手を振る、その後列には騎士たちが連なっていて、とても壮大な風景である。
両側には沢山の住民が詰めかけ、「がんばって!」と声援を送りながら手を振っている。中にはスラム街の子供たちがいて、粗末な格好ながらも手作りの勇者旗を作り、一生懸命に振っていた。
聖付与師のヨシタカは「うん、ぼくたちも頑張るよ、みんなの笑顔を守るために頑張るよ!」と返礼をする。
「お貴族さまなのにお返事をくれたよ!」と子供たちが喜ぶ。
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勇者パーティは全員、貴族になっていた。
ヨシタカと聖女ミズハを除き、勇者パーティのメンバーの全員が《《子爵》》を拝命していた。聖女はそのままで社会的地位を示し王族や公爵級の《《最上位》》であり、聖付与師のヨシタカだけは残念ながら最下級の《《騎士爵》》であった。
魔王討伐が終われば、それぞれ伯爵、男爵に格上げされる。国王は聖付与師だけが騎士爵では不当であり、男爵にと推薦しようとしたが、聖付与師スキルの評価が低く、周りの理解が追いつかず、最下級のままであった。
また、魔王討伐後、勇者と聖女が婚姻を結び、大魔導士が王子殿下と婚姻、聖騎士は公爵家の次女と婚姻、聖付与師は子爵または男爵の娘と婚姻するという取り決めがなされた。
勇者パーティにて、もしもメンバー同士が親密な関係がなされた場合、婚約は破棄され、自由選択の権利が与えられるということだった。
聖付与師ヨシタカは、自分以外の誰もが幸せになってくれれば好いと思っていた。元からのお人好しであり、根っこからの善人であった。
心の奥底にて幼馴染のミズハの事を想う。泥だらけで遊んだミズハが、今では聖女様。いつの間にか凛とした高潔な性格そのものの姿になり自分には眩しすぎると実感、感服している。民衆から支持を受け、美しい姿と慈愛の籠った目と微笑み、惚れ惚れしてしまう。
「勇者サトシなら幸せにしてくれるんだろうな」
ミズハとは幼少の頃とはいえチュッと3回だけキスしていた。ヨシタカは自分の好意を押し込めながら、懐かしさと恋の苦しさを感じていた。
また、大魔導士の妹ユアイを思う。妹は美人のミズハと比較すると可愛い系であり、小さな体を一生懸命動かし、兄であるぼくの後ろをトコトコついてきていたものだ。目に入れても痛くないほどの可愛さだった。
それが今では大魔導士だという。物凄い出世だ。確かに小さい頃から魔法が得意で一緒に上達しようと野原で頑張った。魔法の勉強も毎日何時間もやり努力家だった。
ぼくは、パレードのイチ主役にも拘わらず、ほんわか懐かしさに浸っている。