第31話 エレーネの願い
本日中にもう一話更新します。
コンコン。扉をノックする音がした。
「あー、すみません、今大会の実行委員会のものですが……」
姉妹たちが親交を交わし合っていたその時、大会実行委員会の役員が優勝の認定証と賞金、オリハルコン製メダルを持ってきた。
「みなさん、お揃いで助かりました。ヨシタカ様は眠られたままなのですね、後日のイベントまでに間に合えばいいのですが。魔法ジャンルの優勝者がヨシタカ様の攻撃魔法をご覧になられてサブイベントへの出場を辞退されましたので、防御結界を追加で張ってくださったユアイ様が予備枠兼特例として参加が認められました」
「うわっ、金貨が重い」
「おおっ、すげぇ」
「お兄ちゃんは大丈夫です、魔力枯渇だけですから。あと怪我人とかは出ましたか?」とユアイ。
「はい全員が無事です。ユアイ様の大規模結界に加えまして、小規模結界魔法で個々で覆ってくださったおかげで、全員無傷でございました。観客へも影響が出ずに大変助かりました。ユアイ様の結界が無ければどうなってたことやら」
「良かったです」
「誠にありがとうございました。大会関係者全員を代表いたしまして、感謝の意を、ありがとうございました」
優勝認定証や賞金、オリハルコン・メダルは、ヨシタカ、サトシ、ミキオの全員分あった。ユアイは飛び入りなのでイベント特別枠参加認定証だけだ。ただ、追加結界で大会自体を救った功績として、王家より金一封が進呈された。意外と大会運営側はしっかりと評価していた模様。
「イベントのご案内、参加時の注意事項、緊急時の対応の仕方、王族ご観覧時の跪ずき方、これは簡易跪きですね、女神様のご降臨の際は最敬礼の跪きとなります。他のモロモロは全て案内に記述されておりますから、ごゆっくりお読みください。ご質問がある場合は、いつでも大会実行員会の部屋へお越しくださいませ」
「「はい、ありがとうございます」」
「では、みなさま失礼いたします。次はイベント会場で運営委員会専用ブースにてお声を掛けて下さいませ」
「了解しました。よろしくお願いいたします」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
【エレーネside】
エレーネとヨシタカの出会いは、丁度ヨシタカが転移してきた日だった。彼女の乗る伯爵家の馬車が魔狼に攻撃され、従者のメイドたちや護衛が全員殺されてしまい、絶体絶命の危機の際にヨシタカによって助けられた。それから一緒に行動し、親元であるリンドバーグ伯爵領までヨシタカが彼女を連れて行って袂を分かった。
別れたヨシタカは知ることが無かったが、エレーネは父親である伯爵に監禁され、命の恩人でもあるヨシタカの出立に見送りも出来ず、婚約者のアランの不自然な行動を経た後、スパルタで剣術を仕込まれ、もともとヨシタカから教えて貰った護身術や小規模攻撃魔法などで奇蹟的に一流のレベルまで到達していた。
今大会では神官兼シーク職として支援魔法ジャンルで上位に勝ち抜いていたものの、ヨシタカの大規模広範囲攻撃の拡散エクスプロージョンで腰を抜かして、決勝選抜済の選手としては試合放棄で辞退していた。
「わたくし、ヨシお兄様に謝りたいのです。それに改めてもう一度だけでも私の気持ちをお伝えしたくて……。そしてヨシお兄様と別れた後で知った伯爵家の急に変わった異常性の原因、不祥事についても相談したくて参りました。領民、特に女性が軟禁または監禁されているらしく、場所の特定を進めております」
「え、エレーネさん……、大変な状況じゃないですか、女の子一人で背負うレベルじゃ」
「ええ、わたしたちが力になるわ。それにわたし自身も伯爵位だからね!安心して」
「あーオレも伯爵位を貰っていたな。サトシも。これって未だ通用するのかね?」
「ミキオさん、それ女神様と王家の契約だから通用すると思いますよ」
「しかも、お兄ちゃんは侯爵位になってるのよ、ずるいわ」
「一人だけ生き残ったからな……前魔王戦」
「とにかく武闘大会が終わったら問題のリンドバーグ伯爵領へ行って問題を解決しようぜ」
「あ、ありがとうございます!みなさま」
この国の王侯貴族たちに蔓延る異変……それはリンドバーグ領でもヨシタカが実体験したが、他領地でも、一般民衆へも静かに広がっていた。
「あー、おほん、盛り上がっているところ申し訳ないですけど、ヨシタカ君を宿泊施設に転移させます……彼をベットに寝かして、各自ロビーで集合、御前試合について戦略を話し合った後、解散しましょう」
「はい。親睦を図るのは夕食を共にすることで、今は一旦解散ですね」
「あの、わたくしも参加したいです。親睦会……」
「もちろん、エレーネちゃん、ようこそ、ですね。ミズハねえちゃんがイベント時に組めなかった場合、神官であるエレーネちゃんが代わりに組んでくれると助かるわ」
「ご期待に添えれるよう頑張ります。よろしくお願いいたします」




