第38話 女神降臨2
滅多に地上に現れない女神様が降臨された。
初めてみる女神様の慈愛に満ちた微笑みや可憐さを極めている美しさに、人々は感激し涙を流すものが多数に渡った。彼女の背後からは光が漏れ出し、奇麗な白い翼が広がっていた。
頭の上には丸い黄金カチューシャのようなものが漂い、黄金の髪、白い肌、ぱっちりした大きな目、瞼は二重。美しいとしか言えない光を湛えた黄金色の瞳、瞳は常に半伏せがちで高貴な印象のある鼻筋。形の整った桜色の唇が眩しい。
ミキオ
「女神様、えらい気合が入ってるな、化粧」
女神ハル
(ムッ……)
ヨシタカ
「うるさいってミキオ! 化粧は薄くしかしてないだろ」
女神ハル
(ちょっとヨシくん……)
サトシ
(は、女神様、美しいです、我が心の恋人、ああ……)
ヨシタカ
「サトシ! 顔がニヤけてるぞっ」
ユアイ
「お兄ちゃんも喧しいです、少し静かにしてください」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
空中に漂ったまま、気を取り直した女神は続ける。
女神ハル
「本日は、もう一人特別ゲストの神を呼んでおります。渓流神マナ、こちらへ」
「は、はいっ」
再度、光が集まり、羽を持った人の形を作り出す。イワナの神様のマナであった。白いワンピースは神衣となり列記とした神々しさを放っている。
女神ハル
「渓流神マナは小規模とはいえ村の守護神を司っています。わたくしの下級神の一柱であり、偶然にもヨシくん……いえ、英雄ヨシタカ様と出合いました。縁がありますので観測者として同席させます」
国王
「いにしえの英雄ヨシタカさまのご縁神ですか……」
渓流神マナ
「人類の皆さん、よ、よろしくお願いいたします」
民衆
「「おおおーーーーーーー、これまた美人で可愛い神様」」
ヨシタカ
(そうか、ここでマナと合流するんだな)
ユキシ
(えっ! えっっ! マナちゃんが……マナちゃんが神様として来ている? どうして、渓流の神様って、えっ、あの渓流から出られたの?)
ヨシタカ
(ああ、神々のトップであられる女神様の許可があれば地方守護神でも移動できるんだよ)
そして空中から地上に降りてきた女神たちは二階の来賓席へと降り立った。周囲の王侯貴族は最敬礼の跪きをとり、神気を浴びて幸福感、寧ろ最上の多幸感を感じていた。
女神ハル
「そのまま少しお待ちください」
美しい女神の口から透き通った声が周囲の人々に浸透し、時が止まったかのように静寂が訪れた。
女神は階下の正面で騎士の礼を取る旧勇者パーティへと近づき、ぼそぼそと声を掛ける。この声だけは脳へのダイレクト・メッセージではなく、誰にも聞かれないよう物理的な振動である音声にしてあった。
サトシ
(これでヨシタカ君の見た予知夢の全員が揃ったわけだね……)
女神ハル
「神官エレーネ、こちらへ」
エレーネ
「ハッ!」
急に声を掛けられたエレーネ。何ごと? という緊張と共にゆっくりと女神に近づいて速やかに騎士の礼を取った。
エレーネ
「神官エレーネ、ここに参上仕りました。お呼びいただき、ありがとうございます女神様。恐れ入ります」
女神ハル
「神官エレーネ、これを……たった一度だけ可能な、女神の奇蹟を貴女に授けます」
エレーネ
「こ、これは……!」
女神ハル
「すべての邪気を払うオリハルコンの神玉です。そしてエレーネには聖女のスキルを与えます」
エレーネ
「聖女の加護……リザレクションが出来る女神様の奇蹟」
女神ハル
「英雄ヨシタカさまのパーティに加わりなさい。わかりましたね。よろしくお願いいたします」
エレーネ
「か、畏まりました」
(ヨシ兄様の予知夢の通りになってるわ……女神様、素敵すぎます)
エレーネはポッと顔を赤らめ、目を見開き、緊張した表情のまま両手をしげしげと前に出し、小さく光る不思議な玉を手に取った。彼女の耳元に女神がそっと近づき、小声で何かを伝えた。そして……。
女神ハル
「エレーネ、人間の力では、どうしようもないと感じた時、是非この神玉を使ってください。ただ、使用する際は神気が必要です。その時はマナの神気を使って、これをヨシくんに渡して発動させてくださいね。私は貴女を信じ委ねます。くれぐれも頼みましたよ、神官エレーネ」
エレーネ
「はい! 承知いたしました、女神様」
・・・・・・・・・・
侍女ユキシ
「ユアイさま、わたし、何をしてたらいいのでしょう……女神様にユアイさまの伝言を……」
侍女ユキシはコソコソと女神ハルに近づき、一応、エレーネを参加させるために女神様から声明を出してもらうようユアイの伝言をつたえた。
女神ハル(全人類向けスピーチ)
「大会選抜パーティには聖女ポジションがおらずバランスが悪いです。神官エレーネを参加させて下さい」
国王
「はっ! 大会実行委員会、手続きを速やかにとりなさい」
大会実行委員会役員
「は、承知しました陛下」
ユキシ
「あ、これがユアイさまの仰られたトップダウンなのね……」
女神ハル
「そして、渓流神マナ、こちらへ」
渓流神マナ
「は、はいっ」
女神ハル
「大会会場に入り戦闘を近くで見守り、敵味方関係なく、人命を守るのです。わかりましたね」
渓流神マナ
「はいっ、我が女神様」
女神ハル
「大会関係の皆さんも宜しく承知の上お願いいたします。渓流神マナは戦闘に手を出さない審判ポジションで参加させます」
国王
「「はっ、女神様の仰せのままに」」
ユキシ&エレーネ
「いにしえの人の身体を持つ神様、ヨシ兄様たちって凄い……」




