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勇者たちの使命感:次なる異世界  作者: 流離の風来坊
正統派の勇者たち

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第34話 宿泊施設で精神回復

【ヨシタカの部屋】


 うーん、エレーネちゃんの相談、リンドバーグ伯爵領での不祥事は早いうちに片づけないといけないわね。監禁されているらしい女の子たちが可哀想だもの。


 前もって誰か信頼できる人を下調べに行かせたいですね。でも王都では知り合いがいませんし、冒険者ギルドで依頼するとしても、信頼が出来る冒険者に当たるかどうか博打ですし……。


 王宮直轄の騎士団はどうかしら?サトシさんとミキオさんなら伝手がありますし、王宮からの騎士団なら侵略行為と受け取られることもないですけど……。警戒されて監禁場所を変えられるのもダメですよね。


 うーん、故郷の冒険者ギルドのトムさんたちにお願いするのも……しかも遠いですし。王宮魔法師の人たちも、親しくはないけど頼めば協力してくれるかな?無理かな?


 明日、サトシさんたちに伝手がないかどうか聞いてみよう。


 それにしても……です。侍女ユキシだけじゃなくエレーネちゃんも義理の妹だなんて!少しだけ機嫌が悪くなってしまいます。


 聞いてください、三姉妹ですよ、三姉妹っ。


 わたしだけのお兄ちゃんだったですのに、なんだかイヤなのです。でも彼女たちはとてもいい子なんです。性格も良いですし、人として好きですし、とても素敵な友人になりました。姉妹になれと言われても全然、苦じゃありません。


 でも、でもですね、お兄ちゃんがユキシやエレーネちゃんに優しくしているところを想像すると、わたしは嫉妬してしまうのです。変なわたし。いけない自分。


 エレーネちゃんって、金髪で生まれつきのお嬢様で、素敵な笑顔が美しいです。16歳で私より数か月少し年下です。なのに胸はわたしより、ほんのちょっとだけ大きいですし。間違えないでください、ほんのちょっとだけです!そして仕草がお姫様なんです。どこから見てもお姫様。憧れてしまいます。


 侍女ユキシもそうです。身長が低く小動物系のお人形さん。可愛くてナデナデしたくなっちゃいます。10歳前後の容姿なのに、成人してて15歳だなんて。ミキオさんが『合法ロリ』と言っていました。なんでしょうか合法ロリって、わたしには全く理解できません。殿方は何が好いのでしょうか。


 これって独占欲というものかしら?


 お兄ちゃんが取られてしまいます。ミズハねえちゃんの恋人に加えて、妹という絶対領域でもわたしの安全な場所が無くなってしまいそうです。心が苦しいです。


 でも、わたしはお兄ちゃんの幸せを第一に考えたいです。今まで、散々わがままを言ってきました。悪い妹だったと思います。


 わたしなんかに優しくて甘やかしてくれたお兄ちゃん、幸せになって欲しいです。


・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・


 まず最優先なのは、お兄ちゃんの傷ついた心を早く癒して元に戻したいこと……。


「お兄ちゃん、ゆっくり休んでくださいね。ふふ……可愛い寝顔」


「う、うーん」


「えっ、添い寝して欲しいですって?もうお兄ちゃんは甘えっ子なんですからぁ」


「ううう……ミズハ、どうして俺を裏切ったんだ……」


「お兄ちゃん、今はミズハねえちゃんのことは忘れてください。私が代わりにいますから……、ねっ」


 ユアイは布団をめくって隣にそっと入った。


「なでこ、なでこ、お兄ちゃん、いいこ、いいこ」


 ヨシタカにピトっとくっつき目を閉じた。


「おやすみなさい、お兄ちゃん」


 ・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・


 早朝、魔力が回復し、昏睡状態から目が覚めたヨシタカは失恋状態に自覚が追いつかず未だ混乱していた。ミズハと知らない男がイチャイチャしていたのを見てから記憶が全く無い。


 隣にはユアイが寝息を立ててスースーと気持ち良さそうに眠っていた。彼女は宿泊施設で備えられている浴衣を着ていた。


 ヨシタカは自分の姿を見ると戦闘用の服のままだった。昨日、魔力枯渇で気絶したそのまま、部屋まで運ばれてきたのだろうと考えた。


「重かっただろうに」


 ユアイの頭を撫で『ありがとう』と労わった。


 『ミズハ……』彼女とは長い期間、幼少期から一緒に育ち、中学一年に告白し恋人同士になり4年目、更には転移前の夢の世界も加えて長々と健全なお付き合いをしてきた。


 ミズハ高校二年生 ↓

挿絵(By みてみん)


