第43話 森の隠れ家
【追加情報カフェ『森の隠れ家』】
神官エレーネ
「アルフォンヌ公爵と私の婚約者アランが会っていたという『森の隠れ家』というカフェがありました。何らかの犯罪の窓口かも知れません。行ってみようと思いますが……如何でしょうか?」
ヨシタカ
「エレーネのような女の子だと少し危険だな。俺とミキオ、サトシの三人で行ってみるよ」
サトシ
「そうだね、女性陣はゆっくりしていてよ」
ミキオ
「たまには男同士で騒ぐとするか」
エレーネ
「承知しました。変なところへ遊びに行かないで下さいね」
ミズハ
「ヨシタカくん、夜は絶対に空けておいてね。二人っきりになるの久しぶりだもの」
ヨシタカ
「積もる話はいっぱいあるからな、楽しみにしてるよ」
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【カフェ】
ミキオ
「来たな……普通の喫茶店みたいな感じだ。照明が少し薄暗いぐらいか」
サトシ
「油断せずに乗り込もう。地下に違法カジノとかあるかも」
ヨシタカ
「……特に店自体は悪そうには見えないなぁ」
ヨシタカ達三人はカフェへ入った。カランカランと入口扉の鐘が鳴り、白いシャツに黒のベスト、黒いふわっとしたスカートの可愛らしい格好の制服ウェートレスが二人迎えに出てきた。
二人ともとても可愛らしく真面目そうな二十歳前後、制服が特に可愛らしいデザインであり、黒髪と併せて、とても清楚に見えた。笑顔が眩しい。二人とも胸は普通の感じだが、制服の胸部の形が好いのか、柔らかそうなC~Dカップに見える。
ウェートレス・ミカ&ユキ
「「いらっしゃいませーーっ。お客様は何名様でしょうか?」」
サトシ
「三人です」
ウェートレス・ミカ
「こちらの席へどうぞ。マスター、三名様のご来店でーす」
サトシ
「ありがとう」
丸テーブルに椅子が四つある場所を指定され、ヨシタカたちはそれぞれ椅子に座った。テーブルの上にはメニューが乗っており、特に不自然なところはなかった。三人は足元をはじめ隠し扉、飛び道具など店内に注意し、観察しながら警戒を続ける。
ミキオ
「これがメニューだな。サンドイッチとかパスタとか普通にあるんだ。オレはコーヒーだな」
サトシ
「ぼくはアイスコーヒー……。はないのか。ホットで」
ヨシタカ
「アイスコーヒーは地球だって普通に海外でも取り扱いが少ないからな。自動販売機でのアイスコーヒーに出会えればラッキーだぞ。自動販売機ですら滅多に見かけないが」
ミキオ
「ヨシタカ、何にするんだ?」
ヨシタカ
「うーんと、そうだな、ミカジューとユキジューってのがあるな。冷たいのかな?」
サトシ
「ミカンジュースなら冷たいんじゃない?」
ヨシタカ
「よし、ミカンジュースにしよう。あの、すみません、ミカジューください。あとホット二つ」
ウェートレス・ユキ
「は、はいっ」
急に顔を赤くしたウェートレス。少し焦っている感じがする。特に理由もなく態度が変わるというのは不自然である。ヨシタカは警戒レベルを一つ上げた。
ウェートレス・ユキ
「マスター、ホット二つにミカジューが一つです」
マスター
「ミカちゃん、ちょっとこっちに来て。お店の裏に」
ウェートレス・ミカ
「は、はい……。あ、あの、マスター、わたし初めてなんです」
マスター
「ああ、誰もが経験する通過儀礼だから、心配しなくてもいい」
そう会話をしながら店の裏口に二人が向かって出て行った。店内にいるのは一人のウェートレス・ユキだけである。この不自然極まる行動から紐解くと、次は攻撃で狙ってくる可能性が高い。ヨシタカはミキオとサトシに目配せで合図を送った。サトシが小さくうなずく。戦闘態勢に入った。
マスターとウェートレスのミカちゃんという娘が裏口から外に消えてから、少し時間が経ったが、未だ何も起きなかった。ヨシタカたちに緊張感が走っていた。
すると妙な声が聞こえてきた。
「ああ……い、いや……そんなに……あっ、あっ、強くしてはダメです、マスター……、あっ」
ミキオ
「な、なんだ……?」
サトシ
「こ、この声は……喘ぎ声か……誘拐と関わってるのかも、緊急事態か」
ヨシタカ
「ま、待て、静かになったぞ」
ウェートレス・ユキ
「あ、お客様、何も問題ございませんから……」
ヨシタカ
「何か店内で都合の悪い事でも起きたのかな?」
ウェートレス・ユキ
「いえ、すこしだけ……」
ヨシタカは、少し探りを入れるかのような台詞を言ってみた。それに反応して、ウェートレスは少し涙目になった。このカフェは危険な臭いがする……ミキオとサトシは顔を見合わせた。ヨシタカが攻撃魔法の発動準備をする。
ヨシタカ
「……まだ何とも言えないが」
するとガチャリと裏口からマスターとミカと呼ばれるウェートレスが戻ってきた。ミカは呼吸が荒れているように見える。何があったのか?まだ誰にも分からなかった。
