第2話 教会・追放されないポーター
「聖女様がご誕生なされた!」
ぼくの街で行われた教会による神託の儀、その会場での事である。10歳~12歳の子供を集めて、女神の加護を与える順番待ちの途中、大きくよどめく雰囲気が広がった。
皆が憧れる勇者様御一行の一角である聖女のスキルが、この会場の誰かに与えられたらしい。
女神の加護は、生後から12歳になるまでに、その子がどんな種類の努力をしてきたか、という事実を元にして与えられる。剣を振って動物を狩っていれば、高確率で剣のスキルが与えられる。魔法しかり。
それゆえ、努力をし続けていれば、必ず女神さまは応え、叶えてくださる。
本屋をやりたいからと読書ばかりをしていれば、知恵系のスキルを必ず与えてくださる。親の大工を手伝っていれば、建築のスキル、掃除ばかりをしていたら、ちゃんとクリーンのスキルが与えられる。これらのケースでは、女神様は決して剣のスキルを与えることはない。
勇者様のパーティは、万能の勇者、癒しでフォローする聖女、防御重視のタンク担当聖騎士、魔法から大魔導士、全体のスキルアップの《《付与術師》》の5名が候補だと呼ばれている。
先ほど、この街で聖女様が誕生したようだ。聖女は男性の勇者の対になる女性の最上位スキルであり、誕生の瞬間、全人類の希望となる。
どんな女の子が聖女になったのか?ぼくは興味津々で前の方を爪先で立ち背伸びしながら、見えるか見えないかの奥の方を探していた。しかし残念ながら、目撃することは出来なかった。残念。
★★★★★
ぼくの加護は《《聖付与師》》だった。仕事としては、荷物運びや雑用、そして各メンバーのスキルや体力の強化魔法の提供だ。
《《聖付与師》》は、付与術師の中でも、勇者パーティに参加できる資格を持つ最上位だ。でも、ぼくが加護を与えられた際には、聖女様のような歓迎ぶりはなく、ほぼスルー状態だった。
司祭様がお言葉をかけて下さり、王家公的書類にぼくの名が登録されたのが嬉しかった。
ぼくの決まった。仕事はポーターとして勇者様パーティの参加。
一方で、なぜぼくが付与術師のスキルを与えられたのか、よく分からなかった。
というのは、小さい頃より、剣を丸一日で、何千回、何万回と振り、野山を駆け回るため足腰を鍛え、魔法を毎日制御して、小さな炎を夜の部屋で出しっぱなしにする明かり利用の訓練や、制御の逆で開放すれば特大な炎が出来上がるなど、読書をして知識を蓄え、全般をソツなくこなしてきた。
心の中で、剣士が良かったなぁ、いや大魔導士も捨てがたかったな、勇者はちょっと荷が重いや、などと考えていた。
★転生前の勇者パーティのメンバー
左から、ミキオ(親友)、ユアイ(妹)、ヨシタカ(僕)、ミズハ(幼馴染)