第33話 対勇者パーティ戦略2
「僕らの常識に照らし合わせれば、一気にではなく徐々にMP・HPが抜かれると思われるね。なら反撃の時間はあるし、ユアイちゃんの魔力譲渡やエレーネさんの回復魔法でMPやHPは充填が出来るから、大きな問題にはなりそうにないかな」
「それだけなら良いのですけど」
「あの協会本部はハルのヲタ性格が少し反映されてるからな。他にもあるだろう、面白兵器が」
「ミキオさま、いくら何でも女神様に対して失礼過ぎます!」
「あ、ごめん、神官だったねエレーネちゃんは……」
「はい。それで、あの……、今頃になって疑問なのですが……よろしいでしょうか?」
「ああ良いよ、さっきのお詫びに何でも聞いてくれ」
「あの、みなさまは、やっぱり”人の身体を持つ神様”でいらっしゃるのでしょうか?」
「この件、ヨシ兄様にも聞いたことがあるのですけど、先ほどから女神様へのお友達のような親しさや、勇者様パーティと同格みたいな会話が繰り広げられていて、大会の戦場エリアでもヨシ兄様とお仲間でしたし……そうしますと伝説の最強と言われたいにしえの勇者パーティの皆さまなんじゃないかと……」
「で、でもでも、いにしえの勇者様パーティだなんて、そう考えてもご年齢が違いますよね、私の発言って変ですよね……、何百年も前の言い伝えですし、ごめんなさい、もう、以前もヨシ兄さまに話して変に思われちゃいましたし、本当に変なこと言い出しちゃって、私ったら」
「ああ、エリーネちゃん、正解、ほんと、幽霊でもなく本物だからね、オレたち」
「……え」
「……」←しばらくストップ高のエリーネ
「……」
「……ミキオ君、何か声を掛けてあげて」
「エリーネちゃん?」
「……」
「いやサトシ、会議を続けようか」
「すると……対策はミズハさんと同様、第一聖女の彼女らに特異な魔法を発揮されたら致命傷を負いかねないから、我々の速攻が重要という事でいいよね」
「そうだな」
「うん」
「……エリーネさん、現勇者の攻撃パターンは推測できるかい?」
「は、はいっっ!?」
「クスッ」←ユアイ
「はい、たぶんですが、現勇者様は聖剣エクスカリバーで斬ってくる”のみ”と思いましゅっ」
「うん、エレーネと同じくわたしもそう思うわ。あの男の来賓席での行為を見た限り、己惚れ屋さんでプライドが高く、自己中心的な性格だと感じました。味方を控えさせておいて、一番目立つ聖剣を最初から大技で使ってきそうです」
「は、はい、その通りですユアイお姉さま」
「いやぁ~ん、お姉さんって呼ばれるの嬉しいっ、いやぁ~ん」パタッ
「そうだとすると、エクスカリバーの神力を高める時間が必要だから、現勇者はオレたちに先制攻撃をせず『雑魚どもかかってこい』的に大袈裟に振舞ってくれるかも、というか振舞ってくれれば好いな。ヤツの相手はサトシに任せよう」
「了解、現勇者の相手は僕に任せて」
「現勇者側のタンクの聖戦士と魔法使いの賢者はどうなのかしら?」
「ミキオ君とも話していたんだけど、王宮や騎士団にいながら僕らとは接点がなくてね、よく知らないんだ」
「はい。その二人はあまり表に出て来られませんので、私も詳細は存じ上げず、申し訳ありません」
「謎の戦力という訳ね」
「謎の戦力か……強敵な雰囲気がいきなり醸し出されたな」
「謎の戦力、思わぬ伏兵になりそうな予感」
「謎の戦『あーもう謎の戦力はいいですから!』」
「……えっと、わたしがマトメますと、まず相手側から先制はされないので、お兄ちゃんがファイヤーボールで速攻、わたしがミズハねえちゃんを防御結界で守りながら、他の現勇者たちを熱と氷の大魔法で蹴散らします」
「そして相手が乱れた隙に、スピードの物理攻撃で完全に倒し、勝利を手中に収めます。メインはサトシさんの聖剣エクスカリバーとミキオさんの加速装置です。エレーネちゃんは後方支援で待機してもらい、いざとなったら介入してください」
「「はい」」
「あ、あのユアイさま……私は何をしていればいいのでしょうか?」
「ユキシは模擬戦に加わらないから女神様のお手伝いをしていて」
「へっ?えっ?そんな畏れ多い事……」
「大丈夫、恋バナとか雑談をしてればいいから」
「へっ、えっ、ええっ?女神さまにそんな恥ずかしい話題をしてもいいのですか……」
「……さ・て・と、お兄ちゃんには目が覚めた後で、私から会議の内容を話しておきますね」
「待て、加速装置って、オレだけ何だか違うだろ。普通に剣聖スキルで速く動けるんだから、それに何だよ加速装置って」
「女神様にお聞きください」
なぜか目を泳がすユアイ……。
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「そういえば大会の戦士枠でユキシちゃんとオレって対戦したよな。控室の時でも話したが、いきなり美少女が強力な攻撃してきたんでビックリしたぜ。ほんと思い出せば、相当ヨシタカたちに鍛えられたのが理解できる」
「はい、それはもう……でもアサシンというかシーフ職種が前衛で、索敵などが主で、実践があっても軽戦ですし、軽装なスピード重視ですから、列記とした聖騎士のミキオさんには全く歯が立ちませんでしたね」
「いや、それでもヒヤっとしたぜ。いい仕上がりになってると思う。アサシンは暗殺がメインだしな」
「い、言わないでください!せめてシーフと。繰り返しますが、侍女には主人を護るためには必須のスキルですから……」
「フフフ……可愛いじゃないかユキシちゃん。十歳前後に見えて実年齢が十五歳なんだろ?」
「は、はい」
「エルフの血が入っていたりして。ずっと若くてピチピチなんだぜ」
「ミキオさん、嫌らしいです。えっちな目を少しは自制してくださいよ」
「ごめんユアイちゃん、キミも、とても素敵だよ」
「今更遅いです、許しません。怒りますよ」
「成人した15歳なのに見た目が10歳、これってサブカルチャーで『合法ロリ』って言われるやつなのかな?僕は詳しく知らないけど」
「サトシさん……相変わらず空気読めないですね」
ジト目に微笑みを湛える器用なユアイ。
「話が脱線ばかりですし、わたし、お兄ちゃんが心配なので部屋に戻りますね」
「「いつも優しく可愛いユアイちゃんが怖いっ」」
(早くお兄ちゃんを癒したいのよっ)
「ところでエレーネちゃん、今夜の宿泊はユキシと一緒の部屋で好いかしら?料金は金一封を王家から貰ったばかりだし、出すわよ」
「それぐらい自分で出しますよー。え、でもユアイさんは何処の部屋で寝られるのですか?」
照れ臭そうにしながらも喜悦に満ちた表情でユアイが返事をする。
「うふふっ、お兄ちゃんのお部屋ですっ♥」
「ユアイさま、そんなに嬉しそうに言われなくても……」




