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勇者たちの使命感:次なる異世界(校正版)  作者: 流離の風来坊
正統派の勇者たち

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第29話 戦士控室

【選手控室】


 魔法を打ち過ぎて魔力枯渇に陥ったヨシタカは、意識を手放してベットに横たわっていた。彼を連れてきたサトシとミキオがサイドで様子を観ていた。


「どうしたんだろう?ヨシタカ君は」

「見てりゃ分かんだろ、ミズハだよ。現勇者様とやらとイチャついていただろ」


「見ていなかったよ……えっ!本当かい?」

「ああサトシは見てなかったか、ヨシタカにとっては悲惨な程だった、別の男とのイチャラブな、ヤツは失恋したばかりってところだ」


「幼馴染で付き合いも長いのに、そんな事ってあるのか」

「サトシ……そんな事って普通にあるんだぞ。こっちに転移されてから暫く会っていなかっただろうし」


「そうか、僕のロマンがなくなるね」

「でも荒れすぎだったな、どこかに裏が潜んでないか」

「あんなに取り乱した彼を見るのは初めてだったよ」


「まぁヨシタカに直接聞こう」

「彼はここで寝かしておけば魔力が回復して目も覚めるだろうけど……」


「そういえばサトシは勇者部門で優勝決めたってな?」

「うん、ミキオ君も戦士・騎士部門で優勝したんだよね」

「ああ楽勝だった。そういえば支援・付与術師部門では優勝はヨシタカだな。参加者が誰も居なくなったし」


「ところで最終イベント、ミズハはオレたちと組むんだよな?」

「まだ僕もミズハさんと会話できてないから分からないね」

「ヨシタカとミズハが喧嘩したら組むのは無理っぽいが」

「そうだね」


 後日、国王陛下、王太子、王子・王女らのご観覧があり、そこで武闘大会各ジャンルの優勝者が組んで、現勇者パーティと模擬戦を行うというサブイベントがある。


 また勇者パーティの婚姻者の発表がある。


 その場には国民が崇拝する女神様が降臨され、祝辞や平和を説くというメインイベントで幕を閉じる予定だ。


「ミキオ君、魔法部門ではユアイちゃんが出場してなかったけど、特別枠の飛び入りを利用して僕たちと組むだろうし、ミズハさんはどうするんだろうね?」


「イチャついていた現勇者や第一位聖女と三角関係か。しかも敵対するとなると、またヨシタカは嫉妬で暴走し、血を見るな……サトシとオレで、いつでもヤツの暴走を止められる心構えが必要だな」


「うん、僕も同意」


「ところで現勇者パーティは強敵らしいけど、オレたちに匹敵するのだろうか」

「そう思うよ、女神様が与えるスキルなどは全て一緒レベルだろうし、手ごわい筈」


「でもハルちゃん(女神様)に会えるのは楽しみだよ」

「平和を願って国民というか全人類に直接語りかけるんだってな。脳にダイレクトに。変なこと言い出さなきゃいいけど」


「……公の場では女神様に礼儀をしっかりね、ミキオ君」

「分かってるよ、オレはこれでも騎士だぞ、お前も女神に抱き着くんじゃねーぞ」

「そ、そんなことしないよっ」

「いや女神の方からヨシタカに抱き着くかもな、なでこ、なでこって慰めに」

「うぐっ心えぐること言わないでくれ」


 サトシはハルに転移前の高校時代から片想いをしていた。さすがに目の前で好意を持つ女性が友人とはいえ他の男性に抱き着くのはキツいと思った。


(さりげなく心をえぐるミキオ君は鬼だよ……)


 少し時が過ぎ、サトシとミキオの雑談が続く場に、ようやく宮廷魔法師たちから解放されたユアイが到着した。侍女ユキシも出入り口で合流し一緒だ。


「お兄ちゃん!大丈夫?」

「ああ、ヨシ兄ちゃんっ」


「ユアイちゃん、お久しぶり。ヨシタカ君は魔力枯渇で眠ってるよ」

「お久しぶりです、サトシさん、ミキオさん。観客席から見ていましたよ」

「結界を重ねて加えてくれたのはユアイちゃんだよね?ありがとう」

「いいえ、どういたしまして」


「やぁ……ユアイちゃん(相変わらず可愛いなぁ~)」←ミキオ

「ミキオさんもお元気そうで……」


「ところで、そこにいるのはユアイちゃんの侍女かい?」

「はい、この子はユキシです。ユキシちゃん挨拶して」

「は、は、はじめまして、ユ、ユアイ様の侍女ユ、ユキシといいま、申しましゅ……ヨシ兄ちゃんの義妹にもさせて頂いています」


「義妹……丁寧なご挨拶ありがとう」

「可愛いじゃないか」←ミキオ

「そ、そんな……恥ずかしいです……」

「わたしの侍女をナンパしないでください」


 九十度のお辞儀をしながら挨拶をするユキシ。前もってサトシやミキオの事を聞かされていた為、緊張してどもってしまった。脳裏には『人の身体をした神様』という伝説を持つ旧勇者パーティの主要メンバー、その奇跡のような人たちが目に前にそろっていた。この場にいないのは聖女ミズハだけである。ユキシの緊張は半端でなかった。