不思議なことにウェートレス・ミカの顔は先ほどより真っ赤であり、恥ずかしいのか下を向きっぱなしであった。
ミキオは、このカフェが女性攫いの窓口として怪しいと想定を確定させ、女性誘拐前の何らかのリアクションが、これかもしれないと独断していた。
ウェートレスは二人とも飛び抜けて奇麗で可愛いく、スタイルもよく胸も程よく柔らかそう、そして重要なのが気弱そうで真面目っぽい……という点。人攫いに狙われるならアリだろう。
ウェートレス・ユキ
「お待たせしました、えっと、搾りたてのミカジューでございます」
ヨシタカ
「うん? ミカンジュースの色をしていないな。まるでミルクだぞ?」
ウェートレス・ユキ
「は、はい。ミカジューやユキジューは乳白色をしているのが通常です。あ、あの、恥ずかしいです」
ミキオ
「何だと……。まさかミカジューとはミカンジュースの事ではなくて、しかもユキジューというのも……?」
モジモジしながら顔を赤くしたウェートレスのユキが、応えにくそうに首を縦にして「ユキジューを注文されますと、それは私のです」と返事をする。
ミキオ
「マジかよ……怪しい店を探しに来たら、全く方向が斜め上の怪しさとかで、正直戸惑うな」
ウェートレス・ミカ
「み、ミカジューをお待たせして申し訳ありませんでした。はぁ、はぁ、わたし初めてでしたので、はぁ、はぁ、少し苦労してしまいまして、お恥ずかしいです。美味しく飲んで頂けると私も嬉しいです」
ヨシタカ
「ミカジュー……というのはミカさんので、なぜか店裏で一緒に行ったマスターが絞って来るのですね?」
ミキオ
「ユキジューは、ホイップクリームがのってる様な白いジュースではなく、ユキさんの、なのか」
ウェートレス・ユキ
「は、はい。サッパリしつつ濃厚な味だとお客様に人気です。おひとつ如何でしょうか?」
ミキオ
「つーことは、もしユキジューを注文したらマスターが絞るのか?ユキさんの胸を」
ウェートレス・ユキ
「は、はい。私は小ぶりなので一日に何杯もお出し出来ませんが……」
サトシ
「……なんて、うらやま恐ろしい店だ……」
ウェートレス・ミカ
「そ、そ、そんなに胸じっと見ないで下さいっ! は、恥ずかしいです、メッですよ、お客様」
サトシ
「このカフェ店の名前は『丘の隠れ家』……ぼくたち店名、間違えて来てないかな……?」
ヨシタカ
「ああ……そうみたいだな。気づくの遅すぎだ。本来、俺たちが行くべき店は『森の隠れ家』だったな」
サトシ
「もう僕たちホテルに帰るべきでは」
ミキオ
「で、注文したミカジュー……、これ飲んでけよ? ヨシタカ」
ヨシタカ
「マジかよ、鬼だなミキオ……」
こんな世界があっただなんて……ヨシタカ達は万感の思いを胸に抱き、宿泊ホテルへ足を向けていた。彼らの足取りには力が込められてなく緩やかだった。敵の攻撃を受けるよりも遥かに衝撃を受けた心を映すかのように。
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ユアイ
「お兄ちゃん、おつかれさまっ」
女神ハル
「ヨシくん、おかえりーー、あら? 顔色悪いわね」
ミズハ
「あれー、大丈夫? すごく体調悪そうよ、回復魔法かけようか?」
神官エレーネ
「ど、どうされたんですか!? お三方とも」
侍女ユキシ
「異様に疲れていませんか? 怪しいお店の調査、どうでしたか?」
渓流神マナ
「変な香りがします」
男三人
「いや、すまん、確かに怪しかったのだが、店の名前を間違えてしまったようで」
「オレは部屋に戻るよ。少し独りにしてくれないかな」
「僕……、今は何も聞かないでください」
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恐るべきカフェ『丘の隠れ家』。
この店は次の日には霧のように隠れてしまった。
ミキオ
「お店が無くなってるな……まるで夢の魔法のように」
ヨシタカ
「どうして再度カフェ店『丘の隠れ家』に来てるんだよ。今日は『森の隠れ家』を調査する筈だろ?」
ミキオ
「ヨシタカ、お前、ミズハやハルにお代わりしてもらった方が良くないか? 今なら許す」
サトシ
「待て! ハ、ハルちゃんだけはダメ! 僕の戦力が百分の一になっても好いのかい?」
ヨシタカ
「だ、誰が絞る役をするんだよ!」
『森の隠れ家』の調査はすっかり忘却の彼方へ。
リンドバーグ伯爵領は、ますます謎が深まるのであった。
予告しました通り、物語の途中ではございますがお休みを頂きたいと思います。再会は未定です。しかし、あと2万文字ぐらいで切りのいい物語の節目になると思いますので、休みの間に(数週間以内に)書いて公開できればと考えています。
評価の低い当作品ですが、もし再開した場合は、再度読みに来て頂けると嬉しいです。




