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勇者たちの使命感:次なる異世界(校正版)  作者: 流離の風来坊
正統派の勇者たち

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第23話 ユアイの異変

 ヨシタカが異変に気づいたのは、それから二週間後のことだった。ユアイが時々、友達に会うと言って別行動をするようになった。その頻度が日が経つにつれて徐々に増えていった。


 そしてユアイの帰宅する時間が遅くなることも。就寝時間に帰宅することまであった。


 ある日、もうすぐ日付が変わろうとしている夜更け。普段ならユアイの部屋の照明は消えているにもかかわらず、その夜だけはユアイの部屋から光が漏れているのが見えた。心配になって俺はユアイに声をかけた。


「ユアイ、まだ起きてるのか?夜更かしは身体に毒だぞ」


「うん、もう寝るよ。心配かけてごめんね」と返事はあった。


 しかし一時間後、ユアイの部屋の照明が消え、部屋の扉が開閉する音が聞こえた。


(ん?トイレか)


 そして玄関へと足音が続く。こっそりと家を出ていくらしい。


(ユアイが外出?寝るんじゃなかったのか。なんでこんな時間に……)


 俺は窓から外を覗いた。暗い夜の(とばり)にユアイの人影らしきものが見える。躊躇(ちゅうちょ)なく俺も家を飛び出しユアイの後を追う。


 ひっそりとユアイが向かったのは冒険者ギルド方面だった。夜遅くにでも開いている施設だ。ギルドの奥には臨時の宿泊施設がある。ケガなどで治癒魔法をかけて貰うために泊っていたり、職員の夜間の担当者が仮眠をとったりする。ユアイは扉を開けてロビーを通り、奥手の手前で立ち止まり、誰かを待っているようだった。


(なぜ夜更けに冒険者ギルドに来たんだろう?朝では駄目だったのか?)


 疑問が尽きないが、暫く経つともう一人、男性の人影が出てきた。その影に向かってユアイは笑顔で話しかけていた。何を話しているかは聞こえないが、何となく密会のような、立場的に昼には会えない男女の逢瀬にしか見えない。


 ま、まさかユアイに恋人……


 日付が変わる深夜に24時間営業の冒険者ギルドへと家を抜け出してきた妹ユアイ。「もう寝る」と言っていたのに嘘をついてまでこっそりと出かけたのにはそれ相応の理由がある筈。


 残念なことに待ち合わせには男性の姿があった。


(まさかユアイが逢瀬などと……相手は誰だろう?顔ははっきり見えないが)


 俺の視界が涙で歪んだ。


(なぜ相手が男性だとしても俺に教えてくれないんだ。俺の知らない男性といつの間に恋人同士のような関係になったんだ?ユアイ……お兄ちゃんは妹の恋路だけは邪魔しないぞ)


 ユアイの顔には恋する乙女のような笑みが浮かんでいる。二人の距離が徐々に近づいていく。ヨシタカの心の琴線が弾け飛んだ。


(信じたくない。まさかキスをするつもりか?)


 男がユアイの腰に手を回そうとしたが、ユアイに手を払われ、また肩に手を回そうとしたが、これまた手を振り払われていた。ユアイは男に身を委ねるのではなく、まだ距離感はあるようだ。キスがしたくても抱き寄せられないと無理なので、男がじれったく焦っているのが伝わってきた。


(ユアイが嫌がっているのに強引に迫るのであれば、申し訳ないが介入させてもらおう)


 ユアイは両手で相手を押しやり、頭を下げてギルドから出ていく。キスは断ったようだ。俺はテーブルと柱の陰に隠れてやり過ごしたが、今夜は何事もなかったようでホッと一息ついてギルドの扉を開けて家へと向かった。ユアイは俺より200mは先を歩いていた。


 次の朝、まだ俺の心の衝撃は治まっていなかった。ユアイは何もなかったかのように振る舞い、その不自然さが気になって仕方がなかった。そもそも俺の知らない男と、あんな日付を超えた真夜中に逢瀬をしていたんだ。信じられないが事実だ。自分の目で見て確かめた。夢でもない。

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