 愛は不動だと信じていた。二人にはそれを裏付ける長い経験があった。図書館で宿題や勉強をしたり、科学館で星座や伝説、夜空の神秘を学んだり。


 ホラーなど映画を観に行ったり、ショッピングモールで楽しんだり、服が似合うねと言って照れ臭いと互いにからかったり。


 クリスマスではプレゼントを贈り合って、湖畔でのキスがあったり、大観覧車でのファーストキスでは直後に写真を撮り記念にしていた。


 家でテスト勉強で二人きりになり、緊張し合ってドキドキだったのをいつもユアイに邪魔されて。ミキオやサトシとみんなで山菜取り、ハイキングに釣り、何でも一緒に経験してきた。


 初詣も毎年一緒に行った。バレンタインデーにはミズハの手作りのチョコが友人知人らに自慢できた。将来、結婚しようねと口約束だがしていた。両親たちも俺たちが結婚するだろうと考えていた筈だった。


 そう、ちょっとしたことでは揺らがないと信じてきた愛情が、今まさに揺れ動いている。


 結婚するつもりの可愛い彼女が、目の前で知らない男に奇麗な髪をいじられ、形のいい色っぽい唇に触れられていた。何もできない自分が悔しかった。


 知らない男が彼女の柔らかそうな頬や首筋うなじに指を這わせ、大切な彼女の感じる部分を否応なく攻めている(さま)は、自分がしたくても出来ない状況下ですら実際に目の前で行われた。


 拷問みたいにヨシタカは感じた。


 どうしてミズハは拒まなかったのか?それがまず信じられなかった。きっと洗脳だろう、とはヨシタカも考えた。でも、どうして周囲が咎めなかったのか?これが一番の謎であった。


 全員が洗脳されていたとしか思えなかったが、そんなことが出来るのだろうか?そもそも聖女に洗脳を仕掛けても弾かれるだけと知識では知っていた。


 「いや待て。やはり俺の考えが間違いで、普通に夫婦や婚約者同士なら、イチャつくぐらいありえる光景ではなかろうか?」


 まさかミズハは婚約したり結婚していたりするのだろうか?と嫌な考えが彼の脳裏に浮かぶ。胸には棘が刺さったかのような感触が発生した。


「俺たちの空白の期間は、白い部屋からこっちまで数か月、ニ~三か月しか経っていない筈。恋愛して婚姻するって、早すぎないか?」


「俺たちの付き合いは十数年。それがたった数か月の男に負けてしまうのだろうか?」


 ただヨシタカは気づいてしまった。隠れて不倫をするような男の言葉は信じるに値しないが、あの男は堂々としていた。そう考えると心の狭いのは自分の方だと思えてきて、自虐の世界の虜になってしまいそうだった。


 ・・・・・・・・・・


「お兄ちゃん、起きたの?」


「おはよう、ユアイ、昨日はごめんな」


「ううん、体調はどう?」


「大丈夫だ」


「お兄ちゃん、こっち来て。まだ魔力枯渇から完全に回復していないから」


「まぁ一日ぐらいだと、これぐらいだな」


「魔力譲渡するから、はい、こっちに」ポンポン


「ああ、すまないな」


「ふふ……ぎゅぅ~~~~」


「ゆ、ユアイ、これって魔力譲渡だっけか?何か違くない?それに俺、汗臭いぞ」


「お兄ちゃんの香りは全て好きだから良いの」


「いや、でもな」


「あ、じゃ、その前にお風呂入ってくる?」


「ああ、昨日のままだったな、身体洗って、浴衣にも着替えたいな」


「朝から天然温泉が入ってるから、お風呂いってらっしゃい」


「ああ、大浴場に行ってくるよ」


「じゃ、後で、ね」


「お、おう……」


 朝風呂で天然温泉につかったヨシタカは、またもやミズハのことについて考えてしまった。失恋は一日二日で収まることはない。数年引きずることもざらである。


『はぁ~~~いい湯だな』


 湯の花が水面に漂い、湯気が神秘的な雰囲気を醸し出す。ミズハとのことは、どうしようもないと諦めるしかないのか、ヨシタカは自問自答を繰り返していた。


 朝風呂には他に誰も客がいなかったのでゆったりと出来た。ユアイの魔力譲渡と共にリフレッシュが出来て体力と精神を回復した。

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