「ところでお二人が駆け付けた際に、お兄ちゃんは何か言っていましたか?」

「いや何も。駆けつけた時には完全に自分を見失っていたよ」

「失恋が想像以上にヨシタカに衝撃を与えたんだろうな」


「失恋……ミズハねえちゃんがお兄ちゃん以外に目移りするとは考えられません……いえ考えられませんでした」


「ひょっとしたら現勇者の魅了魔法かも知れないな」

「それはわたしも考えたのですけど、ミズハねえちゃんが魅了に掛かるとは思えませんでした」


「う~ん、直接ミズハさんに聞ければいいのだけど」

「今から来賓席に乗り込むとか」

「あ、ダメです、今は突然倒れた勇者のせいで多分パニックになってるかと」


「「えっ?」」


「く、詳しくは聞かないでください。と、ところで話を戻しまして、ミズハねえちゃんには、国王さまの御前試合の時に聞くしかないでしょうね……」


「そ、そうだね……」

「……(ユアイちゃん何したんだろう)」


 ミズハにキスをしそうになった現勇者をコッソリ一撃で倒したのがユアイだった。


 ・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・


 一方、ベットに横たえられたヨシタカは夢を見ていた。


 グラディエーターのごとく賓客席を睥睨(へいげい)し、握りこぶしには血が滲んでいた。怒りを押さえるのも限界に達していた。未だかつて経験したことのない口惜しさがヨシタカを襲っていた。


「なんだ、あの失礼な男は!」


 ヨシタカの最愛なる恋人のミズハに触れる名も知らぬ男。服装から高貴な社会的地位である事は伺えたが、王族まで列席する来賓の集まる公の席で、処女性を強く求められる聖女という名のある立場の女性に、恥ずかしげもなく手を出すというのは、常識的に考えられなかった。


「ミズハ……こっちだ、俺を見ないのか?久しぶりに会えたのに……」


 第二位の聖女ミズハは、旧勇者パーティの時代は第一位聖女であった。今、教会のアドバイザーとして現勇者パーティの補助として仕事をしていた。


 これは第二位の聖女として過去にはなかった仕事であり、そもそも歴史的に、聖女はその時代には一人しかいなかった。聖女が二人もいることはあり得なかったのだ。


 第一位の聖女は現勇者パーティの専属で教会本部より貸し出されており、魔王討伐が必須である。しかし何故か魔王の存在は希薄であり、脅威というものはあまり感じられなかった。


 ヨシタカたち旧勇者パーティの活躍の後、女神様が魔王を制御し更生させたため、ヨシタカが知る限り、魔王は寧ろ神として人類を守護していた筈であった。


 大きな声では言えないが、女神様が地球へ遊びに行くためだったとしても魔王と人類が敵対することはなかったはずだ。


 各時代には唯一の聖女しか存在しない、この絶対ルールにも拘らず、二人いることが分かったのは、あろうことか公平ルール絶対主義の女神様の神託による。


 今の時代だけは特別であり、理由は明らかにされていなかったが、勇者・聖女という二大看板が二名ずつ複数存在するという。女神様がいつもの地上代行者である教皇(463歳以上)へ『よろしくね』とトップダウンで神託した。


 お気軽な台詞とはいえ神の命令となれば履行するのは絶対である。本来はミズハが第一聖女なのだが、第二聖女として現勇者パーティの補佐に指名した。


 その聖女に対し、男性が公の場で頬や耳、髪の毛に触るとは、通常なら教会が黙っていない筈だが、来賓席を見たところ、誰も男の行為を咎めることをしていなかった。


 こと女神様に忠誠を誓うヨシタカはその光景を見て女神さまやミズハを侮辱する行為と捉えた。ミズハは清く長いお付き合いの恋人でもある。


「その男!何をやっているんだ!ミズハに触るな!この~~~」


 まずは来賓席に警戒をさせるため、観客と戦場を隔てる結界にファイヤーボールを打ち込んだ。しかし男は無視し、未だミズハを触っている。


「ん?あの腰の剣は……聖剣エクスカリバーか?サトシの持つ一本とは別の二本目……」


 ファイヤーボールが無視されるなら、次はエクスプロージョンだということで放つ。防御隔壁は打ち震えるも、再度、男に無視された。男はチラっとヨシタカの方を向き、ニヤリと蔑む様な笑顔を見せミズハのうなじに指を這わせた。


「あの男が現勇者であるなら尚更、公の場での狼藉(ろうぜき)は許せん!」


 それならばとヨシタカのオリジナル最大の広域攻撃魔法「拡散エクスプロージョン」を放った。爆音と共に隔壁の結界が大きくゆがんだ。


 他の観客や戦士たちは腰を抜かしてへたり込み、動けるものは逃げ惑った。しかし、それでも男はミズハを触るのを止めない。ミズハも嫌がっておらず、ヨシタカがいることすら忘れているかのように無視していた。


「どうして周囲は彼の行動を咎めないのだ、聖女に失礼極まる行為だぞ?なぜだ、どうして、おかしいだろ、もしかして俺が間違ってるのか?」


 男は指をミズハのくちびるに触れさせた。顎にも撫でるように指を這わす。顎クイの寸前に見えた。


「ああああ……ああ……ああああああ、やめ、やめろぉーー!拡散っエクスプロージョン!連発!!」


 どどどーーーーーーん、どどどーーーーんん


「……ミズハ、そんな……新しい恋人なのか?俺は捨てられたのか?あんなに好き合っていたのに」


「ミズハ……俺は愛しているままだぞ。まだ別れ話もしていないのに、気づいたら別れていただなんて……これはまさかの寝取られ……なのか?そうなのか……ああミズハ」


 ミズハの本心が分からぬまま、近日中に御前試合が始まる。

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