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勇者たちの使命感:次なる異世界  作者: 流離の風来坊
正統派の勇者たち

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第36話 予知夢2

 ヨシタカは、手でユアイの傷口を血止めの圧迫をしながら、自らの上着を脱ぎ、彼女の傷口が見えないように覆った。


「……ユアイ」


「えへ……心残りは一つだけ、ファーストキスの経験もなく逝っちゃうこと」


「お前……そんなこと今言うな」


「だって、だって……お兄ちゃんとキスできなかった事が寂しいよ」


「おい……」


「次の人生では、絶対に義妹に、なるんだ。幼馴染でもいい……。そしたらキスできるもん」


「ユアイ、傷は浅い、諦めるな」


「恋人ハグしてキスしてね……お兄ちゃん……大好き」


(ユアイ……お前、そんなにまでして俺の命を救うだなんて……)


 さっきまで元気で一緒だったユアイ、一昨日の夜も慰めてくれたユアイ、なのに今は瀕死の状態だ。魔法が使えず、体力による戦闘力が十分の一になってしまうと、そこそこの相手ですら通用しなくなる現実に打ちひしがれる。


 ・・・・・・・・・・


 女神様side


 女神は半透明の黒い空間の外から中の戦いを覗いていた。女神の神力さえ黒空間の中へは届かない。過去に記録にすらない特殊な空間だった。


 女神の力すら及ばないこんな空間を作れるのは、他の上位の神しかありえない。その正体は魔神と思われる。女神は、魔神が魔王を従えて世界に力を及ぼしている兆候は見つけていた。


 実際の所、現勇者たちは魔神側の勇者パーティであった。しかし実力では遥かに女神側の勇者パーティが圧倒しており、正直、誰もが女神側の楽勝レベルに見えるほどの実力差があった。それでもヨシタカ達は決して油断はしていなかった。


 女神は早々、魔神の脅威に対応するため、早期解決のためにヨシタカら旧勇者パーティを召還したのだが、魔神側がこんな空間を作れるようになっているとは想定外であった。それ以上に魔神側が作り上げた空間の品質が優秀だった。この空間があれば、使い方によっては世界は引っくり返る。


 流石の女神もまさかの状況に焦りを隠せなくなっていた。


女神様(ハルちゃん)、大怪我しているお兄ちゃんを、たすけてください」


「ヨシくんより、ユアイちゃん、あなたの方が重傷よ……」


「わたしはいいの……です。お兄ちゃんを先に……お願い……します」


「ユアイちゃん……そんな……待って、まだ逝かないで」


「……」


 小さく息を吐き、時々、いびきの様な呼吸が混じってきた。命が消えるギリギリの様態であった。少なくとも通常の医学では救うのはかなり難しい深刻な段階である。女神は直接手が出せない空間先のユアイの様子を診て、悲しみに感極まり身震いした。


「そ、そんな……もう二度と身内を亡くすという経験はしたくないと望んでいたのに……そんな……」


 現勇者

「ふふふ……あっはっはっ」


「私は突破口を見つけます! あなた方に貸与されている全ての魔神の加護を回収します!」


 現勇者

「ふっ、やれるものなら、やってみるがいい」


 現勇者

「それではミズハ、もう一度、黒い幕を張れ」


 ミズハ

「はい。張ります」


(第一聖女が空間の幕を張ったんじゃないのか? 彼女もあの空間が作れるのか? 第二聖女ミズハの役割は何なんだ?)


 ・・・・・・・・・・


 観客たちside


「勇者パーティ! なんだそりゃ! 卑怯だぞっ」


「おい血が……すごい出ている……」


「なんであの子に回復魔法が効かないんだよ」


「死なないと黒い空間が解除されないだと……」


「一人死んで解除されても、また別の聖女が空間を作れるのか? それじゃ空間作りを繰り返せば全員殺せるってことか、まるで殺戮じゃないか、これって勇者様の模擬戦イベントだろ?」


「血を流している娘さん、大会の時、防御隔壁を補強して、おれたちを助けてくれた女の子だろ? 死なないで欲しい」


「なぁ女神様、魔王戦以外の蘇生ルールは理解できるけど……今回は何とか」


「私の亡くしたあの子も生き返らせてくれないかなぁ……」


 ・・・・・・・・・・


 夢を見ていたヨシタカの目の前が暗転し、再度明るくなった時には、夢の中の出来事の時が少し進んでいた。


 そこでは誰かを庇ったミズハが血だらけで倒れており、その弱った身体を上半身だけ抱き抱えたヨシタカがいた。ユアイはもう呼吸をしていなかった。



 ミズハ

「わ、わたしが逝きます……そうすれば黒い幕は二度と張られません。そして女神様(ハルちゃん)、ユアイちゃんに私の命を与えて下さい」


 女神ハル

「だ、だめ、ミズハ!」


 ミズハ

「さようなら、ヨシタカくん。私の愛しい人……もっと愛し合いたかった、ごめんなさい……」


 ヨシタカ

「ミズハっ!ああああ……く、くそっ、死ぬなーー……」


 エレーネ

「ヨシ兄様、これです、女神様から頂いた神具を使ってください! 渓流神マナ様の神力が含まれています」


 ヨシタカ

「エレーネ、ありがとう、いくぞっ!」


 ヨシタカ

「オーーリーハールーーコーーーン」


 赤い光が周囲に充填されていく。それは邪気を払い、相手の雑兵らを溶かすように消し去っていく。古代の超兵器であるオリハルコンの神々しい光が包み込む。黒い幕は弾け飛んでいった。


 しかし、もうミズハはピクリとも動かなくなっていた。


 ???

「こ、この光は我に対する……マイナスのエネルギー……」


 空間がなくなった、そのタイミングを好機と捉えた女神が叫ぶ。


 女神ハル

「今です、渓流神マナ、神官エレーネ! わたくし女神ハルの名のもとに、神の力を行使することを許可いたします。そして黒幕はわたしが倒します」


 渓流神マナ

「はい!それではヨシタカさま、これを使います!女神様の奇蹟をっ」


 エレーネ

「はい女神様の仰せのままに、ヨシ兄様へ、女神様の奇蹟を実行いたします!」


「「リザレクションっ、蘇生!!」」


(あっ、リザレクションだ……助かるのか、助かってくれ、ミズハ、ユアイ)


 ・・・・・・・・・・


 ヨシタカside


 「はっ!」


 夢か……ひどい悪夢を見た。なんでミズハやユアイが死ぬんだよ。まさか正夢、明晰夢にならないように……いや何だろう、この不安感は。脳や肌に直接、現実感を差し込むような、未来視みたいな感覚。


 まさか、予知夢か。


 でも肝心の原因と対策の部分が分からない。


 いやまさか、只の夢だろう。


 俺がミズハへの失恋と魔法枯渇をしたから変に不安に思って、それが夢になったんだろう。心配することはない。


 イベントの時はミズハに会えるんだな。新しい恋人が出来た彼女に、どんな顔して会えばいいんだろうか? あいつは幸せか? 幸せなら俺と会うのも嫌だろうし、はぁ、憂鬱だな。


 ・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・


 ふふ、俺は鈍感系主人公ではないぞ、こんな恐ろしい夢をスルーするほど愚鈍な男じゃないんだ。


 きっと夢は女神様からの啓示に違いない。


 ……と判断した俺は、早速サトシたちに夢の中身を相談した。そして対策を練って完璧に、隙なく当日を迎えるのであった。


「あいつら、蹴散らしてやる」

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